2014年12月24日



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「イスラム国」戦闘員が最も恐れるもの − それはクルド人「女性」戦闘員に殺害されること



「イスラム国」捕虜戦闘員に直接インタビューした番組を見て

イスラエルにお住まいのお知り合いから、

「昨日こんなテレビ番組やってました」

と、そのテレビ番組が動画で置いてある URL が記載されていました。

それは下のような番組で、文字はヘブライ語です。

pkk-top.jpg

▲ イスラエル mako.co.li より。

上に書かれてある文字のおおよその内容は下のようなもののようです。

世界で一番危険な場所の特別なドキュメンタリーの放映。

イタイ・アンゲル氏はクルド人ゲリラ組織「クルド労働者党( PKK )に参加し、彼らが至近距離で ISIS (イスラム国)と戦っている光景と接した。

そして、PKK によって捕虜にされた狂信的な ISIS 兵士たちにインタビューすることに成功した。

その ISIS 兵士たちが、何人を虐殺したか、そして、何人を撃ち殺したか、そして、何人の首を切り落としたかを聞くことにも成功した。

そして、インタビューによって明らかになる ISIS の黒服の兵士たちが野戦で「最も」恐れるものは何か?


というような感じです。

> ISIS の黒服の兵士たちが野戦で「最も」恐れるものは何か?

というフレーズがありますが、もうタイトルにしてしまっているので、先に書いておきますと、その最も恐れることが、

クルド人女性兵士に殺されること

であることがわかったのです。

なぜ「クルド人兵士」ではなく、クルド人「女性」兵士なのか。

それは、クルド労働者党( 以下、PKK と記します)によって捕虜にされた「イスラム国」の戦闘員たちにメディア取材者がインタビューすることによってわかったことです。

以下は、教えて下さったお知り合いが記してくれたものです。

PKKの女性兵士たちは凄く、男性以上の働きがあるそうです。

ISISの戦士たちが最も恐れるのは、この女性兵士たちに殺されることらしいのです。

女性に殺されると天国に行けないんですって。

どうして、自分で見たものとしてではなく、メールの内容をそのままご紹介しているかといいますと、この番組が、

・音声はアラビア語とクルド語
・字幕はヘブライ語


というように、私には手におえないものなのです。

それでも、後で動画も貼りますが、言葉がわからなくとも、上の説明などを念頭におきまして見ますと、なかなかおもしろいものでした。

それにしても、イスラム国の兵士が「最も恐れていること」が「女性兵士に殺されること」だということには驚きました。

こういうようなことが純粋なイスラム教の戒律として書かれているものなのかどうかはかわからないですが、イスラム国の兵士たちは、

「女性に殺されると天国に行けない」

と本気で考えていて、それを心底恐れているそうなのです。

ちなみに、イスラム教徒の言う「天国」とはどのようなものか。ところで、その前に「キリスト教での天国」についてなんですが、これは実はよくわかっていないようなんですよ。

キリスト教における天国 - Wikipedia

キリスト教の教理では、最後の審判以前の死者がどこでどのような状態にあるのかについて、各教派間の統一見解を得るに至っていない。

ということらしいのですね。

その一方で、イスラム教の方は、

キリスト教と異なり、イスラム教の聖典『コーラン』ではイスラームにおける天国の様子が具体的に綴られている。

となっていて、それはどんなものかというと、コーラン第56章10節から24節、および、56章27節から40節に記述されているのだそうですが、これがどうも「酒池肉林」という言葉を彷彿させるような天国なのです。

天国 (イスラーム) - Wikipedia

イスラムにおける天国は、信教を貫いた者だけが死後に永生を得る所とされる。イスラム教の聖典『クルアーン(コーラン)』ではイスラムにおける天国の様子が具体的に綴られている。

そこでは決して悪酔いすることのない酒や果物、肉などを好きなだけ楽しみ、フーリーと呼ばれる永遠の処女と性行為を楽しむ事ができる。

そのためこのような天国での物質的快楽の描写がジハードを推し進める原動力となっているという指摘もある。

天国に行った後も、性行為とか出てくるのかいね……。

何だかこう、天国は天国なんでしょうけれど、何だかアレですね(苦笑)。
神様とか出てこないみたいですし。

まあ、それはともかく、イスラム教では、「女性兵士(あるいは単に「女性」かもしれません)に殺されたイスラム教徒は天国に行けない」ということになっているようです。

そこに出てくるのが、上の番組の PKK のクルド人女性兵士たちの存在なのです。

この女性たちは、多分ですけど、「世界で最もイスラム国の戦闘員を殺害している女性たち」だと思われます。つまり、「イスラム国戦闘員の天国行きの阻止」に貢献しているわけですね。

ちなみに、この PKK が日本ではどのような組織として扱われているかというと、検索して最初に表示されるのが「公安調査庁」というところでお察しいただけるかと思いますが、「国際テロ組織」というカテゴリーに入っています。

kohan-ppk-.gif
公安調査庁 - 「クルド労働者党」(PKK)


上のページの概要には、

クルド人国家の樹立を目指し,トルコ南東部を中心に活動する分離主義組織。

と書かれています。

このあたりの、ゲリラとか分離主義組織という響きはともかくとしても、今回のイスラエルのテレビ番組を見ていて思ったのは、 PKK では、女性兵士がかなりの勢力を占めていて、何より、「彼女たちが、ほとんどイスラム国戦闘員を恐れていない」ように見えるのです。

それは、インタビューを受ける女性兵士たちの「圧倒的な士気の高さ」が伺えると共に、なぜか、飛び抜けて明るい表情が見えるのです。

インタビューを受ける PKK 女性兵士たち

pkk-women-01.jpg


自動小銃を持ちながら豪快に笑う PKK 女性兵士

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▲ この方はかなり頻繁にインタビューを受けていますので、階級が高い位置の女性かもしれません。自動小銃を片手で軽々と持っていまして、腕力がすごそう。


状況不明ながら PKK 兵舎と思しきあたりの光景

pkk-women-03.jpg


もちろん、 映像には多くの男性兵士も写っていますが、メールにもありましたように、 PKK の女性兵士は、

> 男性以上の働きがある

と、番組では説明されていたようです。

ここまで「兵士」と書いていましたけれど、非正規の軍事組織の場合は「戦闘員」と表記したほうが正しいのかもしれないですね。以降、そのように表記します。

それで、 PKK の女性戦闘員たちが「強い」と報じられていたことを書いたのですが、当たり前のことを書くようで申し訳ないのですが、「理由なく戦闘員が強くなる」ということはあり得ません

高度な訓練、武器や生活物資の確保、何より軍事戦略などの要素が加わらなければ、イスラム国と互角に戦うことなどできるわけもないはずで、武器の供給の件なども含めて、背後には様々な国家なども絡んでいて、何らかの「代理戦争」的な要素が働いているというようなこともありそうですけれど、そこまではわかりません。

そして、この PKK の戦闘員たちが、イスラム国の戦闘員と最も大きく異なる点は、 PKK 戦闘員は、「捕虜を殺さない」のだそうです。

イスラム国は、人質としての利用価値がある場合以外は、捕虜をほとんど殺している印象がありますが、それをしない。すべて殺さずに「生かしたまま」捕虜としている。

そのこともあり、今回のインタビュアーは、捕虜となったイスラム国戦闘員から生きたまま、直接いろいろなことを聞くことができたわけです。

そして、どうやらクルド人女性戦闘員というのは非常に「誇らしい立場」にある人たちのようです。

ちなみに、番組では、PKK の戦闘員たちが男女ともに踊っている姿なども何度か写されていて、この妙な「緊張感のなさ」と「娯楽を楽しむ余裕」が、むしろイスラム国に対しての自信にも見えます。

重機関銃の横で輪になって踊る PKK 戦闘員

machingun-pkk.jpg


ところで、私は、この「クルド人」ということについて、何も知らないことに気づきました。
ほんの少しですが、クルド人を調べて驚いたことがありましたので、書いて起きます。

なお、先に、上でご紹介したテレビ番組の動画を貼っておきます。



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オーストラリア国民より人口の多いクルド人

ところで、この PKK 「クルド労働者党」の戦闘員自体は 5000人程度だそうですが、他にも、クルド人の軍隊はたくさんあり、こちらの記事によりますと、クルド人の正規の軍隊の方は、

クルド人合同軍の中でも「クルド人ゲリラ軍」は、イラク北部の「クルド地方政府」のもとで軍事教練を重ねた正規の軍隊組織で、保有兵員数25万人、大量の火砲や数千台の戦車も保有していると言われる。

保有兵員数 25万人!

この数のわかりやすい比較としては、日本の自衛隊の総数を挙げることができそうです。

jieitai-2014-3.gif
防衛省・自衛隊の人員構成

人口1億2千万人で、軍事費では世界第6位の日本の自衛隊員の総数が、2014年3月時点で、「約 22万5000人」なのです。

つまり、クルド人の正規軍のほうが兵士の数が多い。

クルド人兵士の 25万人は、軍事費世界第3位のイギリス(約 15万人)よりも多いです。

ここで、あらためて、クルド人 - Wikipedia を見てみます。

クルド人

中東の各国に広くまたがる形で分布する、独自の国家を持たない世界最大の民族集団である。人口は2,500万〜3,000万人といわれている。

そんなにいるのかいね!

何かこう、報道などでは「少数民族」的なニュアンスの言葉が聞かれることもあるので、私は勝手に少数民族的なものかと思っていました。

しかし、そうではなく、「独自の国家がない」というだけのことで、民族自体の数は、かなりの数であることがわかります。

2500万人から 3000万人くらいの人口の国などは数多くあり、それらの国は小国というわけでもないです。人口 2500万人から 3000万人くらいの国家としては下のような感じでしょうか。

population-world.gif
国の人口順リスト

クルド人の居住地域は下のようになっているのだそう。

kurd-1.gif
Wikipedia

トルコが圧倒的に多いですが、

・イラク 約400~600万人
・シリア 約90~280万人


というようなものを見ますと、クルド人戦闘員が「イスラム国」と戦闘を繰り返すわけもわかります。

その「イスラム国」は、死と制裁で集団を統制し続けていたわけですが、最近はその方法論自体が破綻に向かっているように見えるような報道を数多く見ます。

thp-isis.jpg

▲ 2014年12月22日の THP より。


記事によれば、最近はあまりの死傷者の数に、イスラム国の戦闘員たちの士気が低下しているのだそうです。その中で、逃亡した外国人戦闘員 100人を処刑したという目撃証言の報道でした。

敵前逃亡の場合なら正規の軍隊でも死刑が普通だとはいえ、上のように「味方を処刑する」という報道が大きくなされると、イスラム国に参加しようと考えていた人々も躊躇するかもしれません。

それに比べて、今回の番組で見たクルド人女性戦闘員たちの士気と、そしてなぜか絶えない笑顔。

kurd-soldiers.jpg
mako

2014年に、世界をあれだけ震撼とさせたイスラム国ですが、思っていた以上に崩壊が進んでいるのかもしれません。そして、その崩壊には PKK の女性戦闘員のような人たちの存在も、多少ではあっても、関わっているようです。

ところで、この番組を見ていて、紛れもない凄惨な紛争のドキュメンタリーなのに、なぜか妙に爽やかな気分になったのが、自分でもとても不思議でした。

何だろう? この感覚は。

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