▲ 2014年11月3日の Daily Galaxy より。
「時間の絶対性の崩壊」が招くかもしれない現代宇宙モデルの終わりの時
宇宙関係の大御所サイトのデイリーギャラクシーで上のような「宇宙から時間が消えているという新しい学説」を紹介している興味深い記事を見ました。
ちょっと読んでみましたら……長い長い。
その上に、異常なほどの専門用語の飛び交う大変難解な記事だったのですが、今回はその中から自分である程度わかる部分を翻訳しました。
それにしても「どうしてこんなに長い記事となったのか」と考えますと、過去のデイリーギャラクシーの記事の例では、「現代宇宙論やビックバン仮説の崩壊につながりかねない理論については長い記事になる」という傾向があります。
たとえば、今年2月の記事、
・「暗黒物質は存在しないかもしれない」 : 王立天文学会の総会で発表された科学界にとっては衝撃的な新学説
2014年02月13日
では「暗黒物質の存在の否定」に関してのデイリーギャラクシーの記事をご紹介したのですが、この時もあまりにも長い記事の上に極めて難解であり、その時には記事の翻訳そのものを諦めました。
この暗黒物質という仮想上の物質にについては、後の方でも少し書きます。
しかし、今回は暗黒物質の否定よりも、さらに過激といえば過激な、
「時間の絶対性の否定」
ということがテーマとなっていて、これはもう、物理学の基本中の基本に「時間の流れは不変」という大前提がありまして、この「時間」というものの絶対性が崩れますと、つまり、時間が変幻自在なものであった場合、すべての物理法則は「崩壊」します。
もちろん、宇宙論もです。ビッグバン仮説から「宇宙の膨張と終焉」、あるいは「星や銀河の成り立ち」の理論に至るまで宇宙論「すべて」崩壊しかねないほどのインパクトを持っていると思われます。
ちなみに、この「絶対的時間」を確立したのは、近代物理学の祖であるニュートンでした。
▲ ニュートンが絶対的時間なども含めたニュートン力学体系を記した著作『自然哲学の数学的諸原理』(1687年)の英語版の扉。
なお、ニュートンは敬虔なクリスチャンでもあったのですが、「イエスの教えと絶対的時間の関係」について、アイザック・ニュートン -Wikipedia の「キリスト教徒として」というセクションに以下のような記述があります。
絶対的時間や絶対的空間などを確立したニュートンではあるが、彼自身はそれらがキリスト教の教義と矛盾するとは考えておらず、『自然哲学の数学的諸原理』にて宇宙の体系を生み出した至知至能の「唯一者」に触れ、それは万物の主だと述べている。
というようなことなんですが、今回のデイリー・ギャラクシーの記事には、2011年にスロベニア科学研究センターというところの科学者たちが、ニュートンの「絶対的時間」は「間違っている」とした研究発表をおこなったことなどにもふれられています。
しかし、「時間が絶対的ではない」となった場合はどうなるのかというと、時空を4次元的にとらえるしかないわけで、どうやら現在の最先端物理学は「4次元の世界」への理論へと少しずつ変化しているようです。
そういえば、アメリカの科学系メディア PHYS.ORG の10月 30日の記事にも下のようなものがありました。
・PHYS.ORG
パラレルワールドとは「複数の宇宙が存在する」というようなことなのでしょうけれど、どうやら最先端物理学の世界ではそれらの存在を認めることと、それらの「様々な宇宙」の相互の作用を研究するという機運が高まってきているようです。
4次元の世界とか、パラレルワールドなどの響きは、かつては映画やコミックだけの幻想の世界だったような概念ですが、現実の科学がそちらに向かって進んでいっているという時代になったようです。
実際、今回のデイリーギャラクシーの記事は「時空連続体」( space-time continuum )という少なくとも私は聞いたことのない言葉から始まります。
これは、時空連続体 - Wikipedia によりますと、
時空連続体とは、時空を4次元多様体としてとらえることを指す。連続体という考え方は古典的であるので、時空の量子論を論じる際には多様体という幾何学的物体を量子化して考えなければならない。
とのことですが…………この説明では、何だかさっぱりわかりません。
そうしましたら、 Yahoo! 知恵袋に「時空連続体ってなんですか?過去・現在・未来はすでに存在しているって事ですか?」という質問があり、そのベストアンサーは下のようなものでした。
通常私たちが存在する世界(空間)は3次元とされています。
しかし、この「縦」「横」「高さ」の概念だけでは状態の変化を説明する事ができないため、4番目の次元である「時間」と3次元空間をひとまとめにしたものが時空連続体です。
つまりは「時間と3次元空間をミックスさせたもの」ということでいいのですかね。
そして、デイリーギャラクシーの記事には、「暗黒物質」のことも出てきます。
というより、「暗黒物質の存在の否定」が主要なテーマとなっているのです。
暗黒物質の存在は風前の灯火
この「暗黒エネルギー」とか「暗黒物質」というものが何かといいますと、ダークエネルギー(暗黒エネルギー) - Wikipedia の説明では、
宇宙論および天文学において、宇宙全体に浸透し、宇宙の拡張を加速していると考えられる仮説上のエネルギーである。
2013年までに発表された観測結果からは、宇宙の質量とエネルギーに占める割合は、原子等の通常の物質が4.9%、ダークマターが26.8%、ダークエネルギーが68.3%と算定されている。
というものです。
なお、 Wikipedia の「暗黒物質」の説明は以下のようなものです。
暗黒物質とは、宇宙にある星間物質のうち電磁相互作用をせずかつ色電荷を持たない、光学的には観測できないとされる仮説上の物質である。そもそも本当に存在するのか、もし存在するとしたらどのような正体なのか、何で出来ているか、未だに確認されておらず、不明のままである。
ちなみに、私は、
「暗黒物質や暗黒エネルギーというものの存在への疑念」
をずっと持っていまして、記事もよく書いていました。
上のほうにもリンクしました「暗黒物質は存在しないかもしれない…」 という記事に載せました現在の物理学での考えでの宇宙の分布図は以下のようになっています。
この図が示す意味は、
現代の宇宙論では「この世の中で、人間が存在を認識できる物質は4パーセントしかない」
ということになります。
つまり、この宇宙……というか「この世」は「人間に見えもしない、存在を確認することもできない物質に 96パーセントも占められている、というのが現代物理学の考え方なんですね。
なぜ、そんな訳のわからない理論を打ち立てなければならななかったかというと、
「こうしないと現代の宇宙論モデルの計算のつじつまが合わなくなる」
からです。
こういうもの(暗黒物質など)で計算上の矛盾を補足しておかないと、宇宙の急速な膨張だとかビッグバン仮説さえも崩壊してしまい「現代宇宙論が窮地に陥る」からだというのが最も妥当な説明だと私は思っています。
しかし、だからといって、「この世の 96パーセントが認識できないモノで作られている」なんてのは、やはり納得できるものではないような気がするのです。
上の表では、「通常の物質」、つまり人間が認識できる物質はこの世界にたった 4パーセントしかないということになっているのですが、私の頭の中の宇宙論は下のようになっています。
人間はこの世に存在するすべての物質を認識できると私は確信していますし、何より、「この世は計算で作られている訳じゃない」と思うのです。
まあしかし、実際、そんなに強く主張せずとも、この暗黒物質や暗黒エネルギーといったものの存在は、「否定に向かって一直線」の傾向を見せています。
2012年 4月の、
・「そこに暗黒物質は存在しなかった」:従来の宇宙論を否定する観測結果を欧州南天天文台が発表
2012年04月20日
という記事では、宇宙の観測結果が現代宇宙論に反する観測結果を出したことを取り上げていて、この頃から多くの科学者たちの間に、
「暗黒物質とか暗黒エネルギーって本当はないんじゃね?」
という雰囲気が漂って、現在に至っています。
そんなように、いろいろと急激に変化していくかもしれない物理学や宇宙論なわけですが、ここからデイリーギャラクシーの記事をご紹介します。
"Time is Slowly Disappearing from Our Universe" (Or, is It Timeless?)
Daily Galaxy 2014.11.03
「時間がゆっくりと我々の宇宙から消えている」(それとも、それは永遠?)
もし、時空連続体の数式から「時間の部分」が尽きた場合はどうなるのだろうか。
おそらく時間はゆっくりと消滅し続けており、そして、いつか、時間は完全に消え去ることを現在の科学的証拠は示している……という長年、科学者たちを悩ませて続けているラディカルな理論がある。
かつて、科学者たちは、宇宙が加速度的に拡大していることを示すために、宇宙の遠い場所にある爆発した星(超新星)からの光を測定した。 科学者たちは、これらの超新星が宇宙の年齢のように、より速く広がっていくと仮定した。
また、物理学者たちは、反重力のような力が離れた銀河を駆動させていなければならないと仮定し、この正体不明の力を「暗黒エネルギー」と呼ぶようになった。
そんな中、宇宙の急速な膨張や暗黒エネルギーの存在を確認する方向ではなく、「時間そのものが何十億年の中でその存在がなくなる」という考え方が提唱されたのだ。
この理論は 2009年にスペイン・サラマンカ大学のホセ・セノブィラ( José Senovilla )教授により提唱された。時間が消えると、すべてのものは完全に停止するまで粉砕する。
この「時間そのものの終焉」という推論は暗黒エネルギーの代替えの説明ともなりうる。神秘的な反重力の力の宇宙現象であるとの示唆をされている、この暗黒エネルギーについては、多くの科学者たち頭を悩ませてきた。
しかし、今日に至っても、実際に暗黒エネルギーが何であるかを知る者はいないのが現実で、あるいは存在するとしたら、それはどこから来たのかも誰も知らない。
セノブィラ教授と彼の同僚たちは、それに対して驚くべき代案を提示した。教授らは、暗黒エネルギーというようなものは一切存在しないとし、時間がゆっくりとしたペースで遅くなっているという理論を提唱したのだ。
教授の主張は、私たちは「宇宙の膨張の加速」に関しての考え方に騙されていたわけで、実際には時間そのものが遅くなっているというものだ。
日常の日々のレベルでは、その変化を私たちが知覚することはない。しかし、数十億年にわたる宇宙の進路を追跡しての宇宙規模の測定から、このことは明らかになるだろう。
この変化は、人間の視点からでは無限に近くゆっくりとした変化だろうが、宇宙論での視点の観点からは、数十億前に地球を照らした太陽からの古代の光の研究によって、それを簡単に測定することができる可能性がある。
セノブィラ教授は、「私たちは、宇宙の膨張そのもののが幻想だとは言ってはいません。私たちが言っていることは、膨張が加速しているということが幻想だという可能性についてです」と言う。
現在、天文学者たちは、いわゆる「赤方偏移」(観測対象からの光のスペクトルが、可視光で言うと赤に近い方にずれる現象)の技術を用いることで、宇宙の膨張速度を識別することができる。
しかし、これらの測定の精度は「宇宙の時間が絶対的であること」に依存している。もし、セノブィラ教授たちの新しい理論のように、時間が減速していっているとした場合、私たちの独立した時間は新しい空間次元に入っていくことになる。
2011年には、スロベニア科学研究センターの科学者たちは、ニュートンが提唱した「絶対的時間」は間違っているとの理論を発表した。
このスロベニアの科学者たちは、時間は4次元の時空にあるという考え方に基づいている。これまでの時間というものに対しての視点を置き換えることにより、物理の世界は、事物により正確に対応させることができると彼らは主張する。
このあたりまでとしておきます。
オリジナルは、本当にとてつもなく長い記事なのですが、その長い記事の1番最後の文章は、
What is time?
すなわち、「時間とは何なのか?」という文章で締めくくられていました。
ちなみに、科学的な事柄とは関係ないですが、未来予測プロジェクトのウェブボットの代表のクリフ・ハイが、2008年のエッセイで、「変容する時間」について記していたことを思い出しました。
こちらは上の記事のように「時間が遅くなる」のではなく、「時間が加速する」ことを書いています。
今回の記事とは関係ないながら、一部抜粋して記事を締めたいと思います。
ALTA レポート 909 パート5
ウェブボット 2008年12月7日
E=MC2、これはアインシュタインの周知の公式だが、時間という概念はこの公式にあるほど客観的な存在ではないと私は考える。時間というものは人間の感じ方によって、加速したり減速したりスピードが変化するものなのだと思う。
どのような状況でも変化することのない尺度としての客観的な時間のような概念というものは見いだしにくい。
時間の速度はあくまで人間の主観的な実感が決定している。そうした意味で、多くの人間の時間感覚は根本的に変化するとのデータが強く出ている。時間感覚が一気に加速するのである。
われわれのデータでは、時間が加速している実感は、まず個人のレベルで起こることを示している。多くの普通の人達が、説明のつかない奇妙な出来事や気分を体験するというのだ。
もちろん、こうした変化は誰でも体験するというわけではない。
こうした体験を一切しない人々もいる。
しかし、時間の新しい実感をもつ人間の数は一気に増えてゆく。それら個々人の体験や意識変化は、人類全体の集合意識に次第に浸透する。そして最終的には人間の意識を根本から変えてゆく。
このようにクリフ・ハイは書いていましたが、どうなることなのでしょうね。
今の私の個人的な感覚でいえば、時間は加速しているように感じます。