2015年02月16日



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ベトナム戦争の気象コントロール「ポパイ作戦」とハリケーン縮小計画「ストームフューリー・プロジェクト」以後、アメリカの気象兵器開発は進んでいるのか、いないのか



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▲ 2015年2月15日のザ・ガーディアン Spy agencies fund climate research in hunt for weather weapon, scientist fears より。






 


年々荒れてくる自然環境を見ながら

現在の日本は比較的安定した気候の場所もある一方で、日本海側とか北海道の多くの地域などでは猛吹雪で大変なことになっていたりします。こちらについては、報道などでも目にする機会がありますけれど、海外でも、特にアメリカとかヨーロッパあたりでは「雪のカオス」の頂点に至っているような光景の地域も多く見られます。

動物好きな方にはちょっと心苦しいものかもしれないですが、スペインのカスティーリャ・レオン州という州では 70年ぶりの豪雪によって、動物たちが次々と雪に埋もれたり、あるいは凍死により死亡し続けているという事態になっています。

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▲ 2015年2月14日のスペイン MARCA より。


現在、雪の下にどのくらいの動物が倒れているのかわからないそうですが、推定では、ウマやシカなどの大型の動物だけで、数千頭ほどが積もった雪の下で死亡しているのでないかとのことです。

この状況の中でも耐えて生きている動物たちもいるようですが、写真を見てみますと、これ以上はどうにもならない極限の状態のようにも見えます。

ほとんど全身が雪に埋もれそうになりながら移動する馬
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MARCA


アメリカも北東部などを中心に激しい雪が降いているようですが、そのレベルも次第に「観測史上最大」に近づいています。

下はボストンの降雪量の記録ですが、今シーズンの降雪量はもう少しで観測史上最大に迫る勢いです。

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Zero Hedge

観測史上最大の降雪記録まで、あと 40センチほどで、しかも、今後も寒波は続く見込みのようですので、この冬のボストンと、その周辺地域は観測史上最大の降雪記録となる可能性が出ています。


これらのことにふれましたのは、あまりにも当たり前のことで恐縮なのですが、「極端に荒れた天候は人間生活に大きなダメージを与える」ということを前提として書きたかった次第です。

そんな中で、冒頭の「アメリカの諜報機関が気象研究に資金提供をしていることと気象兵器の関係」についての記事を見ましたので、ご紹介しようと思いました。

私個人は、地球の環境を根本的に支配できるのは「地球と宇宙(太陽や宇宙線なども含めて)だけ」と思っている人で、ある程度の気候操作(もともと雨の降りやすいところにもっと雨を降らせるなど)はわりと簡単にできると思いますが、「兵器」レベルとなりますと、どうなんだろうと思う部分はあります。

もちろん、様々な自然災害に対しての「気象(環境)兵器説」は根強いものがあり、それなりの根拠はあるものなのかもしれないですが、HAARP を含めて、私の頭では今まで理解できたものがないだけの話かもしれません。

ちなみに、仮に「気象兵器」や「環境兵器」といったものが使われたとする場合、その特徴は、今回ご紹介するガーディアンの報道の中に出てくる CIA のコンサルタントだと名乗る人物が、

「仮に、我々(アメリカ)が他国の気候をコントロールすることを望んだ場合、他国に気づかれる可能性はあるでしょうか」

と科学者に質問をしていたりしていまして、つまり、通常の兵器と比べて、「誰がおこなったかが非常にわかりにくい側面がある」のが気象兵器の特徴かもしれません。そういう意味では、サイバー戦などとも似て、「開発できるものなら開発したい」と考えることは理解できます。




1978年に国際条約で禁止

気象や環境を武器に用いた話としましては、昨年の記事、

1975年のジュネーブ軍縮会議で米ソが発表した「人工洪水攻撃、人工地震攻撃、極地の氷の融解攻撃、オゾン層破壊攻撃の禁止」の新聞記事を見て…
 2014年02月19日

の中で、1975年8月23日のジュネーブ軍縮会議の内容を報道したオーストラリアの新聞をご紹介したことがあります。

1975年8月23日のキャンベラ・タイムズ紙より
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The Canberra Times Saturday 23 August 1975

このオーストラリアの新聞の記事は大まかには下のようなものでした。


米国とソ連 気象戦争を禁止する計画

アメリカ合衆国とソビエト連邦は、8月23日の 30カ国によるジュネーブ軍縮会議において、戦争の武器としての人工津波や人工地震などのような違法な手段による脅威に関しての条約案を発表した。

今回の条約で禁止される人工津波や地震以外の技術としては、氷冠を融解させることや川の方向を変えることによって沿岸諸国に洪水を発生させることが含まれる。さらに、意図的に致死量の紫外線を人々に曝露させるために上層大気中のオゾン層を破壊する技術が含まれている。



というものでしたが、このジュネーブ会議では、そのような技術を 1975年当時に米ソ共に持っていたのかどうかはともかくとして、研究開発を含めて、

・人工津波と人工地震
・氷冠を融解させて沿岸諸国を水没させる
・上層大気中のオゾン層を破壊して、人々に致死量の紫外線を曝露


などが禁止されたということになっています。

今回調べて知ったのですが、この 1975年の時点では、環境を用いる兵器全部が禁止されたわけではなく、そのような兵器が全面的に禁止となるのは、1978年に発効した国際条約によってだったようです。

その条約は、日本語にすると、ものすごい長い条約名ですが、「環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約」で、下のようなものです。


環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約 - Wikipedia

1976年12月10日、第31会期国際連合総会決議31/72号で採択され、1978年10月5日に発効した環境保全と軍縮に関する条約。通称、「環境改変兵器禁止条約」ともいう。

「現在あるいは将来開発される技術により自然界の諸現象を故意に変更し(例えば地震や津波を人工的に起したり台風やハリケーンの方向を変える)、これを軍事的敵対的に利用すること」の禁止を目的とする環境保全と軍縮に関する条約。

具体的には「津波、地震、台風の進路変更等を人工的に引き起こして軍事的に利用すること」を禁止する内容となっており、条約を遵守する締約国のとるべき措置や、違反の際の苦情申し立ての手続きを規定する。

ただし、罰則規定はない。また、有効期間は無期限と規定されている。



ということで、この 1978年以来、国際条約の上では、環境を用いた兵器は禁止され、また、その期限は「無期限」となっています。ただし、「罰則はない条約」でもあります。

この条約にあるような、

> 地震や津波を人工的に起したり台風やハリケーンの方向を変える

ということについて、たとえば今回の記事のあるように、仮に現在のアメリカのいくつかの諜報機関と政府機関(記事では、CIA に加えて、 NASA 、 NOAA など)が、気象のコントロールを研究しているのだとすれば、その歴史は数十年に及ぶわけで、そして「研究は今なお途上」ということも言えそうで、1960年代からアメリカが続けている気象コントロール・プロジェクトも、それほど大きく進展はしていない可能性もありそうです。

そもそも、気候や気象に関しては、(少なくとも公表されている科学の世界では)たとえば、雲はどうして作られるのかといった根本的なことについてもまだあまりわかっていない部分が多いです。

(参考記事:銀河からの宇宙線が直接地球の天候を変化させている : デンマーク工科大学での実験で確定しつつある宇宙線と雲の関係


そういう中で、根本原理がわからないまま、気象を操作するといっても、表面的なもの以上に進むのは難しいような気はします。とはいっても、簡単な気象操作なら過去のアメリカでも成功していた気象コントロール・プロジェクトはあります。




ポパイ作戦とストームフューリー計画

アメリカの過去の気象コントロール・プロジェクトで有名なものは、ベトナム戦争で敵軍の土地に雨を降らせ続ける(敵陣地の雨期を長引かせる)ための「ポパイ作戦」と、1960年代初頭からハリケーンの威力を弱めることを目的としておこなわれた「ストームフューリー計画」があります。

ストームフューリー計画はアメリカ合衆国政府の公式のプロジェクトで、ポパイ作戦は米軍の極秘行動でした。


それぞれ、記載されているページから抜粋しておきます。


ポパイ作戦 - Wikipedia

ポパイ作戦(Operation Popeye)は、アメリカ合衆国がベトナム戦争期の1967年5月20日から1972年7月5日にかけて東南アジアで行った、極秘の気象操作計画。

合衆国政府の戦況を有利に進めるため、人工降雨により、ホーチミン・ルート地域のみならず、タイからカンボジア、ラオスの雨季を長引かせるものであった。ヨウ化銀とヨウ化鉛とで雲を発生させ、対象地域において平均30日間から45日間雨季を長引かせた。



ポパイ作戦を実施中の米軍(正確な場所日時は不明)
operation-popeye.jpg
▲ 攻撃対象の地域で洪水が発生しているのがわかります。 Dr Prem より。



ストームフューリー・プロジェクト( Project Stormfury - Wikipedia 翻訳)

ストームフューリー・プロジェクトは、ハリケーンを人為的にコントロールしようという実験。ハリケーン上空に向けて航空機を飛ばし、ヨウ化銀を大気中に散布することによって熱帯低気圧を弱体化させようとする試みであった。

ヨウ化銀を種に見立てて散布することから「種まき」とも呼ばれ、1962年から1983年までアメリカ合衆国政府の公式プロジェクトとして行われた。

後にこの「種まき」が無駄であることが判明し、1971年に最後のハリケーン操作が行われた後は実験は行われず、1983年にプロジェクトは公式に終了した。



ベトナム戦争でのポパイ作戦のほうは、ある程度の成功を収めたようですが、この「極秘作戦」のポパイ作戦が 1972年7月のニューヨーク・タイムズ紙でスクープされた後、アメリカの議員たちから、気象兵器の禁止が呼びかけられ、1975年の部分的環境兵器の禁止から 1978年の環境兵器の完全禁止という流れとなったようです。

そして、ここから今回の記事です。

アメリカの CIA を含む政府機関が「気象兵器の開発のために」かどうかはわからなくとも、「気象研究に資金を供出している」ということは事実です。しかも、日本円で数千万円などの単位での資金を提供し続けているということは、政府機関の真意はわからなくとも、何らかの手段として、気候を利用したいという意志はあるのだとは思います。

果たして、人間は「地球の気候と環境の支配者」になれるものなのかどうか。




Spy agencies fund climate research in hunt for weather weapon, scientist fears
the guardian 2015.02.15


諜報機関が気象兵器獲得のために気候研究に資金を提供していると懸念する科学者


米国の気象専門家アラン・ロボック( Alan Robock )氏は、気候研究の資金が諜報機関によって供出されている中で、気候の変化を自在にコントロールできる技術を持つ者が出現するかもしれないと懸念を高めている。

今、米国の上級科学者たちは、アメリカの数々の諜報機関が気候研究に対して資金を提供していることについて懸念を表明し始めている。その懸念は、アラン氏と同じ、それらの新しいテクノロジーが、気候兵器として使用される可能性があることについてだ。

米国ラトガーズ大学の気候科学者であるアラン・ロボック氏は、世界の気候を変化させる方法を探るというラジカルな取り組みに対して、秘密主義のアメリカ政府の各機関はその内容についてオープンにすべきだと呼びかけている。

これまで、気候変動に関する政府間パネル( IPCC )の報告書作成に貢献してきたロボック氏は、巨大な火山噴火の中で成層圏のエアロゾルがどのように地球を寒冷化に導くかということをコンピュータ・モデルを用いて研究している。

しかし、彼は、そのように気候を変える技術を支配できるかもしれない者の存在についての懸念を持っていることを米国科学振興協会に語った

先週、全米科学アカデミーは、気候変動への取り組みへの異なるアプローチからの2つの報告書を公表した。ひとつは、大気から二酸化炭素を除去するための手段に焦点を当て、もうひとつは、雲を変化させる方法と、地球表面が今よりもさらに宇宙空間に対して太陽光線を反射させるための方法についてだ。

報告書は、小規模な研究ブロジェクトが必要とされていたこと、そして、非常に激しい気候変動の抑制のために炭素排出量を削減することは有効だが、その技術は準備の段階には程遠いことなどを結論付けている。

この報告書の研究には 60万ドル(約 7,000万円)がかかっているが、その一部の資金は、いくつかのアメリカの諜報機関からのものだった。

しかし、研究に関わったロボック氏によれば、 アメリカ中央情報局( CIA )からも、他の諜報機関からも、気象研究に関心を持つ理由や資金を提出する理由についての明確な説明がないという。

ロボック氏は述べる。

「 CIA はこの全米アカデミーの研究報告に対しての主要な資金提供者でした。それだけに、私は本当に心配なのです。誰かが気候を支配しようと試みている」

CIA 以外の資金提供者には、アメリカ航空宇宙局( NASA )、米国エネルギー省、アメリカ海洋大気庁( NOAA )などが含まれていた。

CIA は、2009年に「気候変動と国家安全保障センター( Center on Climate Change and National Security )」を設立したが、これは差し迫ったテロの懸念への対策の邪魔になるとして、一部の共和党員から激しい糾弾を浴びた。

センターは 2012年に閉鎖された。

しかし、それでも、専用の部署からではなくとも、気候変動がもたらす人道的結果とアメリカ経済への影響への監視を続けるだろうと諜報機関は語っている。

ロボック氏は3年前に、「 CIA のコンサルタント」だという二人の男性から電話を受けた後に、諜報機関の気候変動科学への関与を疑うようになったという。

彼らは以下のようにロボック氏に話してきた。

「我々は CIA で働いています。あなたにお伺いしたいことがあります。仮に、他国が気候をコントロールしていた場合、それを検出することは可能でしょうか。あるいは、仮に、我々(アメリカ)が他国の気候をコントロールすることを望んだ場合、他国に気づかれる可能性があるでしょうか?」

ロボック氏は以下のように答えた。

「もし、成層圏に気候を変化させるのに十分な大きさの雲を作り出すのであれば、それは人工衛星と地上からの計測器で検出可能です」

なお、気象を用いた兵器は、1978年の「環境改変技術敵対的使用禁止条約( ENMOD )」で禁止されている。

この電話について、どのような感じを持ったかロボック氏に聞くと「怖かった」という。

「私は CIA がおこなっていた他の多くのことも知りましたが、それらはルール(条約)に従っていないものでした。私の税金は何というところに使われているのか、と思いましたよ」

当紙はこの件について CIA にもコメントを求めたが、現時点では回答は得られていない。

環境改変技術敵対的使用禁止条約が発効する前、アメリカは気象改変に手を出していた。 1960年代、プロジェクト・ストーム・フューリー( Project Storm Fury )の研究者たちは、雷雨の破壊力を減少させることに期待をかけ、様々な粒子を雷雨にばらまいた。

同様のプロセスは、ベトナム戦争においても採用された。

北ベトナム軍の主要な供給ルートであるホーチミン・ルートの上に雲を作り、雨を降らせ続けることによって、北ベトナム兵士たちの歩く道を泥まみれにし続けた。

ロボック氏は、「気象を変化させる研究は、オープンになされるべきだと思います。国際的にそうであるべきです。そうでなければ、これらの技術が敵対的な目的のために使われることになってしまう」と述べた。