2014年02月23日



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スタンリー・キューブリックとT氏のふたりの亡霊に私はまたも月の世界へ引き戻される




まだ人類が月から地球を見たことのない頃の「地球の出」/1965年

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▲ アポロ8号がはじめて宇宙から月と地球を撮影したのが1968年。その3年前の 1965年から撮影が開始されたスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』の月から見た地球。



はじめて人類が月サイドから地球を見た光景/1968年

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▲ 『2001年宇宙の旅』公開後の 1968年12月24日にアポロ8号が撮影した月面の方向から見た地球。



日本の探査機がその光景を再確認した時/2007年

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▲ 日本の月周回衛星「かぐや」が 2007年11月に撮影した月と地球。宇宙航空研究開発機構より。






 


時間のない1週間

今週は、家族を含めて周囲が次々とインフルエンザとなり、結局、発症していないのが私だけということもあり、家事なども含め、慌ただしく過ぎました。家事はふだんでも、「手の空いている方がやる」ということが普通になっていて、そんなに違うことはないのですが、作る料理に「病人向け」というのを取り入れなければならなかったり。

それにしても、こう・・・最近になって、さらにインフルエンザワクチンの予防効果は薄くなっているのでは、ということは実感として感じます。周囲では受けている人がバタバタかかっています。

予防効果については、インフルエンザワクチンの有効率というページによると、鼻スプレー型のワクチンはそこそこ有効であることが書かれていますが、一般的な注射タイプのだと下の程度の予防率のようです。

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▲ カピバラあかちゃんこどもクリニックより。「回避」という部分がワクチンの有効率に当たります。


このページは小児科の病院サイトなので、子どもを対象とした調査かもしれませんけれど、いずれにしても、打つと打たないでは、そんなに大きな差があるということでもないようにも見えます。


そんなわけで、慌ただしい感じの日々でしたが、それと同時に、最近見つけたあるページを何日かをかけて読んでいました。それはいわゆる「アポロ計画陰謀論とスタンリー・キューブリックとの関係」について書かれたものでした。偶然見つけたサイトです。

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再び私の前に現れたキューブリックの亡霊

ずいぶんと前のことになりますが、過去記事に、

キューブリックの亡霊: 2001年宇宙の旅とアポロ11号の月面着陸
 2010年12月05日

というものがあります。

フランスのテレビ局が制作したフェイク・ドキュメント「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」というものをご紹介したものでした。

その番組はドキュメントではなく、娯楽ドラマといった感じの番組ですが、


「アポロ 11号の月面着陸シーンは、地上のスタジオで撮影された。アメリカ政府からそれを依頼されたのは映画監督のスタンリー・キューブリックだった」


というようなことが描かれています。

最近見つけて読んだそのサイトは、「スタンリー・キューブリックはいかにしてアポロの偽の月面着陸シーンを撮影したか」というタイトルで、そのことを本当に徹底的に述べているページでした。

sk-ap.gif

How Stanley Kubrick Faked the Apollo Moon Landings より。


確かに陰謀論系の話として書かれてはいるのですが、多分、書いた作者の人が熱烈なキューブリックのファンなのだと思います。とにかく、その熱意がものすごいものなのでした。そして、これは論文といって構わないほど長く、飛ばし読みでも何日かがかりでしたが、最後のフレーズを読んだ時には少し涙が出るほどのものでした。

この「論文」は最後だけ下のようにややセンチメンタルに終わるのです。


遺作となる『アイズ・ワイド・シャット』は 1999年7月16日に公開された。 スタンリー・キューブリックは、この映画の公開をこの日付にすることを契約書に折り込むことを最初に主張していた。

そのちょうど 30年前の 1969年7月16日にアポロ11号が発射された。

そして今日 2009年7月16日、幸せな 40周年目を迎える。

スタンリー、これでやっとあなたは安らかに眠りにつくことができる。




というものです。

つまり、これは最近のものではなく、今から4年前の記事なのですが、「幸せな 40周年目」という意味は多分この記事を投稿したこと意味しているのだと思います。

まあしかし、上にもリンクした過去記事、「キューブリックの亡霊」の際にも、

> もっとも、私はアポロ計画陰謀論というものに興味がなく

と書いているように、この記事にしても「アポロ計画陰謀論」の方に興味があったのではなく、映画監督としてのスタンリー・キューブリックの手法を調べ尽くしている内容に感動を受けたということがあります。


ところで、なぜ、「アポロ計画陰謀論に興味がない」というように書いたのかというと、アポロ11号という個別の問題はともかくとして、

「人類が月に行ったこと自体」はほぼ証明されたので

ということがあります。

それは、日本の月周回衛星「かぐや」の探査によるものでした。「かぐや」というのは、 宇宙航空研究開発機構 ( JAXA )のページの説明では下のようなもので、現在は運用は終了しています。


月周回衛星「かぐや」

2007年9月14日、日本初の大型月探査機がH-IIAロケットによって打ち上げられました。この計画は「SELENE(セレーネ)」と呼ばれ、アポロ計画以来最大規模の本格的な月の探査として、各国からも注目されています。




この日本の「かぐや」はいろいろなことを発見していますが、中でも、アポロ15号の撮影した着陸地点の月の地表と一致した画像を撮影していて、その時点で、少なくとも、アポロ15号が月面に着陸したことには疑いの余地がなくなっています。

アポロ15号が月面着陸した場所から撮影した写真(1971年7月)

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月周回衛星「かぐや」が撮影した月面(2008年7月)

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▲ 共に、 2008年7月16日の Universe Today より。


もちろんこのことがアポロ 11号の着陸の何かを示しているわけではないですが、「人類は月に行ったか行かなかったかという二択」では「行った」という認識が現状では妥当だと思われます。


しかし、映画監督としてのキューブリックについては、私もいろいろと謎に感じていたことがあったのですが、その「スタンリー・キューブリックはいかにしてアポロの偽の月面着陸シーンを撮影したか」というサイトを読んで、(正しいかどうかはともかく)いろいろな疑問が少し解けたような気がして、それで読みふけっていた次第です。

ちなみに、本当に全然関係ないですが、このキューブリックという人は、最近亡くなった私の長年の友人とよく似ているのでした。

地球サイズの黒点を眺めながら「必ず今年終わるこの世」を神(のようなもの)に誓って
 2014年01月09日

という記事でちょっとふれましたけれど、いろいろな意味で私の最大の恩人のような人でもあった年下の男性が最近亡くなっちゃったんです。まだ 48歳でした。

その田中くんという人のルックスをわかりやすく紹介するには、キューブリックの写真を探せばいい、というほど似ている部分が多いのでした。

下の右の太った人がキューブリックですが、これとほぼ同じ姿の友人でした。

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▲ 1980年の映画『シャイニング』の撮影風景より。中央が主演のジャック・ニコルソン、右が監督のスタンリー・キューブリック。

田中くんとは何度か外国にも行きましたが、行く先々で目立ちました。韓国では田中くんを見て逃げる人までいました(笑)。フィリピンでは空港で警察の別室につれていかれました。

そんな友人でしたねえ・・・。まあ、キューブリックと似ているのはルックスだけで、中身は違いましたけれど。






『博士の異常な愛情』から『2001年宇宙の旅』までの出来事

私はこのキューブリック監督の作品の中で最も好きなのは、1963年に撮影された『博士の異常な愛情』というものなんですが、今回読んでいたサイトでの主張では、

『博士の異常な愛情』の B-52 戦略爆撃機の特撮にとても感心した NASA がスタンリー・キューブリックをアポロ着陸ねつ造計画の撮影責任者にしようと発案した。


ということなどが書かれています。
ただし、その根拠は文書的に残っているわけではなく、曖昧です。


『博士の異常な愛情』という映画は、 Wikipedia の説明では、「冷戦時代の世界情勢を背景に、偶発的な原因で核戦争が勃発し人類滅亡にいたるさまをシニカルにえがくコメディ」ですが、その Wikipedia のページには、下のような下りがあります。


核攻撃仕様のB-52内部構造はアメリカ空軍の機密で、全く協力が得られなかった。細部まで造り込みがされているが、これは美術監督ピーター・マートンの創作である。マートンは合法範囲で可能な限りB-52のインテリアを調べ上げた。

苦心の創作が結果として実機とあまりにも一致していたため、美術チームはFBIの捜査対象とされたほどであったという。




というもので、そもそもがスタンリー・キューブリックと、そのスタッフというのは「異常なほど優秀だった」ことがうかがえますが、今回読んでいたサイトによれば、この映画が「 NASA と米国政府のお目にかなった」との主張でした。

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▲ NASA を唸らせた(かもしれない)映画『博士の異常な愛情』に出てくる核攻撃仕様の B-52 戦略爆撃機。アメリカ軍の協力が一切得られず、内部も含めて、すべて自作。


そして、サイトの作者は、「月面着陸映像制作のその見返り」は・・・映画『2001年宇宙の旅』の制作予算を無尽蔵に提供する・・・ことだったと。

ちなみに、『2001年宇宙の旅』というのは恐ろしく予算のかかった映画で、公式には 1050万ドル(当時のドル円換算で約 38億円)となっていますが、そもそも、この 40年前の 38億円の価値だけでもちょっと換算がうまくいかないですけど、それでも、実際にはさらにかかっていたという話もあります。何しろ、『2001年宇宙の旅』は、足かけ4年に渡って撮影されています。

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▲ 2001年宇宙の旅のシーン。木星の衛星軌道上で巨大なモノリスと遭遇した後、ストーリー中の人物は「人類を超越した存在」であるスターチャイルドへと進化を遂げます。


すごい話としては、この映画の製作会社だった MGM の当時の社長は 映画が公開された 1968年に、公式に、

「公開されるまで一度もラフカットを見たことががなかった」

と述べていることです。

作品に口出しすることで有名なハリウッド・メジャーが、しかも、社運がかかっているかのような大規模な予算で作られた映画への対応としてはちょっとあり得ないことのようにも思えます。

しかし、これを「 MGM はまったくお金を出していなかった」とすれば、社長のこの態度も納得できます。基本的に今も昔も、ハリウッドの映画メジャーの経営陣は作品の内容などはどうでもよく、「お金になる映画かどうか」だけを考えます

なので、今の円で換算すれば 100の単位の億がつくような、しかもアート映画にも近い「退屈な作品」を、黙って4年間も作らせておくわけもないだろう・・・とは思ったり。





映画も現実も技術の中では同じという現実

しかし、その最近読んでいたサイト自体はどこまで書いても、陰謀論の域を出ないものですので、内容を細かく紹介するつもりはないですが、作者は、その中で「映像技術」について様々に述べていて、その中でも、昔の映画では一般的な技術だった、スクリーン・プロセス(プロジェクター合成)というような呼び方をされる技術について言及しています。

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▲ スクリーン・プロセスの原理。 Wikipedia より。


スクリーン・プロセスとは簡単にいうと、人物の背後の風景をスクリーンに写すようなことで、たとえば、上の『2001年宇宙の旅』を例にすれば、下のような技術か、それと類似したものです。

これはスタジオ内で、後ろにスクリーンのようなものがありますが、ここに映像を投影します。

Space-Odyssey.jpg

▲ 2001年宇宙の旅の撮影風景。17 little known facts about 2001: A Space Odyssey より。


そうして撮影された映像は下のような光景となるのです。

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後で合成するわけではないので、自然な光景に見えます。

他のシーンで、具体的に線を引くと、下のようになります。

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▲ 白い線から手前がスタジオ内。白い線から向こうがスクリーン。


オリジナルは下の映像です。

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作者はこの技法がアポロ 11号の写真に多用されていると主張します。

たとえば、下の写真は、

ap-07.jpg


下の白い線の向こう側がスクリーン・プロセスだと作者は主張します。

ap-08.jpg


このような例がサイトでは何枚も何枚もピックアップされています。

それと、やはり特撮映画で多様される手法でもある「写真のガンマ値」というものを増加させることや、画像の「コントラストの調整」で本物らしく見える細工をしていることについても述べています。

この「画像の細工」については NASA は今でもおこなっていて、それは NASA 自身認めています。しかし、それは偽造のためではなく、何らかの理由のためだとか何とかで、よくわからないですが、過去にも火星の写真をはじめとして、細工された疑いのかかる画像についての報道は多かったです。


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▲ オーストラリアの報道をご紹介した 2010年10月9日の過去記事「土星の衛星ディオネの後ろを通過する直径 1000キロメートル規模の巨大物体の正体は」より。



火星の写真や太陽の画像なんかもそうですけれど、修正そのものは常に加えられています。

ただ、 NASA が数々の写真を修正するその理由はよくわかりません。

陰謀論とは関係のない科学的な理由なのかもしれないし、それとは違う意味かもしれないです。






いずれにしても、すでに存在しないアポロのオリジナル資料

まあしかし、すでにアポロの資料は、アームストロング船長の月面着陸の様子や音声が収められたビデオを含めて、「ほぼ紛失」していて、今ではビデオなどのオリジナル資料の多くが残っていません。これは 2006年に発覚しました。

下の記事は、国立国会図書館のサイトに残っていた記事です。


アポロ計画のオリジナル資料をNASAが紛失
2006年8月16日

NASAが保管していたアポロ計画の通信記録テープが紛失し、約1年間にわたる調査が行われたものの、いまだ発見に至っていないことが明らかになりました。

紛失したテープは約700本におよび、ニール・アームストロング船長の有名な「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」を記録したオリジナルテープも、目下、紛失状態にあるとのことです。

ただし発見されたとしても、磁気が劣化していて再生できる状態ではない、とNASAのスポークスマンはコメントしています。




テープといっても、現在のようなコンパクトなものではないです。

moon_tapes.jpg

▲ NASA の Apollo 11 Tapes より。


こんな巨大なテープが 700本紛失・・・。

NASA は月の石も 2011年に紛失しています。


NASAずさん管理 月の石など大量紛失
共同通信 2011.12.12

アポロ宇宙船が持ち帰った月の石など貴重な地球外物質の試料517点を、米航空宇宙局(NASA)が紛失していたことが9日までに分かった。

8日付の監察官の報告書によると、517点は月の石や土壌のほか、隕石や彗星のちりなど。1970〜2010年の間に紛失した。





このあたりにも、いろいろな陰謀論が出やすくなる素地があるのかもしれないです。これらが単なる「ずさん」なのか、それともそうではないのか、という意味で。

現実はいろいろなことがあります。

さて、そろそろ夕食の準備をしなければ。
そして、今夜はまた『博士の異常な愛情』でも見よう。