2013年07月05日



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英国の子どもの5人に1人は生まれてから一度も野生のミツバチを見たことがない



ネオニコチノイド系殺虫剤がミツバチの遺伝子活動に変化を与えることが判明


bee-canada.jpg

▲ 先月、カナダのオンタリオの養蜂場で同国として最悪のミツバチの大量死が発生しました。その数 3700万匹。崩壊した(ハチが消えた)巣の数は 600 。msn living より。
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ミツバチのささやきは地域的には消滅している


最近、米国やカナダにおいて、再びミツバチの大量死の報道を多く見かけます。ミツバチだけではないので、もはや蜂群崩壊症候群( CCD )という言葉だけではなく、大量死とか、あるいは「大量絶滅」という表現も見受けられます。


今回のタイトルにつけた「英国の子どもの5人に1人は生まれてから一度も野生のミツバチを見たことがない」というのは、今年4月に米国 msn が報道した下の記事から拝借したものです。

uk-bee-kids.jpg


この概要も短くご紹介しておきます。


A shocking number of British kids have never seen a bee
msn (米国) 2013.04.15

ミツバチを一度も見たことのない英国の子どもの衝撃的な数

長期間にわたり、私たちはミツバチの個体数の減少についての話を聞いてきた。その原因が、病気か天候か寄生虫か殺虫剤かはともかく、結果として、英国で行われた新たな調査は「ハチに刺された」かのように痛みを伴うものだった。英国の10歳未満の子どもの5人に1人は野生のミツバチを生まれてから一度も見たことがないことがわかったのだ。





主要原因に近づきつつある CCD の研究

この「ミツバチの大量死」については上の記事にも「その原因が、病気か天候か寄生虫か殺虫剤かはともかく」とありますが、諸説あるのですけれど、最近では、ネオニコチノイド系と分類される農薬が要因のひとつであることについては、かなり重要と見なされています。

2012年に欧米で数多くの実験によって、ネオニコチノイド系の成分により CCD が発生することが確認され、そして、2013年には日本人研究者による実験で「蜂群が最終的に消滅することが確認されました。

下は蜂群崩壊症候群 - Wikipedia からの抜粋です。


2013年には金沢大学教授山田敏郎の研究でネオニコチノイド系農薬によって蜂群が最終的に消滅することが確認された。実験では高濃度から低濃度(100倍に希釈)までの農薬を餌に混ぜてセイヨウミツバチ1万匹8群に投与したところ、濃度にかかわらず成蜂数が急激に減少し群は最終的に絶滅した。

従来の有機リン系農薬の場合は、時間経過とともに蜂は回復するとしたうえで、ネオニコチノイド系農薬は「農薬というより農毒に近い」もので、「このまま使い続け、ミツバチがいなくなれば農業だけでなく生態系に大きな影響を与える」と警告した。



とのことです。

下は山田敏郎教授がおこなった実験の様子の写真です。

bee-kanazawa.jpg

▲ 2013年6月18日の東京新聞オンライン版「ミツバチの群れ 農薬で消滅 ネオニコチノイド系 金沢大確認」より。


このような実際的な実験では証明されるにも近い形となってきているのですが、さらに最近になって、ネオニコチノイド系農薬が、「ミツバチの遺伝子を変化させてしまう」ことが判明したことが、7月2日のアメリカの科学サイト PHYS.ORG に掲載されていました。

今回はその記事をご紹介します。

その前に、最近起きたアメリカでのハチの大量死についても簡単にふれておきたいと思います。




アメリカ・オレゴン州で6月に発生したハチの大量死

アメリカで発生したハチの大量死はオレゴン州で起きたもので、ミツバチではなく、「マルハナバチ」というもので、下の記事の写真にあるような黒いハチです。

bee-oregon.jpg

Oregon Live より。


上で禁止された殺虫剤は、ノミなどの駆除に使用するジノテフランというネオニコチノイド系の殺虫剤とのことです。

この大量死は農地ではなく、都市部の街の中で起きたことのようで、街中にこのマルハナバチが地面や道路に大量に散らばっていたようです。

Bumblebees-0621.jpg

▲ 地元(オレゴン州ウィルソンヴィル)の人が撮影した死んだマルハナバチが地面に散らばる様子。6月21日。Earth Files より。


これも、6月15日に近くの農園で農薬を散布して、すぐにハチの大量死が始まり、因果関係がハッキリしているもののようです。


ちなみに、2013年12月よりネオニコチノイド系農薬3種はEU全域で使用が原則禁止となるとのこと。

ただ、以前からいろいろな生き物の大量死のことを書くこともありましたけれど、近年の大量死はミツバチに限ったことではなく、ミツバチ以外の大量死が人間に重要ではないかというのも、それはそうは言えない面もあるはずで、この問題の範囲は大きいような気もします。

ネオニコチノイドが昆虫全般の神経系に影響するという説が正しければ、大量死しているのはミツバチだけではないはずで、膨大な種類の昆虫が減少しているように思います。しかし、「効果的な害虫駆除」を強く望んだのも私たち(人間)であって、そこが難しい部分なのかもしれません。


ともあれ、私たちが食べている食物の3分の1は、ミツバチの受粉と関係しているものだそうですので、人間は確かに「ミツバチに生かされてきた」という側面はかなりありそうです。

都市伝説となっている「地球からミツバチが消え去ったら、人間は4年も生きてはいけない」というアメリカの映画『ハプニング』の中でアインシュタインの言葉だとして出てくる架空の言葉は、それは架空の言葉であっても、多分、それに近いニュアンスは事実であるようにも感じます。

では、ここから農薬とミツバチの遺伝子についての記事です。





Insecticide causes changes in honeybee genes, research finds
PHYS.ORG 2013.07.02


殺虫剤はミツバチの遺伝子に変化を引き起こすことが研究により発見された


英国ノッティンガム大学の学者たちによる新しい研究で、ネオニコチノイド系殺虫剤への曝露がミツバチの遺伝子に変化を引き起こすことが示された。

科学誌 PLOS ONE に掲載された研究では、欧州委員会が最近決定した3種類のネオニコチノイドの使用を禁止する決定を支持するものとなった。

私たちが食べている食物の3分の1に関係にミツバチの受粉は関係しているが、そのミツバチの個体数の減少と殺虫剤との関係の証拠が高まってきているが、今回の研究は、ミツバチの遺伝子の変化とネオニコチノイド、イミダクロプリドとの関係について調べた初めての包括的な研究となる。

この研究は生命機能研究科のラインハルト・ストーゲル博士が率いたもので、実際の草原の現実的な環境の中で実施された。そして、非常に低いレベルの曝露(ほんの少しの量のネオニコチノイドにあたる)でも、ミツバチの遺伝子の活動に影響をおよぼした。

研究者は、ミツバチの幼虫の細胞は成虫より激しく活動しており、それが殺虫剤に対して、毒素を分解に関与する遺伝子の活性を増加させていることを確認した。細胞を動かすためのエネルギーの調節に関与する遺伝子も影響を受けていた。

このような変化は昆虫の寿命を減少させることが、ショウジョウバエなどの研究で広く知られている。成虫になる割合が小さくなる。

英国生協コーペラティブ・グループ( The Co-operative )の開発マネージャー、クリス・シェアーロック氏は以下のように語る。

「この研究は非常に重大なものといえます。これは、殺虫剤の曝露によってミツバチの遺伝子活動に影響を受けることを明確に示したものですが、今でも英国ではどこでも普通にこの殺虫剤を使っています」。

2013年12月よりネオニコチノイド系農薬3種はEU全域で使用禁止となる。