▲ 英国のデイリーメールの記事に掲載されていた 9月 28日の御嶽山の頂上付近の様子。まるで、ジオラマか何かのように現実感が消失した光景ですが、現実です。写っている人たちは、救助にあたっている警察と自衛隊員の方々。
御嶽山噴火が教えてくれる「噴火の前兆」の現実
御嶽山の噴火は、結果として相当数の犠牲者を出してしまいそうな形となっていますが、昨日の産経新聞の記事の下の部分読むだけでも、噴火時の山頂付近の惨状がわかる気がします。
2014年9月28日の産経新聞「御嶽山噴火 「ドカン」巨石の雨 軽トラ大…「もうダメだ」」より
火山灰とともに、周囲に直径1メートルぐらいの大きさの石が飛んできたため、急いで岩陰に隠れた。まもなく、もう一度「ドカン」という音が鳴り、今度は軽トラック大の石が飛んでくるようになった。
巨大な石は地面にぶつかって割れ、破片が四方八方に飛び散った。黒い雨が降り始め、雷のような音も鳴ったという。灰はひざ上まで積もった。「もうダメだ」。そう思った。
> 軽トラック大の石
こういうものが飛び交う状況……。
ところで、今回の御嶽山のニュースは、最近の日本の出来事の中では、海外で最も大きく報じられたニュースのひとつかもしれません。なぜかイギリスのメディアでの報道が特に大きいですが、あらゆる主要国のメディアで大きく報道されています。
下はロシアのテレビニュースですが、どの報道にも
「日本の中央」で火山噴火
というような文字が入るものが多く、たとえば、下のような映像と共に「日本の中央で火山噴火」という文字がクレジットされる報道が始まると、何だか「日本が終末の日を迎えた」かのような構図にも見える物々しさを感じます。
▲ 2014年9月28日のロシアのテレビニュース Obozrevatel より。
それにしても、冒頭のデイリーメールも含めて、イギリスのメディアは、下手すると日本の報道より詳細な救出活動の写真を数多く載せていて、「なんだか、日英の報道スピードの順序が逆転しているみたいな感じ」を受けました。
下はそれぞれデイリーメールに掲載されている写真です。
自衛隊の戦車も投入
▲ 救助活動に戦車2台が投入されていることもデイリーメールで知りました。長野県の王滝村です。
空中からの救助活動
▲ 生存している登山客2名をヘリコプターで救出した場面。しかし、この後、毒性のある火山ガスなどに覆われ、ヘリコプターによる救出は中止になったようです。
なお、このデイリーメールの記事では、この報道のページの中に「火山による死傷者が発生する様々な理由」というコラムが記されていました。
翻訳します。
MUD, GAS AND ASH: WAYS A VOLCANO CAN KILL YOU
泥流、ガス、火山灰:火山があなたを死に至らしめる理由
私たちが一般的に火山の危険性をイメージする場合、それは溶岩によるものとする考え方が多いが、実際には、噴火によって死傷者の発生する原因は様々にある。
1. 火砕流 火砕流とは、温度 1,000度にも達する熱の流れが時速数百キロで山の下に向かう現象で、火砕流が通過した領域のすべてを燃やし尽くし、また、見舞われた場合、脱出は不可能。
2. 湖水爆発 非常に希な現象だが、火山湖から二酸化炭素が流れ出ることにより、大気が高濃度に汚染され、人間を含めて、周囲の動植物を殺す。
3. ラハール(土石流、火山泥流) 大量の水分を含んだ火山灰などの噴出物の泥流が山の斜面を流れ下る現象。流下スピードが極めて速く、壊滅的な被害が出る場合が多い。
4. 火山灰 非常に大きな噴火が起きた場合、噴煙が下部成層圏にまで達し、これにより太陽光が遮られることにゆり、地球の気温が下がる。このような火山活動による地球寒冷化が恐竜が絶滅した原因と考えられていたこともある。
とあり、初めて「湖水爆発」とか「ラハール」という言葉を知ったのですが、この「ラハール」という現象は、今回噴火した御嶽山で 1984年に起きていたのだそう。これに関しては、長野県西部地震 - Wikipedia というページに詳細が出ています。
つまり、噴火によるラハールではなく、地震によるものだったようですが、下のような被害を出したのだそう。
御嶽山南側で「御嶽崩れ」と呼ばれる山体崩壊が発生し、体積約3450万立方メートルの土砂が伝上川の両岸を削りつつ、濁川温泉旅館を飲み込みながら、標高差約1900〜2500m、距離約10kmを平均時速80km〜100kmという猛スピードで流下し、延長約3kmにわたって最大50mの厚さで堆積した。
氷ヶ瀬の渓谷では厚さ30メートル以上の土砂が堆積し谷が埋まった。
当時、伝上川周辺には名古屋市からきのこ採りなどに来ていた5名と濁川温泉旅館の経営者家族4名の計9名がいたが、いずれも山体崩壊の土石流に巻き込まれ、行方不明となった。
このようなことがあったのだそうです。
ところで、この 1984年の御嶽山の山体崩壊を調べていた時に、長野県理化学会・地学部会のサイトにこのことにふれていたページがあったのですが、以下の記述がありました。写真は、1984年の山体崩壊の際の御嶽山です。
御嶽山は火山で、この長野県西部地震の5年前の1979年に数千年の沈黙を破って有史以来初めて噴火した。火山の寿命は数万〜数百万年に及ぶので、有史以来噴火の記録がなくても活動が完全に終了したとは見なせない。地球の営みを人間の尺度で測るのは無理がある。
なんと、御嶽山は、ほんの 35年ほど前に、
> 数千年の沈黙を破って有史以来初めて噴火した火山
なのでした。
日本の学問から「死火山」という言葉を消滅させたのは御嶽山の1979年の噴火だった
ところで、上のセクションの見出しに、「噴火の前兆の現実」という言葉を入れたのですけれど、これはどういうことかというと、下の静岡新聞の報道のタイトルに尽きます。
<御嶽山噴火>「前兆なし」、富士山も同様の恐れ
静岡新聞 2014.09.28
長野、岐阜両県にまたがる御嶽山の噴火で、静岡県内では28日未明にも、富士山頂付近などで降灰が予想される。明白な前兆現象がないまま噴火に至った今回のケースについて、火山学者は「富士山でいつ同様の噴火が起きてもおかしくない」と声をそろえる。
火山噴火予知連絡会伊豆部会委員を務める小山真人静岡大教授は、御嶽山の噴火が「マグマの大規模な上昇ではなく、地熱活動の変化による水蒸気爆発だろう。こういう噴火は高精度の観測機器でも前兆を捉えにくい」と話す。富士山火口にも過去の水蒸気爆発の痕跡があり、同様の噴火は起こり得るという。
そうなんですよ。
「前兆がない」という噴火が存在することが現実で、上の記事では富士山の例を挙げていますが、すべての火山にいえることだと思います。突如として噴火するのです。
そして、その上の長野県理化学会のサイトの下の文章。
> 火山の寿命は数万〜数百万年に及ぶので、有史以来噴火の記録がなくても活動が完全に終了したとは見なせない。
と、
> 地球の営みを人間の尺度で測るのは無理がある。
のふたつの文章などを読みますと、
いわゆる「死火山」という火山は存在しないかもしれない
という考えにもいたります。
実際、現在は、地質学用語での「死火山」という言葉は事実上存在しません。
そして、その「死火山」という言葉の定義を変えた火山こそ、今回噴火した御嶽山だったことを知りました。死火山 - Wikipedia には「現在では死火山という言葉は休火山とともに学術的には廃用となっている」という説明の後に、下のように書かれています。
従来、死火山とみなされていた木曽御嶽山が、1979年に水蒸気爆発を起こし、定義を大きく見直すきっかけとなった。
つまり、「すべての火山はいつでも噴火する可能性がある」という考え方に日本の火山学の方向を向けさせたのも御嶽山なのです。
さらに活発化する「環太平洋火山帯」の火山活動
今回、海外の報道やブログを少し見ていて、印象的だったのは、ふだんは経済的なこと(株や為替や経済クラッシュなど)を記事として取り上げる「ゼロヘッジ」というアメリカのブログがありますが、そのゼロヘッジが、今回の御嶽山の噴火について記事にしていたのです。
・Japan Declares Level 3 Emergency, At Least One Dead After Volcano Erupts In Central Japan
(日本の中央部での火山噴火で1名が死亡、日本は警戒レベルを3に引き上げる)
という記事でした。
まあ、そのことはともかく、そのゼロヘッジの記事のコメントに、
「環太平洋火山帯の活動が活発になってきている」
というものがあり、そのコメントに添えていたリンクの記事こそ、前回の記事
・エスキモーの女性予言者が「アルマゲドンのキッカケ」の噴火として述べていたアメリカのマンモス・マウンテンで起きた1日 1,000 回を越える異常な群発地震
2014年09月27日
に貼りました、米国 NBC のニュースでした。
・NBC
このコメントを書いた人が、日本の噴火の記事に対してアメリカの群発地震の報道記事をリンクしたということは、遠く離れた日本とアメリカは結局「共に環太平洋火山帯でつながっているために、その活動の根源は同じ」と言いたいのかもしれません。
地図的にいうと下のふたつは同じ要因だと。
▲ ピンクの部分が環太平洋火山帯。英語では、火の輪( Ring of Fire )と呼ばれています。
今年6月の記事で、
・環太平洋火山帯の目覚め? : アリューシャン列島とアラスカで続く群発地震から2年前に発表された「地球の磁場の反転と巨大火山活動が関係する」という論文を思い出す
2014年06月23日
というものがありましたが、環太平洋火山帯に属するアリューシャン列島で、6つの火山に対して同時に高い警報レベルが出されるということがありました。さらに、同じ頃、太平洋火山帯に属しているアラスカのブルックス山脈でも、これまで起きたことのない群発地震が起きています。
そして、昨日の記事「エスキモーの女性予言者が……」でふれましたカリフォルニアの群発地震。
それぞれが密接につながっているというものではないにしても「曖昧につながっているかもしれない」ということは言えるのかもしれません。
上にアリューシャン列島の火山活動の活発化のことを書きましたが、環太平洋火山帯に属するカムチャッカ半島での火山活動も活発なようで、現在噴火が続いているカムチャッカのシベルチ火山は、 9月 24日には「高さ 11キロメートルの噴煙」を噴き上げるまでの大噴火となっています。
2014年9月24日のシベルチ火山の様子
・Watchers Copyright: Y. Demyanchuk
この高さのすごさを比較するとすれば、たとえば、今年5月に「史上2番目の高さ」の噴煙を上げる噴火をした桜島のその時の噴煙の高さでも 4.5キロメートルでした(最高は 2013年 8月の 5キロメートル)。
ここから考えても、このシベルチ火山の噴煙の高さはかなりのものだと思われます。
多少の個人的な御嶽山との縁
ところで、突然話が別の方向になりますが、私自身、今回噴火した御嶽山とは、やや縁というのか何というのか、そういうものがあります。
北海道に住んでいる私の母親の友人の女性がいます。
その方は、今は年齢を考えると、そろそろ定年されたかもしれないですが、市内の大きな病院の婦長さんをやっていた方です。
その方が、かなり昔の話だそうですが、ある日、唐突に、「神がかり」のような状態となりました。そして、その際に、「声」から「御嶽山へ行け」と告げられたことがあったのだそうです。
そして、言われた通りに御嶽山に行き、最初のうち、そこでどのようなことをしていたのかは私が知るわけもないですが、その御嶽山でなにか悟った(?)らしいんですね。
それ以来、特に何かの宗教に入るということもなく、自分自信で御嶽山の神様(?)を自宅に祀るようになり、少しずつお金を使って祭壇のようなものを作り、そして毎年、休暇をとって御嶽山に通い、その度に修行(?)のようなことをしてくるということなのでした。
そして、病院の婦長さんも務めつつ、自宅で、御嶽山の何らかの神様と共に精進をし、また「悪霊などを払う」ようなこともやっていたりするようです。
この方とは、実家に帰る際には、たまに会うこともあるのですけれど、まったく普通のおばさんというか、 NHK の地方の「ほのぼの家庭のご紹介」的な番組に出てくるような気さくな人です。
ただし、体重がすごい。
100キロ近くあるのではないですかね。
しかし、骨格を含めた体格そのものが大きく、太っているという感じはないです。
そのおばさんが言うには、彼女の言うところの、霊(悪霊のたぐい)と対峙するには、体重がないと負けちゃう、とのこと。
まあ、その人の話はともかくとして、私自身の御嶽山との「縁」というのは、その人が御嶽山に修行に行くたびに、御嶽山でお守り的なものを手にして、毎年、私に送ってくれるのです。
私が結婚してから毎年のように送ってくださっているので、つまり、10年以上になるのですが、信仰心のない私とはいえ、そういうものを無下にするということもできず、送られてきた何枚かのお守りの紙のようなものを部屋の目立たないところに貼っています。
これがどういうところにより出ているものなのかわからないのですが、御嶽山のどこかのものではありまして、つまり、この 10年以上、「私の住む部屋にはずっと御嶽山のお守りが貼られている」というのが、縁というか……まあ、それだけの話なのですが、正直、今回の噴火まで、御嶽山そのものに興味を持ったことがなく、今回初めて少しだけ知った次第です。
ちなみに、御嶽山 - Wikipedia の「歴史・信仰」というセクションには以下のようにあります。
御嶽山は山岳信仰の山である。日本の山岳信仰史において、富士山と並び講社として庶民の信仰を集めた霊山である。
また、御嶽山信仰の特徴として、
「死後我が御霊はお山にかえる」という信仰に基づく霊神碑が御嶽山信仰の特徴のひとつである。
というような面もあるようで、死後の霊の帰る場所としての信仰に基づいているようです。
仮に、人間が輪廻や転生をするものだとすると、御嶽山は「霊が帰る場」というより、「死から生への門」のような場所といえるのかもしれません。
もっとも、輪廻転生というものがあったら、としての話ですが。
いずれにしましても、御嶽山は先に書きましたように、
・日本の火山の学問から「死火山」という言葉を消滅させた(どんな火山でも噴火しうることを人びとに認識させた)
・日本の山岳信仰の最高クラスの山のひとつ
という側面を持つ山であり、もうひとつ、
・日本列島の中央部に位置している
という「御嶽山のある場所の示唆的な意味合い」にも何かを感じる部分はあります。
ところで、上のほうにリンクしました過去記事「環太平洋火山帯の目覚め? ……」では、英国の大学の発表した、「地球の磁気の逆転は大規模な火山活動と関係している」という論文の内容を紹介した記事を翻訳したものを載せています。
これは「地球の磁場の反転と、過去の大噴火の頻発した時代には相関した関係があった」ことがわかったというものです。
・噴火
・磁極ポールシフト
は常にセットになって、その時代を見舞うという過去の地球だったようです。
地球の磁極が急速に移動していることは、これまでかなり書いたことがありますけれど、たとえば、最近では、
・ポールシフトに関する最近の緊迫 : 北の「磁極」がシベリアにまで移動しつつあるという情報の真偽。そして、ロシア空軍から報告された「アメリカの磁場異常がカタストロフを引き起こす」という情報の真偽
2014年06月18日
という記事で、基本的には、磁場の異変が感知された場所と群発地震の関係などを記していますが、2011年の日本の大震災の時に、高層大気圏での電子数などに異常が起きていたことがわかったことなども書いています。
地殻の異変と関係することがらは、あまりにもいろいろな要素がこれまで出されてきていて、そのような状況の中で、「環太平洋火山帯での地質活動を刺激しているトリガーが何か」というのは想像もできないですが、
・地球の地殻自体
・磁場や磁気の問題
・宇宙との関係
というものが複合して関係しているであろうことは想像がつきますし、今回の御嶽山を考えていると、そこに加えて、
・信仰
・神という問題
ということも、あるいは加えて考えなければならないのかなと思ったりします。
いずれにしても、太平洋火山帯の活発な地質活動はそうそう簡単に収まるものではないと私は考えています。
とはいえ、まだ起きてもいないことに対して脅えても仕方ないわけで、そのような気分になった時には、私はシュタイナーの『いかにして高次の世界を認識するか』にある下の言葉を思い出すようにしています。
「あらゆる観点から見て、私が不安を抱いても、何の役にも立たない。私は一切不安を抱いてはいけない。私は、自分は何をするべきなのか、ということだけを考えなくてはならない」
完全にこのような気持ちを抱くことは不可能ですが、できる限りそうしたいと思っています。