現生人類とネアンデルタール人とデニソワ人、そして「科学上知られていない謎の人類種」の4人類種間での性交配があった可能性が最新の DNA 解析で判明
▲ THP より。
今回は、最近興味を持った上の記事をご紹介したいと思います。
最近の研究で、私たちの祖先(かもしれない)古代人類と、ネアンデルタール人やデニソワ人といった複数の古代人類種たちが、いまだ知られていない謎の「未知の人類と交配していた」ことが、 DNA 解析によって明らかになったことが報道されていました。
つまり、私たちは何らかのハイブリッド種(交雑種)である可能性があるということにもなり、「正体のわからない遺伝子を引き継いでいる」という可能性もあるのかもしれません、
ところで、今回は最初に、本題とは本当にまったく関係ない余談を書かせていただきます。個人的な「いわゆる青春的」な思い出と関係する話です。
自然の最も奥深い謎のひとつは死んでいるものと生きているものの対立である
最近、「自分のこれまでの人生って自分にとって、どうだったんだろうなあ」というようなことを思うことがあります。良いとか悪いとかの価値判断をしたいのではなく、善悪の判断でも肯定でも否定でもない単なる「どうだったのかなあ」と。
そういうことを思っている時に、ふいに「山崎春美」が今年の夏に、新しい著作を出していたことを知りました。
まあ、山崎春美と書いても誰のことだかおわかりにならない方が多いでしょうけれど、私が 1980年代冒頭の頃の 16〜17歳の頃に決定的に人生の方向性を影響づけられた人物でした。春美という名前ですが、男性です。
彼の経歴などは 山崎春美 - Wikipedia に詳しく書かれてありますし、それを紹介するのがこの記事の目的ではないですので、多くは書きませんが、私の生き方はこの山崎春美の表現物(特に文章)に方向を形作られた部分がかなりあります。
その文章を知ったキッカケは異常なほど偶然で、高校1年くらいの頃に、当時存在した「自販機雑誌」というものの中で発見した JAM という雑誌を読んで面白くて仕方なかったことが、私がカウンターカルチャーに興味を持った最初でした。
山崎春美はその雑誌の編集者でした。
また、彼は前衛バンドの「ガセネタ」というバンドも結成していましたが、その音楽とパフォーマンスにも私は異常に感銘を受けたものです。その内容は気軽には書けないほど過激なものでした。
彼の活動は、まだガリ版印刷みたいな紙質だった時代の雑誌だった宝島などでもよく取り上げられていて、北海道の田舎の高校生だった私はその頃から、「東京に行こう」と思いが強くなっていました。
その山崎春美が 1976年から 2013年まで書いた文章の著作集としての書籍がこの夏に出版されていたことを知ったのは、なんと朝日新聞デジタルという超メジャー舞台の書評欄でした。
▲ 朝日新聞デジタルの (書評)『天國のをりものが 山崎春美著作集1976―2013』 山崎春美〈著〉より。
この本の表紙に使われている写真は、私が東京に来てすぐに買った HEAVEN という雑誌の表紙そのもので、その意味でも個人的に懐かしい感じがするものです。 HEAVEN は、山崎春美や、今は精神科医の香山リカさん(香山さんの名付け親は山崎春美)などが歴代の編集長を務めた雑誌でした。
その『天國のをりものが 山崎春美著作集1976―2013』というタイトルの本を探すと、 Amazon にもあり、2500円とやや高い本なのですが、 購入しました。
パラパラとめくると、高校時代に雑誌などで読んだ文章がいくつか出てきて、漠然とですけれど、「存在自体の変革の夢」を夢想していた十代の頃を思い出して、不覚にも涙ぐんでしまった次第だったりしたのでした。
この本は基本的には過去の彼の書いたものをまとめたものですが、前書きだけ書き下ろしていて、その最初はこのような出だしでした。
罪を償う前に
「現代では生者と死者が対立している」というヘルマン・ワイルのことばを、松岡(正剛)さんから聞いた。もはや三十数年も前の昔話だ。その単なる数学者にとどまらない偉人の、あきらかにボクの聞き囓りでしかない一言は、実際には、「自然の最も奥深い謎のひとつは死んでいるものと生きているものの対立である」だという。
コトバは飛来し付着する。または旋回しウィルスみたいに伝染する。伝播し憑依し唾も飛ばすし口角も泡立つ。不本意に引用されては変形を余儀なくされ、すり減っては陳腐化する。やたら無駄遣いされたあげく、打っちゃられちゃったりもしよう。その、もともとの物理学や生物学とは無関係に、そして決して神秘学やオカルトにも日和らず与せず、上記のワイル先生の至言は、ボクの「原点」となった。
ここに出てくるヘルマン・ワイルという人を私は知らなかったので、 Wikipedia で調べてみますと、下のような大変に高名な数学者のようです。
山崎春美は、この前書きの後半で、このヘルマン・ワイルという数学者が言ったという「死んでいるものと生きている者との対立」について、「生者と死者の対立の場は自分自身の中にある」ことに言及します。
「自分は幽霊だ」として、このように書きます。
その幽霊はボク自身だ。
ドッペルゲンガーでも「悪魔っ子」でもない。ボクの分身などではなく、いってみればボクの方法とか手段である。その一例が狂った磁石であり、いまだかつてないほどすり鉢状の底が深い蟻地獄で、その傾斜角度たるや直角だ。
ちなみに、ここで、山崎春美は自分のことを「ボク」という違和感のある一人称で書いていますが、あえてそうした理由も述べていますが、それはまあどうでもいいです。
ペアではないかもしれない自分
かつて、クレアなひとときで、
・ペアである自分
2011年01月28日
というタイトルの記事とそのシリーズを書いたことがあります。
これは「人間と宇宙との一体性」について書きたかったのですが、そのようには書けていないですけれど、このことは In Deep でも、
・「宇宙は人間そのもの」という結論を夢想するとき
2012年03月19日
という記事など、いくつかの記事で書くこともありますが、いつでも内容は断片的であって、しかも、統一性にも欠ける部分があります。
それでも、今回の山崎春美の著作の前書きを読んで(まだ前書きしか読んでいないのですが)、
「ペアの自分を考える必要はない」
という感じ方も芽生えつつあります。
それは、自分も他の物質も宇宙も含めて「すべてがひとつ」という考え方というような考えが芽生えたというような感覚と近いですが、上手な表現はできないです。
いずれにしても、山崎春美の文章や音楽を知ってから約 30年。
世の中はその頃と比べてみると、比較にならないほど悪くなりました。とても便利な世の中になりましたけれど、それでも「格段に悪くなった」という言い方以外のコトバを知りません。
しかし一方で、そのように、「悪くなった」と考えることができるというのは、比較として、
「良い記憶を持って生きている」
ということであることにも気づきます。
というわけで、 150歳にもなると(100多いぞ)いろいろと振り返ることも多くなるようで、あまり先を見なくなります。
意味のない前書きを失礼しました。
ここから本題ですが、ここまで長くなりましたので、科学誌ネイチャーで発表された内容についての報道記事の翻訳にすぐ入ろとうと思います。
なお、記事に出てくるネアンデルタール人とデニソワ人という、ふたつの古代人類の間に異種交配があったことは、2010年に初めてわかったことらしいですが、その時のナショナルジオグラフィックの記事を少し抜粋しておきます。
アジアでもデニソワ人と交雑の可能性
ナショナルジオグラフィック ニュース 2011.11.02
2010年、ヨーロッパの初期現生人類とネアンデルタール人の異種交配を示す研究が発表され、各界に衝撃が走った。さらに今回、東南アジア付近の現生人類もネアンデルタール人の姉妹グループである「デニソワ人」と交雑していた可能性が明らかになった。中国南部一帯に住む現代人の遺伝子構造の約1%はデニソワ人に由来するという。
デニソワ人は既に絶滅した化石人類の一種であり、大きな歯を持っていたとされるが、詳細の解明は進んでいない。まったく未知の人類と考えられていた時期もある。
これだけでも科学界は当時、異様な衝撃に包まれたようなのですが、さらに、ここに「現世人類」と「もうひとつの謎の人類種」も交配していたというショッキングな古代の話であります。
そして、その謎の人類種は「アジアからやってきた」ようです。
では、ここから記事です。
Ancient Humans Had Sex With Mystery Species, New DNA Study Shows
THP 2013.11.19
古代の人間は謎の種と性交をしていたことが、新しい DNA の研究によって示される
▲ 骨から復元されたデニソワ人。
11月18日、異なるふたつの古代のゲノム(遺伝子全体)が、ロンドンの王立協会の会合で発表された。ひとつはネアンデルタール人、もうひとつは古代デニソワ人のものだ。
それらのゲノムが示したことは、30,000年以上前、アジアからヨーロッパに住んでいた古代の複数の人類間で異種交配が行われていたということだ。
そして、そこにはいまだ知られていないアジアからの謎の古代人類の種が含まれていることをも示した。
ロンドン大学の進化遺伝学者、マーク・トーマス( Mark Thomas )博士は、今回の研究について以下のように語る。
「これが示しているところは、私たちは古代の『ロード・オブ・ザ・リング』(「指輪物語」)の世界を見ているということです。つまり、古代の地球には非常に多様な人類種の社会グループがあったということです」。
▲ 発掘中の研究チーム。
2010年に、ネアンデルタール人とデニソワ人が異種交配していたことが判明したことは、人類史の研究での革命的な発見だったが、それだけではなく、そこに生態学的な意味での現世人類も交配に加わっていたということで、現代の人類種の遺伝的多様性はそのためであることがわかってきていた。
そして、今回の解析チームのひとりであるハーバード大学医学部の進化遺伝学者デビッド・ライヒ( David Reich )博士は、驚くべき発表をした。
デニソワ人は「謎の人類種」と交配していたのだ。
この謎の人類種は 30,000年以上前にアジアに住んでいたすでに絶滅した古代人類種だが、現世人類でも、ネアンデルタール人でもない、まったく未知の種だ。
会合の場は、この新たな人類である可能性を持つ種についての予測で騒然とした。
ロンドン自然史博物館の古人類学者であるクリス・ストリンガー( Chris Stringer )氏は、「我々には皆目見当がつかないのです」と述べた。