最近のユダヤ教やイスラム教の宗教の重要な祝日や祭事が、皆既月食の発生の周辺で起きていることを、前回の記事などで書いていましたが、そのような地球の大地上のイベントの中、「地球の上空」も大騒ぎになっていることを知りました。
それは「地球上空を交差する火球の数」です。
下は、10月 7日の火球観測ネットワークによって観測された火球の数です。
▲ 2014年10月7日の Spaceweather より。
この 173 個という数は、地球の上空で観測される火球の数としては非常に、あるいは、現在の天文学的な状況を考えると「異常に多い」です。
ふつうの場合は、まあ、いろいろですけれど、たとえば、その前日の 10月 6日は下のような感じでした。こういう日が普通で、しかし、このたった1日後には大狂乱状態となるのですから、宇宙はわかりません。
・Spaceweather
この数年、私は、この火球ネットワークに関しては毎日見ていまして、感覚的にはこの「 173個」というのは、1日の数としてはマックスに近い状態だと思います。
上に「異常に多い」と「異常」をつけましたけれど、これは今の時期とも関係します。
つまり、今は地球で観測される流星群が基本的にはない時期だからです。一般的には、地球で火球が多く観測されるのは、「流星群が観測される時」で、そういう時には 100を越えるような火球が観測されます。
たとえば、最も最近で、比較的多く流星を観測できたペルセウス流星群が最大となった 8月 13日の流星の観測数は下のようになっています。
ペルセウス流星群が観測されていた8月13日に記録された火球の数
・Spaceweather
流星群の場合の火球は、母体の方向から同じような軌道を描いて地球上空を通過していきますので、軌道も秩序だっていて、大変美しい軌道を見せてくれますが、この 8月 13日に記録した 163個という火球のうちの 99個はペルセウス流星群によるものでした。
それでも、この時には、ペルセウス流星群とは関係のない「独立した火球」が 61個と、全体として活発だったことがわかります。
この「独立した火球」という書き方は、天文用語として正しいのかどうかわからないのですが、 要するに、「流星群などに属さない、それぞれバラバラの発生源を持つ火球」というような意味で、そう記しています。
冒頭の 10月 7日の火球は、そのうちのほとんどが「独立した火球」ということになるようです。
つまり、「バラバラの発生源から、いっせいに時を同じくして地球めがけて流星がやってきた日」とも言えます。
正確には、173個の火球のうち、169個が「独立した火球」(残る4つのうち、2つが、おうし座南流星群、2つがおうし座北流星群というもののようです)。
そして、その数 169個という数自体が、今年のこれまでの最大級の火球を記録したペルセウス流星群の際の観測数を越えているあたりに「異常な数」という言葉を使った所以です。
それにしても、あらためて、冒頭の流星たちの軌道などを見てみますと、発生源のバラバラな流星たちがこうも見事に地球の上空をかすめて去って行く。
これが「あくまで偶然」であろうと、天体の動きが、常に何らかの「地球上の意味」を示唆してしようと、それはどちらでも構わないのです。いずれだとしても、やはりこんなことに関しても、太陽系全体から見る地球の大きさ(小ささという意味)から見れば、これは奇跡は奇跡のように思えるわけで。
小惑星も賑やかに
火球も上のように派手になっていますが、地球に近い場所を通過していく小惑星(地球近傍小惑星)も、10月に入ってからはとても多く、また「 2014年になってから発見されたものがとても多い」のが特徴です。
下は、10月 1日から、その後の接近が判明している地球近傍小惑星の表です。
・Spaceweather
表で Miss Distance と書かれている欄が「地球へ最も接近すると予測される距離」ですが、ここでは「 LD 」という単位が使われます。 LD は、「地球と月の距離」を意味しまして、 1 LD は、大ざっぱにいえば、約 38万キロメートル程度ということになります。
ですので、上の表の最初にある「 0.3 LD 」というのは、非常に地球に近く接近しそうなイメージを与えますけれど、0.3 LD は 地球から約 11万キロメートルほどもある距離で、このくらいではどれだけ軌道計算に誤差があったとしても、地球に到達する可能性はほとんどゼロです(ただし、何らかの物理的作用で、軌道を変えられない限り)。
そして、この距離の数値が「 0.01 より下」という距離が表示された場合は、あるいは地球に衝突するコースをとっている可能性があります。
たとえば、今年 2014年 1月 1日に発見され、翌日の 1月 2日に地球に衝突した小惑星の軌道は、以下のように表示されていました。
▲ 2014年1月4日の記事「元旦に発見された小惑星はその翌日に地球を直撃した : そんな始まりを告げた 2014年」より。
この小惑星は、幸いなことに直径3メートル程度の非常に小さなものでしたので、地球の大気圏を通過した後、大西洋上空で燃え尽きました。
まあ、そんなわけで、10月に入ってから、今、「地球の上空」がとても賑やかになっているということをここまで書きました。
ところで、この小惑星ですが、最近、
小惑星のひとつが地球の周囲を周回する「新たな月」のような軌道を持った
ことがわかりました。
天文学的には、私たちの地球は、現在、
・ひとつの安定した衛星(月)
と
・3つの準衛星
を持っていますが、ここに新たに非常に安定した準衛星が加わったことがわかったということです。
地球の「複数の月」にまたひとりが加わった
この「地球の複数の月」については、いくつかの過去記事があります。
どちらも古い記事ですが、
・「地球は隠された月を持つ」というマサチューセッツ工科大学の発表
2011年12月23日
・地球の「隠された複数の月」の実態がスーパーコンピュータでのシミュレーションにより解明される
2012年04月02日
などです。
これらの準衛星は、非常に小さな天体のため「ミニ・ムーン」などと呼ばれていますが、その軌道は地球に対して固定しているものではなく、その特徴は、
・地球の小さな月(ミニ・ムーン)の数はひとつではない。
・ひとつの月が一定期間、地球の周囲を旋回する。
・そして、その後はその月は太陽の軌道に移動して「太陽の衛星」となる。
というもので、つまり、「いくつものミニ・ムーンが地球の軌道と太陽の軌道上を交代で周回している」というようなことです。
いわば、地球と太陽で衛星のバトンタッチをしているというイメージです。
これに関して、ハワイ大学の研究チームが、スーパーコンピュータを使って計算したその軌道は非常に複雑なもので、下のようなものです。
・Daily Mail
今回ご紹介する「新たな月」は、少なくとも現時点では、地球の周囲だけを回る安定した軌道を持っています。これは、地球が獲得した小惑星と見なされています。
下が 2014 OL339 と名付けられている、その小惑星の現在の軌道です。
地球を周回するように安定した軌道を持つことがわかります。
動きとしては、たとえば、下のようなイメージです。
お月様のように地球に寄り添った形で動くわけではないですが、安定した地球との関係を持つ軌道となっているようです。
この「新しい衛星」について報じた THP の記事をご紹介します。
Earth Has A New Moon, And Its Name Is 2014 OL339
THP 2014.10.06
地球が得た新しい月の名称は 2014 OL339
私たちの地球の持つ「月」は、たったひとつだけだ。
しかし、専門的な観点からは、地球は 1969年から、より多くの月を持っていることがわかっている。
そして、今、新たにもうひとつの月が地球に加わった。それは、地球の準衛星として認識できる安定した軌道を持ち、地球を周回する小惑星だ。
公式には、地球はひとつの衛星(いわゆる、月)だけを持っていることになっているが、しかし、現在の天文学者たちは、私の地球の上空がかつて示されていた以上に複雑であることを認識している。
地球は、その軌道に入ってくる小惑星を定期的に「獲得」し、時には、短い期間に4つ以上の新しい月の軌道を持つことさえある。
そして、研究者たちは多くの小さな小惑星が、それは私たちの目で観測できないけれど、実は永久に地球の月としての軌道を持つものもあると考えている。
今回新たに発見された、「月となった小惑星」、それは 2014 OL339 と名付けられた小惑星もそのような小惑星のひとつだ。
2014年 7月 29日に発見されたこの小惑星は、直径が約 100メートルある。これまでは太陽を不安定に周回する軌道を持っていたが、現在は地球に対して非常に安定した軌道を持っている。
地球の重力が直接小惑星にあたえる重力の影響は強力なのだ。
この天体の軌道の過去については、数千年の地球と軌道を共有していたことが予測できるが、これからの軌道の変化に関してを予測することは困難だ。しかし、この小惑星 2014 OL339 は、過去において、地球に対しての軌道がより安定していたと考えられる。
地球は他に3つの準衛星を持っている。
それぞれの名前は、2004 GU9、2006 FV35、そして、2013 LX28 という。
ここまでです。
最近の派手な天体の様子も含めて、実際の地球周辺の天空の様子は、これまで考えられてきた以上に複雑な様相を呈しているようです。もしかすると、地球も実は、まるで土星のように、観測では見えないようなとても小さな月を何百、何千と持っている可能性さえあります。
しかし、たとえば、そういう「小さな月たち」が、地球の重力、あるいは磁場に変化が起きるようなことがあった場合に、どのような挙動で地球に関わるのか、ということも考えたりします。
それは火の球が注ぎ降るような災害と関係するのか、あるいは単に美しい空の天体ショーを見せてくれるというだけなのか、それはわからないです。