NASA のS・I・ラスール博士が 1971年にサイエンスに発表した論文の概要
・二酸化炭素の増大は地表の気温は上げるが、「大気の気温の上昇を妨げる」
・エアロゾルはその二酸化炭素による「大気の気温の低下を増強」する
・この状態が世界中で起きれば「氷河期」になり得る
1971年7月9日の米国ワシントン・ポストより
▲ 過去の報道メディアの内容を保存・公開している ProQuest Archiver より。
上の新聞の記事の内容
世界は今から先のわずか 50年、あるいは60年後には悲惨な新しい氷河期に入るかもしれない、と世界トップクラスの大気科学の専門家は述べる。アメリカ航空宇宙局(NASA)の科学者でもある米国コロンビア大学のS・I・ラスール博士がその人だ。
終わらないアメリカの冬
日本の寒さは少し落ち着いた感じもあり、先行きはわからないですけれど、一応春に向かっているというようなことでよろしいかと思います。昨日などは久しぶりに薄着で外を歩きましたが、風はやや冷たいものの、太陽の光は「ああ、春だなあ」と思えるものでした。
しかし、アメリカは違います。
下の写真は、「再び凍結したナイアガラの滝」について報道する昨日の米国 CTV ニュースです。
▲ 2014年3月4日の CTV Niagara Falls freezes again as spring seems far away より。
ナイアガラの滝は今年の1月の始めにも凍結して、その際にも、
・爆発的に増えている地球付近を通過する小惑星。そして、スロースリップが発生し続ける太平洋
2014年01月12日
という記事でご紹介したことがあります。
今回の場合は「凍結したナイアガラの滝のライトアップ」などもしているようで、夜になると、下のような光景が見られるようです。
▲ 2014年3月4日の英国 Daily Mail より。
まあ・・・上のライティングがキレイかどうかは個人的には微妙なところで、日野日出志さんの漫画的な雰囲気も漂わしているような気もしないでもありませんが、いずれにしても、アメリカは3月に入ったというのに、またもナイアガラの滝が凍結してしまったのでした。
▲ 巨匠・日野日出志さんの有名な作品『蔵六の奇病』の表紙。こういうのがお嫌いな方も多いと思いますので、小さくしています。
ところで、アメリカで凍っているのはナイアガラの滝だけではありません。
五大湖もすべてが凍結し始めているのです。
五大湖も100%の凍結寸前
▲ 2014年3月4日の Live5News より。
これは、
・米アメリカ大陸の五大湖のすべてが凍結に向かう。観測史上の記録を更新
地球の記録 2014年03月04日
という記事に NOAA が3月2日に発表した凍結状況の図を載せています。
ただ、このような 90パーセント以上の凍結そのものは異常といえるほどのものではないようです。調べてみますと、20年くらいの周期で、90パーセント以上凍結する「サイクル」が存在するようです。
下は NOAA のグラフです。
▲ PolicyMic より。
観測史上では 1979年の 94.7パーセントが最高となっていますが、現在のアメリカの気温の状況を考えると、この記録を上回る可能性があり、「 100パーセントが凍結」という可能性も伝えられています。
ただ、上のデータはアメリカの NOAA のものなのですが、どういうわけか、同じく五大湖の観測をしているカナダでは「違う結果のグラフ」が示されます。
カナダ当局のデータでは五大湖の凍結は過去最高を更新
アメリカの五大湖の凍結の調査データとは別に、カナダ環境局にある「カナダ氷層局( Canadian Ice Service )」という、カナダとその周辺の氷の状況の調査と研究をする部局があり、そこでも五大湖の凍結状況のデータを発表しています。
▲ 2014年3月3日のカナダ氷層局の五大湖の氷のデータより。
ちょっと見づらいのですが、上の写真はオリジナルのグラフにリンクしていますので、そちらをご覧下さるとわかりやすいかと思います。
こちらのデータでは 3月 3日の時点で五大湖の凍結範囲は過去最大となっています。
まあ、いずれにしても、ナイアガラの滝は凍り、五大湖は凍り、アメリカ東部は今も暴風雪が続いています。
1970年代に確定しつつあった「 21世紀の新しい氷河期」の時代
今回の本題は、トップに貼りました「 1971年の NASA の科学者の記事」を知ったことによるもので、そのことをご紹介したいと思って記事にしました。これは、元は米国の科学系ブログ Real Science の作者が見つけたもので、ワシントン・ポストのアーカイブにあったものです。
多分、このアーカイブも、有料会員などは記事の全文を読めると思うのですが、私たちが読めるのは、トップに貼りました冒頭部分だけでした。
それで、その記事に出て来る NASA のS・I・ラスール博士という名前を手がかりに、資料を探してみましたら、1971年 7月 9日の科学誌「サイエンス」に、ラスール博士が発表した論文の内容が書かれてあるものを見つけたのでした。
▲ Science Mag Atmospheric Carbon Dioxide and Aerosols: Effects of Large Increases on Global Climate より。
こちらも概要ですが、ご紹介したいと思います。
ここからです。
1971年7月9日 サイエンスに掲載
大気中の二酸化炭素とエアロゾル:地球気候上への大幅な影響
S・I・ラスール
S・H・シュナイダー
概要
二酸化炭素と大気中のエアロゾルの密度の大きな増加が及ぼす地球全体の気温への影響がコンピュータにより計算されている。
大気中の二酸化炭素の増大は、表面温度をこそ上昇させるが、昇温速度は、大気中の二酸化炭素の増加に伴って減少することがわかった。
しかし、エアロゾルの密度の増加の最終的な効果は地球の表面温度を低下させることにある。なぜなら、後方散乱の指数関数的な依存性はエアロゾルの内容の増加に伴い、気温の低下を増強するのだ。
もし、エアロゾル濃度が数年以上にわたり、3.5 ° K 程度増加するだけでも、地球の表面温度を低下させるのには十分であり得る。
世界全体でこのような気温の低下が起きれば、氷河期を引き起こすのに十分であると考える。
大気中の二酸化炭素とエアロゾル:地球気候上への大幅な影響
S・I・ラスール
S・H・シュナイダー
概要
二酸化炭素と大気中のエアロゾルの密度の大きな増加が及ぼす地球全体の気温への影響がコンピュータにより計算されている。
大気中の二酸化炭素の増大は、表面温度をこそ上昇させるが、昇温速度は、大気中の二酸化炭素の増加に伴って減少することがわかった。
しかし、エアロゾルの密度の増加の最終的な効果は地球の表面温度を低下させることにある。なぜなら、後方散乱の指数関数的な依存性はエアロゾルの内容の増加に伴い、気温の低下を増強するのだ。
もし、エアロゾル濃度が数年以上にわたり、3.5 ° K 程度増加するだけでも、地球の表面温度を低下させるのには十分であり得る。
世界全体でこのような気温の低下が起きれば、氷河期を引き起こすのに十分であると考える。
というものですが、正直いいまして、「後方散乱の指数関数的な依存性は」あたりの意味は自分でも意味がわからなく、直訳でしかありません。
あと、エアロゾルというのは、日本エアロゾル学会の説明では、
気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子
のことですが、エアロゾルの単位は、こちらのページなどを見ますと、
> 常用単位はg/m3, mg/m3, μg/m3である。
とありまして、上の「3.5 ° K. 」というのはエアロゾルの単位のことではないかもしれないですが、いずれにしましても、内容としては、
・二酸化炭素の増大は地表の気温は上げるが、「大気の気温の上昇を妨げる」
・エアロゾルはその二酸化炭素による「大気の気温の低下を増強」する
・この状態が世界中で起きれば氷河期になり得る
・エアロゾルはその二酸化炭素による「大気の気温の低下を増強」する
・この状態が世界中で起きれば氷河期になり得る
ということになるようです。
これが面白いと思ったのは、
・二酸化炭素は地球の気温を低下させる原因となる
としていることです。
二酸化炭素は最近までは「気温上昇の元凶」と呼ばれていたわけですが、少なくとも、その頃の研究ではその逆だったと。
さらに、エアロゾルは、上の日本エアロゾル学会によりますと、
エアロゾル粒子は,重金属粒子やディーゼル黒煙,たばこ煙,アスベスト粒子,放射性粒子など,以前には環境汚染や健康影響など,主として悪玉としてのエアロゾル粒子が議論されてきました
とあり、つまり、「公害でたくさん出るもの」でもあるようで、これなども、気温上昇の元凶とされてきましたが、少なくとも当時のトップ科学者たちの研究では、
「それが気温の低下を加速させる」
という発見がなされていたようです。
もちろん、その後、これらの学説がどうなっていったのかを知るまでの資料は見つけていませんので、ラスール博士たちの発見が間違っていた可能性もあります。
しかしまあ・・・・・いずれにしても・・・・・時代と共にいろいろと変わるものです。
そして、今年の冬はとりあえず終わりつつありますけれど、冬は来年も再来年もやって来ます。
どんな今後の数十年になるのでしょうね。