2013年11月09日



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「6本の光の尾を放つ小惑星」と地球に近づく直径 20キロの超巨大小惑星



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▲ NASA のハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「6本の光の尾」を持つ小惑星 P/2013 P5。小惑星帯にあるので小惑星だとしたようです。しかし、この光の尾は彗星と同じように塵など光が反射して見えているにしても、「なぜ6本なのか」はまったく謎の模様。






 

本格的な強風の時代

本題とは関係ないのですけれど、先月の終わりくらいから「風」が世界中でスゴイのですよ。10月28日には、イギリスから欧州各国を暴風が吹き荒れて、これは台風などではないのですけれど、「暴風セント・ジュード(St. Jude) 」という名前がつけられました。

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▲ セント・ジュードで破壊されたロンドンのレイトン商店街の路上。「英国を襲ったハリケーン並みの暴風雨セント・ジュードの破壊力」より。


ちなみに、この「 Jude 」という単語、辞書 http://ejje.weblio.jp/content/Jude で調べてみますと、

1 ジュード 《男性名》
2 【聖書】 aユダ. bユダの手紙,ユダ書 《新約聖書中の一書》


ということのようで、十数名が亡くなった暴風ですが、つまりこれに「聖ユダ」というような語感の名前をつけたということなんでしょうかね。


他にも、カナダやロシアで、文字通り「かつてない」強風被害が続いていて、日本でも先日、東北などで強風の被害があったことが報じられていました。秋田などでは「電柱が風で倒される」という、ちょっと見たことのない光景の報道を目にしたりもしました。

また、現在、フィリピンを通過している台風ハイエン(台風30号)は、気象観測の歴史の中で「上陸したもので最大勢力」の台風だそうで、AFP の記事によると、


気象情報を提供している米国のジェフ・マスターズ氏によると、風力で見ると台風30号の強さは観測史上4位に入り、上陸したものとしては史上最強だという。

マスターズ氏はサマール島にある人口約4万人の漁業の街、ギワンが「壊滅的な」被害を受ける恐れがあると指摘した。台風の上陸直後にギワンとの通信は途絶えたが、民間防衛当局は被害の規模を推定するには早すぎるとしている。



とのこと。

その後の AFP の記事では、下のように、多くの地域が連絡不能となっていて、被害状況がよくわからない状況に陥っているようです。

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2年くらい前、

かつてない異常な強風が吹き荒れる世界
 2011年12月05日

という記事を書いたことがあり、その 2011年の今頃の季節も「かつてなかった強風」が世界の多くの地域で吹き荒れましたが、今年は風速にしても被害にしても、その時を確実に上回っています。


ちなみに、気象の報道 などによれば、11月10日は、日本の多くの地域で非常に強い風や、あるいは暴風雪などに見舞われるということです。明日は日曜日ですが、最近の気象の荒れ方は場合によって半端ではないですので、いろいろと気をつけたい局面だと思います。

まあ・・・今後ずっとだとも思いますけれど・・・。





突如現れた地球崩壊クラスの超巨大小惑星

さて、そんなわけで、今回のタイトルの記事ですけれど、まず、「直径 20キロの超巨大小惑星」なんですが、これは NASA が突然発見したもので、オリジナルの記事は次回あたりにご紹介したいと思いますが、 NASA ジェット推進研究所の「地球近傍天体プログラム」という部局のニュースにあります。

また、このニュースは数日前の日本語版ロシアの声にも短く掲載されていました。

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3つの巨大小惑星が地球へ(ロシアの声) より。



これらは 10月の末に連続して3つの巨大小惑星が発見されたという報道なのですが、その大きさ! ひとつが直径 2キロ、残るふたつが、何と直径 19キロと直径 20キロという、地球の近くにやって来る小惑星の大きさとしてはあまり聞いたことのない規模のものなのです。


この大きさをどう考えるといいかというと、たとえば、下の表は、過去記事「良い時代と悪い時代(1)」に載せたフレッド・ホイル博士の著作にある表です。

“images”


これは小惑星ではなく彗星ですが、かつてこの地球に衝突したことのある最大の大きさとして見積もっている大きさが直径7キロですので、上の 20キロ級の天体というものは、地球近辺の存在としては相当なものだと思います。


あるいは、今年の3月、

火星が消える日: 広島型原爆の1兆倍の衝突エネルギーを持つ彗星 C/2013 A1 が火星に近づく 2014年 10月
 2013年02月27日

という記事を記したことがありますが、この「衝突すれば火星が消える」というような表現が使われたこの彗星の大きさが「直径50キロ」程度。そして、直径50キロの天体が惑星に衝突した場合、どのような威力となるかというと、


仮に衝突すれば、衝突エネルギーは、リトルボーイ(広島型原爆)の1兆倍、ツァーリ・ボンバ(ソビエト連邦が開発した人類史上最大の水素爆弾)の4億倍のエネルギーが放たれ、直径500キロメートル、深さ2キロメートルのクレーターが生ずると考えられている。



ということだそうです。

今回見つかった直径 19キロと直径 20キロの小惑星は、共に地球に衝突するような軌道ではないそうですので、そういう可能性はないようですが、地球の近くにそんな巨大な小惑星があるということと、そして、さらに驚くことは、「これまでまったく発見されていなかった」ということです。

現在では、数メートル単位の小惑星も数多く把握されていて、たとえば、下の表は今年、地球の近くを通過していくことが把握されている小惑星です。

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Spaceweather より。


直径 15メートルなどの非常に小さな小惑星も把握されていることがわかりますが、それなのに、「直径 20キロ」の超巨大小惑星は、つい先週まで察知されていなかったことに驚きます。

「突然現れたんじゃないだろうな、おい」

と、やや凶暴な気分になったりもした次第でした。






遠い空で「六芒星」を描く小惑星

しかし、今回の本題は、「6本の尾を持つ小惑星」なのです。

というのも、この小惑星自体も非常に興味深いものなのですが、先日、

米国の海に広がる衝撃的な光景 : まるで絶滅に向かおうとしているような「ヒトデたちの自殺」
 2013年11月07日

というヒトデの大量死の記事を書きましたが、その晩、夢の中で、声だけなんですけれど、

「6のことを考えろ」

と言われ続けていました。

ヒトデはまあ、6本足などのものもいるようですけれど、大体は5本足のイメージなので、いろいろと考えていたのですが、 In Deep では、過去に「五芒星」とか、「六芒星」などの記事を書いたりしていたこともあって、個人的に、5と6の違いなどを考えていた時期もありました。

そういう時に NASA から飛び込んできたニュースが、今回の「6本の光の尾を持つ小惑星が発見された」という出来事でした。ちなみに、このようなものが観測されるのは宇宙観測史上で初めてのことだそうで、それだけに科学者たちの驚きも大きなものだったようです。

そんなわけで、ここまで長くなりましたが、その記事です。




Bizarre Six-Tailed Asteroid Surprises Astronomers
IIAI 213.11.07


6つの「尾」を持つ奇妙な小惑星に驚く天文学者たち


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NASA と ESA (欧州宇宙機関)が運営するハッブル宇宙望遠鏡での観測で、天文学者たちは小惑星帯に奇妙な物体を観測した。それは、芝生で回転する散水機や、バドミントンの羽根のように見える光の尾を放つユニークで不可解なものだ。

この物体は小惑星帯のような軌道上にあるが、彗星のように宇宙空間に塵の尾を送り出している。

通常の小惑星は、光の小さな点として示される。しかし、この P/2013 P5 と名付けられたこの小惑星は、その円の中心から彗星が塵を放射する際のような尾を持っている。そして、この尾が6方向に放射しているのだ。

この物体が最初に発見されたのは今年8月で、ハワイのマウナケアにあるパンスターズ1望遠鏡を使った天文学者たちにより、非常に曖昧な形状で発見された。

これまで、このような形状のいかなる物体も発見されたことがなかったために、天文学者たちは、このミステリアスな外観をどう説明していいものか、頭を悩ませている。

この物体が複数の尾を持っていることは、 2013年9月10日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像によりわかったことなのだが、ところが、 13日後の 9月23日にハップルが再びこの小惑星を撮影した時には、その外観はまったく変わっていたのだ。

その変化は、まるで全体の構造が揺さぶられたと思わせるほどのものだった。

観測主任者である米国サンフランシスコ・カリフォルニア大学のデビッド・ジュウィット( David Jewitt )博士は、以下のように述べる。

「それを見た時には、私たちは文字通りに唖然とするばかりでした。さらに驚くべきことに、この尾の構造は、たった 13日間で劇的に変化したのです。これが小惑星だとは信じがたい光景です」。



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▲ P/2013 P5と名付けられた小惑星の周囲の構造を示す図。 ホイールのように回転している。



この奇妙な外観を説明できる可能性のひとつとしては、小惑星の自転速度の増加がポイントかもしれない。小惑星の崩壊の始まりとしての表面の分割が始まり、そのために、このような形で塵を噴出しているという考え方だ。

ジュウィット博士の解釈では、このように回転して崩壊していくことが、あるいは小惑星帯では共通の現象なのかもしれないという。つまり、これは小さな小惑星の「死」であるという可能性だ。

博士はこう言う。

「これは私たちにとってまったく驚くべき物体です。そして、ほぼ確実にこれはより多くの中の最初のひとつだと考えます」。

ジュウィット博士が率いる研究チームの論文は、天文学の専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ ( The Astrophysical Journal Letters )の 11月 7日号に掲載される。