現在の地球の磁場は、過去の磁場の反転時と比較しても尋常ではない速度で弱まり続けている
先月書きました、
・地球の磁場が弱くなっていることを欧州宇宙機関の地磁気観測衛星が確認
2014年06月30日
で、欧州宇宙機関( ESA )が、地球の磁場と、そして地球内部からの信号を観測するために飛ばしている観測衛星 SWARM (以下、スウォームと記します)が、
「過去6ヶ月で地球の磁場が非常に早いスピードで弱体化している」ということを観測した
ということについて書きました。
今回はそれについて、
「磁場が弱くなっている原因は、地球の磁場の反転が近いことを示す」
と述べた欧州宇宙機関の科学者の話を取り上げた米国のライヴサイエンスの記事をご紹介します。
以下の図は、2014年6月の時点での、過去半年間の地球の磁場の強度の変化です。
・Livescience
上の図では、青色が濃ければ濃いほど「磁場が弱くなっている」ことを示し、赤色で示される場所は、磁場が強くなっていることを示します。
そのように見ますと、北極からカナダ、アメリカ、そして南米、南極大陸まで、地球の西半分のほとんどの場所で、過去6ヶ月間で磁場が弱くなっていることがおわかりかと思います。
もともと地球の磁場が過去一貫して減少していることは上にリンクしました記事などに、あるいは他の記事などでも記したことがありました。
1880年から2000年までの地球の地磁気の強度変化
しかし。
その磁場の弱まり方は、科学者たちの予想をはるかに上回っていたようなのです。
すなわち、今回の欧州宇宙機関の人工衛星スウォームによる観測により、
磁場の強度の減少率は、予想していた10倍以上の速さだった
ことがわかったのです。
上の「1880年から2000年までの地球の地磁気の強度変化」を適当に書き直すと、下のようなイメージになるというような感じでしょうか。グラフの傾斜も数値も適当で、イメージとしてのグラフです。
今回の記事には、以下のようなことが書かれてあります。
人工衛星からのデータでは、現在の磁場の弱まり方のスピードが、過去のそれよりも早いことを示している。
かつて、研究者たちは、「磁場の強度は1世紀において5パーセントの割合で減少していった」と見積もっていた。しかし、今回収集された新たなデータでは、地球の磁場が「 10年ごとに5パーセントずつの割合で強度が減少している」ことがわかった。
これは、従来考えられていたよりも、10倍の速度で地球の磁場の弱体化が進行していることになる。
とあるのです。
この「 10倍」というのは、科学的数値の予測の「誤差」としては、なかなか大きな桁ではないでしょうか。
ちなみに、この予測は、かつての地球の磁場の反転の際の速度に基づいているようです。
地球は、この約3億年くらいの間に、400回程度の磁場の反転を繰り返しているのですが、データ上では、それら過去の時より「今の磁場の弱まり方の速度が尋常ではない」ということなのかもしれません。
もっとも、「磁場の反転(磁場のポールシフト)が加速している」ことは、この 200年程度の短い期間だけでの観測でもわかってはいました。
過去記事の、
・ドイツの科学研究法人が「急速なポールシフトと気候変動と超巨大火山の噴火が同時に発生していた」ことを証明
2012年10月18日
では、「地球の磁場の反転の加速」について、下のように記しています。
1831年から2001年の間に、北極の磁極は 1,100キロメートルもロシア方向に向かって移動しています。特に、1970年以降は加速しており、それまで毎年 10キロ程度のポールシフトの進行だったものが、1970年からは約4倍の毎年 40キロずつの移動が確認されているのです。
地球では、過去3億3千万年の間に(回数の誤差はともかく) 400回ほどのポールシフトが起きたとされていて、「地球の磁場の反転」が発生する間の平均的な期間は約 20万年に一度程度になるようです。
なので、磁場の反転や磁場のポールシフト自体は特別な現象ということではないですが、では、何が問題なのかというと、上に書いた、磁場の移動距離と速度が「加速している」という点なのです。
また、これは、あくまで私自身の考えでしかないのですが、「最近起きているさまざまな現象も、急速な磁場の移動と関係した現象なのかもしれない」と思う面はあります。
たとえば、
・急速な気候変動
・増加する火山噴火
・増加する地震
など、一見関係なさそうなことも「関係しているのではないか」と思ったりするのです。
2014年の地震の増加については、最近の記事「 2014年の大地震の数は「平年の2倍以上」となっていた」をご参照下されば幸いです。
磁場が消えるとどうなるのか
また、上にリンクしました記事「地球の磁場が弱くなっていることを…」では、中国科学院の科学者たちが、科学誌に
「磁場が逆転する時、酸素が地球外へ流出していく」
という内容の論文を発表したことにもふれています。
▲ 科学誌「アース&プラネタリー・サイエンス・レターズ(Earth & Planetary Science Letters)」より。
つまり、磁場が極端に弱くなったり、あるいは磁場の反転によって、「地球の磁場が消滅する」ときには、これまで言われてきた一般論としては、
・地球が太陽放射線など、宇宙からの有害なエネルギーからの保護を失う
とされていて、また、上の最近の発表では、
・地球から酸素が外部に流出する
というようなことが言われたりしているのですが、ただ、今回の記事では、以下のように書かれています。
地球の磁場が弱くなったからといって、それが地球に大量絶滅などのような終末的な現象をもたらすという証拠はない。過去の磁場の反転時に大量絶滅は起きてはいないし、地球上が放射線で壊滅的な影響を受けた形跡も見当たらない。
ただ、それでも、研究者たちは、電力網と通信システムが危険にさらされる可能性は高いと考えている。
地球の生命には影響はないだろうけれど、電力・通信などのインフラに影響があるかもしれないと。
しかし、この話題を取り上げるたびに書くことですけれど、
「結局、磁場の反転や、磁場の消滅に伴って起きることは実際に発生してみないとわからない」
ということにはなるようです。
そして、その磁場の減少は急速に加速しており、欧州宇宙機関の言葉からの推測では、「今すぐ磁場の反転が起きてもおかしくはない」とさえ言えそうなのです。
インド洋だけ「磁場が強くなってきている」理由・・・?
ところで、上のほうに貼りました「過去6ヶ月の磁場の強弱の分布」を見ていた時に、ふと関係のない過去記事を思い出しました。
思い出したのは、
・アトランティスの伝説に結びつく「失われた大陸」をアフリカ沖のインド洋海底に発見したと国際科学者チームが発表
2013年02月25日
という記事なんですが、これは、ノルウェー、ドイツ、英国などの科学者チームが、「失われた古代の大陸」と考えられる海底地層を発見したという報道をご紹介したものです。
どうして、そんな記事を思い出したかといいますと、今回の記事で、上に掲載しました図と、過去記事に載せました図とを比較していただくとよろしいかと思います。
2014年の6ヶ月間の磁場の強度の推移(青が弱。赤は強)
上で見ると、インド洋のマダガスカルを中心とした周辺だけが、現在の地球の中で「磁場が強くなっている」ことを示しています。
そして、昨年、国際チームが「失われた古代の大陸」を発見したとされる場所が下です。
▲ 上の記事より。
ほとんど一致しますでしょう。
磁場が強くなってきているということが、地質的にはどのような意味を持つのかは私にはわからないのですが、このインド洋のあたりの海域から、「新しい大地」が浮上したりして(笑)。
まあしかし、日本の西之島も拡大し続けているわけですし、最近では「新しい大地が浮上する」という話もあながち、笑い話としてだけでは済まされない面はあります。
そして、ここでふと思い出しますと、5年くらい前のウェブボットにそのような記載があるんですよ。
抜粋しておきます。
非対称型言語分析報告書 1309 パート 1
ウェブボット 2009年3月7日配信
インド洋に新しい陸地が出現するとのデータがある。この陸地はいまはまだ海底だが、それは海中を航行するときに問題を引き起こす。
まあ、そのような話はともかく、ライヴサイエンスの記事をご紹介したいと思います。
ところで、記事に出てくる科学者の方は「磁場の反転は瞬間的に起きるものではなく、何万年もかかる」というようなニュアンスのことを語っていますが、実際、この 200年で 1000キロ以上の磁場の移動が観測されている中で、「何万年もかかる」という考え方は、すでに現実から逸脱した話のように聞こえないでもないです。
加速するだけした後に、地球の磁場は、それが反転する時は「わりとあっという間に」反転してしまうものなのかもしれないと思ったりもします。
というわけで、ここからが本記事です。
Earth's Magnetic Field Is Weakening 10 Times Faster Now
Livescience 2014.07.08
地球の磁場は現在10倍の速度で弱まっていっている
極めて人体に有害な太陽からの巨大な放射線から地球を守りってくれている地球の磁場が、過去6ヶ月の間に弱まっていることが、スウォーム( SWARM )と呼ばれる欧州宇宙機関( ESA )の人工衛星によって収集したデータによって明らかとなった。
観測によると、インド洋などでは磁場が強くなっている地域も認められたが、最も磁場が弱くなっている地球の西半球では 60万平方キロメートルの範囲で、磁場の減少が確認された。
なぜ地球の磁場が弱まっているのかについては不明な点が多い。
しかし、ひとつの理由として、「地球の磁場が反転する前段階かもしれない」ことを、 ESA のスウォーム・プロジェクトの管理者であるルーン・フロバーガーゲン( Rune Floberghagen )氏は述べる。
事実、衛星のデータは、北の磁極(磁場から見る北極)がシベリアに向かって移動していること示している。
ロバーガーゲン氏は、「このような磁場の反転は瞬間的にに起きるというものではありません。何千年というより、何万年というほどの長い時間で進行します。そして、磁場の反転は過去の地球では何度も起きていました」と、ライヴサイエンスに語った。
科学者たちはすでに北磁極が移動していることを知っている。
かつて、数万年から数十万年のサイクルで、コンパスの針が北ではなく、南を向くようになる磁場の反転の現象は幾度となく起きていた。
磁界の強度が変化すること自体は、通常の磁場の逆転のサイクルの一部ではあるが、しかし、人工衛星からのデータでは、現在の磁場の弱まり方のスピードが、過去のそれよりも早いことを示している。
かつて、研究者たちは、「磁場の強度は1世紀において5パーセントの割合で減少していった」と見積もっていた。
しかし、今回収集された新たなデータでは、地球の磁場が「 10年ごとに5パーセントずつの割合で強度が減少している」ことがわかった。
これは、従来考えられていたよりも、10倍の速度で地球の磁場の弱体化が進行していることになる。
しかし、地球の磁場が弱められたからといって、それが地球に大量絶滅などのような終末的な現象をもたらすという証拠はない。
過去の磁場の反転時に、大量絶滅は起きてはいないし、地球上が放射線で壊滅的な影響を受けた形跡も見当たらない。
ただ、それでも、研究者たちは、電力網と通信システムが危険にさらされる可能性は高いと考えている。
地球の磁場は、太陽風として太陽から噴出される危険な宇宙放射線から地球を保護している。それは地球を包む「見えない泡」のような役目を果たしている。
・Wikipedia
スウォーム衛星は地球の磁場の信号を拾うだけでなく、地球内部の核やマントル、地殻、海洋からの信号も拾い上げる。
ESA の科学者たちは、例えば、航空機の計器として、磁場に依存するナビゲーションシステムを作るためにデータを使用することを考えており、あるいは、地震予測をより正確なものに改善すること、あるいは、天然資源が豊富な地球の地下の領域を特定したいというようなことにも期待を寄せている。
科学者たちは、磁場の変動の情報は、大陸のプレート移動している場所の特定に役立つ、それは地震の予測に結びつく可能性を考えている。