2014年11月09日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




観測史上最強のスーパー台風ハイヤンから1年。「忘れ去られた被災者」は増え続け、地球はさらに厳しい自然の二極化への扉を開ける



人は自分と関係の薄いことについては、相当大きな出来事でも本当に忘れやすいものだなあと昨日の海外の報道を読んで、つくづく思いました。

その報道は下の 11月 8日のエポックタイムズのトップ記事です。

haiyan-one-year.gif
Epoch Times






 


この写真は 2013年の台風「ハイヤン」の犠牲者の方々の集団埋葬地で被災1年目の祈りを捧げるカトリックの司祭の姿です。

台風ハイヤン(あるいはハイエン)というのは、日本では、「平成25年 台風第30号」にあたるもので、 2013年 11月初旬に発生した、国際基準でカテゴリー5の「スーパー台風」でした。フィリピンにおいては死者行方不明者が 7,000人を越えた東南アジアでの台風被害としては最大級のものでした。

中心気圧は勢力最大時で 895パストヘクトル、最大瞬間風速は90メートルという、観測史上でも最大クラスの台風でした。

ハイヤンは下のルートを進み、「赤」の色が部分がカテゴリー5の勢力を持っていた時を示しますが、ちょうどそのカテゴリー5の最大勢力の時にフィリピンを通過したため、想像を絶する被害が発生しました。

Haiyan_2013_track.gif


日本にはまったく影響がない台風でしたので、日本では当時もそれほど大きく報道された記憶はないですが、1年経った今は、私もこの壊滅的な台風を忘れていたほどでした。

しかし、当時の海外メディアの報道の見出しなどで、その惨状を改めて知ります。

haiyan-endof-world.gif

▲ 2013年11月11日の英国メディアミラーより。


平成25年 台風第30号 - Wikipedia の記述でも、この台風の壮絶な勢力と被害がわかります。

11月10日、レイテ州の警察は台風の進路にあった住宅や構造物の約70〜80%が破壊され、死者が1万人に達するとの推定を発表。また、レイテ島西部のオルモックでも建物の90パーセントが全半壊するなどの被害が出た。被災地を訪れた国連関係者は、2004年スマトラ島沖地震以来の被害と述べた。

最終的な被災者数は、1,600万人以上にのぼった未曾有の大災害でした。

昨日、海外の多くのメディアで、冒頭のような「台風ハイエンから1年後のフィリピン」の特集を組んでいて、20万戸の復興住宅の建設が予定されている中、着工はまだ約2千戸(計画の 100分の 1)にとどまっているなど、かなりの地域でいまだに再建が進まない現状などが記されていました。

下の写真は 11月 6日のアルジャジーラの記事にあったものですが、冒頭の集団墓地の十字架は近くで見ますと、ひとつひとつに、犠牲者の名前と共に「RIP」と書かれています。

Requiescat-in-Pace2.jpg
Aljazeera


RIPは、ラテン文字の「 Requiescat in Pace 」の頭文字で「安らかに眠れ」という意味で、英語圏では Rest in Peace の表記で同じ意味でよく使われます。こんなに多くの「RIP」文字が並んでいるのを見たのは、これが初めてのような気がします。

どんな災害でもそうですけれど、同じ国での災害でも、関係のなかった人たちの頭の中からはわりとすぐに消えていきます。海外での出来事ともなると、さらにその傾向は強いはずです。

そして、災害の種類は関係なく、今後、仮に災害が多くなった場合、その「忘れられた人」の数は多くなり、そのうち、「忘れ去られた人の数のほうが多くなる」という時代が来ないとも限りません。




北極から「黙示録的な寒波」がアメリカにやって来る

ところで、In Deep の記事では上のハイヤンのことは、2013年12月の、

地球は黙示録モードに突入:ヨーロッパに「史上最大級の暴風雪」が近づく中で、各地に出現するVサインは何への勝利の意味か
 2013年12月04日

の中で少しだけふれたのですが、その記事を久しぶりに読んでみましたら、記事の冒頭は、「北極からの嵐によるヨーロッパの寒波」のことにふれていました。

ちょうど昨日の記事、

西暦1750年頃に「何らかの理由」で小氷河期の入口の手前から救われた人類。しかし、今回はどうなる? 太陽と火山噴火の増加が作り出す地球冷却のシステム
 2014年11月08日

でも、ヨーロッパやロシア、アメリカなどの「異常に早い寒さの到来」について記しましたが、今年のこれらの地域の寒さの原因も「北極からの冷たい大気の流れ」なのです。

この現象は、北極や南極の上空にできる大規模な気流の渦のことで、正式な名称は「極渦」(きょくうず、きょくか)などと呼ばれるものらしいですが、あまり一般的な言葉でもないですので、ここでは「北極からの嵐」というような表現にしています。

現在、ロシアや中国北部の多くの地域が、時期としては異常な寒さに見舞われているのも、この北極からの寒気の影響で、このことは、

モスクワで10月に入ってから続く 30 年ぶりの異常な寒波
 来たるべき地球のかたち 2014年10月25日

に書いたことがあります。

moscow-cold-top.gif

▲ 2014年10月23日のロシアメディア ヴェスチ より。


そして、それらと比較しても「特大の北極からの嵐」が今週、アメリカの多くの地域に影響を与えることが予測されています。

polar-voltex-2.gif

▲ 2014年11月8日の Accu Weather より。


上のようなメカニズムで北極の冷たい空気が北米大陸に流れ込むわけですが、すごいのは、

今週のアメリカ東部の気温の「下がり方」の急激さ

そして、

アメリカの東部と西部でまるで違う気温分布

です。

下の図は、 NOAA (アメリカ海洋大気庁)の天気予報センターが出した来週からのアメリカの気温予測です。紫になればなるほど、平年より低い気温となり、赤は平年より気温が高くなる予測が出されている地域です。

アメリカの2014年11月16日から11月22日の気温の予測

814temp.gif
NOAA

見事にアメリカ東部と西部では、気温の傾向があからさまに違うのがわかりますけれど、東部では大半の地域が濃い紫色となっていて、これは下の分布の色分けから見ますと、「平年より 80パーセント以上気温が下がる」ことを意味しているのだと思われます。

皮肉なことに、歴史的な干ばつが続くカリフォルニア州は相変わらず平年より気温が高いままとなっていて、西海岸の干ばつが解消する気配はなさそうです。

カリフォルニアでは一昨年以来続いている過去数十年で最悪の干ばつの改善の兆しが見えていません。

11月3日のブルームバーグの記事では、いよいよ農作物価格に影響が大きく出始めていることが報じられています。

カリフォルニア州では3年間にわたって降水量が過去最低水準にとどまり、82%が極度の干ばつに見舞われている。このため、米最大規模の農業地帯への給水が制限されている。米農務省によると、かんがいができず一部の農地で農産物が栽培されていないため、干ばつの影響で全米の食料価格が上昇する可能性が高い。

アメリカで現在最も北極からの冷たい風と「雪」を欲しているのは西海岸だと思うのですが、NOAA の予測では、11月になっても、カリフォルニアを含めた西海岸の気温は高止まりしたままとなりそうで、干ばつと極度の水不足の解消はまだ先となってしまうのかもしれません。

実際、11月3日には「ロサンゼルスに熱波の予測」なんていうニュースも見かけましたし。
いくら西海岸でも 11月に「熱波」と入るタイトルの記事には驚きました。

los-angels-heat.gif

▲ 2014年11月3日の laist.com より。


それにしても、広大な面積を持つとはいえ、アメリカという一国の中だけでも上のように「まったく別の気候」が混在しているわけで、こういう極端な二極化は世界的にも進むのかもしれません。

自然災害もそれに応じて、各所でまるで別のタイプの災害が発生する……というような。




いろいろな方面で異常は進行しているのかもしれません

何だか、前後の脈絡のない記事となってしまいましたが、最近、シベリアで「相次いでフラミンゴが発見された」という報道を、

氷点下30度のシベリア地方で相次いで発見された「フラミンゴ」と地球の磁場の異変の関係
 2014年11月09日

という記事でご紹介しました。

フラミンゴが発見された場所は氷点下 30度という、とてもフラミンゴがまともに生息できる場所ではない上に、最も近いフラミンゴの生息地であるカスピ海周辺からも 1,000キロメートル近くも離れた場所であり、どうしてそんなところまで飛んできてしまったのか……と考えてしまいました。

下が、フラミンゴの生息地と、シベリアでフラミンゴが発見された場所を示した地図です。

flamings-map.gif


考えるうちに、ふと、ほぼ4年ほど前の記事、

鳥と魚の大量死をめぐる報道より(3) 世界に拡大する大量死と磁場変動説
 2011年01月06日

の中で、中国のメディアの記事をご紹介したことがあり、その中にある、

渡り鳥が長い期間の間、磁場を感知できることには2つの主要なポイントがある。1つはくちばしだ。鳥のくちばしの細胞は地球の磁場を感知することができる。くちばしは、脳と神経系を介してメッセージを渡す役割をなす。

もう1つは、光受容体細胞の中にある鳥の目で、この目は磁場を「見る」ことができ、この情報伝達の脳への別ルートは「Nクラスター」の光処理領域と呼ばれている。

渡り鳥の眼の特定のタンパク質「クリプトクロム」は、光の刺激により地球の磁場の特殊な性質を認識することができるのだ。

という記述を思い出しました。

鳥は磁場を「見て」いる

のです。

鳥たちが長距離を飛ぶ際に磁場を頼りにして飛んでいるのだとすると、渡り鳥たちの行動に異常が出るということは、磁場の異常とも繋がっている可能性もあるかもしれません。

磁場の異常は、太陽の影響でも起きるでしょうけれど、地球の磁極が移動していることとも関係しているのかもしれません。

最近、北海道で起きた謎のイワシの大量打ち上げなども含めて、動物たちの行動の異常は、磁場だけではないでしょうけれど、何か地球の大局的な異常をも示しているものなのかもしれません。

この「磁極の移動」については、最近、あらたな興味深い研究発表がされていまして、いつかご紹介したいと思っています。

今年の冬は「寒さだけ」で済むのか、そうではないのか。
そのあたりは、予測するより、時間の流れに身を任せて経験していくしかないのかもしれないです。