2012年11月25日



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NASA が 12月7日前後に行うと思われる「火星の生命についての歴史的発見」の報道を見て



それと、久々に火星の地表の拡大写真など。


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▲ 「火星での大発見」についての会見準備を進める NASA のキュリオシティ・チーム。嬉しそうです。Daily Galaxy より。
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最近すっかり忘れていたキュリオシティのこと

・・・火星無人探査機キュリオシティ。

このブログでも何度か取り上げことがあります。

NASA の火星無人探査計画が無駄な理由: 1976年にバイキングがおこなった火星地表の質量分析から 36年経って進化しない観念
 2012年08月12日

キュリオシティへの無関心を貫けない夏の夜
 2012年08月19日

などです。

上の記事などでは NASA の火星探査への姿勢には(機器の話よりも、科学者としての資質として)いろいろと問題があるような気もしないでもない・・・というようなことを書いたりもしていたのですが、キュリオシティの火星到着の成功の時の下の NASA のスタッフの人たちの喜びようを見て、「ま、いいか」と思いました。




▲ キュリオシティの火星着陸に成功した時の NASA のコントロールセンター。キュリオシティの悲劇より。


考えてみれば、魚屋さんは魚を売って生活している。
大工さんは建物を作って生活している。

その流れで考えれば、上の人たちは「火星に何か飛ばして生活している」という人たちなわけで、その仕事を淡々とおこなっているだけのことであるのだなあという気もしたのでした。

そして、NASA のキュリオシティ・チームは、ついに大きな会見ができるところにまで来たようです。先日、NASA が火星に関して「非常に示唆深い」会見を匂わせました。



キュリオシティが見つけたものは火星探査計画の継続につながるか?

それは簡単にいえぱ、キュリオシティが火星で生命か有機物、あるいはそれに準じたものを発見したと思われる NASA スタッフの発言でした。

11月20日に、NASA の無人探査機キュリオシティの火星土壌分析結果から「極めて重大な発見があった可能性がある」ということが非公式に発表されたのです。

「非公式」というのは、慎重に発表するというような意味で、12月3日から開催されるアメリカ地球物理学連合の会議後に記者会見をおこなうそうです。

WIRED でニュースを訳したものがありましたので、以下に抜粋しておきます。


火星の土に有機物か:「歴史的な分析結果」発表へ
WIRED 2012.11.22

curiocity-12.jpeg

火星探査機「キュリオシティ」の主任研究員が、火星で採取された土から驚くべき分析結果が得られたが、詳細については12月に発表すると述べた。内容をめぐって憶測が飛び交っている。

第一報をもたらしたのは、キュリオシティの主任研究員を務めるカリフォルニア工科大学の地質学者ジョン・グロツィンガーだ。同氏によると、先ごろキュリオシティが採取し、探査機搭載のサンプル分析装置( SAM )にかけた火星の土から、これまでにない驚くべき分析結果が得られたという。

「このデータは歴史に残るだろう」と、グロツィンガー氏は、ナショナル・パブリック・ラジオで述べた。

詳細については12月3日から7日に開催される米国地球物理学連合(American Geophysical Union:AGU)の学会で記者会見を行うと述べた。非常に影響力のある結果なので、研究チームはチェックを重ねているとのことだ。



などの内容です。
詳しくは、リンクからお読み下さい。

NASA の重大発表」というと思い出すのが、2010年の「地球で発見された想像を絶する形態の生命」という発表でした。

そのあたりはこのブログでも当時紹介していて、2010年12月の「地球上で見つかった「炭素ベースではない」まったく新しい生命: NASA による発表が行われる予定」という記事でその内容を取り上げました。

その際、 NASA は「ヒ素で構成される DNA をベースとしないまったく新しい地球の生命形態を発見した」というものでした。

これに関しては、一応、「地球のほぼすべての生命とはどのようなものか」の説明を上の記事から抜粋しておきます。


地球上で見つかった「炭素ベースではない」まったく新しい生命: NASA による発表が行われる予定より。
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NASA の科学者が、現在、我々が知っているものとはまったく違う形態のバクテリアを発見したことを発表する。このバクテリアは、リンではなく、ヒ素を使う。

地球上のすべての生命は、6つの構成要素からなっている。
それは、炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄だ。

小さなアメーバから、大きなクジラまで、地球上で生命といわれるものはすべてこの構成要素を共有している。

しかし、今回発見されたバクテリアはそれが完全に違うと考えられるという。



というものでした。

私たち素人には何がスゴイのやらよくわからなかったのですが、しかし、とにかく「何だかスゴイようだ」と。

ところが、今年 2012年7月。

NASA が 2010年に大々的に発表した「新しい生命」は「普通の地球の生物」であることが判明
2012年07月10日

ということに。

それは下のような報道でした。


NASA の研究チームは、ヒ素を生存に利用する細菌を米国のモノ湖で発見し、これが地球外生命の探索に影響すると 2012年12月に発表したが、今回これを全面的に否定する複数の論文が発表され、NASA の発見した生命は新しい形態の生命ではなかったことがわかった。



「ぎゃふん」。

上の記事の中に私は「成果が求められ続ける現代科学界の迷走」というセクションを記しましたが、ご存じのように、特に予算の大きな宇宙開発や宇宙観測計画では、「成果」が常に求められ続けます。

たとえば、何かの巨大宇宙プロジェクトの代表者が、

「このプロジェクトには5年で3兆円の予算をかけましたが、成果はゼロでありました」


と述べることは許されないはずです。

上のプロジェクトはいい加減ですが、トータルとして見れば、非常に多くの予算がかかる宇宙計画というのは存在していて、それは通常だと「どこかの国家」が支払います。 NASA ならアメリカ。CERN や ESA (欧州宇宙機関)や ESO (欧州南天天文台)などはヨーロッパを含めて多くの国から予算を計上します。

国家予算を使う以上は、「今年も何も見つかりませんでした!」では許されないという部分があるはずです。


まして今の時代。

予算編成に対しての目の厳しさは、米国もヨーロッパ各国も同じだと思います。「金のかかる宇宙計画などはどんどんやめたい」と思っている首脳部もいないとも限りません。

そういうこともあり、宇宙計画のスタッフたちは一生懸命だと思います。

なので、今では私はそちら方面から見ていて、かなり同情的でもあり、上でご紹介した WIERD の記事にある「火星の歴史的発見」の発表が大々的に世界中で報じられることを期待しています。

なーに、内容なんてどうでもいいんですよ
1度大きく報じられれば。

たとえば、今年の夏、「ヒッグス粒子 存在確実か」と大々的に報じられたことがありしまた。

ヒッグス粒子とは、美香の乳歯だか神の粒子だか呼ばれている仮定上の物質で、ビッグバン理論の足支えとなるものです。今年の4月に CERN (ヨーロッパ合同原子核研究機構)がその粒子を発見したと、それはそれは大騒ぎでした。

下は当時のニュース検索です。



それから半年。
先日、下のような報道が流れていました。


ヒッグス粒子の可能性より強まる 東京大などが発表
共同通信 2012.11.14

質に重さを与え、質量の起源とされる「ヒッグス粒子」を欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)で探索している東京大などの国際実験チームが14日、「7月に発見した新粒子がヒッグス粒子である可能性がより強まった」と発表した。



半年前とほぼ同じ表現、つまり「可能性が高まった」という言い方が続いています。

私はこのヒッグス粒子に例を見るような、「ゴリ押しでビッグバン理論を進めて、人類のさらなる奴隷的精神を決定づけようとする態度」に当時とてもイヤな気分になり、この頃から、(一部の)科学者というものを比較的嫌悪するようになりました。


とはいえ、この「事情」というものも上に書いたことと同様だと感じて、翌日までにむしろ私は同情的になりました。

この翌日、私は、

科学者たちの「神」の意味
 2012年07月05日

という記事を書いて、そこに下の CERN の予算を載せました。



▲ 10年ほど前のものですが、CERN の予算の概要です。予算のほとんどは「加盟国からの分担金」でまかなわれています。つまり、様々な「国」が拠出しています。


恒久的に 800億円から 1000億円の年間予算がかかり、毎年 50億円以上の赤字を出している CERN は、世界で最も「何もなかった」では済まされない機関だということです。若者の失業率が 50パーセントにも迫る欧州の国々もお金を出しているのです。

「なんでもいいから何か発表しなければならない」。

その意識はかなり強いと思います。




願わくば、いつまでも「ほぼ確実」と発表し続けてほしいけれど


ところで、上に書いた「ビッグバン理論と人類の奴隷的精神が関係するかのような書き方」に違和感があるかと思いますが、明らかに関係があります。

このことは何度も書いていることなので今回はあまりふれないですが、


・この世の存在には限りがある(ビッグバン理論以後の宇宙観)





・この世はすべて永遠とその輪廻で構成されている(古来の通常の宇宙観)


という宇宙観では、長い間、人がどちらかの価値観の下で生きていると「必ず」それぞれの影響が人間の精神活動に出ると私は思っています。


もし仮に本当にヒッグス粒子というものが確定されたのなら、「それこそがドゥームスデイ(終末の日)だと」思っています。

まあ、それでも構いませんけれど。
私にとって、今の世界がまた少し遠のくだけの話です。


さて、なんだか重い話になってしまいましたが、今回の最後は少し楽しい話題として、「興味深い最近の火星の写真」のいくつかを載せておきます。



キュリオシティの火星写真でさらに際立つ「廃墟的光景」


私は以前から、火星の写真を見て、「火星がどうしても廃墟地のように見える」という印象を持ち続けていますが、最近のキュリオシティの鮮明な写真はその思いをさらに強くさせてくれます。

最近のキュリオシティの送信してきたカラー写真の中から、好きなものや、あるいは話題となっているものを何枚かご紹介します。大きな写真が多いので、部分的に拡大したものは、番号を振っておきます。

それぞれ「これが何のように見える」ということは書かないですので、皆さんも直感的にどのように目に映るか楽しまれて下さい。

すべての写真に NASA の写真ライブラリーへのリンク(写真番号がリンク)をしておきますので、フルサイズ等の現物はそちらでご覧下さい。

すべてキュリオシティによる撮影です。

まずは、私がとても「廃墟感」を感じる風景写真。

・写真番号 0059MR0267007000E1_DXXX

2-2-0059MR0267007000E1_DXXX-br.jpg

下の写真が、上で番号をつけた部分の拡大画像です。

2-1.jpg



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この場所は、上にあるように乗り物みたいな形の「岩」が多いんですが、それはともかく、私が何となく見入ったのが「6」の写真でした。「並べられたクビ」っぽく見える。昔、アジアなどを旅行していた時に、壊れた仏像などのクビが下に置かれている風景をなんとなく思い出しました。

下の写真はチベットのグゲ遺跡の壊れた仏像の頭です。

tibet_buddha.jpg

KAILASH DREAMINGより。


次の写真です。

・写真番号 0066MR0293036000E1_DXXX

1-0066MR0293036000E1_DXXX.jpg


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次の写真はネットでも話題となっていたものです。

・写真番号 00064MR0285005000E1_DXXX

3-0064MR0285005000E1_DXXX-br.jpg


下が番号をつけた部分の拡大画像です。


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3-2.jpg

(上のはナンバリング間違えてますね。2です。)


3-3.jpg


キュリオシティの撮影した火星の写真に関しては、他にもいくらでも面白い写真がありますので、興味のある方は直接 NASA のキュリオシティサイトなどで写真をご覧になるか、あるいは、海外のサイトですが、

キュリオシティの写真をアップする掲示板

とか、

ローバーの全部の写真を掲載し続けている flickr サイト

などがあります。


それにしても、火星の写真を見ていると内省的な気分になるのはどうしてだろうと思うのですが、やはりこの「廃墟感」にあるのだと思います。

「かつてあったものが今はない」という視覚的な感覚。そういう意味では、私は火星から「死の匂い」を嗅ぎ取っているのかもしれないです。


それはともかく、 NASA は火星の生命の発見か、それに準ずることに関しての発表を12月7日前後に行うことになると思います。

NASA の火星担当スタッフにしてみれば、米国大統領選も終わり、米国政府の予算編成が始まる中で「火星探査への予算が継続されるかどうか」に対しての最期のチャンスといっていもいかと思います。基本的には今のままでは、火星探査はもうじき終了します。

しかし、継続する理由が見つかれば継続するはずです。
たとえば、「生命が見つかったり」とか。

2013年のサラリーをかけた NASA スタッフの戦いが始まります。