▲ 2014年11月26日のコロラド大学 ニュースリリースより。
地球を保護する奇跡的なメカニズムのおかげで私たちは生きている
地球という惑星は「太陽系の他の惑星には見られないようなメカニズムで生命が保護されている」ということについては、これまでも書いたことがあるかもしれません。
宇宙からはいろいろなものが降り注いでいるわけですけれど、中にはダイレクトに地表に降り注ぐと、生命に害のあるものも多いとされています。
母なる太陽にしても、太陽風プラズマという、科学的な説明では「電子と陽子が分離してイオン化したプラズマ粒子のガス」という温度 100万度のそういうようなものを常に地球に向けて吹きつけているとされています。
こういう環境の宇宙空間では、地球に何らかの「バリア」がなければ、地球の生命は維持されないのですが、「地球の磁場」が私たちを保護する役割を果たしています。
イメージとしては下のように地球は、磁場によって防護されています。
・Geomagnetic storm
これらは、地球に磁場があるからこその防護であるわけで、もし地球から磁場が消えた時には、この最大の宇宙からの防御システムが消滅するわけです。
その場合、どのようなことになるのかは実は誰にもわからないのですが、それでも、何らかの影響や被害は出るものだと考えるのが一般的です。
とはいっても、地球滅亡だの人類の終わりだの、そういうような概念での何かとの関連は「ない」と私は考えています。なぜなら、かつての地球では「磁場は何度か消滅していた」という可能性があり、それでも、地球の生命は哺乳類を含めて生存し続けているからです。
過去の地球で何度も起きていたかもしれない磁場の消失
磁場が消滅していたかもしれないと考える理由は、過去の地球は何度か「磁極の逆転」を起こしていたことが現在ではわかっていることと関係しています。
下は、気象庁地磁気観測所にある表を見やすくしたもので、黒い場所と白い場所は、それぞれN極とS極を現しています。その位置が時代によって色が違うということは、過去 358万年のあいだに、何度もN極とS極が入れ替わっているとことを示します。
過去の地球では比較的短い間に何度も磁場の逆転が起きていたことがわかります。
この気象庁のサイトには、
78万年前N極とS極は逆転しており、また少なくとも過去360万年の間に11回は逆転したと考えられています。
とあります。
過去 358万年でこれだけ起きているのなら、この範囲を何千万年とか何億年とかに広げれば、「地球は日常的に磁極を逆転させてきた」と言っても差し支えないかと思われます。
ちなみに、上の鮮新世とか新第三紀とかは、聞き慣れない単語ですが、地質時代の名称だそう。
この磁場の逆転と、地球の磁場の関係については、一般的に、
磁極が反転する時には一時的に地球の磁場がゼロになる
とされています。
この「されています」というのは、それは磁極の逆転が起きてみないと、そうなるのかどうかは誰にもわからないからです。
しかし、ともかく、仮にその説が正しく、「磁極の反転の際に、地球の磁場がゼロになる」のだとすれば、過去の磁極の反転の時代に地球に生きていた過去の生物たちは何らかの影響を受けていたはすです。
しかし、この地球上の記録では、6550万年くらい前に、恐竜などをはじめてとして、地球の生物の70パーセント程度が絶滅した K-T境界と呼ばれる時代の大量絶滅以降、地球の生物の大量絶滅は確認されていないという事実があります。
なので、仮に地球の磁極が逆転して(その時期はわりと近いと私は思っています)、その時に地球の磁場が消滅して、「地球の防御が消滅」という事態になっても、絶滅イベントが起きることではないはずです。
では何が起きる可能性があるのか。
それは、生命の消滅のほうではなく、「文明の消滅」の可能性です。
磁場の消失で起き得る電気文明の終焉
過去記事の、
・急速に消えていく地球の磁場 : 地球の「磁場の反転」は今すぐにでも起きる可能性を示唆する ESA の科学者の言葉
2014年07月15日
の中で翻訳してご紹介したアメリカの科学サイト「ライブサイエンス」の Earth's Magnetic Field Is Weakening 10 Times Faster Now(地球の磁場は現在 10倍の速度で弱まっていっている)という記事では、欧州宇宙機関( ESA )の地球磁場観測ミッションのスウォーム( SWARM )により、地球の磁場が、それまで考えられていたよりはるかに速いペースで減少していることがわかったということが記されていると共に、その記事には、
地球の磁場が弱められたからといって、それが地球に大量絶滅などのような終末的な現象をもたらすという証拠はない。過去の磁場の反転時に大量絶滅は起きてはいないし、地球上が放射線で壊滅的な影響を受けた形跡も見当たらない。
ただ、それでも、研究者たちは、電力網と通信システムが危険にさらされる可能性は高いと考えている。
とあります。
宇宙空間は、「地球の電気通信システムに壊滅的なダメージを与える電子やら宇宙放射線やらが無数に行き交っている」わけで、地球も常にそれにさらされ続けているわけです。
人口衛星などの宇宙の機器にはそれに対応している防御システムがある(それでも、ときにダメージを受けます)ので、宇宙空間でも稼働しているのでしょうが、地球上の電気通信インフラで「宇宙対策」などしているものなどないはずです。
もし、磁場の保護がなくなり、「地球が丸裸の状態になってしまった場合」には、現在の電気系統に頼る文明システムは一時的かもしれないですが、大きなダメージを受けるか、あるいは存続不可能になる可能性もあるように思います。
そして、上にリンクした記事でも示しましたが、現在、磁場が加速度的に弱くなっています。
下の図は、2014年 6月までの半年間の地球の磁場の強度の変化です。
青色が濃いところになるほど「磁場が弱くなっている」ことを示します。
・Livescience
北米大陸の周辺の磁場の弱体化が著しいです。
また、欧州宇宙機関の観測によって、
現在、従来考えられていたより 10倍の速度で地球の磁場の弱体化が進行している
ことも確認されています。
これは、 2000年頃から磁場の弱くなる速度が加速しているという理解でいいと思われます。
下のグラフはいい加減に作ったもので、正確なものでも何でもないですが、イメージとしてはこのように、最近は以前より 10倍の速度で磁場が弱くなっているのです。
磁場が弱くなることによって、地球の電気や通信のインフラがダメージを受けるかもしれないことは、以前から指摘されていて、今年2月の、
・地球の磁気圏が崩壊を始めた : 英国の科学者たちが地球の大規模な磁場の衰退と、それに伴う磁気圏の崩壊と気候の大きな変動を警告
2014年02月05日
という記事では、下の英国デイリーメールの記事をご紹介しました。
▲ 2014年1月27日の英国 Daily Mail より。
上の記事で、英国リバプール大学の科学者リチャード・ホルム( Richard Holme )教授は、以下のように述べています。
「深刻な事態です。あなたの生活から数ヶ月間、電力が消え去る事態を想像してみるとよいかと思います。今の生活はどんな些細なことでも、電力なしでは成りっていないことに気づかれると思います」
そして、この現在、磁場が弱くなっていることに対して、欧州宇宙機関の科学者ルーン・フロバーガーゲン( Rune Floberghagen )博士は、ライブサイエンスのインタビューで、
「これは地球の磁場が反転する前段階かもしれない」
と述べています。
このまま地球の磁場が加速度的に弱くなり、それが「ゼロ」に近づいた時、あるいは、「磁極が逆転した時」、地球の防護はどうなるのだろうということは多くの人が考えることです。
しかし、すべては起きてみないとわからないことで、磁極が反転して、地球の磁場が何ヶ月かゼロになっても、何も変わらないかもしれないし、あるいは、「ひとつの文明が終焉に向かう」ということもあるかもしれないですし、それは多分、世界のどの科学者も明快な答えは持っていないと思われます。
そして新たに発見された地球のシールド
そんな中で、「地球に新たな防御シールドがあることが発見された」という記事が今回ご紹介するものです。
発見された「シールド」をイメージ化したのが下のイラストです。
これがなぜ存在していて、どんな性質のものなのかの詳細はわかっていないですが、「キラー電子」と呼ばれる電子の防御壁になっていることについてはわかったのです。
キラー電子というのは俗称で、人工衛星や宇宙飛行士の健康などにもダメージを与えるとされている電子で、それがこの「バリア」で、すべて弾かれていることがわかったというものです。
つまり、「地球を電子から守ってくれている防御シールド」が存在したということが新たにわかったということのようです。
なお、このコロラド大学の記事のタイトルにある「スター・トレックのシールド」というのは、アメリカで 1966年から放映されていたテレビドラマ「スター・トレック」に出て来る宇宙船 U.S.S.エンタープライズ号に搭載されている「デフレクター・シールド」というバリアのことを言っているのだと思います。
・Trek Annoyances
これが必要な理由は、戦闘用というより、デフレクター盤 - Wikipedia にある、
宇宙空間には、デブリと呼ばれるいわば『ごみ』が無数に漂っていて、数kmの小惑星サイズから水素原子ほどの超微小なものまで様々ある。
惑星連邦の宇宙艦のように、光速を越えるスピード(=ワープ)で移動する物体にとっては、水素原子のような微小なものでも自らを破壊する脅威となる。その危険性から艦を守るための装置がデフレクター盤である。
という説明のほうが妥当だと思われます。
ちなみに、私が見たことのあるスター・トレックは 1960年代のものだけですが、小学生の高学年か中学1年くらいの時に、『宇宙大作戦』というタイトルで再放送されていたものをよく見ました。
ドラマの時代設定は西暦 2264年頃で、地球からはすべての差別が消えている時代の宇宙開拓を描いた「理想の未来」を描いたドラマでした。
オープニングの、
「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない」
というナレーションで始まるこの番組をワクワクして見ていました。
この宇宙大作戦を見て以来、アメリカのドラマに興味が湧きまして、中学時代は結構アメリカのドラマを見ていました。
特に 1974年から放映された『事件記者コルチャック』は、新聞記者のドラマなのに、取材する事件が、亡霊、狼男、ゾンビ、吸血鬼、地底怪物、宇宙からやってきた謎の生物と、オカルトやスビリチュアリズムなどを題材にしながらも、それをお笑いペースで進めていくという離れ業をやってのけた傑作ドラマでした。
五芒星と悪魔の関係とか、ブードゥー教とゾンビの関係なんてのは、事件記者コルチャックで初めて知りました。
今もたまに見たいなあと思うんですが、 DVD はどうやら、ややプレミア状態で価格が下がらないのですよ。
Amazon ではいまだに中古ですら7万円以上。
・Amazon
いくら思い出の作品だとしても、購入するには躊躇する価格です。
そんなわけで、何だかとんでもない話の逸脱をしてしまいましたが、コロラド大学のニュースリリースをご紹介します。
このニュースは、科学者たちには不可解なことのようですが、もしかすると、地球の周囲には、まだ発見されていない「保護してくれている何か」が存在している可能性もあるのかもしれません。
Star Trek-like invisible shield found thousands of miles above Earth
コロラド大学 ニュースリリース 2014.11.26
地球の数千キロ上空にスター・トレックに出てくるような見えないシールドが発見される
米国コロラド大学ボールダー校が率いる研究チームは、地球上空約 7200マイル(約 1万1000キロメートル)に見えないシールドが存在していることを発見した。
これは、いわゆる「キラー電子( killer electrons )」と言われる電子を遮る役割を持っていることがわかった。キラー電子は、地球の周囲を光速に近い速度でまわっており、宇宙飛行士や人工衛星などにダメージを与えることが知られている。このキラー電子への「バリア」がヴァン・アレン放射線帯で発見されたのだ。
ボルダー大気宇宙物理学研究所( LASP )のダニエル・ベーカー( Daniel Baker )名誉教授によれば、このバリアは、地球上空に2つのドーナツ状のリングの形で存在し、高エネルギー電子と陽子で満ちているという。
ヴァン・アレン放射線帯は、地球の磁場により適所に保持され、定期的に膨張し、太陽からのエネルギーの遮断に応じて縮小する。
ヴァン・アレン放射線帯は宇宙時代の最初の重要な発見で、米国アイオワ大学のジェームズ・ヴァン・アレン( James Van Allen )教授によって、1958年に検出された。
今回の研究を率いたベーカー名誉教授は、そのヴァン・アレン教授のもとで博士号を取得している。
2013年、ベーカー氏は、2012年に「第3層目のヴァン・アレン帯」を発見した NASA の研究チームとの調査で、ヴァン・アレン帯の内側と外側のベルトの間に、過渡的な「ストレージ・リング」( storage ring )があり、宇宙天気の強弱によって、これが出現することがあるとした。
ヴァン・アレン帯に関しての最新の謎のひとつが、地球上空の約 1万1000キロメートル付近の、外側のベルトの内側にある淵に「非常に鋭いエッジ(境界)」が存在していることだった。
これは、超高速の電子を遮断しているように見え、そして、地球の大気の方向に向かって深く移動する。
研究を率いたベイカー氏は以下のように言う。
「それは、宇宙の中でガラスの壁に電子がぶつかっていくような状態なのです。まるで、スタートレックの中でエイリアンの攻撃からエンタープライズ号を守るために使用したフォース・シールド(ディフレクター・シールド)のような透明なバリアといえるものです」
「私たちは、電子を遮断する見えないシールドを見つけたのです。これは極めて不可解な現象だといえます」
この研究の論文は 11月27日号に出版された科学誌ネイチャーに掲載された。
チームは当初、非常に帯電した電子(毎秒 16万キロメートルの速さで地球の周囲を回っている)は、ゆっくり宇宙空間から地球の上層大気まで落ちるように到達して、空気の分子によって破壊されると想定していた。
しかし、ヴァン・アレン帯の宇宙観測船から見えた光景は、電子は消える前に不可解なバリアにより止まるというものだった。
共同研究者で、マサチューセッツ工科大学ヘイスタック天文台の所長であるジョン・フォスター( John Foster )氏は、
「これは私たちが新しい装置と共に、新しい目で現象を見ているようなものです。これは私たちに”そこに固くて早い境界が存在する”ことを語ってくれています」
と述べる。