▲ 2014年5月3日の Space.com Bus-Size Asteroid Buzzes Earth, Comes Closer Than the Moon より。
2014年に新発見された地球近傍小惑星の数
最近、「また、地球近傍小惑星(地球の近くを通過していく小惑星)が増えてきている」ということは思っていました。
上の報道は、5月3日のもので、記事には結構、派手なタイトルがついていますが、この 2014 HL 129 と名付けられた小惑星は、最近の地球近傍小惑星の中では地球から近いところを通過していくとはいえ、それでも、最も地球に近づく時で約 30万キロメートルで、サイズも約 10メートルと非常に小さな小惑星でもあり、ほとんど危険はないと思い、特に書くことはありませんでした。
しかし、上の記事の数日後、今度はさらに近い場所を通っていく小惑星が発見されていたりしまして、何より最近の地球近傍小惑星の数をお知りいただきたく、下の表を作成いたしました。
▲ 2014年5月7日の Spaceweather より、今わかっている分の、1ヶ月先までの地球近くを通過する小惑星。今年になって発見されているものが多く、また、小さな小惑星は多くが「直前」に発見されるので、結局は、この数は飛躍的に増えると思います。
上の中で、5月 3日の小惑星 2014 HL 129 が冒頭の Space.com で報道されていたものてす。
そして、その下の 5月 7日(日本時間では 5月 8日)に、地球と月の間を通過していく 2014 JR24 という小惑星は、地球から約 11万キロメートルの位置を通過していきます。これは最近の中では最も近い距離を通過するものだと思います。
とはいう、大きさは6メートルと非常に小さなものですので、たとえば、このようなサイズの小惑星が何らかの問題で地球の大気圏に突入しても、爆発して消えてしまうのが普通ですので、特に問題はないのですが、やはり上の「数」です。
そして、「 2014年になってから発見された小惑星」、あるいは、
・直前か、通過後に発見された小惑星
がどれだけ多いことか。
そして、最近は、比較的、地球に近いところを通過していく小惑星が多く発見されています。
カナダで見つかった「直径8キロメートルのクレーター」
昨日、カナダのアルバータ大学から、古代の小惑星の衝突で作られたクレーターが新しく発見されたことがニュースリリースとして発表されていました。
▲ 2014年5月7日のアルバータ大学 ニュースリリース Ancient crater points to massive meteorite strike より。
これは、カナダのアルバータ州というところで見つかったもので、大体ですけれど、報道から類推すると、下のあたりで見つかったもののようです。
▲ オリジナルの地図は、トラベルコちゃん - 海外特集より。
これは、
・5000 万年前から 7000 万年前のものと推定
・クレーターの直径は約8キロメートル
・衝突時の推定される爆発の威力は、現在の地球の最も強力な核爆弾の 200倍以上
というものなのですが、ここで、さらに以下のような記述があります。
「クレーターの大きさから衝突した小惑星の大きさを推定すると、直径 300メートルから 500メートルだったと考えられる。」
そうなんです。
8キロメートルという巨大なクレーターを形成するには、300メートルくらいの小惑星であれば十分のようなのです。
そして、その爆発力は、
・最も強力な核爆弾の 200倍以上
とのこと。
現在の最も強力な核爆弾が何かよくわからないですが、歴史上ということでは、旧ソ連の開発した「ツァーリ・ボンバ」という水素爆弾などが有名かと思います。
ツァーリ・ボンバ - Wikipedia によりますと、
ツァーリ・ボンバ(「爆弾の皇帝」の意)は、ソビエト連邦が開発した人類史上最大の水素爆弾の通称である。
単一兵器としての威力は人類史上最大であり、TNT換算で49500キロトン、これは広島型原子爆弾「リトルボーイ」の3300倍。
という、とんでもない威力の兵器ですが、アルバータ大学の研究者がこれを想定して言っていたということではないでしょうが、仮に、広島型原爆を想定していたとしても、「広島型原爆の 200倍」のエネルギーが、300メートルの小惑星の衝突でもたらされるということを今回のニュースで知ったのでありました。
▲ 核開発都市サロフの原爆博物館にあるツァーリ・ボンバの原寸大模型。
そして、まあですね・・・。
たとえば、さきほど載せました地球近傍小惑星の表ですけれど。
表の下のほうを見ますと、「直径 1.1キロメートル」などというものが実際にあるといえば、あるわけではあります。
もちろん、上の表の4つの小惑星は地球からはるか遠くを通っていくもので、地球に接近する可能性はほぼ完全にゼロです。
たとえば、直径が 1.4キロメートルもある 2002 JC という小惑星が通過する距離は、地球から約 1800万キロメートルという遠方で、たとえば、他からの力(浮遊惑星のようなものの衝突だとか)で軌道などを変えられない限りは、遠くを通過していくだけですので、現在の心配ということではないです。
・・・・・が、結局、こういうサイズの小惑星が実際に存在して、そして、「まだ見つかっていないものが数多くある」ということです。
火星の軌道の外に大挙して存在している彗星と小惑星の存在
過去記事の、
・太陽系内の「彗星と小惑星の数と配置の状況」に心底驚いた今日は小惑星 DA14 が最接近する日
2013年02月15日
という記事に NASA のジェット推進研究所が公開している「太陽系の中の彗星と小惑星の軌道図」をご紹介したことがありました。
その時は 2013年 1月 1日の時点の軌道図でしたが、現在は、2014年 1月 1日のものが載せられています。ほとんど違いはないですが、新しいほうです。
▲ NASA のジェット推進研究所 Inner Solar System Orbit Diagrams より、2014年1月1日の太陽系の中の彗星と小惑星の軌道図。
上の図は、
・黄色のドット(点)が小惑星
・矢印が彗星
・矢印が彗星
ということになります。
拡大しますと、
ということになるわけで、この数!
これらの彗星や小惑星の個々がどういう法則のもとで、あるいはどのような軌道で動いているのかはわからないですが、「長い時間の周期の軌道」を持つ小惑星、つまり、何万年、何十万年、何百万年といった軌道を持つようなものがあれば、
・直前に突然観測される
という可能性もあるとは思います。
上のほうに貼りました地球近傍小惑星の表で、直前に発見されている多くの小惑星のように突然出現しても、私たちにはなす術はないです。
いずれにしても、小惑星も、また火球の目撃も増えていますので、「そういうこともいつかはある」程度には気に留めておいてもいいのかもしれません。
そういえば、一昨日( 5月 6日)、「みずがめ座エータ流星群」というハレー彗星が母体だと考えられている流星群が最もよく観測されていたそうです。
それも加わっているせいか、地球の上空で交差する「火球」の数も活発です。
下は 5月 7日の地球上空を通過した火球で、全部で 20の火球が観測されています。
▲ 2014年5月7日の Spaceweather より。
ラインは軌道で、色の違いは火球の速度の違いをあらわします。
しかし、実は上の中で「みずがめ座エータ流星群の火球は8個だけ」なのです。他の 12個の火球は、流星群などに属さない、それぞれ独立した火球で、どうも火球の方も増えているようです。
地上も賑やかですが、空もとても賑やかです。