2013年11月05日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




「透明の血液で生きていく」:ルーマニアの研究チームが人間に使うことのできる「人工血液」の製造に世界で初めて成功



worm-blood-top.gif

▲ ルーマニアの Jurnalul.ro より。
--





赤くない血が流れても人間は生きていられることを知り

昨日、欧州やロシアなどのメディアで、「ルーマニアで人工血液の開発に成功」という記事がありまして、今回はこのことをご紹介したいと思います。

報道によれば、この人工血液は、「水と塩、そして海の無脊椎動物が持つヘムエリスリンという物質」から作られたものらしいのですが、すでに試験的なレベルは越えていて、近々、人間への臨床も開始されるのだそう。

つまり、「人工的に作った血液を人間に移植する」ということがおこなわれるということになります。

これまで、皮膚とか、臓器の一部などで人工的に作られた人間の器官の「代替物」はいろいろありますが、血液だけは何だかこう他の臓器とはまた違った意味を持つもののような気が私などはしています。

そして、今回のこの人工血液は「赤くない」のです。そのところにも興味というのか、いろいろと感じる部分がありました。


ab-2013.jpg

▲ 人工血液の製造に成功したラドゥ・スィラヒ教授。手に持っている透明に近い液体が人工血液だと思います。 Monitorulbt より。



以前、

2012年の「赤」の意味: DNA を持たずに増殖する「赤い雨から採取された細胞」とつながる人間の赤血球
 2012年11月28日

という記事を書かせていただいたことがあります。

red-bloodsea.jpg

▲ その記事。


これは、昨年2012年に「世界中のいろいろな場所で水が赤く染まった」ということと関連して「人間にとっての赤という意味」を考えてみたものでした。

上の写真は、2012年11月26日にオーストラリアのボンダイビーチというリゾートの海岸の海が真っ赤に染まった時のものです。原因は藻とされていますが、あまりにも鮮やかな赤に染まった海の色に驚いたものでした。

その記事では、


・血の赤は「鉄」であるということ

・そして、血を赤くする赤血球は人体で「 DNA を持たない部位」であること



から、節操なく、いろいろと記したのですが、その思いの中心には、


「人間は体内に赤い血が流れていてこそ生きている」


という大きな事実があるという確信だったのですが、その確信は今回の人工血液の登場で瞬時に消えてしまったわけで、上のほうの写真の通り、人間の血液として機能する人工血液は「赤くない」のです。


赤い血を持たなくても人間は生きられるという事実。


ちなみに、この人工血液の材料の「要」となるのは、ヘムエリスリンという物質で、どんなものか知らなかったですので、調べてみましたら、下のようなものでした。



ヘムエリスリン

ムエリスリンは海洋無脊椎動物である星口動物、鰓曳動物、腕足動物や環形動物のゴカイで酸素を運搬する多量体タンパク質である。

ヘムエリスリンとミオヘムエリスリンは、酸素が結合していない時は無色であるが、酸素と結合すると紫からピンク色になる。




どんな物質か具体的には私などにはわからないにしても、これを持っている生物は例えば、海の中の下のような生物です。

golfingia-2.jpg

Wikipedia - 星口動物より。


こういう、普段の生活ではほとんど馴染みのない海の中の生物たちが、人間や動物たちの生きる根幹とも言える「血」を作りだせる物質を持って海の中に生きているこの地球という現実にもショックというか、興味を持ちました。


そんなわけで、ルーマニアの現地では多くの報道がなされているのですが、その中のひとつをご紹介します。

しかしそれにしても、「ルーマニアの話題」というのも久しぶりで、 In Deep でのルーマニア単体での記事というのは、3年以上前の、

サイキック vs ルーマニア議会
 2010年09月12日

で取り上げたことがあるだけでした。

ro-majo.jpg

▲ その記事。翻訳だけの記事ですが、内容自体は「ルーマニアの人々の魔女や占いに対しての考え方」ということがややわかって、少し面白いです。


最初に貼りましたルーマニアのメディアの記事の冒頭にも下のように書かれていました。


欧米のメジャープレスは、今では、もはやルーマニアの移民問題や雇用問題を取り上げることはほとんどないが、久しぶりに、ルーマニアの話題で英国でのタブロイドにまで取り上げられる科学の話題が登場した。ルーマニアで医学の革命となるかもしれない人工血液が発明されたのだ。




ルーマニアは実際にどうも話題として取り上げられることが少ない国となっているようです。

その中で、今回の報道は英語圏からロシア圏までの多くの国々で記事となっています。

今回はそんな中のひとつです。
ここからです。




ro-manmade-blood.png
evz.ro (ルーマニア) 201311.02


クルージュ県の「奇跡」が資金不足によって脅かされている。開発された人工血液は医学の世界に革命を起こす可能性がある


sange.jpg


クルージュ県の大学の研究者チームが、大量の血液を失った際に使用することのできる「人工血液」を研究室で作り出すことに成功した。

材料は水と塩、そして稀少な海洋無脊椎動物から抽出されるヘムエリスリンが使用されている。

この人工血液には色がない。

人工血液はすでにマウスでの実験では成功しており、近いうちにヒトへの臨床試験も行われ、血液の移植がおこなわれることになっている。

この研究と実験は、クルージュにあるバベシュ=ボイアイ大学化学部のラドゥ・スィラヒ教授率いる研究チームが6年にわたって続けてきた研究の成果だ。


スィラヒ教授は以下のように述べる。

「私たちはついにこの人工血液の製造に辿り着いたのです。これは自然をコピーしようという試みであり、そのために自然界にある分子を使い、変化させました。あるいは、たとえばテフロンのような純粋な化学物質を使用することもできるのです」。

研究チームは、動物や様々な遺伝子組み換え生物から血液を採取したという。

しかし、今回の革命的な発明ともいえる研究成果は、資金不足によって脅かされる可能性がある。それがこのプロジェクトの最大の課題の一つともなっている。ルーマニアでは科学的研究に対しての資金の確保に対しての確実な手段がないと教授は言う。