2013年10月03日



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米国モンタナで人々が「空が落ちてきた」と口にした日、宇宙では彗星アイソンが崩壊を始めているという懸念が台頭



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▲ 米国オハイオ州クライドという場所で 10月 2日に撮影されたオーロラ。 Spaceweather Auroras より。






 



米国本土では見られたことのないようなオーロラが夜空に広がり


昨日の記事、


数百年来の弱い太陽活動の中で突然起きた「太陽の大爆発」の余韻と共に NASA のサイトも NOAA のサイトもシャットダウンした朝
 2013年10月02日


では、9月29日前後に太陽で大きな爆発が起きたことを書きました。

sun-007.jpg

▲ 9月20日の太陽の爆発。 NASA はアメリカ政府機関の閉鎖により多くのウェブサイトが停止されていますが、太陽のリアルタイム画像などの提供は続いているようです。


その太陽のフィラメント爆発による CME (コロナ質量放出)などの影響で、昨日くらいから地球は地磁気に覆われています。

そのため、現在、アメリカなどではかつて見たことのないような色彩のオーロラに包まれています。


スペースウェザーには、「オーロラ写真ギャラリー」という投稿ページがあるのですが、ここ2日ほどのオーロラの色彩は、常軌を逸しているという表現でいいのかどうかわからないですが、上にも載せましたように、各地でものすごい色彩のオーロラが出ています。

下の写真も、オーロラ写真ギャラリーからのものです。


Chris-Attrell.jpg

▲ カナダのサスカチュワン州ショーナボンで撮影。Spaceweather Auroras より。



Jake-Stehli-Aurora.jpg

▲ ウィスコンシン州ハートフォードで撮影。Spaceweather Auroras より。


これは、現地で相次いでニュースとして報じられています。


このような美しい・・・か、あるいは見方によっては異常な空を見せていたミネソタなんですが、その2日前、アメリカのモンタナ州では「昼」にすごい光景が起きていました。






人々はそのとき、「空が落ちてきた!」と口々に叫んだ


とりあえず、写真です。

モンタナ州のボーズマンという場所だそう。

m-cloud.jpg


これは別の場所から動画でも撮影されていて、写真だけだとこの白いものが何なのかがわかりづらいのですが、動画を見てみますと、これは砂や土煙などのたぐいではなくて、「雲」のように見えます。




上のは短くしたもので、オリジナルの投稿はこちらにあります。


この「奇妙な雲」というのも、ここ2〜3年の現象として顕著なもののひとつで、私自身も空をよく見るのですけれど、「不思議な気がする」というような雲をよく見ます。

もちろん「気がする」というだけで、科学的には不思議でもなんでもないのかもしれないですが、気流の動きと雲の動きがバラバラだったり、最近では、中心から四方に向かってそれぞれがバラバラに動いていくという雲を見たこともあります。


まあ、それだけ気流が荒れているということなのかもしれないですが。


過去記事でも、奇妙な雲については数回記事にしたことがあります。

2年ほど前には米国アラバマ州で撮影された「津波のような雲」をご紹介したことがあります。



▲ 過去記事「米国で観測された津波の形をした巨大雲に驚く市民たち」より。


上の雲なども科学的には、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性だとかいう流体力学で説明できるそうですけれど・・・まあ、理屈では説明できるにしても、そうそう目にするものではないような気もします。


あるいは、こちらは3年くらい前の記事に載せたものですけれど、下の写真の雲。

contrail.jpg

▲ 過去記事「光線の自然現象の原則に反して見える不思議な飛行機雲の影」より。


飛行機雲が出来ているのですが、「その飛行機雲の上にある雲に、飛行機雲の影が写っている」というものです。太陽の光は上から来ているのに影が光源のほうに写っているというもので、大変不思議な感じはするのですが、これも光学的には月からの光線などとの関係で説明できるものだとか。

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▲ 大気工学の専門家レス・カウリー博士のサイト(英語)より。


そんなわけで、上でご紹介しましたモンタナの「地上に落ちてきたような雲」も、ごく普通のことなのかもしれないですが・・・。

ところで、あまり意味はないことかもしれないですが、オーロラが撮影されたミネソタ州のセント・クラウドという場所と、モンタナ州のボーズマンという場所は、それぞれ下の場所です。

mm-ap.jpg


オーロラが撮影された町の名前のセント・クラウドというのは、英語では St.Cloud となるようで、つまり、「聖なる雲」というあたりも、いろいろとオチとなっているような(あるいは、なっていないような)。






さらに、米国の政府機関のウェブサイトの更新停止は加速


ところで、10月1日から始まったアメリカの政府機関の閉鎖の影響ですが、昨日の記事に載せました読売新聞などの報道によると、


> NASAは職員約1万8000人のうち97%が自宅待機


と書かれてありましたが、スペースウェザーに宇宙天気の予測を提供しているアメリカ海洋大気庁( NOAA )も政府機関で、ウェブサイトは停止されています。しかし、スペースウェザー上での太陽活動の状況報告と、宇宙天気の予測は続いているのですが、しかし、

ああ、やっぱりいろいろと大変なのかも

と思うことがありました。


下の写真は、スペースウェザーで毎日更新される太陽のコロナホールの様子を報告している写真です。

corona.png


おわかりでしょうか。
写真がブレている上にレイアウト(中心線)もズレているのです。


何年も見ていますけれど、こんなに杜撰なのは見たことがないです。


ちなみに、これは拡大写真でも見られます。

写真自体は NASA の太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー( SDO )というものが写しているものなのですが、なんとオリジナルの太陽写真自体がこうなっているのでした。

sun-sdao-2013-10-03.jpg

▲ 太陽観測衛星 SDO のオリジナル写真。



まあ、 NASA は 97パーセントの職員が自宅待機ということになっているようで、残りの3パーセントの職員でいろいろとやらなければならないということなんでしょうけれど、その多くは人命に関わる国際宇宙ステーションだとか、有人のミッションなどに集中していると思いますので、他は「適当」になっているという可能性もあります。

上の写真の太陽の顔そのものも、なんとなく困惑しているような表情に見えたりします。

それと、最近書いていました「氷のデータ」に関しても滞りそうです。





9月に観測史上最大の氷面積を更新した南極のデータも 10月 2日から停止


最近の過去記事の、

ついに地球が本格的な「寒冷化時代」に突入した可能性
 2013年09月09日

などをはじめとして、最近は定期的に北極や南極などの氷のデータを掲載したりしていました。

そして、2013年9月の末までに、南極の海氷の面積が史上最大をさらに更新しているということがわかっていました。

下は海氷の面積と、南半球の氷の面積の推移のグラフです。


s_extn_thumb.png

s-h-extent-023.png

アメリカ国立雪氷データセンターより。


上の図と共にある数値のデータでは、今年9月の南極の海氷面積は 1,980万平方キロメートルとなり、これまでの記録だった 2005年の 1,950万 5,000キロ平方メートルを 293,000平方キロメートル上回ることになったことが書かれています。

つまり、この2013年9月は、南極の氷面積は観測史上で最大だったようです。


ところが・・・。

このアメリカ雪氷データセンターも今日(アメリカ時間の10月2日)からは下のように「データソースは利用できない」と書いてありました。

nsidc-02.jpg


これは、更新もされないということだとすると、政府機関の閉鎖が続く限り、北極や南極の氷の面積のリアルタイムのデータもわからないということになるのかもしれません。


そんなわけで、世間的には、アメリカ政府機関の閉鎖はそれほど話題になっていないようなんですけれど、私にとっては結構な影響で、 NASA のデータ、 NOAA のデータ、アメリカ国立雪氷データセンターのデータの多くを入手しづらくなっているということになりつあります。

NASA は現時点では STEREO などの太陽観測データの提供は続いていますが、この先、政府機関閉鎖が続くようだと、どうなるかわからない面もあります。

なぜかというと、データを稼働させる機器はそれが自動であっても、「費用」はかかっているはずだからです。

その費用が出ないような状態が続くとなると・・・。



あれ?

ところで、どうしてタイトルに「彗星アイソンが消滅しようとしている」としたのでしたっけ・・・。

ああ、そうだ。
いろいろ書いて忘れていました。
今日のスペースウェザーにあった短い記事なんです。

「彗星アイソンが崩壊しそうになっているのではないか」という科学者の言葉が引用されていたのです。

内容は短いのですけれど、今年の大きなイベントのひとつであることは間違いないアイソン彗星がこのまま消えてしまうとしたら、それは何かアレですので、その雉子をご紹介して締めたいと思います。




IS COMET ISON POISED TO DISINTEGRATE?
Spaceweather 2013.10.03

彗星アイソンが崩壊しそうになっている?

彗星アイソンは今週、太陽に向かう途中で、火星近くを通過していくのだが、アイソンはいまだにかすかにしか見えない。

多くの専門家たちは、彗星アイソンは 11月下旬に非常に明るいサングレーザー彗星として太陽に近づくことを確信しているが、しかし、コロンビアのアンティオキア大学物理学研究所の天文学者イグナシオ・フェリン博士はその意見に賛同していない。フェリン博士は、彗星アイソンは崩壊の段階に入っていると考えている。博士によると、アイソンの光度曲線は、他の分解して崩壊していく彗星の光度曲線と似ていると主張する。

もし、博士が正しいのなら、「世紀の彗星」になるはずのアイソンは「世紀級の失望」に変わる可能性がある。今後のアイソンの動向に注目したい。






(訳者注) これについては確かに注目したいですね。昨年以来、来訪を待ちわびていたアイソンが崩壊してしまったら、なんだか寂しいですし。

でも、アイソンに注目する前に、アメリカの政府機関の閉鎖が続いているうちは、宇宙観測データも次第にどんどんいい加減になっていくという可能性もありそうで、まったく本当にどうなっちゃうんでしょうかね。