2013年03月11日



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朝鮮半島情勢でもっとも大きな変化は「韓国メディアが緊張を喧伝し始めた」こと



そして見つかってしまったキム・ジョンウンの「数百億円以上の秘密資金口座」の処遇は


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▲ 3月11日午前の朝鮮日報のトップ面。




想定することが難しい「飢えの理論」


韓国では、今、米国と韓国との合同の軍事演習がおこなわれていて、それに関して北朝鮮は、

・03月05日 朝鮮戦争の休戦協定の白紙化を通達
・03月11日 南北直通電話を遮断


というように、態度そのものは激しくなっているんですけれど、しかし、気づいたのは、北朝鮮の行動の激しさのほうではなく、「韓国側の報道が大きくなっている」ということなんです。

意外かもしれないですが、韓国の報道は北朝鮮については常に淡泊で、何か事件が起きた時は別ですけれど、普段はそんなに話題にならないです。

これに関しては、2月15日の「ロシアの声」でも、韓国の人たちの冷静な反応について下のような記事を載せていました。日本語の記事ですので、全文はリンク先をお読み下さい。

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上のロシアの声の記事の中に下のような下りがあります。
その理由として、「第一の理由、第二の理由」を書いた後の「第三の理由」として書かれてある部分です。


第三に、韓国人の誰一人として、北朝鮮との戦争を予期してはいない。これは、「万端の臨戦態勢」についての北朝鮮政府の宣言・発表をメディア越しに受け取っている外国人には、奇異に感じられることである。しかし韓国市民は数十年間をかけてこうした宣言に慣れてしまっており、もはや特別な注意を払わなくなっている。

さらに、北朝鮮による恐ろしい約束、たとえば「ソウルは火の海となるであろう」云々はひとつとして果たされていない、ということもある。



と書かれてあります。

これが本当かどうかはわからないですが、しかし、たとえば、「北朝鮮が休戦協定の白紙化を通達」ということをした後の昨日など、韓国のソウルでは、北朝鮮に反対するデモではなく「反米デモ」が起きたりしています。

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▲ 「合同軍事演習を中止せよ」とプラカードを持って米国大使館前に立つ韓国の大学生たち。朝鮮日報より。



同一民族ということもあるでしょうし、いろいろな心理があるようですが、ただ過去の世界での出来事から重要なポイントかもしれないと個人的に考えることをひとつだけあげるとすると、


・北朝鮮の多くの人々は飢えている

・韓国の人たちはほとんど飢えていない


ということです。

この「飢え」とは死に結びつくほどの飢えのことで、貧困とかの話ではないです。
もちろん、北朝鮮でも、政治の中枢の人や平壌の多くの人は飢えていないでしょうけれど、他の地域の大多数の人の食糧事情がいいことはないと思われます。

「飢え」は「飢えていない人にはわからない」と山本七平さんはよく書かれていました。

これは過去記事で抜粋したことがありますが、再び載せておきたいと思います。

山本さんご本人が第二次大戦のジャングルの中とその後の捕虜時代に経験した極端な飢えの中で初めて知ったの「飢えは人をどうにでもする」ということだったといいます。


山本七平 「ある異常体験者の偏見」(1974年)より

単なる一時的空腹さえ、人間の冷静な判断をさまたげる。これが「飢え」となり、さらにそのとき、このままでは「飢餓必至」という状態に陥るか、陥ったと誤認すると、人間は完全に狂う。

飢えは確かに戦争の大きな要素で、これは戦争を勃発させもすれば、やめさせもする。自分の意志を無視して穀倉地帯に「手が動く」、それが破滅とわかっていても手が動く。

しかしひとたび飽食すると、あの時なぜ手が動いたか理解できなくなる。



さらに上の記事で私はこのように書きました。


極限の飢餓で起きることは「満腹の状況で、それを想像したり非難したりはできない」ということを山本七平さんは繰り返し書いていました。「満腹で飢餓の心情を語ることは不可能だ」と。



なので、「極限の飢餓の心理」は私にもわかりません。

それどころか、私は「飢えて死にそうになったことが一度もない」のです。

そして、韓国のほとんどの人もそうだと思います。

もちろん、現在でも日本でも韓国でも貧困から餓死で亡くなる方々はいます。

しかし、食べ物がないという根本的な意味が違って、たとえば「スーパーには食べ物はある」というような現状さえ存在しない社会の上というのは、「本当にどこにも周辺に食べるものがない」ということなわけで、上の記事には、餓死する少し前の北朝鮮女性の、ある意味で大変悲惨な動画をはりましたが、こういう極限の飢餓の状態では、正義とか、信念とか、イデオロギーとか、そういうものはすべて吹き飛ぶはずです。

そのリンクを貼っておきます。

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北朝鮮 平安北道 2010年


私などもそうですが、エラそうなことを言っていられるのは、「飢えで死ぬ」という状態ではないからだとも思います。上の女性のようになった時に、自分たちがどうなるかということについては、山本七平さんは「人間が獣以下になる。私もそうだった」と書いていました。



それはともかく、昨日あたりから韓国側の報道が緊迫してきているようにも見えますので、今日の朝鮮日報の北朝鮮関しての記事を「2つ」ご紹介しようと思います。

ひとつは、場合によっては「キム・ジョンウンさんを本気で怒らせるかもしれない」と思ったものでしたので、そちらを先にご紹介しておきます。

それは、キム・ジョンウンさんの「秘密口座」を米国が発見したということで、それは中国にあり、米国が中国に「口座の凍結をせまっている」というものです。

額としては「数億ドル規模の数十の口座」ですので、日本円に換算して、数百億から数千円になる可能性があるようですので、このお金に何かされたら、ジョンウンさんは非常に怒ると思います。


朝鮮日報韓国語版からです。






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朝鮮日報 (韓国) 2013.03.11

金正恩の「推定数億ドル」の秘密資金口座を発見


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韓国と米国による長年の追跡の結果、中国上海などに数十の口座を特定。しかし、中国は口座凍結などの制裁に消極的

韓国と米国両国は、北朝鮮が中国の上海などの複数の銀行に金正恩労働党第1書記の秘密資金と推定される別人の名義での口座を数十個を保有しているという事実を確認し、この口座に入金されたお金は数億ドル(数百億円)以上であることもわかった。

しかし、この口座は、3月7日に発表された国連安保理の北朝鮮への制裁決議 2094号に基づく金融制裁の対象から除外されたことがわかり、強力な対北朝鮮制裁の実効性に疑問が提起されている。

韓国政府の消息筋は3月10日、「韓米両国は、昨年末までに、中国上海などの銀行に金正恩の統治資金と推定される数億ドル規模の数十口座を発見した。口座名義と口座番号まで把握している詳細なものだ。このうちの一部は金正日国防委員長の時代の口座も含まれる」と話した。

韓国と米国は、長距離ミサイル発射と核実験などを行った北朝鮮への制裁には口座の凍結も含めなければならない立場を中国側に伝えたが、中国側は制裁に消極的な反応を見せたと伝えられた。

この消息筋によれば、「3回目の核実験後、中国は対北朝鮮制裁に、以前より多少積極的な姿勢を見せているが、北朝鮮政権の " アキレス腱 " とも言える秘密資金に触れることには消極的だ」と伝えた。

韓国政府は、この秘密資金の額がマカオの銀行にあった金正日の統治資金 2500万ドル(約 22億円)よりはるかに額が大きいだけに、これに制裁を加えることができれば、非常に大きな制裁の効果があると見ている。






(訳者注) では、もうひとつ、今日の朝鮮日報から、最近の北朝鮮の動静について。

記事の中に出てくる「1993年の朝鮮半島核危機」というのは「朝鮮半島第二次核危機」によりますと、


朝鮮半島核危機は、1980 年代末から核兵器開発を疑われていた北朝鮮が 1993 年 3 月に核不拡散条約 ( NPT ) の脱退を宣言して、核兵器開発の現実味が高まったことに端を発する。



というものだそうです。


では、ここからです。




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朝鮮日報 (韓国) 2013.03.11

北の住民「戦闘準備命令」が来た。20年前の衝突寸前の恐怖が再びおとずれている


北朝鮮が連日、 「核で火の海」、 「第二の朝鮮戦争」、「核先制攻撃」などに言及し、これは、朝鮮半島の緊張の高さの状況が 20年前の 1993年 3月の朝鮮半島核危機の時と似ているという分析が出ている。北朝鮮が自分たちの核での挑発に造成された危機局面で韓米軍事訓練と国際社会の制裁を問題視して危機を作る方法が、1993年を連想させるというのだ。


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▲ 北朝鮮の「停戦協定の白紙化」の後の 3月 10日に平安北道でおこなわれた「最高司令部の声明を支持する軍民大会」の様子。この大会は現在、北朝鮮の全域に広がっている。 北朝鮮は去る 3月 5日、最高司令部の声明を通じて、11日から停戦協定を白紙化すると脅した。



「準戦時」状態だった1993年

米国のクリントン政権、そして、韓国で金泳三政権発足直後の 1993年 3月、北朝鮮は準戦時状態宣言( 1993年3月8日)をし、核拡散禁止条約(NPT)からの脱退を宣言(3月12日)して、 「瀬戸際戦術」を駆使した。 その年は年初から国際原子力機関(IAEA)が未申告の施設2カ所に対する査察を迫られたことと、また、韓米の合同によるスピリット訓練を再開すると発表(1月26日)したことを北朝鮮は口実にしたのだ。

当時、北朝鮮で準戦時状態が宣布(最高司令官命令)された後に、 3月 9日から平壌(ピョンヤン)上空でミグ機による編隊飛行が開始された。

平壌の道路には機関銃を搭載した軍用車両が偽装網を覆ったまま走った。昼間は避難訓練のサイレンと一緒に防空壕や地下鉄の駅に避難する訓練が繰り返された。夜には、空襲警報のサイレンと一緒に家に黒い毛布で窓を防ぐ灯火管制の訓練が続いた。

当時、平壌に居住していた脱北者のひとりであるキムさんは当時の北朝鮮の状況を「家庭ごとに配給されていたラジオでは、訓練の進行状況が報道されていた。さながら、本物の戦争が起こったかのような雰囲気を盛り上げてた」と回想した。

1993年には、北朝鮮全域で非常召集訓練も行われた。住民は早朝に毛布、米、塩、歯磨き、歯ブラシ、医薬品、マスク、雨具、軍用ジャーなど 10キログラムの物品を満たした非常用リュックを担いで集結場所に走った。 上のキムさんは「この時も、一番最初にリュックに入れなければならないものは、金日成・金正日父子の肖像画だった」と言った。「肖像画の大きさだけでもリュックのサイズと同じほどなのに」と続けた。


その後も、

北のノドンミサイル発射(1993年 5月)
「ソウルを火の海に」脅迫(1994年 3月)
軍事停戦委員会の撤退(1994年 4月)
国際原子力機関脱退宣言(1994年 6月)

など、朝鮮半島は戦争直前の状況までいった。

米国が寧辺の核施設に対する精密爆撃(surgical strike)も対応戦略の一つとして準備して緊張が極に達した危機は、

ジミー・カーター元米大統領の訪朝(1994年6月)
金日成の死亡(1994年7月)を経て、
北・米ジュネーブ合意(1994年10月)で収束した。




「言葉での挑発」の強度は史上最強クラス

米国と韓国では共に新しい政権として、オバマ第2期政権と朴槿恵政権がスタートした。北朝鮮は、韓米連合のキーリゾルブ訓練と国連安保理の対北朝鮮制裁決議に反発している。

北朝鮮は去る 3月 5日から各種機関・団体を動員して

・停戦協定白紙
・南北不可侵合意、非核化宣言の廃棄
・北の米軍通信線と南北板門店通信回線の遮断

などと脅した。


1993年のような準戦時状態は宣言されていないが、北朝鮮の現地の雰囲気は、それに劣らないという。

北朝鮮軍将校出身であるキム・ソンミン自由北朝鮮放送代表は、「連絡が届いた北朝鮮の住民によると、最近、準戦時状態の前段階的な " 戦闘動員態勢命令 " が下された。砲に砲弾が装填された 1993年準戦時状態とほぼ類似している」と話した。

去る 3月 6日から北朝鮮の平壌市内には軍事用偽装網を覆った車と列車が目撃されている。北朝鮮当局が住民に戦闘食糧準備の指示を下したという対北消息筋による情報もある。

韓国の統一部当局者は、今回の脅威の強さは 1993年を上回るとしている。

去る 3月 5日、対南工作総本でキム・ヨンチョル偵察総局長が最高司令部談話声明を朗読したのが代表的である。韓国安保部門の関係者は 、「露出を慎む人物が北朝鮮全住民がニュースを見る午後8時に登場したのは異例中の異例」とした。

韓国に対しての脅迫の表現も

・ "ソウル火の海に"(1994年)
・ "南朝鮮を灰に"(2008年)

から、

・"南朝鮮を最終破壊する"(2013年)

と露骨化している。 北朝鮮がこのような表現をすることは珍しくなくとも、今回のように公式文書に繰り返し登場し、北朝鮮の主要メディアがこれを連日引用することはこれまでにはなかったことなのだ。






(訳者注) というわけで、少なくとも、韓国の当局としてはかなり緊張している感じの雰囲気が見てとれます。

ところで、思い出したのですが、偶然なんですが、上にある「1993年の朝鮮半島核危機」の頃、2度ほど韓国に旅行に行っていました。そんなことが起きているとか知らなかったんですけど、北朝鮮は準戦時状態の時だったのですね。

どおりで、明洞など若者の街にさえ韓国軍の軍人たち集団で歩いており、市内の至る所に小隊程度の数の軍隊員が道路の要所に立っていました。

あれから 20年かあ。


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