2013年04月07日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




中国で起きている真実を知りたい: 上海周辺の動物の大量死とパンデミックの「予兆」は関係があるのか?



viet-h7n9.jpg

▲ 中国の周辺国でも対応が激しくなっています。上はベトナムのメディア VOV より。
--




タイトルに「パンデミック」(世界的大流行)という言葉を使いましたが、私自身は特にそう思っているわけではないですけれど、すでにマスメディアのほうでその見だしが踊っているので使いました。

下は産経新聞の記事です。


中国発パンデミック警戒 鳥インフル、強毒性に変異か 死者3人に
MSN産経ニュース 2013.04.04

h7n9-01.png中国で人への感染が確認された鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)は、強毒性に変異した可能性が浮上している。今後、最も懸念されるのは、感染が人から人へと広がりパンデミックとなることだ。

H7N9型は弱毒性とされてきたが、中国国内で確認された感染例はいずれも症状が重篤で、ウイルスの遺伝子解析から強毒性とみられる。






思えば、最近の In Deep の記事で唯一「パンデミック」という単語をタイトルとして使った記事は、2月のロシアに隕石が落ちた後のものでした。

pan-01.jpg

天体の接近と共に忍び寄るパンデミックの影: 全世界で一斉に拡大し始めた強毒性鳥インフルエンザ より。



私自身はグリグリのパンスペルミア説支持者・・・というより「パンスペルミア原理主義者」と言いたいほどでもあります。「ぜーんぶ宇宙から来る」と思っているという意味で。

まあしかし、今回はそういう話は完全にナシで、インフルエンザの話題にはいります。

あまり余計なことを書くような軽い問題でもなさそうだからです。
なぜかというと、「致死率」の問題。
そこに驚いています。

今回の中国での新型のインフルエンザは患者数が少ないとはいえ、致死率が異常に高く、仮にスペイン風邪の時のように「ここに感染率の高さも加わる」という変種になって世界的な流行につながれば、確かに一大カタストロフイベントではあるとは思います。


スペイン風邪は Wikipedia から簡単に説明しますと、以下のようなパンデミックでした。


スペインかぜ

スペインかぜは、1918年〜19年にかけ、全世界的に流行した、インフルエンザのパンデミックである。感染者6億人、死者4,000万〜5,000万人。



さらりと「感染者6億人、死者4,000万〜5,000万人」と読みましたけれど、当時の世界人口は多くても 17億人程度だったと考えられますので、全世界の人口のうちの3分の1が感染して、そのうちの2割近くが死亡したというものであり、これが「100年以内にあった出来事だ」ということに驚きます。

pan1918.png

▲ 世界資源研究所『世界の資源と環境 1994-95』より。赤字と矢印はこちらで入れたものです。


現在の世界の人口(約 70億人)に単純に比率を合わせれば、25億人が感染して、3億人くらいの人が亡くなるという出来事がスペイン風邪というものだったようです。



ところで、今回の鳥インフルエンザは中国から始まったものですが、どうしても3月の「中国の家禽類の大量死」を思い浮かべざるをえません。下のふたつの記事は私が書いたものです。




今年になってから中国で起きているこれらのことについては、以下の2つの「どちらか」の単純な解釈しかないと思われます。


[1] 豚やアヒルの大量死と今回のインフルエンザは関係している

[2] 豚やアヒルの大量死と今回のインフルエンザは関係ない




そういえば、昨年のクリスマスイヴに以下のような記事も書いたことがあります。

pan-1224.jpg

パンデミックの新しい形?: 中国で「豚が鳥インフルエンザに感染」している (2012年12月24日)



理論的にではなく、「漠然と」考えてみても、[1]を考えてしまう私なんですが、ここで、一番上に抜粋しました産経新聞の記事にあるイラストをもう一度見てみます。


h7n9-01.png



このイラストを見るだけでも「ヒト・ブタ・トリ」の奏でる「ウイルス進化の三重奏」(やな三重奏だな)という様相は、漠然な話としてですが、あり得ることではあります。



米国のメディアで、あくまで「その記者個人の感覚的なコラム」としてですが、

「これはパンデミックの始まりなのか?」

というタイトルの記事がありました。


これは、中国の一連のブタやアヒルの大量死と、中国の強毒性 H7N9 新型インフルエンザのヒトへの感染には「関連があるのではないか」という意見を書いたものでした。

今回はその記事をご紹介したいと思います。

比較的長い記事ですので、ここからすぐ翻訳に入ります。


なお、実際にパンデミックになったとしても、ワクチン、積極的な治療法、その他を含めて「現時点では何にも対策はない」ですので、あまり気にされないほうがいいかと思います。


ちなみに、1918年のスペイン風邪の時、コーンフレークで有名なアメリカのケロッグ博士という人の治療院(バトルクリーク診療所)では、ひとりも死者を出すことのない治療法をケロッグ博士は編み出していますが、現代医学から見れば合理性のあるものでもなく、実際にパンデミックが差し迫っている可能性さえある今、責任的な意味も含めてそのことを書く気はないです。

過去記事をリンクしておくにとどめます。ただ、私が H7N9 に感染したら、下の記事の翻訳部分にあるケロッグ博士の方法に自分で考えた解熱法を合わせてみようと思っています。ケロッグ博士の論文が正しかったのかどうか試してみるいい機会ですし。失敗しても、H7N9 の致死率を考えますと大差ないです。

1918年の「死のインフルエンザ」へのケロッグ博士の対処法
 2011年11月22日



というわけで、ここから本記事です。




Is this how a pandemic would start?
Denver Post (米国) 2013.04.07

これはパンデミックの始まりを示しているのか?


ch-pigs.jpg

▲ 上海の川の上流で先月、1万5000頭のブタの死体が見つかり回収された。写真は回収にあたる作業員。


川の下流の大都市では、川沿いで子供たちが遊んでいる。
その川の上流には何千頭もの死んだ豚が川面に漂っている。そこから何百キロも離れた場所では、アヒルが死に、ハクチョウも死んでいる。
その腐臭が川の至るところから立ち上っている。

こんな場所で何が起こったとしてもそれは不思議なことだろうか?

中国で、接点のない3人が、未知のウイルスによって肺炎をおこし重症化した。そのうちふたりはすぐに肺炎で亡くなった。もうひとりは、病院の集中治療室で重体だという。

この中国での新型インフルエンザの人への感染の報道を受けた時、多くの人々が、「これは上海での豚の大量死、あるいはアヒルやハクチョウの大量死と関係はないのだろうか?」と考えたが、世界保健機構( WHO )は、以下のような声明を出した。

「これらの間に関係はない」

と。

なるほど、確かに関係ないのかもしれない。しかしこの新型インフルエンザ H7N9 は、感染者3人のうち2人を死亡させるという現実をもたらしている。


あるいは・・・これがパンデミックの始まりの可能性はないのだろうか?



上海の豚の大量死

中国の大都市、上海の川の上流で、漂流しているゴミと共に大量の死亡した豚が漂っていることに上海の住民たちが気づいたのは、3月10日のことだ。

この川は、 110キロの長さにのぼる黄浦江( Huangpu River )の上流で、上海市の飲料水の源にもなっている。また、船での水上観光でも有名だ。上海は 2,300万人の住民が住み、また国内外からの観光客だけでも年間で数百万人を誇る。

その場所で起きた悪夢のような光景。

3月10日、最初は 900頭の豚の死体が発見されたが、10日後の3月20日には回収された死骸の数は15,000頭にのぼった。

上海南部の地域は農業地域で、 5400万人ともいわれる人々が農耕で生計を立てている。そして、中国国内に供給される豚の主要な生産地ともなっている。

しかし、浙江省など豚肉産地では、有毒な化学薬品のエサへの使用などが日常的になっており、家畜類が死亡した際にも、当局に有害物質を使用していることが暴露することを防ぐために、豚の死体を捨てることが常だという。今回の場合も、浙江省の農家が豚を捨てたことを認めた。

なるほど、確かに何人かの中国人は死んだ豚を川に投げ捨てたかもしれない。
しかし、1万5千頭も?

さらには、そこから数百キロ離れた長沙市の近郊では、3月22日と23日の2日間に、数千羽にのぼる死んだアヒルが発見された。

その2日後、そこから北へ数百キロの川でハクチョウが大量に死んでいるのが発見された。

この東西南北数百キロ以上にわたって、鳥や動物たちが大量に死んでいることに接点はあるのだろうか。ブタやアヒルの大量死はすべて農家のしたことだと?



大量死と平行して起きていた「人間」のドラマ

3月25日、中国当局は、上海の川で大量死していた豚の肉と断定される材料で作られていた肉まんを押収した。そして、この他にも多分すでにかなりの量の大量死の豚の肉が食用として出回っていると考えられる。

中国政府の一連の動物の大量死に関しての発表は、混乱と錯綜を繰り返したが、その渦中で、これらとは関係のなさそうに見えるドラマが展開されていた。

2月19日、中国メディアによれば 87歳の李という男性が呼吸困難で入院。3月4日に肺呼吸不全で死亡した。

2月27日、呉という27歳の男性が呼吸困難で病院に運ばれ、3月10日に死亡。同日、35歳のハンという女性が上海から北へ約 500キロのところにある南京で入院して集中治療室で治療を受けている。重体だ。

3月31日、中国政府は、李、呉、ハンの3名がすべて H7N9 と表記される新型のインフルエンザにより死亡したことを発表した。李にはふたりの息子がいたが、彼らは感染しなかったという。



そして一体何が起きているのか?

中国の保健当局によると、上海で死んだ豚の一部はサーコウイルス( PCV-2 )に対して陽性で、その後、豚の死因は豚サーコウイルス感染症だと確定された。

豚サーコウイルス感染症は動物の感染症で、治療法が確立されていないが、しかし、ヒトには感染して死亡させない。また、サーコウイルスはトリにも感染しない。

さらに、サーコウイルスが、大人の豚を致死に至らせることはなく、一般的に胎児や生まれたばかりの豚が死亡する。上海の川で死亡していた豚には大人子供の区別はなく死亡していた。

しかし、中国当局、また WHO も、上海及び中国各地で3月に起きた動物の大量死と、李、呉、ハンの3名の H7N9 インフルエンザの間には関係がないとした。

4月になり、ヒトの H7N9 の感染者と死亡者はさらに増えた。


このストーリーから「極度の懸念を感じる」私は異常なのだろうか?


しかし、これがパンデミックの始まりであろうがなかろうが、急務は、動物の死と、ヒトの H7N9 の疫学的なつながりがあるのかないのかをハッキリとさせることと、実際にすでにヒトへの感染が起きている現在、感染ルートが決定されることが急がれる。

確かに謎は多い。

しかし、時計はカチカチと進んでいる。