2014年11月20日



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「地球上の生命の素になる有機分子」がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から検出されていた!



p67-organic-molecules.gif

▲ 2014年11月19日のロイターより。



休眠までのフィラエの戦い

個人的にはとても嬉しいニュースですが、昨日、ロイターで上の報道を見ました。

現在は太陽電池のバッテリー切れにより、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の上で休眠状態の着陸機フィラエですが、休眠までの 50時間ほどのあいだに大きな仕事を成し遂げ、その後に眠りについたようなのです。

今回は、上のロイターの記事をご紹介したいと思います。

この記事で私が読んでいて嬉しかったのは、彗星探査機ロゼッタのミッションについて、

今回のミッションの大きな目的のひとつが、炭素系化合物を発見すること

だと明記されていたことと、

どのように生命が進化したかという謎を解明するためのものでもあった。

と記されていたことでした。

これまでロゼッタに関して多くの報道記事を読みましたが、着陸に成功したとか、休眠についたとか、そういう事実関係に関しての報道は多くても、「このミッションの最大の目的」に触れているものをあまり目にしませんでした。

しかし、今回の記事で、今回の探査の目的が、「彗星が生命を運搬しているかもしれないという説に対しての検証でもあった」という可能性を含んでいることを理解しました。

ロゼッタが打ち上げられたのは 10年前の 2004年。

2001年に亡くなったパンスペルミア説の主要な提唱者のひとりだったフレッド・ホイル博士の没後3年目にして、多分はホイル博士が生きていれば望んだであろう探査を欧州宇宙機関( ESA )は今から10年も前に淡々とおこなってくれていたのでした。

日本の JAXA や欧州の ESA は、アメリカの NASA に比べれば規模も予算も格段に小さいですが、かつてはともかく、最近での宇宙ミッションの「意義」は、 NASA のおこなっていることの数倍大きいと私は思います。

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内閣府


上のように、ESA の予算は NASA の3分の1以下、日本の JAXA に至っては、NASA の 10分の 1程度の予算です。

それでも、ESA は今回のように、着陸など失敗した部分も大きかったにも関わらず、

「彗星から地球の生命の構成要素を検出する」

という、地球の生命の起源の根本に迫る可能性のあるミッションを今から 10年前から計画して、部分的に成功させています。また、この「生命の起源を探る」分野では、やはり十分とはいえない予算ながらも、日本の国立天文台が、2010年に、

「地球上の生命の素材となるアミノ酸が宇宙から飛来したとする説を裏付ける有力な証拠を発見」

という、やはり地球の生命の起源に関しての画期的な発見をしています。

このことについては、過去記事、

「生命発祥の要因は宇宙からの彗星によるもの」という学説が確定しつつある中でも「幻想の自由」の苦悩からは逃げられない
 2013年09月18日

の後ろのほうに、当時の新聞記事を記していますが、その読売新聞の記事の冒頭は、

生命の起源、宇宙から飛来か…国立天文台など
読売新聞 2010.04.06

国立天文台などの国際研究チームは、地球上の生命の素材となるアミノ酸が宇宙から飛来したとする説を裏付ける有力な証拠を発見したと発表した。

というものでした。

日本やヨーロッパの宇宙ミッションに携わる人々は「派手な喧伝やポーズのための宇宙計画」ではなく、本気で地球の生命の起源を解き明かそうとしている様子が見て取れるのです。

しかるに、それらと比べてはるかに膨大な予算を使うことのできる NASA が何がしかの人類科学の発展に貢献したことがあったかどうかときたら!

……まあ、こんなことで興奮している場合ではないのですので、ロイターの記事をご紹介します。

今回のフィラエの探査は、彗星の表面しか調査できていない可能性があり、内部を調査できない限り、いろいろと不完全なことは否めませんが、しかし、フィラエが今後再起動する可能性も残っています。いつか、フィラエが、あるいは似た何かのミッションが、彗星の「生命」の報告をもたらしてくれることを期待しています。

ホイル博士に報告と合掌まで。

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Scientific American


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Comet team detects organic molecules, basis of life on Earth
Reuter 2014.11.19


彗星チームが地球上の生命の基盤となる有機分子を検出


ヨーロッパの彗星着陸機フィラエは、自身バッテリーが切れるまでの駆動時間に、彗星から炭素元素を含む有機分子を嗅ぎ取ったとドイツの科学者たちは述べた。

この炭素元素を含む有機分子は地球の生命の基盤となっているものだ。

科学者たちは、そこにタンパク質を構成する複雑な化合物が含まれていたかどうかについては明らかにしていない。今回のミッションの大きな目的のひとつが、炭素系化合物を発見することだ。

そして、それらの発見を通して、究極的には、地球の生命は彗星たちによってもたらされたことを突き止めることにある。

フィラエは、探査機ロゼッタに搭載されて、10年の歳月をかけて地球から 67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への着陸に成功した。このミッションは、どのように惑星が形成され、あるいは、どのように生命が進化したかという謎を解明するためのものでもあった。

11月15日、フィラエは自身のバッテリーが尽きるまでの 57時間のあいだ、データを送信し続けた。その後、バッテリー切れによりミッションは終了した。

彗星は太陽系の形成の時代にまで遡るタイムカプセルのように古代の有機分子を保ってきた。

フィラエに搭載されている COSAC ガス分析器は、大気を「嗅ぐ」ことができ、そして、彗星に着陸後のフィラエは最初に有機分子を検出したと、ドイツ航空宇宙センター( DLR )は述べる。

フィラエは着陸後、彗星の表面に穴を掘り、有機分子を獲得したが、しかし、フィラエがその試料を COSAC に送ることができたかどうかは明らかになっていない。

また、着陸船には MUPUS という熱と密度を測定する検査機器が搭載されており、これによると、彗星の表面は以前から考えられたように軟らかいものではないことがわかった。

熱センサーは彗星の表面から 40センチの深さにまで打ち込まれて計測されることになっていたが、ハンマーの設定を最強にしていたのにもかかわらず、これは実現しなかった。

ドイツ航空宇宙センターでは、表面から 10センチから20センチ下に厚い塵の層が存在していると起算し、その層が氷のように硬い物質だったと考えられる。

ドイツ航空宇宙センターで MUPUS 分析チームを率いるティルマン・スポーン( Tilman Spohn )氏は、「これは驚きです。私たちは彗星の地面が、このように硬いものだとは考えてもいませんでした」と言う。

スポーン氏は、彗星が太陽に近づくにつれて、ふたたびフィラエの太陽電池が充填されていった場合、再度、 MUPUS による熱と密度の分析を再開させられることを願っていると述べた。




(訳者注)ここまでです。

昨日の記事で、

「最近は何かこう気持ちがすっきりと晴れる時が少ない」

というようなことを書きましたが、やや鬱っぽい感じも漂う中で多少涙もろくなっているのか、今回のロイターの記事を書きながら、フレッド・ホイル博士の著作の内容を思い出していると、何だか泣けてきて、「泣きながら翻訳する」(苦笑)という珍しい経験となりました。

それはともかく、今回のフィラエは「彗星の形質」についても従来の考え方を覆す発見をしています。

たとえば、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面は、

彗星の表面と少なくともその数十センチ下は非常に硬い物質

であることを示唆しました。

これまでは、彗星表面は軟らかく、それが太陽などの熱でボロボロと剥がれていくのが「彗星の尾」というような感じの考え方だったのですが、それが覆され、彗星は「強固な外壁を持つ」ことがわかりました。

そして、内部からガスを常に噴出していることをロゼッタが観測しています。

この2点だけでも、

彗星が撒き散らしているものは外側のものではなく、内部から噴出しているもの

であることがわかります。

それがわかっただけでもロゼッタとフィラエの成し遂げたことは大きなことだと思います。

今回、フィラエが検出したのは、単なる炭素元素を含む有機分子ですが、フレッド・ホイル博士は基本的には、有機分子だけではなく、

・バクテリア
・ウイルス


が共に彗星によって共に宇宙にばらまかれているとしていました。

そして、大事なことは、ウイルスが「地球の生命の進化に関わっている」と強く主張していた点です。

フレッド・ホイル博士の著作『生命(DNA)は宇宙を流れる』から抜粋します。



『生命(DNA) は宇宙を流れる』 第4章「進化のメカニズム」より

動物、植物からバクテリアまで、およそ生きた細胞でウイルス感染から免れることのできるものはない。

さらに、同じ種に属する個体どうしでさえ、そんな遺伝子の組み換えが起きるのは、かなりショッキングな事態であるのに、ウイルスの中には、トリからサル、サルからヒトなど、異なった動物種への感染を繰り返すものがある。

このような感染のパターンを持つウイルスは、種の障壁を超えて遺伝子を運んでしまう。われわれが、地球の生命を進化させたのはウイルスなのだと考えるのは、ウイルスのこんな性質に着目するからだ。

生物が進化するには、遺伝子が変化する必要がある。

もともときわめて安定している遺伝子が、コピー・ミスによる突然変異を起こしたおかげで優れた形質を獲得すると考えるのは、かなり無理がある。

けれども、ウイルスなら、宿主がそれまでもっていなかったまったく新しい遺伝子を導入することができ、生物の基本的な構造を一新させることもできるのだ。ウイルス感染による遺伝子の移動は、まさに理想的な進化の原動力となりうるのだ。

ウイルスの本質は、もっぱら他の生物に感染して、これを病気にさせたり、死に至らしめることにあるように考えられている。

けれどもそれは、ウイルスが病気の原因となる微生物の一種として発見され、研究されてきたことに由来する偏見である。

ウイルス感染の影響は、細胞破壊だけではない。細胞を壊すかわりに、細胞の代謝や機能を変えたりする場合もあるのだ。

実際、大腸菌に感染するバクテリオファージというウイルスは、感染してそのまま増殖サイクルに入り、菌を殺してしまう場合もあるが、増殖を止めて DNA を大腸菌の染色体に組み込んでしまい、以後、大腸菌の遺伝子と共に、何世代にもわたって安定的に存在し続ける場合(溶原化)もある。

溶原化したファージの中には、大腸菌の形質を変えてしまうものもある。




ここまでです。

私たちはウイルスは単に病気を起こすだけの存在として見がちですが、それは「病気を起こす対象」として研究が進んだためであり、その他の役割について分かりだしたのは、最近のことです。

上のホイル博士の文章にもあるように、希に、ウイルスやバクテリオファージは、対象の生物に入り込んだ後に「 DNA を大腸菌の染色体に組み込んでしまう」というようなことをおこない、その生物の遺伝子を書き換えてしまうこともあるようなのです。

そのようなことを前提として、地球の生命の進化は、

「環境への適応によるものではなく」

「生物の遺伝子そのものがウイルスによって書き換えられる」


ということだとホイル博士らの研究では結論付けられています。

このような種の変化の場合、その生命は、まさに「突然変異的」に遺伝子が変化するのだと思われますが、多分、過去の人類もそのような突然の遺伝子変化を経験して現在に至っているのだと考えますと、これから先にもそれは起きるはずです。

人類の進化が起きるとしても、環境適応の進化ではあまりにもゆっくりとしすぎて、進化する前に地球環境崩壊や、あるいは小氷河期の突入などで、人類文明が終焉してしまう可能性さえあります。

しかし、遺伝子レベルでの「突然」の、そして根本的な人類の変化(進化)が起きるのならば、人間はこの後の厳しいかもしれない未来をも生き抜いていけるのかもしれません。

いずれにしても、今回のフィラエの「休眠前の戦い」に敬意を表し、フィラエがふたたび眠りから目覚めて稼働を始めることを祈っています。

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