▲ 2014年12月26日のロシア 3dnews より。
連鎖する世界の大噴火
今年の最初の日に書きました、
・全宇宙を崩壊させたテュポンの封印が解かれる日:トンガの海底火山フンガ・ハーパイと、イタリアのエトナ島の大噴火で終えた2014年
2015年01月01日
という記事で、トンガの海底火山「フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイ」と、イタリアのエトナ火山が年末に大噴火を起こしたことを書きました。
そして、2015年に入り、すぐの 1月3日に、インドネシアのシナブン山が、近年最大クラスの噴火を起こし、現在の警戒レベルが最高の「コードレッド」となっています。
・The Watchers
下のほうの写真で、地面のほうにある煙は火砕流が発生していることを示していると思います。
何かこう、わりと人々が携帯で写真撮ったりして、のんびりと眺めているんですけど、火砕流は時に、かなりの距離をものすごいスピードで進みますから、ちょっと危うい感じがしないでもないですね。
年末から年始は、大規模な噴火が相次いでいます。
なお、トンガの海底火山フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイの噴火ですけど、昨年の3月にも噴火を起こしていたようで、その時の動画を見つけました。音は本当の音声ではないです。
そして、最近知ったのですけれど、このあたりの海域には、このフンガ・ハーパイのような海底火山が 36 もあるのだとか。
ひとつの噴火だけで上の状態ですからね。
複数、あるいは全部噴火したらどんな状態になるのか。
海底火山の噴火が増えると、どうしても海水温は局地的で、なおかつ一時的であっても上がると思われるのですけれど、最近、
・北半球の雪で覆われた面積が観測史上最高を記録。なのに、気温と海水表面温度は観測史上で最も高いという異常な矛盾…
2014年12月06日
などの記事で書いていますように、ただでさえ、現在は世界中の海水温度が上昇しているというのに、海底火山の噴火も相次いだ場合、さらに海水温度が上昇していくようなことも考えられないわけでもなさそうで、そうなった場合は、世界の天候はさらに荒れることになるような気もします。
西之島などを含めて、最近は海底の地質的な変化がはっきりとわかる形で現れることも多く、今年あたりは、もっと大きな「大陸の浮上」なんかも起きても不思議ではなさそうです。
それでは、ここから「終末」と関係する本題です。
ロシアで始まる「すべての生物種の生体バンク」構築計画
よく「世界の終末に備えた種子貯蔵庫」( 2011年10月14日の Wired )というような呼ばれ方をされることが多い、地球上の種子を冷凍保存している巨大施設である「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」というものがあります。
これは、
スヴァールバル世界種子貯蔵庫 - Wikipedia
スヴァールバル世界種子貯蔵庫は、ノルウェー領スヴァールバル諸島最大の島であるスピッツベルゲン島に位置する種子銀行である。
2008年2月26日、ビル・ゲイツ主導のもと、地球上の種子を冷凍保存する世界最大の施設がスピッツベルゲン島の中心地・ロングイェールビーン近郊にて操業開始した。
施設は、今後さまざまに予想される大規模で深刻な気候変動や自然災害、(植物の)病気の蔓延、核戦争等に備えて農作物種の絶滅を防ぐとともに、世界各地での地域的絶滅があった際には栽培再開の機会を提供することを目的としている。
という施設で、最大 300万種の種子の保存が可能な地下貯蔵庫を持ちます。
スヴァールバル諸島が選ばれたのは「寒い場所だから」で、
地下貯蔵庫の温度はマイナス18〜20°Cに保たれ、万が一、冷却装置が故障した場合にも永久凍土層によってマイナス4 °Cを維持できる環境に置かれている。
というものです。
場所は、ノルウェー北部の海域にあるスヴァールバル諸島の下の星印の位置にあります。
内部は下のような感じで、現在は、50万種以上の植物の種子が収められているそうです。
・Glamox Svalbard Global Seed Vault
このスヴァールバル世界種子貯蔵庫は「植物だけの種子バンク」ということになりますが、これに対して、ロシアのモスクワ大学は、冒頭にありますように、
地球の数百万種の生体組織バンクを構築する計画を今年 2015年から開始する
ということが、ロシアの各メディアで伝えられていました。
植物から哺乳類まで、入手可能な限りの生物種のマテリアルバンクを作る試みということなのだと思います。報道では、絶滅危惧種をはじめとして、その目標数が「 430万種」と書かれています。
どのような保存形態となるのかはわからないですが、下のようなイメージもありましたので、このような感じの保存になるのかもしれません。
・REGNEWS
スヴァールバルでの植物の種子保存に低温環境が必要なのと同様に、他の生物マテリアルも「細胞などが生きたままの状態」で保存するのであれば、かなりの低温を必要とするはずです。
通常は電気で保冷しても、「停電などにより電気が使えない状態になっても保存できる場所」というのが必要だと思われますが、極寒の場所なら豊富なロシアだからこその計画かもしれません。
そして、このプロジェクトにつけられた名称が「ノアの方舟」なんですね。
アメリカ主導のスヴァールバルの種子貯蔵庫も「終末の日に備えたプロジェクト」だと言われることが多い中、ロシアの計画も自ら「ノアの方舟」とつけるあたり、終末準備プロジェクトの香りがします。
ところで、「ノアの方舟」とはどんなお話だったのか、念のために記しておきます。ノアの方舟 - Wikipedia には、
・シュメルの洪水神話における記述
・ギルガメシュ叙事詩における記述
・旧約聖書『創世記』における記述
が記されていますが、ここでは旧約聖書のものを載せます。
旧約聖書『創世記』による「ノアの方舟」の記述の概要
神は地上に増えた人々が悪を行っているのを見て、これを洪水で滅ぼすと「神と共に歩んだ正しい人」であったノア(当時500〜600歳)に告げ、ノアに箱舟の建設を命じた。
箱舟はゴフェルの木でつくられ、三階建てで内部に小部屋が多く設けられていた。箱舟の内と外は木のタールで塗られた。ノアは箱舟を完成させると、妻と、三人の息子とそれぞれの妻、そしてすべての動物のつがいを箱舟に乗せた。
洪水は40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくした。水は150日の間、地上で勢いを失わなかった。その後、箱舟はアララト山の上にとまった。
この中に、
> 地上に生きていたものを滅ぼしつくした。
とありますように、やはり「全滅の神話」のわけです。
(ところで、40日間、動物たちのエサをどのように調達?)
まあ、細かいところはともかく、ノアの方舟の時には、実際の動物の雄雌を連れていかなければなりませんでしたが、モスクワ大学の「ノアの方舟」は、助けたい生物に用意するものは、ひとつの種の生物に対して小さな試験管2本で済むのですから、便利になったものです。
ところで、実は最近の生物科学関係のニュースの中では、こロシアの「生物種保存計画」よりもさらに驚いた「終末的な報道」がありました。
それは、「人工の精子」と「人工の卵子」の作成に成功したというニュースでした。
人の手で作り出された精子と卵子
▲ 2014年12月24日のガーディアンより。
これは、ケンブリッジ大学の研究者たちが、ヒトの胚性幹細胞を培養し、成人の皮膚細胞を使用することで、「人工的に作られた精子」と、初期段階ながらも「人工的に作られた卵子」を作り出すことに成功したというものです。
ここに出てくる「胚性幹細胞」というのは、いわゆる ES細胞と呼ばれるものです。
こういう「何とか細胞」の報道は最近よく目にするのですが、私がほとんど理解していないのと同時に、「そこまで人体の細部まで人の手が入り込むってのもどうなのかね」と思う部分もないではないということで、「何とか細胞」という名前のつくニュースは一切見てきませんでした。
何とか細胞でノーベル賞を受賞された方の報道も一切目にしませんでしたし、久保さんだったか何だったか女性のニュースも、ウェブでは見出しも見ないし、テレビのニュースなら、その報道が出た途端に消していました。
ということで、これまでは興味がなかったのですが、
「人工の精子と卵子を作り始めた(しかも人間の)」
というところまで来たとなると、話も違ってきます。
ES 細胞の説明で最もわかりやすかったものとなると、やはり少年少女向けサイトで、「生物史から、自然の摂理を読み解く」というサイトの、ES細胞って何?(基礎編)に説明があります。
ES細胞は人体を形づくるあらゆる細胞にへと変ぼうすることのできるおおもとの細胞であるとともに、変ぼうする前の状態のまま自らをいくらでも分裂させて増やすことができる特性を持っています。
そのようなES細胞を手に入れることができるようになったということは同時に、ES細胞を上手に誘導してやれば目的とする必要な細胞、組織、器官を意図的に作り出し、さまざまな治療に生かせる可能性が大いに広がったということを意味します。
おぼろげでしか理解できないですが、要するに、
様々な状態に変貌して増殖することのできる ES細胞を使って、人間の体内の組織や臓器などを新たに作り、「細胞レベル」で医療に応用する。
という試みのようです。
この「大義名分」がどうもアレなんですよ。
上でいえば、「さまざまな治療に生かせる可能性」の部分。
これは、今回の「人工の精子と人工の卵子」についても、「不妊治療への応用」という大義名分が述べられています。また、これは確かに不妊に悩む方々には朗報であることも事実だと思います。
しかし、この研究がさらに進めば、
親がいなくとも、人間を作ることができてしまう。
ということが現実となるわけで、男女が子どもを作り出す、という構図は不要となってしまうばかりか、まず、
「人を増やすために男性は完全に不要になる」
ことは確定するわけですが、同時に、
「施設が進化すれば、母体そのものも不要になる」
という可能性もありそうです。
そりゃまあ、実際そんなようなことを試みた場合、倫理的にいろいろと問題を指摘されるのでしょうけれど、「発表しないで研究を続ける分には誰もわからない」ということがあります。
このガーディアンの記事の内容に対しての反響はコメント数の多さでも理解できます。
12月24日の記事で、今日 1月5日までに 648件と、かなりの数です。
それぞれの内容や賛否の比率まではわからないですけれど、どうにも、生体科学は「ある線を越えつつある」というような感じもしないでもないです。
そんなわけで、植物や生物の生体バンクの構築が進められる一方で、「人工物だけによる人間の誕生」に近づきつつあるという方向に科学は向かっているようです。
これを「科学の進歩」と感じるか、「終末感漂う時代」と感じるかは人それぞれなのでしょう。
それでは、ここから、ロシアの生物バンクのニュースの翻訳です。
記事そのものは短いものです。
3dnews.ru 2014.12.26
モスクワ大学が 10億ルーブルをかけ「ノアの方舟」を創造する
モスクワ国立大学に世界初の生体材料貯蔵庫(バイオマテリアル・バンク)が作られる計画が、サドヴニチイ学長によって明らかにされた。
このプロジェクトは「ノアの方舟」と命名された。
学長によれば、長期的な保管の後でも再生できる形での細胞材料の低温保存をおこない、さらに、蓄積した材料の分析のための最新のコンピュータ・ブラットフォームの設置もおこなわれるという。
この特別なコンピュータ・システムは、ロシアの他の研究拠点と、また、海外の生体バンクともネットワークを持つ予定だ。世界には、今のところ、このような形式での生体材料の統一した低温貯蔵システムは存在しない。
費用は 10億ルーブル(約 20億円)で、2018年の稼働を目指す。
完成したバイオバンクには、世界中の絶滅危惧種と共に、全世界の 430万種類の生物種の生体材料が貯蔵される予定だ。