2014年09月20日



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衝撃的な風景 : 現在の北極は「黒い氷」に覆われている



arctic-black-snow.gif

▲ 2014年9月16日の Slate より。



南極で観測史上最大の海氷面積の記録を更新し続ける中、北極圏では氷床が真っ黒に染まっている

私の住んでいるあたり(関東の南西部)は、最近は何だか涼しいというより「寒い」時間が長くて、冷え性の奥さんからは「そろそろコタツ出そうか」みたいな発言が出るようなことになっています。

確かに太陽が出ない日は結局一日中寒い感じで、天気予報の数値だけ見れば、「最高気温 25度」などというような立派に夏の気温なんですが、半袖だと寒く感じるくらいの日中が多いです。

それと関係あることではないですが、南極では海氷の面積が観測史上最大を更新中で、しかも、最近になってからの面積拡大のグラフが急カーブを描いています。

antarctic-record-level.gif
ABC News


そのあたりは、

南極寒冷化の激化 : 南極の海氷面積が記録的なレベルに達し、過去最大面積を更新中
 2014年09月19日

という記事にグラフなども載せていますが、南極の気候と生態系を研究する CRC の研究員の1人は、

「かつて見たことがない海氷の面積です。 30年前に始まった衛星からの海氷の観測で、こんなに氷が多かったことはありませんでした」

というように述べています。

とはいっても、南極の氷が増えているということが、そのまま「寒冷化」を意味するわけではないようで、たとえば、地球の「大気の流れ」が変化することでも南極の氷の面積は変化するのだそうですが、ただまあ、

「南極が暖かくなっているということはなさそう」

とは言えると思います。

さて、そんな中で、冒頭のように、北極からの非常に衝撃的なニュースが報じられています。
それは、

北極圏の雪や氷床が黒くなっている

ということで、大量の写真と共に報じられていました。

最初に何枚か写真を載せておきます。

かなり広い面積を上空から撮影した現在のグリーンランドの氷床

dark-ice-002.jpg


果てしなく拡がる黒い氷床の雪と氷

dark-ice-003.jpg


なんだか、確かに終末的な光景の一種とも言えそうですが、しかし、理由なく黒くなるわけはなく、冒頭の Slate では、いくつかの説を載せています。




北極周辺での森林火災の増加と黒い氷床の関係

その中で、ひとつの大きな原因ではないかというものとして、

今年は北極圏での森林火災が観測史上で最も多い

ということが挙げられていました。

下の表がそれを示したものです。

north-fire-2014.gif

これは、1月から8月までの森林火災の推移のグラフです。日本語はこちらで入れています。なお、グラフの左の数値は火災の発生件数ではなく、火災の「総エネルギー」ということのようです。

上のグラフを見ますと、確かに 2014年は観測史上で最も北極圏での森林火災が多かった、あるいは強かった年ではあるようです。

しかし、2番目に強かった 2012年が 29万ギガワットで、それに対して、2014年の 33万ギガワットは、それほど激しい差には見えません。

というか、これは「現在のグリーンランドの氷床の黒さの理由を代弁できるほどのデータではない」という気がします。

北極に近い場所での山火事は 2012年頃を中心にシベリアなどで多発していて、たとえば、下は、過去記事に記した 2012年 7月 24日のロシアのメディア リア・ノボスチの記事の翻訳からの抜粋です。

シベリアの異常な熱波が森林火災を引き起こし、未曾有の干ばつが進んでいる
Novosti 2012.07.24

5月から続いているシベリアの熱波は7月に入り拡大している。この熱波により森林火災が拡がり、川が干上がり、作物はほぼ枯れた。

現在も気温は最高で 34度を越える日が続いており、シベリアの気象局によると、現在の 26度から 34度程度の熱波は9月まで続くと予測されている。

山火事も 1930年以来、最悪のペースで発生している。すでに 20万ヘクタールの森が火災で焼失した。

というような事態は、すでに何年も前から続いていて、そのような年を含めて、これまで「北極圏の氷が黒くなった」という事態は「どんな研究者も今まで見たことがないこと」なのだそうですので、山林火災の多発とは別の理由もありそうです。

とはいっても、カナダ北部などでは例年の9倍の山林火災が発生しているようで、北極圏の周辺が「乾燥していて高温気味」であることは間違いないようです。

そして、南極は逆に、非常に「雪が多く低温傾向」となっています。




メタンと二酸化炭素が海底から放出し続ける北極

2年くらい前に、アメリカ海洋大気庁( NOAA )が、北極圏の周辺で「高い二酸化炭素が観測された」という報道がありました。

下のような報道でした。

地球が二酸化炭素だらけに? 北極地域で高濃度観測 米海洋大気局が警告
msn産経ニュース 2012.06.01

米海洋大気局(NOAA)は5月31日、アラスカの観測所で4月に初めて、大気中から月平均400ppmの高い濃度の二酸化炭素(CO2)が観測されたと発表した。北極に近いアイスランドやノルウェー、カナダなど他の6カ所でも今春に400ppmを観測したという。

この報道では、その後に、

> 北極に近い地域は、北半球の国から工業活動などに伴い排出されたCO2が集まりやすく、高い濃度になったとみられる。

と続き、あくまで、北極地域での高濃度の二酸化炭素が「人間の活動によるもの」としていたわけですが、今回ご紹介する記事に登場する科学者は、 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書への寄稿者のひとりである「地球温暖化系の人」であるオハイオ州立大学の科学者ジェイソン・ボックス( Jason Box )博士という人で、つまり、どちらかというと、「地球温暖化寄り」の記事ではあります。

そのボックス博士は、今年の初めに下のようなツイートをしました。

fd2.gif


上のツイートの根本的な意味は私にはよくわからないですが、ただ、北極海だけではなく、現在、「地球のさまざまな地域の海底からメタンや二酸化炭素などが噴出している」ということはあります。

過去記事の、

アメリカ大陸周辺で何が起きようとしているのか(1) : ロサンゼルス沿岸のプレート境界の海底から大量に噴出するメタン
 2013年03月08日

など、メタンが噴出していることが明らかとなっている場所はいろいろとあります。

これらが地殻の変化などと関係あるのかどうかはわかりませんけれど、上のツイートのように、何かの破片をも噴出するようなことがあるのならば、今回の「グリーンランドの氷が黒いこと」と、「北極での海底からの様々な噴出」は、あるいは関係あるのかもしれません。

ところで、上のツイッターの投稿の一番後ろの f'd という単語。

この意味がわからなくて、調べてみましたら、世界の英語方言・スラング大辞典にありまして、下のような意味のようです。

f-d.gif

こんな表現の仕方があるのだな、と初めて知りましたが、どう訳していいのかわからないので、「おしまいだ」と、かなり適当なものとしています。




グリーンランドの「白や黒」の出来事

ちなみに、グリーンランドといえば、2年前の夏に、

メルトダウンの序章? : 「たった4日間でほぼすべて溶けて消えた」グリーンランドの氷床
 2012年07月26日

という記事で、

たった4日間でグリーンランド全体の氷の 97%が溶けてしまった

という出来事が起きたことを記事にしたことがありました。

Greenland-ice-2012.jpg


この時の原因は、通常とは違う暖かい大気が通過したことによるものだと、ずいぶん後になって報道されていたように記憶していますが、何しろグリーンランドのあの「広大で厚い氷床」が、「たった4日間でほぼすべて溶ける」というのは、不思議な気が今でもします。

さらにグリーンランドといえば、忘れられない出来事があります。

今回は氷床が「黒くなった」ということが起きましたが、下のように「白いカラスが殺された」という出来事があったのもグリーンランドでした。

white-raven-01.gif
Nunatsiaq Online


このことについては、過去記事、

太陽の磁場のポールシフトが数週間後に迫る中、神の魂を運んでいたと囁かれる白いカラスはグリーンランドで殺された
 2013年11月18日

でご紹介しました。タイトルに「稀少な」とありますが、何が珍しいのかというと、このカラスは「アルビノではなかった」という点にあります。

アルビノとは遺伝子の問題で白化現象を起こすことで、人間も含めて、あらゆる動物に起こり、アルビノに関しては、もちろん頻繁に起きることではないとはいえ、比較的普通の現象ですが、グリーンランドのカラスは眼や羽の特徴からアルビノではない、ということがわかり、つまり、

「本当の白いカラス」

だったようで、ほとんど存在が確認されていないような種だった可能性があります。

現地では「神のメッセージを運んでいた鳥かもしれない」ということを言う人たちもいたようです。

それが殺されてしまったと。

今度は、そのグリーンランドで、氷床が黒く染まるという現象が起きているということになってしまっているのでした。

それでは、冒頭に貼った記事からご紹介します。




Slate Exclusive: Why Greenland’s “Dark Snow” Should Worry You
Slate 2014.09.16

なぜ、グリーンランドの「黒い雪」を懸念すべきなのか

dark-ice-001.jpg

地質科学者のジェイソン・ボックス博士は、最近、グリーンランドの調査の旅から戻った。その彼はこのように言った。

「ただ唖然とした」

ボックス博士が唖然としたのは、グリーンランドの氷床の「黒さ」だ。

今年のグリーンランドの氷床の黒さはほんの少しといったものではない。記録的な黒さなのだ。博士が、この夏にグリーンランドで撮影した写真は恐ろしいものだ。

そして、恐ろしいのは実は見た目だけではない。

晴れた日に黒い車の表面のほうが白い車の表面より熱くなるのと同じように、表面が黒いほうが多くの太陽からの熱を受ける。つまり、それだけ早く氷が溶けるということを意味する。

この北極圏で今いったい何が起きているのかを説明するためには、いくつかの可能性を挙げることができる。風と大気に塵などが含まれる夏の吹雪の増加、微生物の活動、今年の北極周辺での森林火災の多さなどがある。

グリーンランドの氷床の暗さは 2014年になり観測されていたが、現在の暗さは、通常より 5.6%暗く、通常の約2倍だ。

また、今年は周辺での森林火災が非常に多く、 2000年からの観測史上で最も森林火災の多い年となっている。

ボックス博士は北極の環境が激変しており、気温が上がることにより、北極で過去1万年の間で見られなかったほど火災の発生件数が増えていることを発見した。

今年だけで、カナダの北東では 330万ヘクタールが消失しており、これは例年の9倍の率だ。これは近現代のカナダの歴史上で最大の規模の火災での消失となってしまう可能性がある。

NASA の科学者ダグラス・モートン( Douglas Morton )氏は、今年初めに、「カナダ西部で起き続けているような巨大な火災は、地球の地質的事象の中でとても重要なものです」と述べている。

そして、火災とは別に、昨年、NASA の科学者たちは、アラスカの永久凍土から「驚異的なレベル」のメタンと二酸化炭素が放出されていることを発見した。

今年初め、ボックス博士は、この報道について、以下のように投稿した。

「北極海底炭素の小さな断片が大気中に放出されたら私たちはおしまいだ」





(訳者注) ここまでです。先にも書きましたが、このボックス博士という人は、あくまで「人為的な地球温暖化説」系の人で、そしてその説は今ではかなり厳しい状況となっていることは事実ですが、そのことはともかく、このグリーンランドの「黒い氷床」の報告をしてくれたという意味で、貴重な観測発見をしたとはいえます。

そして、地球が温暖化しようと寒冷化しようと、現実として「氷の表面が黒くなれば、溶けるスピードも早くなる」ことも多分事実でしょうし、そうなると、北極の氷は減り、あるいは、海の水位にも影響するかもしれない。

ところが、南極のほうでは非常に早いペースで海の氷が増加し続けている。
こちらに関しては、むしろ「液体としての海水は減っている」わけです。

この北極と南極という「両極地のアンバランス」が、現在の地球全体の状態のアンバランスさを象徴しているようにも思えます。

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