
▲ 2014年12月30日のスペースウェザーより。
5つ目のラブジョイ彗星
大晦日となりましたが、何だか最近は「年末年始感」を感じないですね。20年くらい前までは、まだお正月が近い日には「特別感」というものを感じていましたけれど、最近は何も感じないです。
ところで、上のラブジョイ彗星(正式名称は C/2014 Q2 )が、現在、肉眼でも見える位置を飛行していることが、スペースウェザーの記事で説明されていました。
この Love Joy(愛と楽しみ)という名を持つ「ラブジョイ彗星」は、2011年から 2013年まで何度か取り上げたことがありますので、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれせん。
・史上最大の太陽接近型彗星「ラブジョイ」の太陽からのサバイバル
2011年12月16日
・アイソンより明るく光るラブジョイ彗星が見られる地球上では…
2013年11月14日
など、過去何度か記事にしたことがありますが、実は「これらはそれぞれが別のラブジョイ彗星」なのです。
彗星の名称には一般的に、最初に発見した人の名前がつけられます。
最初の発見者が複数だった場合は、「それぞれの名前がひとつの彗星に同時につけられる」こともあります。
たとえば、今年秋に、彗星探査機ロゼッタが着陸に半分くらい成功して話題になりましたチュ…………(頑張れ)チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星がありますが、この覚えにくい彗星の名前の由来を、
・探査機ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から受信した「謎の信号」をめぐり展開する様々な説
2014年11月12日
という記事に書いたことがあります。
この彗星は、
・クリム・チュリュモフ
・スヴェトラナ・ゲラシメンコ
というお二方によって発見されたために、このような名称の彗星となっています。
そして、ラブジョイ彗星も人の名前で、オーストラリアのアマチュア専門家のテリー・ラブジョイ( Terry Lovejoy )さんによって発見されたものですが、このラブジョイさんは「すごい彗星ハンター」なのです。
2007年以来、ラブジョイさんが発見して、「ラブジョイ彗星」と命名された彗星は5個もあります。後ろの英数字が正式名称です。
2007年3月 ラブジョイ彗星 C/2007 E2 発見
2007年5月 ラブジョイ彗星 C/2007 K5 発見
2011年11月 ラブジョイ彗星 C/2011 W3 発見
2013年9月 ラブジョイ彗星 C/2013 R1 発見
2014年8月 ラブジョイ彗星 C/2014 Q2 発見
なぜ、こんなに彗星を発見できるのかというと、ラブジョイさんは情報技術者で、デジタルカメラを天体写真用に改造する方法を編み出したのです。Wikipedia によりますと、
ラヴジョイがそれらのフィルタを改造するための方法を発表した後、アマチュア天文家の多くが遠距離天体の写真撮影技術を向上させることができた。
というように、アマチュア天文家全体への貢献度も高い方なのでした。
今年8月に発見されたラブジョイ彗星は、ちょうど今の時期の年末年始あたりにもっとも明るく見えるということのようです。
年の初めに「愛と楽しみ」というような響きの彗星が地球から見えるというのは、そんなに悪いことでもないかもしれないですね。
ついに海氷面積が観測記録史上で最大に
というわけで、本題なのですが、タイトルにある「小惑星の地球への突入から始まった2014年」というのは、今年はじめの記事、
・「元旦に発見された小惑星はその翌日に地球を直撃した」 : そんな始まりを告げた 2014年
2014年01月04日
に書きました「 2014年 1月1日に発見された小惑星が 1月2日に地球の大気圏に突入した」ことをご紹介したものでした。

・Sky and Telescope
それが今年の始まりの出来事で、それでは、今年の終わりの「大きな出来事」は何かというと、
地球の海氷面積が観測史上最大になった
ことだと思います。
南極の海氷面積はずっと観測史上最大のままだったのですが、北極のほうは平均より氷の面積が少なく「南極と北極で状況が二分している」というような状態のため、世界全体の海氷面積は 10月くらいまでは「平年よりやや面積が広い」程度だったのですが、12月に入り、状況は一変しました。
南極の海氷量が急激に上昇したことに伴って、世界全体の海氷面積がどんどん上昇しました。そして、12月15日には、観測史上4番目の海氷面積となりました。
下のグラフは、
・全世界の海氷面積が1988年以来最大に
きたるべき地球のかたち 2014年12月17日
に載せたものです。
2014年12月15日の世界の海氷面積

・Sea Ice Extent – Day 348 – Highest Global Sea Ice Since 1988
そして、下が 12月29日の世界の海氷面積です。
2014年12月15日の世界の海氷面積

・Sea Ice Extent – Day 363 – Highest Global Sea Ice and Highest Antarctic Sea Ice For The Day
このように、2014年のほぼ最後になって、海氷観測が始まって以来、最大の海氷面積が記録されたわけですが、最近の増え方を見ますと、しばらくは最大面積のままを維持するように思えます。
ところで、海の氷が多いということは、海水面の温度が「低い」と考えるのが妥当だと思うのですが、過去記事、
・北半球の雪で覆われた面積が観測史上最高を記録。なのに、気温と海水表面温度は観測史上で最も高いという異常な矛盾
2014年12月06日
の中でご紹介しましたワシントンポストの記事から引用しましたように、現在、海水の表面温度は平年と比べて「異常に高い」ことが確認されているのです。
ちなみに、海の氷の面積が過去最大を記録しているだけではなく、北半球では「雪で覆われた地域」も2014年は過去最大を記録しています。

▲ 1967年から2014年までの雪で覆われた面積の推移。 ラトガース大学 全球降雪研究所( Rutgers University Global Snow Lab ) より。
地球の海水表面温度は高いまま
海には観測史上最大の氷が広がり、陸地にも観測史上最大の積雪と面積が広がるというようなことになっている中で、海水表面温度はどのようになっているのか。
アメリカ海洋大気庁( NOAA )の最新のデータは下のようになっています。
2014年12月29日の海水面温度の平年との差異

・NOAA
縮小していますので、わかりにくいと思いますが、しかし、全体をパッと見ても、「黄色からオレンジの海域が多い」ことに気づかれると思います。
黄色以上は、平年より海水表面温度が高い海域です。
赤で示される場所は「平年より非常に海水温度が高い海域」となりますが、細かく見ますと、以下のような場所が、異常なほど海水温度が高いです。
海水温度が高いと、大気中の水分量が増えたり、あるいは荒れた天候の気圧が発達しやすいというようなこともありますので、気温などとの兼ね合いもありますが、この赤い海域の周辺は「大雨や大雪が降りやすい環境」となっていると言える場所かもしれません。



これを見ると、今現在、日本海の海水温度も平年と比べて異常なほど高いことがわかります。
いろいろな要素がありますので、何ともいえないですが、この高い海水温度が、この地方周辺での長期間の大雪や荒れた天候につながる可能性もないではないかもしれないです。
いずれにしましても、こんなように、
氷も雪も多くて、各地で寒波の記録が続出しているのに、海は暖かい。
という、何となくアンバランスな状態のまま、2014年が過ぎようとしています。
来年がどのような年になるかは、なってみないとわからないですけれど、楽な部分よりは厳しい部分が多いような気配はあります。
それでも、世の中がどのようになっても、自分の気分や感情を決定するのは最初から最後まで「自分の意志」ですので、つまり、来年がどのような年かというのは、結局、個人個人の心が決めるものだとは思います。
むやみに周囲に飲み込まれないように平常心で進めば、波があっても乗り越えられるはずだと信じたいです。
そして、今年も大変にお世話になりました。
ありがとうございます。