▲ ヴォイニッチ手稿より。イラストは、大きくわけて、未知の植物、宇宙の図、そしてたくさんの女性たちが描かれてます。文字もイラストも、そのすべてにおいて、ヴォイニッチ手稿ひとつも解明されていません。
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英国の研究者たちが続けているヴォイニッチ手稿の解読
ヴォイニッチ手稿というのは、1400年代のはじめ頃に記されたとされる謎の古書で、現在の地球に存在しない文字のようなテキストで記され、数多くの未知のものが描かれたイラストが添えられています。
人類や自然界の秘密や真実が隠されているかもしれない古書と呼ばれることもある一方で、今では「内容に意味がないデタラメの書」という説も強いです。
この古書に関しての一般的な説明を Wikipedia から抜粋しておきます。
14世紀から16世紀頃に作られたと考えられている古文書。全230ページからなり、未知の言語で書かれた文章と生物を思わせる様々な彩色された挿絵から構成されている。
文章に使用されている言語は、単なるデタラメではなく言語学的解析に照らし合わせ、何らかの言語として成立機能している傍証が得られているため、一種の暗号であると考えられているが内容は不明。
手稿には、記号システムが確認されている特殊な人工文字によって何かの詳細な説明らしき文章が多数並んでおり、ページの上部や左右にはかなり緻密な、植物や花の彩色画が描かれている。植物の絵が多いが、それ以外にも、銀河や星雲に見える絵や、精子のように見える絵、複雑な給水配管のような絵、プールや浴槽に浸かった女性の絵などの不可解な挿し絵が多数描かれている。
この説明の中にある「複雑な給水配管のような絵」というあたりは、文字だけではわかりにくいと思いますが、たとえば、下のようなものです。
▲ ヴォイニッチ手稿より。
植物のイラストがもっとも多いですが、上のように、女性たちが合理的な説明のつかない行動をしていることを示しているページも数十ページにわたり続きますので、ヴォイニッチ手稿の中で重要なテーマであることを感じます。イラストに男性は一切出てきません。
人間で登場するのは女性だけで、あとは植物と宇宙の構造のような図。
昨日の英国の BBC の報道で、このヴォイニッチ手稿が取り上げられていることを見つけまして、そのタイトルが「ミステリアスなヴォイニッチ手稿は「真実のメッセージ」を持つ」というものだったのでした。
読んでみると、内容はタイトルとはちょっと違う感じで、ほんの少し研究が進んだけれど、相変わらずデタラメ仮説も根強いというものでしたが、しかし、英国ではいろいろな大学でかなり真剣にこのヴォイニッチ手稿の解読について取り組んでいるということを知り、いまだに多くの人の心を惹きつけるものではあるようです。
ヴォイニッチ手稿の解読に関しては、過去記事の、
・『ヴォイニッチ手稿を解読した』という人物の登場
2011年12月06日
という記事でもご紹介したことがあります。
このヴォイニッチ手稿は、インターネットで、ほぼ全部を閲覧することができますので、興味のある方はぜひご覧いただけるとよろしいかと思います。
・Voynich Manuscript
に、ヴォイニッチ手稿を所蔵するイェール大学のバイネキー稀書図書館がデジタルカメラで撮影し公開したものを並べてくれているサイトがあります。
ちょっとした偶然
実は数日前に、ふだんそれほど交流しているというわけでもない方から久しぶりにメールをもらったんですが、その内容が、ヴォイニッチ手稿についてのものでした。
メールに BBS の過去ログの URL があったのですが、それを見てみると、日本でも、ヴォイニッチ手稿について真剣に考えている人たちが結構いらっしゃることを知ります。教えてもらったログは、こちらです。
宇宙の人類の関係とか、あるいは DNA やクローン技術と関係していることだとか、様々な人たちがいろいろと考えているようです。
また、女性しか出てこないことについては、全体性に関しての希望とも呼べる説の発見のメモというページに、
> ヴォイニッチ手稿の挿絵には見渡す限り人間の形をした者は全て「女性」である。
> なぜ女性なのかと言う点だが、人間が母親のお腹で初めて人間の形を成した時の性別は皆「女性」だからである。
> 男性への分化はその後に起こる。
> なぜ女性なのかと言う点だが、人間が母親のお腹で初めて人間の形を成した時の性別は皆「女性」だからである。
> 男性への分化はその後に起こる。
というような抜粋があったりもしました。
そんなこともあり、ここ数日ヴォイニッチ手稿のことを考えていた時に、昨日 BBC の報道を偶然、目にしましたので、これは何かの縁だろうからご紹介しておいたほうがいいかなあ、と記事にした次第です。
ちなみに、今回のオリジナル記事はわりと長いものでしたので、余談はこのくらいにして、ここから本記事に入ります。
Mysterious Voynich manuscript has 'genuine message'
BBC (英国) 2013.06.22
ミステリアスなヴォイニッチ手稿は「真実のメッセージ」を持つ
▲ 15世紀に書かれたヴォイニッチ手稿は、世界でもっともミステリアスな写本だとされており、内容は複雑な暗号と未知の言語で書かれている。デタラメだとする説も多い。
「世界でもっともミステリアスな中世の写本」といわれているヴォイニッチ手稿は、この1世紀の間、数学者や言語学者、あるいは暗号学者たちからの解読の手を逃れてきた。
このいまだに誰も解読できない中世の写本に対してのひとつの仮定としての結論には、「これはデタラメの一種だ」というものがある。
しかし、 PLoS ONE (自然科学全域を対象とするオープンアクセスジャーナル)で発表された新しい研究では、この手稿はまったく完全な真実のメッセージを保持していることが示された。
研究した科学者たちは、ヴォイニッチ手稿のテキスト内で使われている意味のある文字だと思われるものに言語性のパターンを発見したという。
ヴォイニッチ手稿内の文字のような羅列については、それが意味を持つものかどうか、一般の人々の間でも、専門家の間でも議論されてきたものだ。
第二次大戦中に複雑な暗号コードを解読していた著名なコード解析チームたちも、ヴォイニッチ手稿の暗号解読に挑んでいるが、彼らでさえ、この手稿に並ぶテキストに意味を見いだすことができなかった。
ヴォイニッチ手稿は 1400年代のはじめ頃に作られたとされているが、 ポーランド系アメリカ人の古書商のウィルフリッド・ヴォイニッチがイタリアでこの古書を発見した 1912年まで公式の記録からはその存在が消されていた。
▲ ヴォイニッチ手稿は 240ページからなり、未知の文字と独特のイラストが描かれている。イラストは、未知の植物、そして宇宙のイメージ、裸婦などがある。
英国マンチェスター大学の理論物理学者マルセロ・モンテムッロ( Marcelo Montemurro )博士は、この手稿の言語パターンの分析と解析に長い年月をかけた一人だ。そして、彼の最新の研究で、写本の謎の解明に近づいていると確信しているという。
モンテムッロ博士は次のように語る。
「このテキストは非常に独特のもので、似たようなものは他にはないのです。これまでヴォイニッチ手稿のメッセージを解読しようとするあらゆる試みは失敗に終わっています。そして、この中には重要な『言語』構造が含まれていることが示すように、このテキストを単なる馬鹿げた訳のわからないデタラメとしてしまうことには無理があります」。
モンテムッロ博士と研究チームは、他の言語上では動作することが知られているコンピュータでの統計的的手法を用いて、テキストにアプローチしている。
研究チームは、テキストの中から意味のあると思われる複数のコンテンツ・ベアリング・ワード(content-bearing words / 内容関連語)を抽出し、その単語がどのようにアレンジされているかに焦点をあてた。
内容関連語は、それらが書かれている中での特定の情報の一部として必要とされる群生化したパターンの中で発生する傾向があり、それは(ヴォイニッチ手稿のテキストに意味があるという)実質的な証拠になるとモンテムッロ博士は説明する。
「私たちが得たセマンティック・ネットワーク(自然言語処理における意味解析の用語)からは、明らかにこの写本の内容関連語は、構造の類似性を共有する傾向があることを示しています。これは実際の言語でも起こることなのです」。
しかし、博士は、そのパターンを発見することはできたが、そのテキストの言葉が何を意味しているかは謎のままだ。しかし、この1世紀の間の末に、解析の作業がほんの少し前進したというこの事実は、これまでヴォイニッチ手稿がデタラメなものであるとしたような説明に対する意味を持つものとなる。
正体不明の言語
英国キール大学の数学者ゴードン・ラッグ( Gordon Rugg )博士は著名な学術者だが、彼も、ヴォイニッチ文字( Voynichese )と似たような、博士独自の複雑な暗号コードを作成している。
この作業の意味は、まるで意味のないデタラメの文字列のように見えても、実際は意味のあるパターンを持っているということが成立するための方法論を示すためだという。
▲ 数学者ラッグ博士は、ヴォイニッチ手稿と類似したコードを作成することは容易だということを示すために博士独自のコードを作成した。
このラッグ博士の新しい調査結果は、ヴォイニッチ手稿がデタラメであるという理論を排除しないものになったという。
「今回の調査結果は新しいものではありません。ヴォイニッチ文字の統計的性質は実際の言語と似ていても、同一ではないことはこの何十年も知られています」。
「私は、ヴォイニッチ手稿の単に確認できない言語で書かれている結果となるチャンスは大きくないと思います。このテキストの中には非常に多くの特徴があり、これらの中には実際の言語と異なる点が数多くあるためです」。
ラッグ博士は、ヴォイニッチ手稿に類似するコードを生成することが容易であることを示すために、それを意図したコードを作成した。また、ラッグ博士は、そのテキストの特徴から、ヴォイニッチ手稿の中に未知のコードが含まれているとは考えてはいない。
『秘密の歴史:暗号学の物語』の著者クレイグ・バウアー氏は、暗号学の不朽の魅力として、「解読されない暗号は、ほとんど何もかも隠してしまうことができることだ」と語る。
「それは科学や価値の歴史を書き換える可能性があり、また、ヴォイニッチ手稿の場合は埋もれた宝を明らかにしたり、大規模な犯罪を解決する可能性がある」と、パウアー氏は付け加えた。
ヴォイニッチ手稿がデタラメだする意見は多いが、しかし、モンテムッロ博士は、デタラメ仮説は、博士のチームが発見した自然言語処理上のパターンを説明できないと主張する。
しかし、博士の分析は今のところはまだ多くの質問に答えることのできる段階には至っていない。
「この研究の後、デタラメ仮説に対してのヴォイニッチ手稿の洗練された構造の出現に対しての新たなサポートが明示される必要があるのですが、今のところおこなわれてはいません」。
そして、モンテムッロ博士は以下のように付け加えた。
「ヴォイニッチ手稿の背後には隠されたストーリーが必ず存在するはずです。それは現在の私がまったく知らないことなのだと思います」。