▲ 『エコノミスト - 2015 世界はこうなる』日本語版の表紙より。
サウジの地獄と中東のカオス
少し前の記事の、
・満開する軍事カオス:サウジアラビアの大雪報道から辿り着いたタイ軍による「子どもたちへの武器開放日」。そして世界的「扇動」の始まりの予兆
2015年01月12日
と、その後に書きました「ハッシュタグは「私は雪だるま」…」などで、サウジアラビアでの大雪のことについてふれると同時に、サウジアラビアのアブドラ国王のことを取り上げまして、国王の正式なお名前が、
アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール・サウード
という、普通の日本人では何年くらいで覚えられるかどうかというような大変に長いご本名であることを知ったりしたのですが、初めてこのブログでアブドラ国王にご登場いただたばかりなのに、昨日、ご逝去されてしまいました(ロイター)。
1923年前後の生まれらしいですので、90歳を越えていたんですね。
▲ 2015年1月23日の中東カタールのアルジャジーラより。
先日の「雪だるま」の件あたりまでは、サウジアラビアに興味を持ったことがなかったのですが、アブドラ国王は、周辺国だけではなく影響力のある人だったようで、ウォールストリート・ジャーナルには、「サウジと米国の関係、アブドラ国王死去で一層不透明に」というようなタイトルの記事がありまして、全体の内容はタイトルの通りですが、このウォールストリート・ジャーナルの記事の中の、
アブドラ国王は就任当初こそ改革派で、どちらかといえば親米寄りと見なされていたが、徐々に国内では抑圧的な姿勢を強め、米国からも離れていった。最近ではイスラム教を侮辱したとして有罪判決を受けたブロガーにむち打ち1000回の刑を言い渡したことで、米国務省を含む西側諸国から激しい非難を浴びた。
という記述が目に止まりました。
> むち打ち1000回
これはひどい。
CNN の「活動家にむち打ち刑50回を執行、残り950回 サウジ」という報道によりますと、このブロガーはライフ・バダウィさんという男性で、
2008年に逮捕され、昨年むち打ち1000回の刑を言い渡された。むち打ちは50回ずつ、20回に分けて執行される。その初回が9日、サウジ西部ジッダで公開された。
とありますが、全部で 1000回というのもすごいですが、「 1度に 50回のむち打ち」なんて、聞いたことないです。
使用するむちの種類にもよりますでしょうけれど、むち打ち刑のダメージというのが「ものすごい」ものだということが、最近知られてきていて、たとえば、実際にどんなものかというのは、現在、むち打ち刑が存在しているシンガポールの例が、シンガポールの鞭打ち刑、執行というページに書かれてありますが、シンガポールの場合は、最高刑でも「むち打ち 12回」です。要するに、そのあたりが「生命的な限度」だと考えていいと思います。
そんなシンガポールでも、むち打ちを受けた受刑者は、
受刑者は1週間は寝たきりになるそうだ。
そして、痛みは1ヶ月経っても抜けないのだという。
ということになるのですから、1日 50回のむち打ちで、しかも、今後も期間は開けるとしても、何度も行われるのだとすると、これは生存に関わるもの……というより「緩慢な死刑」という感じがします。
他の例として、カリフォルニア大学元教授であり医学博士であるアレクサンダ−・メテレルという方が、「イエス・キリストが十字架にかけられた際の苦しみ」について、医学的見地から聖書の記述を述べたものを翻訳したものだと思われる「キリストが十字架で受けた痛みとは」という記事には、以下のように書かれてあります。
ロ−マの鞭打ちは、特にその残酷さで有名でした。打つ回数は39回が普通ですが、処刑担当兵士の気分によってはそれ以上になることも日常茶飯事でした。(略)
この鞭打ち刑を研究した医者がいます。その医者によると、鞭打ちが続くと、裂傷が皮膚の下にある骨格筋にまで到達し、裂傷を受けて紐状になった筋肉が震えてくるのだそうです。
エウセビオスという三世紀の歴史家は、この鞭打ちの様子を、『鞭打たれた者の血管がむき出しになり、筋肉、腱、内臓までもが飛び出しかねない』 と表現しています。ですから、十字架にかかる前に、この鞭打ちで死んでしまう人もたくさんいました。
とのことで、むち打ち刑の苦痛の凄まじさは、以前から多少は知ってはいましたけれど、このサウジアラビアのブロガーへの判決の回数は明らかに常軌を逸しています。
最近のサウジアラビアでは下のような出来事もありました。
サウジで斬首刑に処せられたミャンマー人女性、死の間際まで無実訴え
AFP 2015.01.18
イスラム教の聖地であるサウジアラビアのメッカで今週、幼い継娘を暴行し殺害した罪に問われたミャンマー人女性が、路上で斬首刑に処せられた。17日にインターネットに投稿された動画では、女性が刑執行の数秒前にも無実を訴え続けている様子が明らかになっている。
インターネットの動画ニュースサイト「ライブリーク」に掲載された動画で、バシムさんは数人の警官に取り囲まれた状態で路上でひざまずいているとみられる。
黒い布で覆われたバシムさんは「わたしは殺していない。神のほかに神はいない。わたしは殺していない」と叫び、「禁止」を意味する「ハラム」という言葉を繰り返した後、「殺人は犯していない。わたしはあなた方を許さない。これは不当な仕打ちだ」とアラビア語で訴えている。
というようなこともありました。
事件の流れを見ても、この女性が犯人である可能性はほとんどないように見えます。
何というか「地獄の渦中のサウジアラビア」という側面を見ている感じもしまして、そのような中でアブドラ国王は亡くなったわけですが、このような出来事の中で、サウジアラビアでは「雪だるまの是非」で、国民と宗教指導者が対立していたりするわけで、「対立する軸が何か違うような・・・」と、いろいろと考えさせられるところであります。
そして、中東では、イエメンの政権が崩壊して、そして、どんなことになる可能性があるかといいますと、下のような可能性があります。CNN の報道ですが、アメリカなどでは「イスラム国」という名称を認めていないようで、今でも ISIS を使っていますので、それに従います。
ISIS、アルカイダ系がイエメンで勢力争い 武装衝突も
CNN 2015.01.22
中東イエメンの政府当局者は22日までに、イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」がイエメン内で新たな構成員の勧誘を加速し、南部や中央部の少なくとも3州で地歩を固めていることを明らかにした。
同当局者はCNNの取材に、イエメンに本拠を構える国際テロ組織「アラビア半島のアルカイダ」とISISの勢力争いが現実のものになっていると指摘した。
東部の複数の州では先月、両組織間の銃撃戦も発生したという。
また、イラクでは「クルド人部隊 vs イスラム国」の戦いも激しくなっています。
クルド部隊「イスラム国」要衝奪還…イラク北部
読売新聞 2015.01.22
イラク北部のクルド人部隊は21日、イスラム過激派組織「イスラム国」の実効支配下にある主要都市モスルの近郊で、イスラム国に対する大規模な地上攻撃を行った。これにより、モスル西方約40キロ・メートルにある交通の要衝少なくとも1か所を制圧した。
中東は、もう、どこでもここでも戦争やらクーデターの連続ですよ。
地図で中東の位置関係などを見ますと、下のようになります。
イスラム国の支配地域に関しては、イスラーム国 - Wikipedia の 2014年 11月2日現在の勢力分布地を参考にしてアバウトに囲んだものです。
アラブ首長国連邦( UAE )の「観測史上初めて平地で雪が降った」というのは、紛争とは関係ないですが、珍しいといえば珍しいことなので、一応加えてみました。
詳しいことは、
・アブダビの雪 : 平地で雪の降ったことのないアラブ首長国連邦で雪とひょう
来たるべき地球のかたち 2015年01月21日
をご参照下さい。
・Masala
中東の「イスラムの国々」がとても荒れてきている、あるいは、今後さらに荒れる要素を含んでいるわけですけれど、このあたりで、ふと、
・「第三次世界大戦が侮辱画から始まるとは誰が想像しえたか」
2015年01月14日
の中に書きました、アメリカ南北戦争時の南部連合将軍であり、当時のフリーメーソンの最高位である 33位のアルバート・パイクが、1871年に手紙に書いたとされる、
第三次世界大戦は、政治的シオニストとイスラム世界の指導者たちとの間で、「エージェント」と「イルミナティ」によって引き起こされる両者の意見の相違を利用することによって助長されなければならない。
戦争はイスラム(アラビア世界のムスリム)と、政治的シオニズム(イスラエル)が相互に破壊し合うような方法で行われなければならない。
という手紙の始まりを思い出します。
先ほどの中東の地図に、あえて北緯 33度線を重ねたのは、アルバート・パイクの胸に輝く「 33 」の数字を思い出したからです。
・アルバート・パイク。Wikipedia より。
北緯 33度線については、ここではふれませんが、過去記事で頻繁に出てくる概念でもあります。
・フリーメイソンと高知に導かれて Google Earth 上で北緯 33度の旅をする
2012年08月29日
という記事から始まり、キーワード「北緯 33度線」で検索される過去記事一覧は、こちらにあります。
ちにみに、中東地域の北緯 33度の陸地部分の最後、つまり海へ「飛び出す位置」は、エルサレムとベイルートの中間です。
ところで、最初から、やや混沌として始まっている 2015年ですが、最近、この「 2015年」について、話題となっている雑誌の「表紙」があります。
恐怖の支配の崩壊は一体いつなされるのか
イギリスの週刊新聞に『エコノミスト』というのがあります。
日本の毎日新聞社の経済誌「エコノミスト」とは関係ないです。
この英国エコノミストは、毎年、「世界はこうなる」という雑誌を前年に出版するのですが、『2015 世界はこうなる』( The World in 2015 )の表紙が話題となっていたりします。
その表紙は下のものです。
これは日本語版ですが、各国語版共通です。
世界の指導者がずらりと並んでいます。
先日の記事、「フランスのデモ行進で、各国首脳は市民とは交わらず「安全な別の場所で映像を撮影して編集」していたことが露呈」を彷彿とさせる光景です。
写真中央には、エチオピアの国民的英雄であり、東京オリンピックでも金メダルを獲得した伝説のマラソンランナーの……あ、違う。
まあ、ひとりひとりはともかく、かなり雑然と世界の指導者たちや、あるいは正体不明の人物たちがコラージュされているのですが、話題のひとつとしては、安倍総理の姿がないのですね。
主要国の指導者で載っていないのは安倍総理くらいだと思われます。
写真では、最前面には左から、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、アメリカのオバマ大統領、中国の習近平国家主席、右端はインドのモディ首相だと思います。
なぜ、安倍首相が載っていないのか、というのは、編集者にしかわからないですが、しかし、そのことよりも、この周囲に様々に配置されていることが話題となっていたりするのです。
ピックアップすればキリがないのですが、下のようなことが話題となっています。
冒頭に貼りました「核爆発をイメージさせる写真」は表紙の右の中段あたりにあります。
これらの解釈は人それぞれでしょうし、解説ができるようなものではないですが、この表紙が最近話題になっているのです。まあ、営業的な意味もありそうですが。
上で、「力士」と書いているのは、見えにくいかもしれないですが、下のようになっています。
中国の国旗デザインのパンツをはいた「マッチョ・パンダ」の横に電池のようなものを持った「小さな力士」がいます。
また、「パニックの文字」の部分は拡大すると、下のようになっていて、パニックの文字の下には「 FEDERAL RESERVE 」(連邦準備)とあり、その横に「 CHI 」とあります。
CHI は、中国の CHINA を連想しそうですが、辞書を見てみますと、CHI から始まる英単語は、チキンとかシカゴとか数多くあり、2単語以上も入れれば、「米国海軍最高責任者」( Chief of Naval Operations )なんてのもあり、 CHI だけでは、何かうかがうことは難しそうです。
ちなみに、辞書には「 CHI 」だけの意味も出てています。
ギリシャ語のアルファベットをあらわすようです。
chi
[名]キー,カイ(Χ, χ):ギリシャ語アルファベットの第22字
とのこと。
ギリシャとパニックという言葉の組み合わせは何だかとてもしっくりときます。
いろいろと読者に想像させるという意味では遊び心のある表紙ですが、ここに何か含まれた意味があるかどうかは、見た人それぞれの考え方だと思います。
ちなみに、昨年の『2014 世界はこうなる』の表紙は下です。
ここでは、安倍首相は小さめながらも中央に写真があります。
この『2014 世界はこうなる』の表紙を見て、昨年の 2014年に起きたことと何らかの類似性が見られるのなら、表紙に暗示性もあるのかもしれないですが、私はあまりわかりませんでした。
ただ、左から5コマ目の下段から2コマにあるのは、「イスラム過激派が旗などに使用するタイプのデザイン」と似ています。
さらに遡りまして、『2013 世界はこうなる』の表紙は下です。
こちらは世界の指導者は数人しか出ていません。
アメリカのオバマ大統領は見当たらず、そのかわりアメリカ国旗のデザインの椅子があります。
日本からは政治家ではなく、かわりに芸妓さんが出ていますね。
ここで、赤ちゃんが地球儀を指でどこか押そうとしていますが、その場所が中東あたりにかけてのようにも見えます。
しかし、2013年と 2014年の『世界はどうなる』と比較すると、今年の 2015年の表紙は確かに異常なほど細かくコラージュされているとは思います。冒頭に貼った写真のようなことは勘弁してほしいですが、それを勘弁しないような人たちもいるのかもしれないですし。
いずれにしても、現時点で 2015年は荒れていますが、そのことは別として、
「もう1月の下旬なんだっけ」
ということに気づき驚いたりします。
お正月がほんの数日前のような。
いや、昨年の1月もほんの少し前のような。
気づいてみれば、ものすごい速度で毎日進んでいる感覚がします。
2013年の過去記事で、
・2013年夏:カオスに突入するかもしれない世界を前に
2013年06月18日
という記事で、ウェブボットの 2009年の「予測」を抜粋したことがありました。
それは 2009年の予測でしたので、もう遠い昔には「外れて」いるものですが、それを前提にして再度書きますと、ウェブボットは、近い将来に、「変容」をキーワードとしながら、世界と地球環境には、
「海洋の異常」
「社会崩壊」
「経済危機」
「食糧危機」
「政治危機」
「内部告発者」
「統制の崩壊」
「恐怖による支配の崩壊」
「宇宙からの未知のエネルギー」
「エイリアンテクノロジーを持ち出す2人の男」
「太陽の病気」
「太陽の異常が人間に及ぼす影響」
「通貨の喪失」
「戦争の脅威」
などが起きるとしていました。
「エイリアンテクノロジーを持ち出す2人の男」などは難解ですが、私が最も希望しているのは、「恐怖による支配の崩壊」だったりいたします。
しかし、今回は中東の話から始まりましたけれど、世界のどこを見ましても、この「恐怖による支配」は、まだ崩壊の兆しを見せてはいないです。