2013年02月05日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




国立天文台が「太陽の磁場異変の進行」を確認





▲ 過去記事「奇妙な太陽のポールシフトは太陽系全体に影響を与えるか?」より。2012年4月19日の国立天文台のニュースリリースから作成し直した「太陽の変化の予測」のシミュレーション。






 

太陽の磁場の異常はさらに大きくなり


昨年の4月に、下の記事で国立天文台が発表した「太陽の磁場が4極になる」というニュースリリースをご紹介しました。

奇妙な太陽のポールシフトは太陽系全体に影響を与えるか?: 国立天文台が発表した「4極化する太陽磁場」
 2012年04月21日


この内容は、その当時、私個人も衝撃を受けたものでした。


その後、この件に関しての発表は特になかったのですが、つい数日前、この太陽異変についての「続報」がありました。

そのうち、2月2日のマイナビニュースから、抜粋いたします。


太陽両極の磁場異変を確認
マイナビニュース 2013.02.02

国立天文台と理化学研究所などの研究チームは、太陽観測衛星「ひので」が昨年9月に行った太陽極域の磁場観測の分析結果を発表した。太陽の北極域では磁場がマイナス極からプラス極へ反転する現象が急速に進んでいる一方、南極域の磁場は依然としてプラス極のまま変化が少ないことを確認した。

solar-4-magnetics.jpg

(中略)

次の太陽活動の極大期は半年ほど後ろにずれ込んで、今年秋ごろになるとみられ、その時の平均相対黒点数は69と予想される。これは、過去100年で最低の極大期黒点数であり、当面、太陽活動は低調に推移するものと考えられるという。

こうした太陽活動の異変は、地球が寒冷期となった「マウンダー極小期」(1645-1715年ごろ)や「ダルトン極小期」(1790-1820年ごろ)に似ているとも言われる。国立天文台などは今後も集中的な太陽極域の観測を継続していく。



これは、 NASA の科学者などを含めて予測する人たちもいた、「太陽活動の低下」ということが事実となって現れてきていることを示しているようにも思います。


参考までに、それに関しての過去記事を貼っておきます。

これは NASA マーシャル宇宙飛行センターの太陽物理学者デイビッド・ハザウェイ博士という人のインタビューから、「これから地球は小氷河期入りしていくのではないか」ということを5回に渡って書いた記事で、下のリンクが一回目のものです。

あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(1)
 2011年11月07日

他の4回はすべてそのページからリンクされています。

お読みになられたことのない方は、今回の国立天文台の発表の補足的な資料としてもお読みいただければ幸いに存じます。




▲ デイビッド・ハザウェイ博士。



上のシリーズでのハザウェイ博士の話のポイントとしましては、

強い太陽活動は 1800年代に終わっていた可能性
あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(3)より。)



▲ 西暦 1600年から 2000年までの黒点活動の推移。


黒点だけではなく「太陽の磁場の数値」も一貫して減り続けている
あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(4)より。)



▲ アメリカ国立太陽観測所の科学者であるビル・リヴィングストン博士とマット・ベン博士が集計した1992年から2009年までの太陽磁場の推移。1992年以来、減少していることがわかります。


また、

太陽活動の弱い時期は世界の火山活動が活発だった
あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(2)より。)



▲ 1707年の「宝永の富士山噴火」の様子を記した伊東志摩守日記の写本。この前回の富士山の噴火の時も太陽活動の弱いマウンダー極小期という時期でした。


というようなこともあると個人的には思います。

これらはすべて「地球の天候」に結びついてくると考えられることでもあります。




太陽活動が弱くなると、どのようなことが起きると考えられるのか


上記のうちで、火山活動と太陽活動の関係はまったく何も実証されているわけではないのですが、「宇宙線と火山活動に関係があるかもしれない」と考えている科学者や地質学者は決して少なくありません。

太陽活動が弱くなると、地球に到達する宇宙線の量は増えますので(太陽磁場等に遮られなくなるため)、それが火山や地震活動、あるいは雷などの多発と何らかの関係があるのではないかと考える「仮説」は存在します。


短い期間でわかりやすい例としては、2012月1月22日から26日くらいにかけて、太陽フレアの影響で強い太陽風(磁気のエネルギー)を地球は受けましたが、その間の「宇宙線の到達量」を示したのが下のグラフです。赤で囲んだ部分が「太陽エネルギーを強く受けた時」です。



▲ 記事「太陽活動で急減を見せた宇宙線と「ハートのコロナ質量放出」 (2012年01月27日)」より。


上では「太陽からのエネルギーが強いと宇宙線の量が減る」ことが示されていますが、逆に、「太陽からのエネルギーが弱い」と、「宇宙線が大量に地球に到達しやすくなる」ということになると思われます。


そして、多分ですが「太陽からの磁場やエネルギーが弱い状態が何十年間という長い期間続く」ということによっての影響は意外な部分に出てくるものではないかとは考えます。


いずれにいたしましても、昨年の国立天文台の発表により、太陽の異変がその後も進んでいることがわかったわけで、仮に国立天文台が言うように、「この状態が過去のマウンダー小氷期などの寒冷期と似ている」のだとすると、今後、数十年から場合によっては数百年、地球はその過去と同じようなことになるのかもしれません。

ただ、過去のマウンダー小氷期もそうだったと思いますが、時間軸として一直線に寒くなる、というような単純なものではないと思われます。

キーワードは「不安定」ということではないでしょうか。

不安定な気候や気温や天候現象が、数年から、あるいは十数年続いた後、次第に平均気温が下がっていくというような。

そして、気温の低下には、巨大火山の噴火などによる「火山灰などによる太陽光線の遮断」も関係します。

また、最近は天体活動も活発ですので、彗星や小惑星の衝突や大気圏での爆発、あるいは地球に近い磁場帯やヴァン・アレン帯などを乱して、磁場の異常による「極めて不安定な空や大気の状況」というものも起きないとは言えないような気もします。


いずれにしても、地球と太陽の関係性は今までの数百年とは違うものになったということは言えそうです。


何が起きるのかは起きてみないとわかりませんけれど。




太陽電波バーストの発生


そういえば、スペースウェザーに「太陽電波バースト」というものが地球に放射されたことが記事になっていましたので、その記事を翻訳してご紹介しておきます。また、その太陽電波バーストに干渉されたと思われる短波の音声も掲載されていましたので、記事中に乗せておきます。

太陽電波バーストの「影響」については、名古屋大学太陽地球環境研究所の説明から抜粋しておきます。


太陽電波バーストはそのエネルギーが少ないので、通信や電波伝搬に対して直接的な影響は少ないと考えられてきました。しかし、 2006 年 12 月 6 日におきた太陽フレアに伴って、かつてない強度の 太陽電波バーストが発生し、その電波が原因で GPS 衛星の電波が正しく受信できないという障害が報告されました。

そのため、太陽電波バーストを宇宙嵐の前兆現象として監視するだけではなく、電波バーストが通信に及ぼす影響についての関心も高まってきています。



ということで、何らかの影響のあるもののようです。
特に GPS 等への影響は大きなものかもしれないです。

では、ここからスペースウェザーの記事です。





LOUD SOLAR RADIO BURST
Space Weather 2013.02.03

太陽電波バースト

2月2日の太陽活動の予測は「きわめて静か」というものだったが、一方で、アマチュア天文家のトーマス・アッシュクラフト氏のように「それはとても強い活動でした」と言う人がいた。

何が強い活動だったかというと、その日、「タイプ3(Type III)」という大変強いカテゴリーにわけられる太陽電波の放出が観測されていたのだ。

この太陽電波バーストは、短波や天馬ラジオの音声をすべてかき消してしまったが、下は、アッシュクラフト氏が短波の 28 MHz と 21.1 MHzの周波数で、太陽電波バーストによって音声が掻き消された時の録音だ。





この太陽電波バーストを作り出したのは、太陽黒点群 AR 1667 だった。
上の電波バーストが発生する前に、 C2.9 クラスの太陽フレアを発生させていた。


AR1667.gif


太陽面爆発の高いエネルギーに速められる電子によって、規模の大きな電波バーストが生み出される。電子が太陽の外へ流れ、太陽の大気中でプラズマ振動と電波を発生させる。これらの電波が、地球に向かった時に、自信のバーストの音が短波ラジオのスピーカーから発生する。