2013年07月22日



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太陽の北極を覆い尽くす「超巨大な穴」を横目で見ながら、アレニウスの「宇宙は無限」の言葉を噛みしめる



見たことのないような巨大なコロナホールを目にして

先週、太陽の「北極」の部分にコロナホールと呼ばれる暗い部分が移動しながら、太陽の北の極地を覆い続けていたのですが、その大きさ!

下は 7月 18日のその写真です。

corona2013-07.jpg

▲ 太陽観測衛星 SOHO による撮影。






 


こんな大きなコロナホールは見たことがないように思いますし、そのことに驚いたりしていたのですが、コロナホール自体は珍しい現象というわけではないです。

しかし、コロナホールは、地球に対して太陽風で「地磁気」に大きな影響を与えます。

先日の、

21世紀も「太陽が暗くなる時」を経験するのか? : 全世界が地獄の様相を呈した6世紀と酷似してきている現在に思う
 2013年07月15日

という記事で、「地磁気と人間の健康や精神とは大きな関係があることはほぼ確実かもしれない」ということを記したのですが、上の巨大なコロナホールも地球の地磁気にかなり影響を与えていると思われます。

その影響の結果はともかく、今回はこのコロナホールについての記事をひとつご紹介したいと思います。



その前にひとつ書いておきたいことがあります。





ジョルダーノ・ブルーノが「焼かれた」直接の理由


子どもが夏休みに入って、少し慌ただしかったりしたのですが、昨日、記事を更新できなかったのは、書いている途中でネットで買った本が届いたことでした。

それに目を通しているうちに時間が来てしまったのですね。

その本は Amazon のリンクで見つけた宇宙の始まり - 史的に見たる科学的宇宙観の変遷』というタイトルのものでした。

書いたのはスヴァンテ・アレニウスという人で、いわゆる物理化学の創始者の1人と言われる人ですが、 Wikipedia の説明では下のような方です。


スヴァンテ・アレニウス

arrhenius.jpg

スヴァンテ・アレニウス(1859年 – 1927年)は、スウェーデンの科学者で、物理学・化学の領域で活動した。物理化学の創始者の1人といえる。1903年に電解質の解離の理論に関する業績により、ノーベル化学賞を受賞。アレニウスの式、月のクレーター Arrhenius、ストックホルム大学の研究所名などに名を残している。



この『宇宙の始まり』という本の日本語訳が最初に出版されたのは昭和6年( 1931年)のことで、私の手にしたものはそれを現代仮名遣い等に訂正し復刻したようなものらしいです。


このアレニウスという人は、 In Deep にも過去にも何度か名前が出てきておりまして、最初に出てきたのは、一昨年の、

宇宙塵自身が生命であることに言及した 100年前のノーベル賞学者の実験
 2011年05月07日

という記事でした。

ごく最近では、

なぜ「太陽生物学」や「太陽と人体に関しての研究の数々」は歴史から消えてしまったのか?
 2013年07月18日

という記事の中にも出ています。

そんなわけで、興味はあったのですけれど、その著作を手にしたことはなかったのです。

それが Amazon の「この商品もいかがですか?」的なリンクに、このアレニウスの『宇宙の始まり』という本があったのでした。古本で 350円でした。

相変わらず目次を見て、興味のある部分だけを読むという読書法ですが、サブタイトルの「史的に見たる科学的宇宙観の変遷」にもあるように「宇宙の創造の神話」から始まるもので、いわゆる科学書よりは飛躍的に楽しい内容だと思います(まだ一部しか読んでいないのですけど)。

でまあ、いろいろな部分はともかく、目次の中にジョルダーノ・ブルーノに関しての記述があったのです。ブルーノは過去記事にもずいぶんと出ていただいていた方です。





ブルーノは、上のように「自説を撤回しなかったため、火刑となる」とありますが、以前からどうも曖昧な説明だなあと思っていたのです。

アレニウスの著作にその具体的な理由が出ていたのです。

それは、「モーゼのおこなった奇蹟も単なる自然の法則によってに過ぎない」と主張したのが、ブルーノが火刑になった直接の原因だったのでした。

mose1.jpg

▲ モーゼの奇蹟と呼ばれているもの。


「あー、その時代にそれを言っちゃなあ」

と思いましたが、アレニウスはブルーノの学説の主張と経歴を大変に短く、わかりやすくまとめていますので、資料として記しておきます。




第6章「新時代の曙光。生物を宿す世界の多様性」より
アレニウス著『宇宙の始まり』

ジョルダーノ・ブルノはその信条のために国を追われ、欧州の顕著な国々を遊歴しながらコペルニクスの説を弁護して歩いた。しかして、恒星もそれぞれ太陽と同様なもので、地球と同様な生存者のある遊星で囲まれていると説いた。

彼はまた、太陽以外の星が自然と人間に大いなる影響を及ぼすというような、科学の発展に有害な占星学上の迷信に対しても痛烈な攻撃を加えた。

彼は、諸天体は無限に広がる透明な流体エーテルの海の中に浮いていると説いた。この説のために、またモーゼの行った奇蹟も実はただ自然の法則によったにすぎないと主張したために、とうとうヴェニスで捕縛せられ、ローマの宗教裁判に引き渡された上、そこでついに焚殺の刑(火刑)を宣告された。

刑の執行されたのはブルノが 52歳の春 2月17日であった。

当時アテンにおけると同じような精神がローマを支配していて、しかもそれが一層粗暴で残忍であったのである。要するに、ブルノの仕事の眼目はアリストテレスの哲学が科学的観照に及ぼす有害な影響を打破するというのであった。

宗教裁判の犠牲となって尊い血を流したのはこれが最後であって、これをもって旧時代の幕は下ろされたと言ってもいい。






ちなみに、アレニウスの書いたこの『宇宙の始まり』の最後の章に、私の思っていることを一文で言い表している記述がありました。



生命は、宇宙空間、すなわち地球よりも前から生命を宿していた世界から地球に渡来したものと考え、また物質やエネルギーと同様に生命もまた永遠なものである、とこう考えるより他に道はほとんどなくなってしまう。



とあるのでした。

同時に、アレニウスは「生命の永遠性の証明は困難である」とも書いています。


ちなみに、この『宇宙の始まり』そのものは上のように素敵な記述が多くある一方で、典型的なエリート白人であるアレニウスの「未開民族に対しての差別的な表現」も多々、目にします。

多分・・・アレニウスは人間的、あるいは人道的には大した人じゃなかったと思います(笑)。

しかし、それとは別に彼は「完全な科学者」だった。


それにしても、現代の宇宙モデルが「オカルトに近い」ということを、この本などを少し読むだけで改めて思います。

昨年の記事「大出血のような太陽フレアと真っ赤な富士山上空を眺めながら「物質は永遠」という法則を子ども科学本で知った日」で知った「物質不滅の法則(質量保存の法則)」の観点からだけでも、それは思います。


しかし・・・最近ではもう、世の中(の科学論)は変わらないという諦めが強く、変わるとしたら、それはすべてが「ゼロ」に帰した後なのだと思います。



絶滅という語句に不安と共に希望を感じるのはそのあたりにも理由があるのかもしれません。



というわけで、この本には「人類の歴史」などについても興味深いことが書かれていますので、いずれまたご紹介することもあるかもしれません。



何だか繋がりがないですけれど、ここから最初に写真を載せました、太陽のコロナホールに関しての記事です。

ちなみに、今現在のコロナホールは下のような状態です。

coronalhole-7-21.jpg

Spaceweather より。

北極部分のコロナホールはやや小さくなりましたが、左右に大きな亀裂の形状をしたコロナホールが出現していますので、地球への地磁気の影響は続くと思います。

つまり、しばらくは地球の人類は「体も心もおかしくなりやすい」と。

それでは、ここからです。
デイリーギャラクシーの記事からです。





Image of the Day: Gigantic Coronal Hole Found Hovering Over Sun's North Pole
Daily Galaxy 2013.07.20

巨大なコロナホールが太陽の北極上を覆っているのが発見される


欧州宇宙機関( ESA )と米国 NASA の「太陽・太陽圏観測衛星」( Solar and Heliospheric Observatory / 普通は略して SOHO と呼ばれる)は、2013年7月18日の EDT (米国東部標準時)午前 9時 6分に、太陽の北極点の上を覆いながら移動し続ける巨大なコロナホールの写真を撮影した。

コロナホールは、太陽のコロナが平均よりも暗く、冷たく、そして密度が低い外層大気の領域だ。それは、より低い温度を有しているため、周囲よりもはるかに暗く見える。

コロナホールは、太陽活動周期とは異なる時に、異なる場所に頻繁に出現するものであるにも関わらず、太陽表面活動の典型的な現象だ。

現在は、ご存じのように、太陽活動周期(サイクル 24)の最大期に向かって進行している最中で、太陽活動の頂点は 2013年に後半になると予測されている。

そして、この最大期に向かう間に、コロナホールの数は減少する。

太陽活動の最大期のあいだ、太陽の磁場は反転し、新しいコロナホールが磁気整列と共に「極」の近くに出現する。

コロナホールは、その後、太陽が再びその活動の最小期間に向かって移動する極からさらに伸び、サイズと数を増加させる。そのような時に、コロナホールは大きくなって出現する。

コロナホールの穴は、太陽の粒子の高速風の発生源であることが知られており、そのために私たちが宇宙天気をより良く理解するために重要なものだ。その太陽風の速度は、太陽の他の遅い粒子の風の3倍ほどある。

コロナホールの発生する要因は明らかになっていないが、太陽の他の場所では磁場が宇宙空間に放出されて、またループして太陽表面に戻ってくる光景が見られるが、コロナホールではそのループがうまくいかないとされている。