▲ BBC より。
魔物が守り続ける古代の西洋建築物の歴史
なんとなく重苦しい雰囲気の最近の中でも、まあいろいろなニュースというのは日々あるものですが、上のものは数日前のイギリス BBC で報道されたもので、 13世紀に建てられたペイズリー修道院という修道院の外壁のガーゴイル(石像)が「映画のエイリアンと酷似している」ということが話題となっているという記事です。
▲ ペイズリー修道院。
ペイズリー修道院というのは、Wikipedia によりますと、
ペイズリーは、かつて古代ローマ時代のVanduaraのとりでがあった場所に数えられた。現在のペイズリーの場所の検証はこのとりでを第一としている。12世紀には町周囲に小修道院が創建され、たちまち定住者が増えた。
小修道院ができて100年のうちに、位が上がりペイズリー修道院となった。町は18世紀から19世紀に、綿織物ペイズリーの生産で有名になった。
とのこと。
ペイズリー地というのは、下の紋様のことで、今でも衣服とかスカーフなどの装飾用の布地のデザインとして幅広く使われています。
さて、「ガーゴイル」。
このガーゴイルというのは、詳細な意味はともかく、中世のゴシック建築などの外壁についている怪物のように造形される石像というような意味でよろしいかと思います。
もともとの理由はわからないですが、ガーゴイルはもともとが「魔物」的な造形であり、不気味なものであることが多いです。最近、廃墟と絡んで「魔物」みたいな意味を考えたりしていたことがありましたが、西洋の歴史のある建築物には、やたらとこの「魔物としての石像」が建物の上にいらっしゃるようです。
有名な観光地では下のようなものがあります。
ノートルダム寺院(パリ)のガーゴイル
マンチェスター大聖堂(イギリス)の男前のガーゴイル
結局、今回の BBC の記事の 13世紀のペイズリー修道院のエイリアンの成り行きについては、この修道院は 1990年代に改修されたのですが、「その際にガーゴイルも交換された」のだそうです。その時に入れ替わったガーゴイルのひとつが上のものだったということのよう。
なので・・・新しいガーゴイルを製作した職人さんと絡んだ話なのかもしれませんけれど、「映画を意図して作ったわけではないと思います」と修道院の神父さんは申しております。とはいえ、作った人の頭の中に「どんな世界が想定されていたか」ということは今となってはわからないことでもあります。
ところでも、この時には他のガーゴイルも交換されましたが、そちのうちのひとつは下のものです。
こっちのほうがコワイ(笑)。
ちなみに、映画『エイリアン』は、私が高校生の時の 1970年代終わりの公開でしたが、私の田舎では上映されず、実際に見たのは東京に出てきた後に名画座で見た記憶があります。その時のショックというのは、モンスター映画としてのショックではなく、「美術的なショック」でした。
▲ アメリカ映画『エイリアン』(1979年)より。
私のそれまでの映画の経験の中で、『エイリアン』ほど、全編をゴシックとグロテスクと残酷の3つの要素で貫き通したカッコイイ映画はそれまで存在さえしていなかったと思います。美術的価値観に大きく刺激を与えてくれた映画でした。
というわけで、何だかエイリアン・ガーゴイルの話で長くなってしまいましたが、今回の本題はどちらかというと、次の「寒さ」の話です。
先日の記事、
・この夏すでに聞こえていた小氷河期の足音 : アメリカのこの夏は記録的な「低温」が圧倒していたことが判明
2013年08月27日
の続きというような感じでお読み下さると幸いです。
世界で最も乾燥した土地のひとつのペルー・アタカマ砂漠で「この30年ではじめて降った雨」が雪だった。
まずは、ペルーで大雪と寒波のために非常事態宣言が出されている報道です。
▲ Declaran estado de emergencia en Puno por fuertes nevadas より。
プーノというのは地図では下の場所で、チチカカ湖の西岸に位置するそうです。標高 3850メートルと高い場所にあるので、年間を通して気温は低い場所ですが、そのレベルを越えた寒波に見舞われているようです。
現地の報道からご紹介します。
Peru Declares State of Emergency in Puno as Temperatures Drop
Peruvian Times 2013.08.28
ペルー政府はプーノ地方に寒波での非常事態を宣言
ペルー政府はこの十年で最も低い気温に見舞われているアンデス南部地域のプーノに非常事態を宣言した。
ペルー大統領オジャンタ・ウマラ氏をはじめ、専門家なども今週現地を訪れ、7県においての非常事態を緊急発表した。
現在、何百もの世帯が寒波の影響を受けており、また、 25万頭以上のアルパカが南部高地を襲った氷点下の気温と雪嵐の中で死亡した。
気温は一部でマイナス 15度にまで達している。
そのため道路が凍結し、バスや車両の通行にも影響が出ている。バスを持つ人々は、氷点下十数度の極寒の中で 8時間から 10時間、バスを待ち続けることを余儀なくされている。
また、そのペルーと隣接したブラジルですが、この7月から8月には低温に関しての報道を何度か目にしましたが、最近、雪の被害もひどくなっているようです。
▲ ZERO HORA より。
世界で最も乾燥した土地のアタカマ砂漠では「この30年ではじめて降った雨」は雪だった
それと、ペルーのアタカマ砂漠という砂漠で、数日前に「雪が降った」ということがありました。
▲ Atacama desert sees snow, rain after 30 years より。8月27日の報道です。
記事の見出しにもありますけれど、雪というより、「雨」そのものが降ったのが、30年ぶりだとかで、それが雪となったようです。
この様子は動画でも撮影されています。
アタカマ砂漠の雪
そういえば、先週の「ロシアの声」に、最近の激しい環境の異変について、ロシア水理地質学研究所のドミートリイ・キクチョフという人の言葉が掲載されていました。
その記事のタイトルは「気候変動、世界は元の姿に返らない」というものでした。
1000年単位で未来を見れば、現在は寒冷化という傾向の中にあるのだろう。しかし我らの世紀に焦点を絞れば、大方、当面のところは気温は上昇していく。ただし、ある年の夏は前年の夏より必ず暑いということを意味するのではない。
過去1000年を振り返ると、最も温暖な時期は10・11世紀に求められる。16・17世紀には「ミニ氷河期」が訪れた。局所的な「観測史上最高気温更新」などは、惑星全体の気候変動の歴史から見れば、大したことでなどないのかもしれない。しかし、現代人は、ちょっとした変化に過敏に反応する。
なるほど、確かに私なども現代人で、「ちょっとした変化に過敏に反応する」というようなことになっているのかもしれません。
しかし、それでも、気候のことだけではなく、全体として見てみれば、今の世の中は「過去 1000年のどの時点とも比較できない世の中」ということは確かな気がしますし、あるいは、過去 5000年のどことも比較できないとも言えるのかもしれません。
それだけに、「変化はこれまでの数千年と違ったもの、あるいは大きなものとなるのかもしれない」というように考えることもさほど間違ってもいない気もします。