「水」の被害による言葉を失う光景の数々
先日の記事、
・世界中で止まらない「黙示録的な洪水」の連鎖
2013年06月20日
では、インド北部で起きている大洪水についてふれたのですが、その後の報道などを見ていますと、この洪水は、地域によっては、いわゆる通常の洪水とは違う原因の被害があったことがわかってきます。
このインドのウッタラーカンド州という中で、特に大きな被害を受けた集落のひとつに Kedarnath という村があります。正確な読み方はわからないですので、便宜上、ケダールナスと読ませていただきます。下が鉄砲水に襲われた後のその村の光景の写真です。
▲ Kedarnath floods 他より。
このケダールナスという村の場所は地図では下の場所になります。
▲ ウッタラーカンド州 ケダールナス( Kedarnath )位置。チベットの国境に近く、ほとんど山岳地帯と言えます。
チベット自治区との国境に近い場所で、このあたりはほとんど山岳地帯のはずです。
「そんな場所で上のような激しい洪水が?」
と思い、グーグルアースの写真で、この村のあたりを見てみました。
それが下の写真です。
写真は冬の季節のもののようで雪がありますが、いずれにしても、見た感じでは完全な山岳地帯で、周囲にも「洪水を起こすような川の存在」というようなものも見えません、。
それなのに、どうしてこんな村を壊滅させたようなすさまじい鉄砲水が起きたのかを調べてみますと、インドのメディア PTI の記事を引用したサイトがありまして、そこに以下のように説明されていました。
今回のケダールナスの洪水は「ケダルドーム」の破壊によって引き起こされたと考えられている。ケダルドームとは、決壊したチャルバリ湖 ( Charbari ) の貯水池につながっている氷河状態のドームだ。
今回の記録的な豪雨は、インド北部の特にウッタラーカンド州とヒマーチャルプラデーシュ州の州で壊滅的な洪水を引き起こした。また、北インド全域に渡って地滑りが発生している。現在、インド陸軍、国境保安部隊(BSF)、国家災害対応部隊(NDRF)などが救助活動をおこなっている。
被害の大きかったケダールナスはウッタラーカンド州でも神聖なヒンズー寺院のある場所のひとつとして知られている。
詳細はわからないですが、山中の「氷河」あるいは「万年雪」のような状態のようなドームが、豪雨によって破裂、あるは溶解して、それが貯水地の大きな決壊に結びついたというような感じが伺えます。
ちなみに、ウッタラーカンド州では、 6月 20日から 22日までの3日間、州による「喪に服する期間の宣言」が出されました。被害の甚大さを印象づける出来事だと思います。
この記事をインドのメディアからご紹介します。
Three-day state mourning declared in Uttarakhand
oneindia (インド) 2013.06.20
ウッタラーカンド州は3日間の喪に服すことを宣言
ウッタラーカンドの州政府は 6月 20日、絶え間ない豪雨によって引き起こされた洪水災害に対し、 6月 22日までの3日間を州として喪に服する期間とすることを宣言した。
州政府長官のSSネギー氏は、「鉄砲水と豪雨による洪水により、多くの人々の生命と財産に大規模な被害が生じたことに対して 6月 20日からの3日間を喪に服する状態とする」と述べた。
この期間、州政府の建物や施設ではすべて半旗が掲げられ、また、この期間での冠婚葬祭等は行われないこととする。
自然に対しての経験則が通用しなくなっていく時代に
最近、過去のウェブボットの抜粋などをしていることが多かったのですが、上のような「高高度での洪水」という言葉も何度も出てきていたものでした。
大きな被害が実際に出ている中で、それを書くのは心苦しいですのですけれど、そこに書かれている状況が非常によく今回の災害と似ている以上は、それはつまり、「今後も同じような原因での洪水が起きる可能性もあるものかもしれない」というようなこともあり、短く抜粋しておきます。
その「同じような原因」とは、経験したことのないほどの豪雨と共に、「氷河や万年雪などが溶けることによる洪水」も含まれます。
今から4年以上前のウェブボットからです。
ALTA レポート 1109 パート1
ウェブボット 2009年1月31日配信
・ 地獄の夏の期間には地球環境も大きく変化する。それは洪水の発生である。しかしこの洪水はおもに平地が水浸しになる一般的な洪水とはかなり異なっている。それは降雨量がほとんどない高地の谷あいの地域などで発生する大雨による洪水である。大雨はものすごい水流となって高地の谷を下り、洪水を引き起こすのだ。これにより、高高度の地域に突然と湖が出現する現象が相次ぐ。
・ さらに、高高度の山間の降雨量の増大は、山間部の万年雪を溶かしてしまう。これによる予期せぬ雪崩が相次ぐ。この現象の影響は深刻である。万年雪は水の供給源ともなっているため、これが溶解することで供給源が失われてしまうのだ。
ちなみに、大規模な洪水は、現在、カナダのカルガリーでも起きています。
▲ CNN 「カナダ・カルガリーで洪水、住民10万人が避難も」 より。
今に始まったことではないかもしれないですが、「経験が通用しない」というようなことがいろいろな自然と関係する現象などの中に見受けられます。
雨の量。
その降る地方や季節。
気温や風。
いろいろな自然での出来事が、「ほんの数年前と違う」ということは、毎日の生活の中でも感じられます。
最近、日本では、登山される方の遭難が大変に多いことがよく報道されます。
参考ニュース:山の遭難者 7割中高年 昨年事故 過去最悪1988件(東京新聞 2013.06.13)
これも「高齢者が増えたため」というようなことでまとめているものもありますが、その一方で、経験則が通じない「天候の変化」というものも少なからず含まれているような気はします。
まあ・・・・・実は・・・私自身は、「人間はあまり山に上らないほうがいいのでは」というようなことを思う人なんですが(山が神様なら、神様を足で踏んづけている)、しかし、登山を否定しても仕方ないわけで、これからは富士山の登山者なども増えるのでしょうけれど、ベテランの方も含めて、経験則以外の出来事によっての事故は起きるようにも思います。
特に、富士山に関しては噴火の可能性もそれなりにあるわけですし。
これもまあ・・・最近の富士山とそれを取り囲む日本人との関係に関しては、過去記事の、
・富士山はもう日本人を守らない
2013年05月08日
に正直な気持ちを書いてしまったこともありますが、しかし、地元の人たちは喜んでいるわけですし、そのことに水を差す気もないですので、今後もうまく富士山と共存でききる日々が続けばいいなとは思います・・・。
いずれにしても、山にお上りになる方はお気をつけください。
ところで、台風4号というものがありました。
天気図などをよく見ている方は、あれが途中から「妙なこと」になっていたことに
お気づきだったのではないかと思います。
下は 6月 21日午前 5時の気象庁の天気図の雲の様子ですが、まだ台風4号は「勢力を保っている」と報道されていた時です。
天気予報などでは上の丸の場所に「台風4号」と書かれていたのですが、雲の様子を見ると、上の通り「そこには何にもない」のでした。
勢力が弱まったとはいえ、ここまでまったく何もない状態で台風の進路を説明していた予報士の方々というのもちょっとこう、形而上的な感じさえするものでした。
私たちが初めて目にする「そこに何も存在しない台風」・・・。
なかなか気象の説明も脈絡がつかなくなっているのかもしれません。