2014年02月10日



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ヴォイニッチ手稿とアステカ文明のリンク(2) : 論文「ヴォイニッチ手稿の植物学、動物学、および鉱物学に関しての予備的分析」



前記事、

ヴォイニッチ手稿とアステカ文明のリンク(1) : 植物学者とアメリカ国防総省の情報技術者がつきとめた「古代メキシコの植物学と消滅した言語」との共通性
 2014年02月09日

からの続きとなります。

前記事をお読みになられていない場合は、上のリンクの前記事からお読みいただけると幸いです。

今回はその論文の内容を簡単にご紹介したいと思います。

アーサー・タッカー( Arthur O. Tucker) - 植物学者。米国デラウェア州立大学名誉教授。

レックスフォード・タルバート( Rexford H. Talbert ) - アメリカ国防総省の元情報技術者。 NASA の情報技術も担当。


のお二人によって調査、執筆されたこの論文は、全体として非常に長く、また難解で、完全な意味でご紹介するのは私の知識では無理ですので、調べられる範囲の資料を元に何とか翻訳できました冒頭の部分をまずご紹介させていただきます。

この部分を読むと、お二人は、もともとヴォイニッチ手稿に興味のあった人たちではないことがわかります。それだけに、過去の幻想的な伝説に固執することなく淡々と情報収集とデータ分析ができたのかもしれません。

適度に、注釈や写真などを入れています。

それでは、ここからです。





A Preliminary Analysis of the Botany, Zoology, and Mineralogy of the Voynich Manuscript
米国植物協議会 HerbalGram

ヴォイニッチ手稿の植物学、動物学、および鉱物学に関しての予備的分析


我々についての前置き

我々はヴォイニッチ手稿の存在については以前から知ってはいたが、非常に多くの人々と同様、それはおそらく幻想的で手の込んだ単なるでっち上げ( hoax )として認識しており、科学的な意味でとらえることを却下していた。

これらの散乱し、交差する証拠の背景には、1576年 から 1612年に神聖ローマ皇帝として在位したオーストリアのルドルフ二世の存在がある。


(訳者注)ヴォイニッチ手稿は、 1582年に、ルドルフ二世によって購入されたことが分かっています。


ヴォイニッチ手稿に関しての出所や原点は、厳密にはすべてが推測だが、しかし、このような疑わしい主張は、学者たちの思考をチャンネル化してしまっており、そこに実りは生まれなかった。

我々は(今のところ) 1576年から 1612年の期間より以前のヴォイニッチ手稿の存在の証拠となる繋がりにおいて明確なものは存在しないという事実と直面しなければならなかった。

したがって、我々は、ヴォイニッチ手稿に描かれている植物の地理的な起源を同定するために、自分たちの背景としてある植物学者としての植物学や、あるいは、情報技術者としての化学的視点から、世界中の植物を偏見なく探し出すことに決めた。

最良の説明への仮説推論は、たとえば、医師が患者を診断する際や、法医学者や陪審員が犯罪者に対して犯罪の有無を決定する時に使われるが、その場合、一般的に科学的方法を適用する。

そして、仮説推論では、たとえ、それらが相互にまったく関係ないと思われることでも、すべての事実を記録する必要がある。

その中で、我々は、メキシコで記された「アステカの薬草本」とも呼ばれる 1552年のクルズ・バディアヌス写本( Codex Cruz-Badianus )の9折目に描かれるサボンソウ( Soap Plant / Chlorogalum )のイラストと、ヴォイニッチ手稿に描かれるイラストの相似性に心を打たれた。

クルズ・バディアヌス写本では、つぼみと花の両方が葉と共に描かれている。ヴォイニッチ手稿ではその植物は、ひとつのハート型のつけ根を持つ葉と共に、つぼみだけが描かれている。


(訳者注)

cruz-badianus.jpg

▲ クルズ・バディアヌス写本の植物。これは、上で書かれているサボンソウではないです。


chlorogalum-soap-plant-01.jpg

▲ サボンソウ。論文では、学術名の xiuhamolli という名称で書かれています。


これが示唆する新世界の起源の可能性は、これまでのヴォイニッチ手稿研究者からの分岐点を設定することなり、もし、我々の識別によるこれらの植物、動物、そして鉱物がメキシコか、その周辺から発信されている場合、私たちの仮説推測は、1521年のヌエバ・エスパーニャ副王領成立の先の、ヨーロッパに初めてヴォイニッチ手稿が現れた 1576年に焦点を当てなければならない。


(訳者注)ヌエバ・エスパーニャ副王領とは、 1519年から1821年までのスペイン帝国の副王領地のことで、北アメリカ大陸、カリブ海、太平洋、アジアに至る範囲でした。





というようなものです。

ここは序文の中の、しかもその序文の前半部分だけで、その後、非常に長い説明が始まりますが、そこは簡略化し、図でご説明したいと思います。

いずれにしても、 神聖ローマ皇帝に在位( 1576 - 1612年)したオーストリアのルドルフ二世が所有していたことから歴史が始まるヴォイニッチ手稿の出所は、どうやら、スペインの南米征服などの時期とのリンクがあるらしいということになってきているようでもあります。

ここからはこの論文にに出ている図に焦点を当てたいと思います。





植物学者がヴォイニッチ手稿のイラストから同定した植物の一部


木になるアサガオ

上の論文の中で、「クルズ・バディアヌス写本のイラストと、ヴォイニッチ手稿に描かれるイラストの相似性に心を打たれた」とあるものは、多分、これではないかと思います。

vvv-02.jpg


この図は、前記事にも掲載しましたが、イポモエア・ムルコイデス( Ipomoea murucoides )という植物だと同定されています。

ヴォイニッチ手稿に書かれてあるのはつぼみの状態で、調べてみますと、イポモエア・ムルコイデスのつぼみは下のようなものでした。

bud-1.jpg


とはいっても、イポモエア・ムルコイデスと言われても全体像が何だかわからないので、さらに調べてみると、九州大学大学院・理学研究院のサイトに「木になるアサガオ」という、とてもわかりやすい表現のページがあり、下の写真がありました。

ki-as.jpg

▲ 九州大学大学院理学研究院 Ipomoea murucoides より。


ヴォイニッチ手稿では、つぼみの状態で描かれていますが、1552年のメキシコのクルズ・バディアヌス写本( Codex Cruz-Badianus )では、開花した状態も描かれています。

flower-cruz-badianus.jpg

Codex Cruz-Badianus より。


どうやら、この「イポモエア・ムルコイデス」という植物と「クルズ・バディアヌス写本」というふたつのメキシコと関係するものとヴォイニッチ手稿が結びついたことが、今回の研究の対象を、「メキシコ周辺にする」というキッカケとなったもののひとつだったようです。


メキシコ周辺の象徴のひとつであるサボテンの仲間もわかりやすい特徴を持っていたようです。





オプンティア(ウチワサボテン)の一種

vvv-01.jpg


オプンティアというのは、 Wikipedia によれば、


> サボテン科の属の1つ。いわゆるウチワサボテン類の中で典型的な種の多くがここに属している。約200種が知られ、サボテン科の数多くの属の中で、最も多くの種を擁する属でもある。


というもので、わりと一般的なサボテンの仲間のようですが、上のヴォイニッチ手稿で白く囲まれているオプンティアは、その 200種類あるという中の「オプンティア・フィカス・インディカ( opuntia flcus-indica )」という種と同定。また、これは、アステカの書にある nashtli とか nochtli (カタカナの読みに変換できないです)というサボテン種と共通項があるそう。

これらの仲間は何ともきれいで、かつ不思議な形状をしているものが多いです。

opuntia_ficus-indica.jpg

▲ オプンティア・フィカス・インディカ。


opuntia_riviereana_1.jpg

▲ 同じ仲間のメキシコのオプンティア・リヴィエレアナ( Opuntia riviereana ) 。


あと、日本人には比較的親しみ深い、「食べる根っこ関係」を取り上げます。





ヤマイモの世界

voynich3.jpg


上の写図で白の線で囲まれたものは、「ディオスコレア・レモティフロラ( Dioscorea remotiflora )」という植物と同定され、これは、アステカの写本にもトゥラカノーニ( tlacanoni )という種として描かれているのだそう。

ディオスコレア・レモティフロラというのはメキシコ北部から南部まで一般的にあるものだそうですが、名前だけではどうも実物の想像ができないですので、調べましたら、ディオスコレア・レモティフロラというのは下のものです。

imo-mexico-01.jpg

▲ Google Dioscorea remotiflora より。


これは要するにヤマイモですね。

あるいは、北海道などでいう長芋。
葉っぱは下のようなものです。

imo-mexico-02.jpeg

▲ ディオスコレア・レモティフロラの葉と茎。 Instituto de Biologia より。


上と同じようなヤマイモは、今でもメキシコや、あるいは南米などで食べられているようですが、どちらかというと、現在では、「ワイルドヤム」という名前で健康補助食品的に世界中で売られているもののようです。

下は海外のサイトですが、粉末で販売されたりするもののよう。

yam-extract.gif


ヤマイモ好きな私などは「粉末なんかにしないで、醤油かけろ、醤油」とは思いますが、しかし、健康食品になるくらいですので、多分、滋養にいいのでしょう。そして、ヤマイモのたぐいは、アステカ文明下でも「栄養のつくもの」として食べられていたと思われます。あるいは、何らかの病気や症状に効くもの、つまり「薬」として説明されていた可能性もあります。

そして、仮にヴォイニッチ手稿がアステカ文明と関係があるならば、ヴォイニッチ手稿の中にヤマイモの効能が説明されていても不思議ではない感じがします。


関係ないですが、このメキシコのヤマイモであるワイルドヤムは、たまに変な形のものができるそうで、下は昨年の記事ですが、このような人間型イモが収穫されることが結構あるそうです。

yam-man.gif

▲ 2013年76月18日の NewsRescue より。



今回は植物の話のほうを取り上げましたが、論文ではヴォイニッチ手稿のイラストから、

ポポカテペトル山腹の16世紀初頭の修道院群

popo-catepetl.jpg


アリゲーターガー(アメリカ、メキシコなどに住む北アメリカ最大の淡水魚)

Atractosteus_spatula.jpg

▲ アリゲーターガー( Atractosteus spatula )。 Wikipedia より。


メキシコザリガニ( Cambarellus montezumae )


など、植物だけではなく、多数のイラストについて、メキシコの様々な実在する動植物や建造物などと同定しています。


もちろん、これらはあくまで「仮説」であり、何らかの確定があったわけではないですが、数百年来の謎のひとつであるヴォイニッチ手稿は、もしかするとメキシコのものか、それと関係する写本であるという概念が初めて導入されたということは事実だと思われます。

個人的には、今回のことにより、ヴォイニッチ手稿は「異常」とか「神秘」というようなキーワードで語られるものというより、「アステカ文明下での日常生活でのヒーリング」というものと関係するもののような気もします。

それだけに、文字の内容も知りたいですね。

今回の仮説推定を元にして、古典ナワトル語の専門家と暗号解読の専門家がチームを組めば、少し解読の可能性があるのかも。

下の記事は関係する過去記事です。





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