2014年08月05日



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「アメリカの水が完全に飲めなくなる日」:トレドの「水道水飲料禁止事件」から明らかになってきた「毒におかされている全米の湖」



新約聖書『ヨハネの黙示録/ 08章 11節』

水の三分の一が苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ。




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▲ 2014年8月4日のロサンゼルス・タイムズより。


トレド、というと、ローマのトレビの泉の別名として思い出したりもしますが、今回のトレドは、米国オハイオ州にあるトレド市の話です。そして、結構な深刻な話です。

オハイオ州トレド市の場所は下の位置で、五大湖のひとつであるエリー湖に面しています。この地域の水源はそのエリー湖となっています。

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冒頭のロサンゼルス・タイムズの記事は「飲用禁止が解除された」とありますが、つまり、「水道の水を飲むことが禁じられていた」のです。

理由は水源となっているエリー湖の「藻」の繁殖により、水道水に大量の毒素が入り込んでいることが判明したためでした。

AFP の記事から飲用します。

米都市で水道水が飲用禁止に、40万人以上に影響
AFP 2014.08.04

米オハイオ州トレドの当局は2日、同市と郊外の住民少なくとも40万人に対し、藻の繁殖によって発生したとみられる毒素「ミクロシスチン」が水道水から検出されたため、飲料用として水道水を利用しないよう警告した。また、水道水を沸騰させることで毒素の濃度が増すとして、お湯を使わないよう呼び掛けている。

警告はトレド市の水道水の全利用者を対象としており、当局は警告が解除されるまで水を使わないよう求めている。地元の赤十字社によると、ミクロシスチンは吐き気や下痢を引き起こしたり、肝機能に悪影響を及ぼす恐れがあるという。

市の水道水の水源となっているエリー湖では、流入した農業用肥料に含まれるリンやチッソによって藻が大繁殖した。



ということで、実際には 50万人以上が影響を受けることになりました。

さて、水道水の使用の禁止が発表されたトレド市では・・・。

発表から 50分で、ほとんどのお店からペットボトルの水が消滅

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BreakingNews


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・書かれてあるのは「ペットボトルの水はありません」。 Colombus Dispatch


その後、オハイオ州は非常事態を宣言するに至りましたが、翌日、「水道水に含まれる毒素が飲用許容量にまで低下したので、水道水を飲める」と発表したのが最初のロサンゼルスタイムスの記事です。

写真でマイクに囲まれているのは、トレド市の市長ですが、テレビカメラの前で、わざわざ「このように飲んでも安全です」と、自ら水道水を飲んでアピールするなどしていました。

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▲ 水道水を飲んで、安全性を強調するトレド市のマイケル・コリンズ( Michael Collins )市長。 Kansas City Star より。




改めて全米国民が認識した「湖の現状」のひどさ

しかし、「飲んでも大丈夫」となったことはいいとして、今回のことが詳細に報道されていく中で、アメリカの人々は「水源のエリー湖の実態」というものを「視覚的に見てしまった」のですね。いや、エリー湖だけではなく、「アメリカ全体の水源の実態」をも。

エリー湖の 8月 3日の状態

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Colombus Dispatch


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Toledo Blade


これは・・・青汁の領域ですね。
下の写真の人も調査チームの一人ですが、この人なんかだとグッと一気に飲み干しそうな。

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Toledo Blade


こういうような「自分たちが飲んでいる水の水源の状況」の写真や映像をメディアで見てしまうと、いくら「安全」と言われても、水道水の使用を躊躇してしまう人もいるのではないかと思います。

もっとも、これは今に始まったことではないようで、下の写真は 2011年に衛星から撮影されたエリー湖の写真ですが、この時にもすでに緑だらけとなっています。

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Accuweather


しかし、実は最大の問題は、このエリー湖やトレド市などのような単体のことではないのです。

下の記事のタイトルにあらわされている問題なのです。

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▲ 2014年8月4日の Quartz より。





全米の多くの水源で藻の大発生による毒素の問題をかかえている

今回は上の記事をご紹介したいと思っていますが、ちなみに、もともと、アメリカの水は、特に都市部の水道水は「そのままは飲めない」ということにはなっているようです。

平成 16年(2004年)に、国土交通省の水資源部がリリースした「日本の水資源」という資料には、「水道の水がそのまま飲める国と飲めない国」という項目があります。

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国土交通省水資源部資料「日本の水資源」


この図を見ると、水道の水が直接飲める国は、2004年の時点で、日本、ニュージーランド、ヨーロッパの一部、南アフリカなど、非常に少ないことがわかります。

もちろん、これは「日本人が飲める」という意味が強いとは思います。旅行などに行きましても、多くの国で普通に水道の水を飲んでいますし、実際には、日本人の旅行者なども、たとえば、アジアやアフリカなどへの旅行の場合は、「どこかしらで(気づかずに)飲んでいる」はずです(特に氷)。

しかし、今回のような「藻」による毒素は、単にお腹を壊すとか、そういうものだけではなく、 AFP の記事にもありますように、吐き気や下痢を引き起こしたり、肝機能に悪影響を及ぼすという意味での、「本当にどうやっても飲めない水」ということになり、何しろ「沸騰させるとさらに毒性が高まる」のですから、どのようにしても飲めない水ということになります。

それでは、ここから上の Quarrtz の記事をご紹介します。

この問題が「昨年あたりから急激に悪化している」ことがわかります。
また、たとえば、過去記事の、

海で何が起きているのか : 5月から始まった全世界での数百万匹規模の海洋生物の大量死の理由は誰にも説明できない
 2014年06月02日

などの最近の魚の大量死とも関係している部分があるかもしれません。

関係しているとすれば、川や湖での魚の大量死の原因の多くは藻の大発生による酸素不足ですので、同様の魚の大量死は、今年のアメリカの夏にも数多く起きるはずです。




It’s not just Ohio−poisonous algae blooms now plague 20 US states
Quartz 2014.08.05


オハイオ州だけではない。今や全米 20州で毒素を持つ藻類が大発生している


北部オハイオ州の希少な水の供給源であるエリー湖は緑で覆われている。

見た目は、単に青いスムージーのように見えるだけかもしれないが、これら藻類、あるいはシアノバクテリアの大繁殖から発生する毒素は、人間の肝臓や他の臓器にダメージを与える可能性があり、また、時にはペットを死に至らしめるほど強い毒性を持つ。

エリー湖を水源としているトレド市に対し、オハイオ州政府は、水道水から検出された毒素の量は、飲用に適さないと宣言した。

このエリー湖は、藻類で悪名高い。 しかし、昨年 2013年に関していえば、この生態学的に壊滅的な事態は、エリー湖だけの話ではない。下のグラフがそれを示している。


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例えば、オレゴン州のブルー湖では有毒な藻が大発生し、オレゴン州は水を確保するために苦労しなければならない羽目になった。

ケンタッキー州では、2013年に初めてこの有害な藻の問題が報告された。これは、旅行者が州内の4つの湖を訪問した後、発疹や胃の痛みを訴えたことから調査して判明したものだ。

ケンタッキー州では今年もまた藻が大発生している。

フロリダ州では、2013年に、インディアン・リバー・ラグーンで有毒な藻類が発生し、120頭以上のマナティーが死亡した原因になったと一部の科学者は言う。


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なぜこのようなことが起きているのか?
藻類が根本的に悪いわけではない。
実際、彼らは水生の食物連鎖の重要な位置にいる。

しかし、湖に流出する肥料や動物の飼料に含まれるリンと窒素などにより、藻たちは狂ったかのように大繁殖をはじめる。

また、米国の産業廃棄物は、藻類を食べる魚を殺し続けてきた。さらに悪いことには、生き残った魚たちさえ、藻の大繁殖そのものにより大量死に至る。

人間の健康を脅かすだけではなく、藻の大繁殖は、全体の生態系を破壊する可能性をもっている。米国政府は最近、藻類の発生の研究のために、毎年 2050万ドル( 約20億円)を投資する法案を可決した。


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