▲ 1946年(昭和21年)2月17日の朝日新聞。戦後の日本であった預金封鎖の時の記事です。「今日から預金封鎖」とあり、上には「経済危機突破へ非常措置」という文字が躍ります。見だしでは、「世帯主は月額300円、扶養家族は月額100円の引き出しが可能」と書かれています。こちらによりますと、当時の 100円は今の5万円くらいに相当するみたいですので、世帯主の引き出し可能額である月 300円というのは、生活できない額ではなかったようです。
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ニュージャージーの悪夢
本題とは関係ないですが、昨日のアメリカのニュースで、久しぶりに「ひいい!」と小さく叫んだニュースがありました。
それは「虫」のニュースで、記事の中に出てくる具体的なその固有名詞を書くつもりはないですが、いわゆる夏になると、家の中などにも出現するものの中で、多分最も人間に嫌われている生き物のひとつについてのニュースで、頭文字はゴルゴ13と同じように「G」で始まる昆虫に関係する話です。
そのニュースもその部分をGで表記させていただくと下のように始まるものです。
「米ニュージャージー州アトランティックシティからニューヨークへ向かっていた長距離バスの車内に無数のGが現れ、乗客がパニックになる騒ぎがあった」
というものでした。
突然、1000匹以上出てきたのだそうです。
いちおう、こちらが日本語のニュースのリンクですけど、写真もありますのでご注意を。
いずれにしても、こんなこと日本では起こるなよ・・・と願わずにはいられないのでありました。
さて、話は変わって、今日は軽い話題で。
キプロスという国で突然、政府が預金封鎖を事前の通告なしに実施し、人々の銀行口座から強制的にお金を徴収して、怒った人々がブルドーザーで銀行に突入したりと、大変な騒ぎとなっているというものです(重い話題じゃん)。
なぜ ATM での引き出し額には限度があるのか?
▲ キプロスの突然の「銀行口座からの税金の強制徴収」に腹を立てた市民がブルトーザーで銀行前に乗り付けて抗議した光景。3月15日。 BBC より。
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キプロスで3月15日に「突然の預金封鎖」がありました。
このキプロスの件に関しては、多くの日本語の記事にもなっていますので、まず、昨日の産経新聞の記事を抜粋しておきます。
キプロス、預金を封鎖 口座引き出し凍結
msn 産経ニュース 2013.03.16
欧州連合(EU)ユーロ圏財務相会合がキプロスへの財政支援と引き換えに全ての銀行預金への課税を決めたことを受け、キプロス政府は16日、全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始した。
通常は土曜日も開店している小口金融機関が閉店しているほか、現金自動預払機(ATM)からの引き出しやインターネット上での資金移動も制限されている。一部銀行店舗では、早朝から預金を引き出すため預金者が列をつくる騒ぎもあった。
18日はキプロスの休日で、同国議会は銀行が営業を再開する19日までに必要な法律を可決し、課税を完了する。
預金封鎖は全預金のうち、課税対象となる10%弱の部分が対象。預金への課税はこれまでギリシャなどでも行われなかった異例の措置だ。
上の報道にある「早朝から預金を引き出すため預金者が列をつくる騒ぎ」については、下のような感じだったようです。
▲ カタールのアルジャジーラのテレビ報道より。
ところで、「キプロス」と言われてもどこにあるのだかよくわからない場合もあるかと思いますので、地図を載せておきます。私も「地中海のあたり」というようなイメージしかなく、よくわかりませんでした。
トルコ、レバノン、イスラエルなど最近、話題が多い場所に囲まれた海の中にある小さな国のようです。
今回のキプロスの記事を読みながら、「日本で ATM の引き出し限度額が下げられていったのはいつくらいからのことだったかなあ」と私は思っていました。
私は大金を下ろす機会がないのでよくわからないのですが、下の住友銀行のサイトを見ると、「平成18年より」と書かれていましたので、6年くらい前からのことですかね。
引き出し限度額が下げられた理由というのは、私にはよくわからなかったのですが、「大きな金額を一気に ATM でおろすことができない理由のひとつ」を、今回のキプロスの出来事を見て納得できました。もちろん、理由は他にもいろいろとあるのでしょうけれど、そのうちの「推定される」ひとつの理由という意味です。
それは「何かの時に全額引き下ろされることがないように」だと。
なぜかというと、今回のキプロスの預金封鎖では、
政府は金曜の夜に、銀行の預金者から一斉に課徴金を徴収する措置を発表し、それを月曜日までに実施すると発表したので、土曜と日曜は銀行は開いておらず、つまり、預金者は ATM でしか現金を下ろすことができない。
という事態になったのです。
「お金をおろせない時に強制的に徴収する」ということですね。
上の写真のように、ブルドーザーまで使うように怒った人々が多い理由はここにあります。
「どうやっても、勝手にお金が政府に引き抜かれる」と。
しかもその率は高額預金者は約 10パーセント。
たとえば、1億円預金している人は、月曜の朝にそこから 1000万円勝手に徴収されているということになるわけです。
同じことが、もし現在の日本で起きた場合(起きないでしょうけれど・・・多分)、たとえ、貯金が1億円あっても、1000億円あっても、土日で下ろせるのは 100万円程度ということになるのかもしれません。
まあそれでですね。
このキプロスの報道を見て、一般的な人々がどう思うか、あるいは明日からどういう行動に出るかということに興味を持った次第です。
特にキプロスと同じような環境下にあるかもしれないと思われるようなヨーロッパなどの国々の人たちはどう考えるだろうかと考えるのです。
普通に考えると、
「よくわかんないけど、危なそうだからお金下ろしておこうか」
と思う人がヨーロッパの各国でドドドッ、と出現するのではないかと。
今回はタイトルに「ブラックスワン」などと書いたのですけれど、そういうような方向を誘発する出来事だったりしないのかな、と思った次第なのでした。
もともと、欧州各国は預金の流出は問題となっていて、過去記事でも、
・「銀行崩壊の不安」に駆られた人々による大規模な預金の引き上げが続くギリシャ銀行
2011年12月07日
のようなものをご紹介したことがあります。
明日月曜にキプロスがどのような状態になるのかはまだわからないですが、当事国のキプロスだけではなく、周辺国の状態も含めて、少なくとも一時的には混乱すると思われます。
上に「ブルドーザーで銀行に乗り付けた」という写真を英国の BBC からご紹介しましたが、このブルドーザーを運転していた人はアルジャジーラのインタビューにも答えていまして、下の人です。
このブルドーザーを運転していた中央の人はかつての英国のバンド「ザ・フー」のピート・タウンゼントという人とそっくりだし、後ろに立っている人は映画監督のクエンティン・タランティーノそっくりで、あまりにもふたりとも似ているので、何かの映画の撮影かとも思いましたが、映画ではなく現実の事件だったようです。
▲ ピート・タウンゼント。
▲ クエンティン・タランティーノ。
さて、こんなことが現実として起きる時代ですが、世界の他の国は・・・いや、将来的にも日本だってどうなるでしょうね。
私は経済のことは詳しくないので、予測はできないですが、しかし今回のキプロスのような方法で実施されたら、「ひとたまりもない」ということはわかります。
海外の報道もご紹介しようと思いましたが、報道内容は日本で報道されているものとほぼ同じですので、むしろ、明日以降に注目したいと思います。
それより、長らく自分でも使っていなかった「ブラックスワン」という言葉が今回出てきましたので、お忘れの方もあるかと思いますし「ブラックスワンとは何かということを記しておきます。
ブラック・スワン
iFinance - 金融経済用語集
ブラック・スワンは、マーケットにおいて、事前にほとんど予想できず、起きた時の衝撃が大きい事象のことをいう。
また、認識論学者で元ヘッジファンド運用者としての経験を持つナシーム・ニコラス・タレブが、2006年に刊行した著書「ブラック・スワン」で説明している考え方を「ブラック・スワン理論(Black swan theory)」という。
これは、従来、全ての白鳥が白色と信じられていたのが、オーストラリアで黒い白鳥が発見されたことにより、鳥類学者の常識が大きく崩れることになった出来事から名付けられ、確率論や従来からの知識や経験からでは予測できない極端な現象・事象が発生し、その事象が人々に多大な影響を与えることを総称したものである。
iFinance - 金融経済用語集
ブラック・スワンは、マーケットにおいて、事前にほとんど予想できず、起きた時の衝撃が大きい事象のことをいう。
また、認識論学者で元ヘッジファンド運用者としての経験を持つナシーム・ニコラス・タレブが、2006年に刊行した著書「ブラック・スワン」で説明している考え方を「ブラック・スワン理論(Black swan theory)」という。
これは、従来、全ての白鳥が白色と信じられていたのが、オーストラリアで黒い白鳥が発見されたことにより、鳥類学者の常識が大きく崩れることになった出来事から名付けられ、確率論や従来からの知識や経験からでは予測できない極端な現象・事象が発生し、その事象が人々に多大な影響を与えることを総称したものである。