ロシア極東の洪水は 40日目に近づき、ルーマニアでは6時間で2ヶ月分の豪雨で村が流され、アメリカのコロラドでは3日間で1年分の雨が降り落ちる「雨と洪水のカオス」。
▲ 現在も続いている米国コロラド州の洪水のキッカケとなった豪雨で非常事態が宣言された日の「聖書のような」という表現の見出しの入った 9月 12日 のUSA トゥディの報道。日本時間 9月 15日現在、この日から続く洪水によって 200名を越える方々の安否がわかっていません。
旧約聖書の創世記のいわゆるノアの方舟について、その時の洪水の様子に下の記述があります。
洪水は40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくした。水は150日の間、地上で勢いを失わなかった。
「いくらなんでも、そんなに続く洪水などないだろう」と、私などは思っていたのですが、どうも最近はそうとも言えない出来事を目にします。
今回はふたたび洪水についての記事を書かせていただこうと思います。
拡大し続ける世界各地での洪水の規模と被害の範囲
夏になる前に、
・世界中で止まらない「黙示録的な洪水」の連鎖
2013年06月20日
という記事をはじめ、多くの洪水に関係する記事を書いたのですが、その後も洪水は世界中で止まることなく続いています。そして、この9月になって、その激しさというのか、「黙示録的な様相」が強くなってきているように見えます。
まあ、日本も・・・たとえば、今は 9月 15日の午後で、つまり、これから台風 18号の影響による大雨が今夜あたりから本格的にやってきそうで、人の国の洪水のことを書いていたら自分も洪水の渦中にいた、というような可能性もないわけではないのですが・・・。
今回は、いくつかの最近の印象的な洪水の報道などをご紹介しますが、何よりも「聖書的」だと感じるのが、ロシアの極東部のアムール川という川の増水で起きている洪水です。何しろ、洪水発生からそろそろ 40日目に近づこうとしているのです。
1ヶ月以上、川の水位を上げ続けているロシアのアムール川
ロシアのアムール川というのは、下の赤く囲んだ場所にある川です。
▲ 日本の海、シベリアの森より。
下のニュースは今から約1ヶ月前の 8月 14日のロシアの声の記事です。
今から1ヶ月前で、すでに洪水がある程度続いていたことがおわかりかと思います。
そのアムール川の水位についてふれている下の記事も抜粋します。
ロシア極東豪雨、アムール川に記録的水位
VOR 2013.08.20
ロシア極東アムール州の豪雨はピークを過ぎ、川の水位は下がりつつある。
しかしハバロフスク地方およびユダヤ自治区の状況は深刻の度を増している。
ハバロフスク地方では記録的な水位が観測され、なお高まっている。アムール川の水位は間もなく7m80cmに達する見込み。従来予測より1m高い。水はあふれて街区を浸している。堤防の積み増しが急がれている。
この記事では「アムール川の水位は間もなく7m80cmに達する見込み」とあり、このレベルでも危機的な水位だということが察せられます。
そして、それから1ヶ月たった現在はどうなっているのか。
下は 9月 13日のロシアの報道記事の概要です。コムソモリスク・ナ・アムーレというのは、ロシア・ハバロフスク地方のアムール川下流の左岸に位置する港湾都市だそうです。
ということで、1ヶ月前に、7メートル台の水位で「従来予測より1メートル高い」として、非常事態が宣言されたアムール川の水位は、それから一貫して増え続け、現在は9メートルを越えています。
ロシアのメディアの報道では、アムール川に沿った地域で、浸水というより「水没」した家々の写真が毎日、掲載されています。
▲ HTB より。
▲ Gazeta.ru より。
このアムール川の増水による洪水が始まってからは 40日に近くになっているわけで、最初に引用した創世記の「洪水は 40日 40夜続き」という状態も、地域的な出来事では十分にあるものなのだと刮目した次第です。
今のところ、アムール川の水位が急激に下がるという予測もされていないようで、ロシア極東は、いつ終わるともわからない「世紀末的な洪水」の渦中にあります。
6時間で2ヶ月分の降水量を記録した異常豪雨
最近起きた洪水で印象的なものが、ルーマニアで起きた洪水でした。
・ルーマニアで「6時間で2ヶ月分の雨量」を記録した猛烈な豪雨による洪水で壊滅的な被害
2013年09月13日
という報道をご紹介したのですが、原因は短時間での壮絶な豪雨で、報道には、
雨は9月11日の夕方から降り始め、そして、たった6時間の間にこの地での2ヶ月分の降水量に匹敵する猛烈な豪雨に見舞われた。たちまちのうちに 700の家屋が浸水し、死者・行方不明者は8名に達した。
と記されていました。
具体的な雨量の数値はわからないですが、上の記事の後、さらに雨は続いているようで、昨日のルーマニアの報道では下のような記事が見受けられました。
▲ Libertatea より。
ルーマニアといえば、1970年代に『世界宗教史』という著作に「洪水の意味」を記したミルチャ・エリアーデという宗教学者がいますが、その人はルーマニア人でした。
彼はこのように書いています。
「世界宗教史」(ちくま学芸文庫)より
洪水の原因は人間の罪であると同時に世界の老朽化であることが確認される。
宇宙は、生存し、生産するという単なる事実によって、しだいに退化し、ついに衰亡するのである。これゆえに、宇宙は再創造されなければならないのである。
言いかえれば、洪水は新しい創造を可能にするために「世界の終末」と罪に汚れた人間の終末を大宇宙の規模で実現するのである。
しかし、宇宙の再創造とか宗教的な意味とかはどうでもいいですが、ミルチャ・エリアーデが著作を記した 1970年代には、世界が今のような「現実の洪水」に見舞われることを予測してはいなかったはずで、何よりも自分の国ルーマニアが「聖書的な洪水」に見舞われるとは想像していなかったかもしれません。
しかし、21世紀の私たちは、もはやこれらが絵空事ではないことは理解していて、どうにも「現実の創世記」みたいな時代を生きているという気がします。
米国コロラド州では「3日間で年間の降雨量を上回る雨」が町を破壊
アメリカのコロラド州の洪水については、日本語の報道でも取り上げられていますので、そこからピックアップします。 9月 15日の産経ニュースのものです。
コロラド洪水、「安否不明」250人に 死者は4人
産経ニュース 2013.09.15
米西部コロラド州のボールダーやデンバーなど広い地域で発生した洪水による死者は、14日までに4人となった。ロイター通信によると、約250人が安否不明になっている。
ボールダーの政府当局者は「死者数はさらに増える可能性が高い」と述べた。ただ、安否不明の人の多くは通信インフラの損壊や停電で連絡がつかない状態とみられる。
14日までの3日間で年間降水量に相当する雨量に達した地域もあり、浸水した面積は約1万1千平方キロメートル以上に。隣接するニューメキシコ州の一部でも洪水が発生し、1人が死亡した。
これら、ロシア極東の洪水、ルーマニアの洪水、アメリカのコロラド州での洪水のどれにも通じているのが、「普通ではない量の雨が一気に降る」ということです。
あるいは、その状態が長く長く続く。
6時間で2ヶ月分の雨量とか、3日間で1年間の雨量と匹敵する雨量だとか、ちょっと普通だと考えられない量の雨が世界中で降っているわけなのですが、今年書いてきました洪水のニュースはどれも同じような状態での洪水でした。
洪水がもたらす食糧供給への影響への脅威
巨大な洪水は、人的被害を含めて様々なものを破壊しますが、実は、その時の被害としてあまり大きくピックアップされないものとして、「農地の壊滅」ということがあります。
最近、アフリカのニジェールという国が大きな洪水被害に見舞われています。
ニジェールというのは、下の位置にある国で、ここはサハラ砂漠に位置する国です。
アフリカ大陸基本情報 / ニジェール共和国によりますと、
西アフリカの内陸国。北部にあるサハラ砂漠が国土の 65%を占めている。世界で最も暑い地域の一つ。干ばつの起こりやすい同国は、たびたび食糧危機に陥る。また、同国の農業はサハラ砂漠の拡大に脅かされている。
というような場所らしく、干ばつ被害は多くても、洪水による被害が多い場所ではないはずです。そこに「降りやむことのない豪雨が降り続けている」という現実。
洪水にはいろいろな意味があり、聖書的な世界では、上に書きましたルーマニアの宗教学者ミルチャ・エリアーデのように「再創造」というような言葉を使う向きもありますが、しかし、現実問題として、そこには「苦痛」が存在します。
最近はつくづく、本当にそんな苦痛と代替えできるほどの「新しい世界」なんてあるのか? とよく思います。
では、ここから AFP の記事です。
Niger asks for foreign help for flood victims
AFP 2013.09.06
ニジェールは、洪水被災者のために海外からの援助を求めている
▲ ニジェール西部の洪水で、26名の人命が奪われ、多くの農地が壊滅的な被害を受れた。
「洪水はこれまで 26人の命を奪い、75,347人が被災した。13,000ヘクタールにわたる農地の作物が破壊され、被害額は 6400万ドル(約 64億円)に上る」。
ニジェールのブリジ・ラフィニ首相は以上の声明を出した。
そして、「しかし、私たち政府は、被災者たちの要求に応えるための、あるいは、この世紀の大惨事の影響を軽減するための手段を欠いている。したがって、私たちは国際的な援助のためにアピールしたい」と述べた。
8月以来、ニジェール西部の8つの地域が激しい雨に見舞われ続けており、それによりニジェール川が氾濫し、首都ニアメでも洪水被害が拡大した。
今週さらなる豪雨が同地域を襲うことが予測されており、このままの状態では、降雨が本格化する 11月から 12月には洪水の被害がさらにひどくなることを政府は懸念している。
そして、農作物へのダメージが食糧危機への懸念を呼んでいる。
また、洪水で浸水した土地はイナゴの幼虫の孵化に適した条件をつくりだす可能性があり、ニジェールが今後、「イナゴによる大規模な侵略」に直面し、さらなる農作物被害が出る可能性があることを国連は警告している。
ニジェールは国土の多くが砂漠で、非常に乾燥した気候を持つため、長い間、干ばつと、そしてイナゴの来襲による食糧危機の被害に直面してきた。