▲ 地震によってパキスタン沿岸に浮上した「新しい島」。 ABC News より。
昨日、パキスタンで比較的大きな地震がありました。
日本語の報道では下のような状況のようです。
パキスタン南西部でM7・7の地震、45人死亡
読売新聞 2013.09.25
米地質調査所によると、パキスタン南西部バルチスタン州アワラン近郊で24日午後4時29分頃、マグニチュード7・7の地震が発生した。同州当局者によると、アワランで少なくとも45人が死亡し、多くの家屋が倒壊した。
震源地はアワランの北北東約66キロで、震源の深さは約20キロ。
震源地は下の位置です。
このあたりは、イランやアフガニスタンなどの国境沿いにいたるまで地震が少ないとは言えない場所で、しかも、建物の構造上、地震の規模と比較して大きな人的被害が出やすい歴史を持っています。
今回の地震では、地震そのものと共に、「普通ではない」現象が起きています。
それが一番上に載せた「地震の際に沿岸に新しい島が出現した」という現象です。
これは複数のメディアで写真と共に報じられていますが、今回は「この島がどのように出現したか」という住民の言葉が記されていたアメリカの ABC ニュースの記事をご紹介したいと思います。
ところで、今回の記事のタイトルの最初には「パキスタンでのクリスチャン追放運動の渦中で」という文字を入れていますが、地震が発生した 9月 24日の2日前に、パキスタン史上最悪の「キリスト教徒に対しての襲撃事件」が発生しています。
▲ ガーディアンより。
パキスタンのキリスト教徒は全人口の3パーセントに満たない「マイノリティ」であり、近年は、パキスタンからのキリスト教徒の完全追放さえ叫ぶ風潮が増してきているとのことで、その中で起きた事件でした。
この事件も、日本語で多く報道されていますが、 CNN 日本語版の記事を短くご紹介しておきます。
報道後、死者数はさらに増えています。
キリスト教会で自爆テロ、信者ら200人死傷 パキスタン
CNN 2013.09.23
パキスタン北西部ペシャワルのキリスト教会で22日に爆発があり、地元当局によると77人が死亡、120人以上が負傷した。
ペシャワル教区によると、礼拝が終わった直後に自爆テロ犯2人が正面入り口から教会の敷地内に侵入し、信者の中に入り込んで自爆した。日曜学校に通っていた子どもたちや聖歌隊のメンバーも犠牲になったという。
ペシャワル司教は追悼の談話を発表して祈りを呼びかけるとともに、地元自治体は少数派を守ることができなかったとして強く非難した。
パキスタンの人口1億9300万人のうち、キリスト教徒が占める割合は3%に満たない。
ペシャワルを州都とするカイバル・パフトゥンハ州はイスラム過激派の活動が活発で、治安部隊と武装集団との衝突が頻発している。
そして、上の事件の2日後に地震が発生し、「新しい島が出現」しました。
ところで、 In Deep の過去記事には「新しい島」に関しての記事がいくつかありますので、リンクしておきたいと思います。
浮上する「新しい島」たち
インドネシア 2010年11月
・インドネシアのバリ島海域に新しい島が突如隆起
2010年11月14日
ロシア 2011年9月
・たった数日間で幅800メートル・高さ5メートルに渡って隆起したロシアの「新しい大地」
2011年09月14日
ドイツ 2013年1月
・ドイツの沖合で「新しい島」が浮上を続けおり、その地は鳥たちの聖域に
2013年01月16日
などがありました。
上の中で、インドネシアの写真は本当のものかどうかは確認できなく、イメージかもしれないですが、当時の現地メディアに掲載されていたものです。
これらの「海底の隆起」と、そして、シンクホールなどを含めた「土地の陥没」は、同じような時期と割合で増え続けているようにも見えて、つまり、新しいものが浮上する一方で、古いものは沈んで消えていく・・・という過去の地球の大地の歴史を思い起こさせるものがあります。
そして現代の大地に住む私たちは「古い」ほうに属しています。
では、ここからパキスタンの地震と新しい島に関しての記事です。
Pakistan Quake Kills 39 and Creates Island
ABC News (米国) 2013.09.24
パキスタンの地震は39人の命を奪い、そして新しい島を形成した
パキスタンでの人里離れた農村地域を襲った巨大地震によって、少なくとも 39人が死亡し、そして、パキスタンの海岸線に新しい島を作り出した。
この新しい島について、「これは小さな奇跡以外のなにものでもない」と、パキスタン南部の港湾都市グワダルの人々は ABC ニュースの記者に語った。
この島の大きさや形状は変化しているが、約 60メートルほどの幅があり、海岸線からこの島への距離は、およそ 400メートルくらいだという。パキスタンのテレビ局では、海に囲まれた岩の塊の状態の島の映像を放映した。
島が作られていく光景を見た地元の漁師は、これは幻影のように突然出来たのではなく、緩やかなプロセスの中で形成されていったと言う。
漁師は以下のように述べた。
「村のすべての人々が島を見るために家から外に出てきました。それと同時に全員が祈っていました。明日、私は島の近くまで行ってみようと思っています」。
今回の地震について、アメリカ地質調査所( USGS )によると、その規模は、マグニチュード 7.7で、その揺れは遠く離れたインドの首都デリーでも感じられた。
震源地付近の地域は、家屋が主に泥レンガで作られており、また、交通インフラに乏しい村で構成されており、今後、死亡者数が急激に上昇することが懸念されている。
(訳者注) なお、最近の地震に関しての話題といえば、アメリカのオレゴン州の非常事態局が、「巨大地震が迫っている」という旨の警告を出したことが、オレゴン最大の地方新聞オレゴニアンに大きく掲載されたことが、メディアに掲載されていました。
このあたりは、過去記事などで何度か記したことがあるのですが、西暦 1700年に巨大な地震が発生していたことが 2003年になって判明した「カスケード沈み込み帯」という場所があるところです。
日本の独立行政法人「産業技術総合研究所」の活断層研究センターが日本の古文書から推定した結果、西暦 1700年にアメリカ西海岸の上の図のカスケード沈み込み帯において、マグニチュード9前後の超巨大地震が発生していたこと突き止めたのでした。
そのプレスリリースはこちらにありますが、この 1700年の地震は遠く離れたアメリカで発生した地震であるにも関わらず、日本の太平洋側も津波により多くの被害が出たという事実があります。
下のグラフは、その西暦 1700年のアメリカ西海岸での地震の際の、日本の太平洋側での津波の高さの推定です。
最大で6メートルの高さの津波が日本の沿岸に来ていた可能性があることがわかると思います。
太平洋のはるか対岸の日本での津波がこれだけのものでしたので、震源に近かったアメリカでの津波の高さは想像できないほどのものだったと思いますが、当時はまだアメリカ合衆国は存在せず、アメリカの様子を文字で記した文献は存在しません。
日本の古い文書から、アメリカでの出来事がわかったのでした。
いずれにしても、このような超巨大な地震の発生というのは世界の多くの地域において、可能性としては存在しているわけで、時期の予測はできないにしても、起きる時は起きてしまうものです。
それでも、私たちは 2011年に東北の方々の行動から多くの教訓を得ていることを改めて思い起こして生きたいとは思います。
なお、アメリカの地震といえば、イエローストーンでも観測史上で例のない地震が起きたようです。
・米国イエローストーンで観測開始以来だという珍しい「三カ所同時」での群発地震が発生
地球の記録 2013年09月25日
いろいろと地質的に騒がしい時期なのかもしれないですが、まだ起きていないことを心配する必要はないはずです。起きた時に現実的に対処することが最も大切なことのように思います。