2014年10月12日



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スペイン、イギリス、フランス、チェコ、ブラジル……。全世界で続発するエボラ疑い患者。そして「モンスターエボラ」誕生の可能性



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▲ 2014年10月11日の Extinction Protocol より。



爆発的な増加が止まらないエボラの患者数と死亡者数

エボラ出血熱は、WHO によると、10月 8日の時点で、死者が 4000人に達したと発表されています。

下は、WHO の発表値で、一部を日本語と置き換えたもので、患者数、死亡者数ともに「これまでの1ヶ月間で倍増」していることがわかります。

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Ebola virus epidemic in West Africa


増加した分の多くはリベリアとシェラレオネに集中していて、リベリアに至っては、上の表に「」という不等号の記号がつけられていることがおわかりかと思います。

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これは、「ここに記載されている数よりも多いけれど、具体的にはわからない」というような意味ともとれ、リベリアでは事実上、エボラの制御を失いつつある状況が見えます。

このように、基本的には西アフリカの2カ国での増加が顕著なわけですが、しかし、ここにきて、「アフリカとは関係ない国」での症例、あるいは「疑い症例」の報道が相次ぐという事態となっています。

いずれにしても、この「倍増」というのは結構おそろしめの概念で、

「倍 → 倍 → 倍」

の方向性というのは、いわゆる「指数関数的な増加」への道のりを意味しています。

指数関数的などというと、何だかややこしい表現ですが、要するに「何らかの数値が急激に増加する場合」に使う言葉で、たとえば、

「1→2→3→4→5」

と増えていくのではなく、あくまでたとえばですけれど、

「1→3→7→20→70」

というような、果てしなく拡大していくような意味で、こういうものは、グラフなどで見ると、「どこかの地点から唐突に巨大になっていく」というような感じを持ちます。

これは今回のエボラの発生が明らかになった今年初めから現在に至るグラフなどでもわかるように思います。

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Ebola virus epidemic in West Africa


8月の中旬から、上昇の勢いがそれまでとはまったく違ったものとなっていることがおわかりだと思います。

逆にいえば、今回のエボラの発生が明らかになった今年の初め頃から6月くらいまでの間は、増加の勢いはほぼ横ばいだったこともわかります。

また、この「指数関数的な増大」というのは「生きているものの増え方の特性」でもあるわけで、ずいぶん昔の、

生物の偉大さ: 「生」と「生きていないもの」の違い
 クレアなひととき 2010年05月11日

という記事の中で下のようなことを記しています。

そもそも無機物と生物ではまるで話にならないほどの存在の質の違いがあるということで、特にそれは「増え方」に関して言えます。

宇宙の膨張はなぜすごいスピードなのかということに関して、まあ、直接関係のある話じゃないでしょうが、「人工的な増産」と「生き物的な増産」の違いというのがあります。

たとえば、車でもテレビでもいいですが、工場で、「設備を増強して生産量を2倍にしよう」ということになって、それが達成された、その後の話と、「生き物の量が2倍になったその後」というのを比較してみます。

工場 → 2倍の生産力になった後もずっと2倍の生産力(直線的な増加)。

生き物 → 2倍になったものがさらに2倍、あるいはそれ以上という「ネズミ算式」な増え方(指数関数的な増加)をするので、基本計算ではいきなり天文学的になる。

ということになるようです。

いずれにしても、爆発的な増加になる前に食い止めることができていれば、ここまでのことにはなっていなかったのですが、事実としてはグラフのような状態となっています。

ここには、リベリアとシェラレオネなどの保健政策の問題はもちろんあるでしょうけれど、もうひとつの問題としては、

エボラウイルスは、人間の体内で急速に突然変異を繰り返す

という性質があることも関係しているかもしれません。

これは、

エボラウイルスのゲノムが判明。その遺伝子数は「たった7個」。そして現在、エボラウイルスは急速に「突然変異」を続けている
 来たるべき地球のかたち 2014年08月30日

という記事で、エボラウイルスの遺伝子解析に成功したと共に、

「エボラウイルスは、ヒトを介して感染していく中で、他の動物に感染している時より2倍の速度で突然変異している」

ことがわかったという記事をご紹介したものです。

解析にあたった1人、ハーバード大学の計算生物学者パラディス・サベティ( Pardis Sabeti )さんは、「私たちは、250以上の突然変異を発見しています。それらは、私たちが見ている目の前で、リアルタイムで突然変異を起こしたのです」と言っています。

比較的短い間にこれだけの突然変異を繰り返しているという事実と、感染した人間の数が多くなればなるほど、エボラウイルスの突然変異の多様化も促進されて、「様々なタイプのエボラウイルス」が生まれてくるということを合わせて考えてみると、現在までの感染者数と時間の経過を考えると、その中に「とんでもないモンスターエボラが誕生している可能性」もないとは言えないかもしれません。


というのも、何となく以前より「感染しやすくなっている」感じがするのです。




エボラウイルスは「強力化」しているのか

西アフリカでエボラに感染したスペイン人宣教師の治療を「スペインの病院」で担当していた女性看護師のテレサ・ロメロさんという方がエボラに感染したことが報じられていますが、これは、かなり些細なことで感染していた感じがあります。

スペイン女性看護師、医療手袋で顔に触れエボラに感染か
AFP 2014.10.09

アフリカ大陸以外で初のエボラウイルス感染者となったスペイン人の女性看護師は、エボラ出血熱の患者に対応した際の手袋をしたまま自分の顔に触れて感染したとみられる。

エボラ患者の治療にあたっているマドリードのカルロス3世病院の医師が明らかにした。

この看護師は決して、そのエボラに感染した宣教師につききっきりで看病していたわけではなく、宣教師の病室に入ったのは「2回だけ」でした。

その後、英国の 10月 9日のテレグラフの記事によりますと、このテレサ看護師のエボラ感染が判明が起きてから、彼女のいたカルロス3世病院では、

「病院の看護師たちがエボラ患者の治療を拒否する」

という動きが出ていることが記されています。

テレグラフの記事から抜粋して翻訳しますと下のような状況のようです。

エボラウイルスに感染したスペイン人の女性看護師の容体がさらに悪化している中、カルロス3世病院の看護師たちは、自分たちへの感染の怖れを訴え、エボラ患者の治療にあたることを拒否している。

現在、疑い症例を含めて7人が隔離されている同病院では、看護師たちの治療拒否を受けて、他のスタッフを用意しなければならなくなった。


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Extinction Protocol


看護師たちの中には、エボラ患者の病室に入る必要をなくするために契約をキャンセルしている看護師たちもいるという。

正式には、看護師や保健技術者の辞職について発表されていないが、それなりの数のが辞職している。エボラの隔離病棟で働くことに同意している看護師やスタッフたちは、心理カウンセリングを受けながら働いている。

というようなことになっているのです。

医療スタッフの「職場放棄」は、リベリアやシエオラレオネでも数多く起きています。何しろ、9月までの時点で、西アフリカでは、医者と看護師を含めた医療関係者の感染者だけで 240人以上に上り、そのうち、120人が死亡しています。

そんなこともあり、この医療スタッフたちの行動の是非はともかく、上に書きました「もしかすると感染しやすくなっているかも」というのは、次の報道でも思います。

おそらく万全の体制で現場に臨んでいるであろう、最大感染国のリベリアに派遣されている国連職員のうち「 41人がエボラ疑いで隔離状態にある」ことが報じられています。

un-ebola.gif

▲ 2014年10月11日の AP より。


この 41人のうち、20人は軍人だそうです。

場所が最大感染国であるリベリアだけに、かなり厳重な注意を払っていたであろう、このような人々も感染疑いが持たれてしまうという状況は、「突然変異の繰り返しの中でウイルスが進化してきている」という可能性を捨てきれないものがあります。

感染疑いで監視下にあるうちの 20人は軍人だそうですが、「軍人」ときくと、アメリカが 4,000人の軍隊を西アフリカに派兵することを思い出します。




各国で唐突に発生するエボラ疑い症例

ヨーロッパでは、イギリスも現在、エボラの報道が非常に多いです。

というのも、

「英国人がエボラで死亡した」

可能性が出ているからです。

british-ebola.gif

▲ 2014年10月9日の英国テレグラフより。


あくまで「疑い」ですが、エボラである可能性が濃厚です。

そのため、イギリスでは空港などでの検疫体制を強化しています。

英国のテレビ報道では、「イギリス国内にもエボラが侵入する(した)かもしれない」ということがいろいろと報じられているようです。

ebola-uk-front.jpg
Telegraph


その他にも以下のような国でエボラ感染疑い症例が報じられています。


カナダ
西アフリカの旅行から戻ったカナダ人が、エボラのような症状となり、患者がカナダのアビティビで治療されている。

[ソース/2014年10月10日のカナダ CBC ニュース]
Ebola-like symptoms emerge in patient being treated in Abitibi


ブラジル
西アフリカのギニアで布教活動をしていたブラジル人宣教師がエボラのテストを受けている。

[ソース/2014年10月10日の英国デイリーメール]
Has Ebola hit a new continent? Authorities in Brazil test missionary who had travelled from Guinea for the deadly virus


チェコ共和国
リベリアから戻ってきた 56歳の男性がチェコで初めてエボラ疑いで検査中。

[ソース/2014年10月10日の The Health Site ]
Latest Ebola News: First suspected Ebola case in Czech Republic


フランス
リベリアから帰国したフランス人女性がエボラの疑い症例で隔離中。

[ソース/2014年10月10日のビジネス・スタンダード]
France reports suspected Ebola case


そして、米国内初めてのエボラ感染患者のリベリア籍のトーマス・エリック・ダンカンさんが死亡したアメリカでは、

患者の家に行った保安官がエボラの症状…米国パニック
 中央日報 2014.10.10

という記事がありました。

抜粋しますと、

ダンカンさんのアパートに入ったマイケル・モニング副保安官にエボラ症状が見られ、テキサス健康長老病院に運ばれた。

モニング副保安官は今月1日、保健当局公務員らと共にダンカンさんのアパートに留まっていた人たちに隔離命令書を伝達するために入ったが、肝心の本人は無防備状態だったと現地メディアが伝えた。

とのことですが……上のほうにも書いたのですけれど、もし、副保安官がエボラに感染していたとした場合、あまりにも感染しやすいのじゃないかと。

この保安官は、

「隔離命令書を伝達するためにダンカンさんの部屋に入った」

だけで、まさか抱擁したり、無用な握手をしたり、ベッドシーツにふれたりするようなことはしていないはずで、口頭か文書で隔離命令を伝えただけだったと思います。

ドアノブくらいにはふれたと思いますが、それだけで感染するのでは、これまでのエボラの感染力を考えると、あまりにも感染力が強いように感じます。

ですので、この保安官の病気は多分、エボラではないとは思いますけれど……。

アメリカ疾病管理予防センター( CDC )も「副保安官がダンカン氏と体液接触した事実はなく、エボラ感染である可能性は低い」と発表しています。

しかし、もし仮に、副保安官がエボラだった場合、体液接触した事実がなく感染したというようなことにもなりかねず、

「空気感染化……」

などという概念も少しだけよぎってしまいます。

あるいは、空気感染化までいかなくとも、感染力が強化していることはあり得るかもしれません。

今回のエボラは最初に発生が確認されてから、もうそろそろ1年になろうとしていますが、過去の様々なパンデミックの歴史を見ますと、たとえば、1918年に始まった鳥インフルエンザのパンデミック(スペインかぜ)は、終息したのが 1923年と、流行が終わるまでに約6年間近くもかかりました。

もっと遡れば、1829年に発生した世界的なコレラの流行は、終息したのが 22年後の 1851年でした。

1829-1851.gif
Daily Mail


現代はその頃より治療技術は進んでいますが、しかし、エボラはその頃のコレラと同じように確立した治療法がないという意味では、高額な対症療法が増えたという以外は、その対応は実は 19世紀とさほど変わらないかもしれません。

そして、昔と大きく違うのは、「人は他の国へ短時間で移動できる」ということです。

エボラの潜伏期間は最大 20日程度ありますが、アフリカからヨーロッパまでは数時間で到着します。