2015年02月18日



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メロンパンとステビアから知ったアメリカの「シュガー・ロビー」による過去50年間の砂糖消費拡大プロジェクトの現実



sugar-lobby-top.gif

▲ 2014年6月27日のニューズウィークより。



メロンパンをめぐる2015年食品添加物の旅

今日、うちの子どもがメロンパンを食べていたんですね。

ぱくぱくと美味しそうに食べていたので、「それ美味しいの?」と聞くと、

「いやまあ、普通に」

という味気ない返事でしたが、そのメロンパンの袋を手に取り、何となく裏を見てみました。

ふと、成分表を見ていきますと、

小麦粉、砂糖、卵、マーガリン、水あめ…

と最初は普通の始まりですが、その内容は次第に複雑化していきます。

…デキストリン、トレハロース、乳化剤、着色料(紅麹、クチナシ、アナトー)、ソルビトール、香料、酸味料、増粘剤(キサンタン)、甘味料(ステビア)、酸化防止剤(ビタミンE)、メタリン酸Na

うーむ、頼もしいカタカナの援軍たち…」とは思いましたが、「アナトー」だとか「メタリン酸Na」など、初めて聞くような成分も多く、「我々は毎日、何が入っているんだかわからないものを食べてはいるなあ」と改めて思いました。

しかも、着色料だけで3種類も使われていて、並々ならぬ「着色への思い」なども伝わる労作のメロンパンだとは思いました。製作者の努力も感じます。

とはいえ、労作は労作であることに敬意を表しつつ、「どうもやっぱりいろいろ添加し過ぎでは」とも正直思います。

マリリン・モンローの代表作のひとつである 1955年の『七年目の浮気』という映画で、奥さんから禁酒禁煙を言いつけられている主演の男性(トム・イーウェル)が、ソーダみたいなものを飲んでいる時に、その成分表を読み上げた後に、

これならスコッチのほうが体にいいのでは。よくわからんね

と言う場面がありますが、私もメロンパンの成分表を見て、「これなら芋焼酎のほうが…」と思ってしまいました(これは比較がおかしい)。

seven-years.jpg
・七年目の浮気


私が袋を見ていると、子どもが私に尋ねました。

子ども 「何見てるの?」
わたし 「パンに何が入ってんのかなと思って」
子ども 「今はね、どんな食べ物にもいろいろと入っちゃってるのは仕方ないんだよ」


と、何だか大人っぽい物言いをしまして、そのまま納得しそうになりましたが、それはともかく、メロンパンを見て、せっかく、こんなにいろいろと知らないカタカナの単語と出会ったのだから、調べてみようと思いました。どんなものでも出会いがあれば、関わるほうがいいということもあります。

引用は様々ですが、すべてリンクしています。

まず、デキストリン。

デキストリン

デキストリンは、デンプンまたはグリコーゲンの加水分解で得られる低分子量の炭水化物の総称である。

粉状化粧品の固形化や、エキスの顆粒化、粘度の調整、皮膚への吸着剤として用いられている。健康食品やスナック菓子類にも利用されている。

要するに炭水化物で、これは普通によく使われているもののようです。

次は、トレハロース。
これは名前はよく聞きますが、添加物としての役割は知りません。

トレハロース

高い保水力があり、食品や化粧品に使われる。

保水力を持つということは、たとえば、今回はメロンパンですから、柔らかい食感などを保つためなのかもしれません。特に問題のあるものではなさそうです。

そして、製作者の意地と執念を感じる感動の3種類の着色料、紅麹、クチナシ、アナトー

このあたりから、やや懸念のある情報にふれていくことになります。

まず、紅麹(べにこうじ)。

これは、紅麹カビというもので、中国では昔から使われてきたもののようです。

紅麹について

中国では数百年以上も前から白米や高粱(こうりゃん)に紅麹菌と呼ばれる赤いかびを生やした「紅麹」を紅酒と呼ばれる酒類の原料として利用してきた。

紅麹は獣肉などを紅色に着色する「着色剤」、日持ちをよくする「保存剤」としても用いられ、更に消化を助け、血行を改善する「漢方薬」として中国の古い文献に記載されている。

ということで、特別問題はなさそうなんですが、ただ、この紅麹は、サプリメントなどとしても使われているようで、これに関してはヨーロッパのいくつかの国では注意喚起、あるいは「違法」となっているようです。

下は内閣府の食品安全委員会の報告です。

スイス連邦食品安全獣医局(BLV)、紅麹を成分に含む食品の売買は違法と注意喚起
内閣府 食品安全委員会 2014.03.14

スイス連邦食品安全獣医局(BLV)は3月12日、紅麹を成分に含む食品の売買は違法であると注意喚起した。

スイス連邦医薬品庁とスイス連邦食品安全獣医局は紅麹を有効成分とする製品はスイスでは医薬品としても食品としても未認可であり、これらの製品を売買してはならないと指導した。

紅麹を有効成分とする製剤の売買はスイスでは違法行為に当たる。


これはまあ「量」の問題だと思います。
サプリメントだと大量摂取になりそうで、食品にちょこっと入っている程度は問題ないと思いますけれど、スイスでは、全面的に禁止されているようです。

そして、クチナシ。

これは語感は優しいですが、天然着色料危険度表という添加物の危険度(もちろん独自判断でしょうけれど)を5段階にわけているサイトによりますと、クチナシの危険度は「2〜3」となっていました。

kuchinashi.gif


上の表では、クチナシの下に、初めて知った「アナトー」があります。

アナトー - Wikipedia

アナトー は、ベニノキの種子から抽出される色素。

油脂、溶剤、水またはアルカリ水溶液により抽出され、黄色〜赤色の食品用(食品添加物)または化粧品用(口紅など)色素として用いられる。

とのこと。

アナトーは下のような実から採られるもののようです。

annatto.jpg
Annatto as Medicine and as a Culinary Colouring Agent

この色だと、やっぱり着色は赤系なんでしょうね。

それにしても、赤い食品ではないメロンパンに、紅麹とベニノキ(アナトー)の2種類の赤系色素を使っているあたりは、こだわりというべきか何というべきか。

続くソルビトールは、甘味料としてよく使われるもので、かなりの食品に添加されていると思われます。過剰摂取ならともかく、普通の量でしたら特に問題のあるものではないと思いますが、ただ、このメロンパンの成分を見て思うのは「甘くする作用があると考えられる」ものだけで、

・砂糖
・水あめ
・ソルビトール
・ステビア


と、重複して入れられているというのは、やはり、製作者のこだわりなのか何なのか。

次のキサンタンは、増粘剤で、非常に多くの食品で表記を見ます。

とろみのあるものには非常に多く使われていると思われ、特に問題はないのですが、たとえば、キムチだとかの漬け物類には、この増粘剤で「粘度を増している」ものが多く、それは実は不自然なとろみとなっている場合が多く、私はシャキッとしたほうが好きなので、増粘剤の入っていないものを探したりいます。

次に「ステビア」なんですが、これを調べている時に、今回のタイトルと関係している事実に行き着きました。




南米で神聖視されていたステビアとシュガー・ロビーの関係

ステビアは甘味料として知られていますが、原料は、南米のステビアという植物です。

ステビア
Stevia-rebaudiana-total.jpg
Wikipedia

その歴史を見ますと、ステビア - Wikipedia には、


ブラジル及びパラグアイの先住民グアラニー族が単に甘味料として用いるだけでなく、医療用として、心臓病、高血圧、胸焼け、尿酸値を低くするなどの目的で使用してきた。グアラニー族にとっては、ステビアは神聖な植物であり、崇拝の対象であった。

ハーブとして、糖尿病や高血圧の治療や健胃剤、二日酔い、精神的疲労に対する強壮剤として利用されている。



ということで、南米のグアラニー族(今でもその末裔が数多く南米に住んでいます)の人々は、ステビアを神聖なものとして使用していたようです。

何か、やっと「わりと良さげなもの」が、このメロンパンの添加物から出てきた感があります。

現在は純粋なグアラニー族はほとんどいないそうで、ほとんどがメスティーソと呼ばれる白人との混血としての末裔だそうですが、その血を引き継ぐグアラニー族の子どもたちはとてもカッコイイです。

グアラニー族の子どもたち
chicos-guaranies.jpg
La Gran Epoca


ところで、このグアラニー族が神聖視をしていたという「ステビア」なんですが、 これは、日本だから使えるものだということも知ります。

Wikipedia には以下の項目があります。


ステビアの抽出物が食品添加物として認可されている国としては、2008年12月までは、日本、ロシア、台湾、マレーシア、ブラジル、韓国などであり、アメリカ、EU諸国、シンガポール、香港などでは既存の甘味料業界のロビー活動 (Sugar Lobby) により認められていなかった。

ステビア抽出物を甘味料として使用した日本のインスタント食品や清涼飲料水、スナック菓子などが、それらの国で販売禁止になったり、撤去されたことがある。



とあり、どうやら、

「アメリカ、EU諸国などではステビアの食品添加は認められていない」

ということで、しかし、禁止された理由は安全性の問題ではなく、

> 甘味料業界のロビー活動 (Sugar Lobby) により

とあります。
そのために使用が阻止されているということのようです。

ここに Sugar Lobby (シュガー・ロビー)という言葉が出てきます。

「何だ? それは」

と思いましたが、ロビーというのは、ロビー活動を意味して、ロビー活動とは、ロビー活動 - Wikipedia にあります表現をお借りすれば、

特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動

ということで、このステビアに対してのシュガー・ロビーとは「砂糖以外の甘味料の使用を阻止するためのロビー活動」ということになりそうです。

そんなことで、何となく調べていたところで見つけた記事が、冒頭のニューズウィークの昨年6月の記事で、そこにはアメリカの砂糖業界が、過去に、砂糖に反対的な科学的意見を封殺し、あるいは、 WHO が砂糖の摂取を制限するべき発表をおこなった際に、「アメリカの WHO への資金援助を断ち切る」と脅しをかけた記録などが書かれています。

結果として WHO が屈したことも。

そして、この「砂糖業界」の活発な活動のお陰で、下のグラフのように、アメリカの砂糖消費量は、過去30年で大きく増加したのであります。

sugar-consumption1.gif
Newsweek

ただ、上のグラフを見ると「アメリカ人はもともとが砂糖を取り過ぎ」だということも言えそうで、「もともと多いのが、さらに多くなった」というのが現況のようです。

現在のアメリカ人の砂糖摂取量は、砂糖の摂取を特に「害」と見なしているアメリカ心臓協会の砂糖摂取の推奨量である「1日6グラム」の4倍から5倍の砂糖を摂取していることになるようです(推奨量は、男性と女性、大人と子どもで差があります)。

ちなみに、上のグラフとわりと似ているグラフに「アメリカのガンでの死亡者数」というのもあります。OECD(経済協力開発機構)によるアメリカ人の死因の推移です。

oecd-us-cancer.gif
アメリカの死因の推移

過去 50年で、心臓疾患による死者が半分ほどに減っているのに対して、ガンは2倍に増えています。

ただ、「死亡率」に関しては、アメリカでは、ガンでも心疾患でも大きく減っています。

usa-cancer-2010.gif


これは、アメリカの医療がとった政策変更(代替医療を積極的に取り入れる)と関係していそうですが、今回はここにはふれません。

ただ、上の「ガンの死亡率」のグラフと、「一人あたりの砂糖消費量」のグラフの推移に一致が見られるのはおもしろいと思いました。

そして、アメリカといえば、他の国と比べて、アルツハイマーの異常な多さが知られます。

アルツハイマー病などでの神経性疾患での死亡者数の国際比較(1960年-2009年)
alz-2009c.gif
アルツハイマー病


いずれにしましても、アメリカでは「砂糖の業界団体」の力が非常に強いということは、過去記事の、

米国カリフォルニア大学のチームが過去の膨大な科学論文の研究の結果、「砂糖は毒である」という結論をまとめる
 2015年02月12日

でご紹介しました、砂糖の有害性などを公式に発表したカリフォルニア大学の研究チームが率いる「シュガーサイエンス」などはどうなりますでしょうかね。

ただ、今回ご紹介しますニューズウィークの記事では、「アメリカ人の砂糖の過剰摂取の時代は終わるだろう」としていて、それは「かつてのタバコのようになっていくかもしれない」としています。

ここから、そのニューズウィークの記事をご紹介いたします。



Report: The Sugar Lobby Threatens Organizations, Buries Science on Health Effects
Newsweek 2014.06.27

シュガー・ロビーたちが組織を脅し、健康影響への科学調査を葬り去っている

過剰な砂糖の摂取が、心臓病や肥満や糖尿病などを含む様々な疾病につながる可能性があることを私たちの多くは知っている。

それなのに、いまでも砂糖はアメリカで最も一般的な食品添加物であり、ほぼすべての加工食品に砂糖が添加されている。なぜ、アメリカの食糧政策は砂糖に対しての管理を追加しないのであろうか?



巨大な砂糖業界

憂慮する科学者同盟( Union of Concerned Scientists )における「科学と民主主義センター( Center for Science and Democracy )」からの新しい報告書によれば、アメリカ砂糖業界とトウモロコシ精製業者協会(高果糖コーンシロップのメーカーのための協会)のような甘味料を販売する企業を代表する業界団体の数々は、砂糖が添加された製品が健康に悪い影響を与えると考えている砂糖に反対的な科学のために数百万ドル(数億円)を注いだ。

たとえば、南カリフォルニア大学が 2013年の研究の中で、ソーダのラベルに開示されている糖度から、炭酸飲料に含まれる実際の高果糖コーンシロップの量が「大きく変化している」ことを発見した際、トウモロコシ精製業者協会は、その調査に反対の結果となる独自研究のために費用を使った。

トウモロコシ精製業者協会のコンサルタントは、研究の結果、もし、何らかの理由で南カリフォルニア大学の研究結果と一致してしまった場合は、その研究データを破棄してもよいと報告書に書いている。

別のケースとしては、アメリカ砂糖協会の会長が世界保健機関(WHO)の局長に送った 2003年の手紙の内容が、科学民主主義センターの報告書に引用されている。

その時、 WHO は、砂糖が「食事の栄養価を脅かしている」として、砂糖の摂取を 10パーセント制限することを推奨するリポートを発表していた。

アメリカ砂糖協会の会長の手紙は、アメリカ議会へ働きかける行動を示唆していた。その働きかけとは、WHO へのアメリカの資金提供を拒否するというものだ。

アメリカ砂糖協会と他の貿易グループは、保健社会福祉長官のトミー・トンプソン( Tommy Thompson )氏にも手紙を書いた。それは、この問題に関しての「個人的な介入」を求めるものだった。

脅迫とロビー活動が働いていることは明らかだった。結果として、翌年の WHO の食事と健康に関しての世界的戦略では、砂糖についての言及は消えていた。

2012年にマザー・ジョーンズによって公開された砂糖のPRに関しての広範囲調査によると、これらの砂糖ロビーイストたちによる科学を軽視する努力は非常に有効だった。砂糖の身体への危険性について一致した科学的意見は存在しなくなった。

砂糖業界のキャンペーンの時期は、アメリカ人の、甘味料を含む砂糖の大幅な消費の増大の時期とおおむね一致している。ここには、テーブルシュガー(スクロース)、高果糖コーンシロップ(HFCS)を含んでいる。

そして、この砂糖の消費の増加と伴って、今度はアメリカ人の慢性疾患が急増した。 1970年以降、アメリカ人の肥満率は2倍を上回る数で推移しており、糖尿病の発生率は3倍になった。

イギリス食品基準庁の独立した専門委員会である「栄養に関する科学諮問委員会」( Scientific Advisory Committee on Nutrition )は、肥満と2型糖尿病を避けるために、砂糖の摂取量を推奨されている量の半分に制限すべき報告書案を発行した。

報告書は、砂糖の添加を 10パーセントから 5パーセントに減らすことを促しているが、アメリカ疾病管理予防センター( CDC )によると、2005年から 2010年の間の平均的なアメリカ人の食事には、およそ 13パーセントの砂糖が添加されていた。

おそらく、今後の数十年の間に、アメリカ人は砂糖の過剰摂取を日常としていたライフスタイルを振り返るだろう。それは、タバコが辿った道と同じかもしれない。

誰もが何も気にせずにタバコを吸っていた時には、背後で巨大なタバコ産業が動き続けていたのだ。

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