2015年03月13日



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英米医学界から強く発信され始めた「エコー検査とドップラー心音計の胎児への悪影響」



イギリス産婦人科学会は妊娠10週までのエコー検査を行わないガイドラインを策定中、アメリカ食品医薬品局は、必要のない超音波検査を「推奨しない」と勧告






 

超音波で「胎内の赤ちゃんの記念画像」を欲しがる人々が多い中

最近は子どもや赤ちゃんに関しての記事をたまに書きますが、

胎内で200種類以上の汚染物質に包まれながら成長して生まれてくる赤ちゃんたちのサバイバル…
 2015年02月01日

という記事で書きました内容など、現代生活の中では、生まれてからというよりも、むしろ「生まれる以前」から、子どもたちは様々な外部の要因と戦いながら生まれてきます。

そして、中には問題を抱えて生まれてくる赤ちゃんたちもいて、あるいは、喘息やアレルギーの子どもたちの率も増え続けています。

ここ十数年の子どもたちに起きている様々な問題が「もしかすると、生まれる以前のお母さんの胎内にいる時から始まっているかもしれない」というような感覚は、最近は多少は持っていますが、そんな中、イギリスのデイリーメールに下のようなニュースがありました。

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▲ 2015年3月12日の英国デイリーメールより。


今回、この記事をご紹介しようと思っていますが、先に概要を書きますと、イギリスの産婦人科学会や、アメリカ食品医薬品局( FDA )などが相次いで以下のような主張をしているという内容です。


胎児への超音波(エコー)での画像取得の安全性について、イギリス産婦人科学会では、妊娠10週以前の妊婦へのエコー検査を見直す動きを見せており、アメリカ食品医薬品局も、胎児が最も脆弱である妊娠初期に過剰な超音波診断、あるいは、3Dや4Dの高負担の超音波スキャンはお薦めすることができないとしている。



アメリカ食品医薬品局が発表したのは昨年 12月ですが、そのページが下です。

avoid-ultrasound.gif

▲ アメリカ食品医薬品局ウェブサイト Avoid Fetal "Keepsake" Images, Heartbeat Monitors より。

上の見出しの英語に「ドップラー」という単語はなく、「 Heartbeat Monitors (心拍モニター)」となっていますが、本文にこれがドップラー心音計(あるいは、ドップラー胎児超音波心音モニター)というものだと書かれてありましたので、そうしました。

ところで、「ドップラー心音計」とは一体何なのか?

知りませんでしたので、ちょっと調べてみますと、こちらに、

妊娠9~12週以降のお母さんのお腹にいる赤ちゃんの心音などが聞ける聴診器心音計

とありました。

そして、これも「超音波」を胎児に当てる器具ということになるようです。

エコーも、このドップラー心音計にしても、このような超音波を使う医療器具について、アメリカ食品医薬品局が上のページで問題としているのは、以下のことのようです。


超音波はわずかに組織を加熱する可能性を持ち、場合によっては、それにより、いくつかの組織に対して非常に小さな気泡(キャビテーションと呼ばれる)を生成する懸念がある。しかし、組織の加熱と気泡の生成が胎児に与える長期的な影響はわかっていない。


ということで、胎児の組織がわずかに加熱されることで、組織に気泡が作られる可能性があることが最近わかってきたということのようですが、ただ、それが胎児に何らかの影響を与えるのかどうかはわかっていません。

ただし、すでに現時点で、アメリカ食品医薬品局は

「使用しないことを推奨する」

としています。

ところで、この「エコー」なんですが、今はいろいろとあるようで、デイリーメールの記事には、3D とか 4D という言葉が出てきます。

今は平面の 2D だけではなく、3D とか 4D とかのエコーがあるようです。
しかし、3D (立体)まではわかるとして 4D とは?

これについては、クリムフ夫津子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所という診療所のサイトに「2D, 3D, 4Dって何?」という記述があります。


2D, 3D, 4Dって何?

技術開発により最近では三次元超音波(3D)や四次元超音波(4D)などといった機能を搭載している機器も普及してきました。

簡単に言うと、普通に赤ちゃんの断面を見ている超音波法は二次元(2D)法です。これに対して3Dというのは、羊水中に浮かぶ赤ちゃんの表面をリアルに表現するものです。4Dはこの立体表現に時間軸をプラスして「動く立体画像の赤ちゃん」をリアルに表現するものです。

これらの3D, 4D超音波法というのはお母さんに「まだ見ぬ赤ちゃん」を見てもらう絶好の機会を与えてくれ、精神的に安定したマタニティライフを送っていただくことに貢献しています。

(略)

付け加えておきたいのは、3D/4D超音波がないと診断ができないのではなく、ほとんどの胎児診断は2D超音波で可能なのです。



ということで、

> ほとんどの胎児診断は2D超音波で可能なのです。

とありまして、どうやら 3D や 4D という立体写真は、医学的な見地からの必要性の大きさからというより、デイリーメールの記事の見出しにも、アメリカ食品医薬品局サイトのタイトルにもある、

「記念に」

という言葉が出てくるように、「お腹の赤ちゃんの姿を記念に残しておきたい」という目的を持つ親御さんたちが比較的多いことに起因しているようにも感じます。

あるいは、現実として、今の世の中は、病気や障害を持って生まれてくる赤ちゃんの比率が昔と比べて劇的に増加していますので、お母さんの気持ちとして、「病気がないかどうか確かめたい」という心境があることはしても理解できます。

上の、クリムフ夫津子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所のページにも、


少子化の現在、お母さん、お父さんは赤ちゃんが健康であるかとても心配されています。数十人にひとりはなんらかの病気があるといわれています。


という記述があります。

これは、WHO の報告にある「現在は、出生児の4-5%が何らかの生まれつきの疾病をもつ」( 出生前診断 - Wikipedia )という数も、この「数十人にひとりはなんらかの病気がある」という率と大体一致します。

いずれにしても、

・記念のため
・心配を解消するため


という理由などによって、頻繁におこなわれる超音波での画像スキャンについて、「それを避けることを強くお勧めします」と、アメリカ食品医薬品局は述べているということになります。

デイリーメールでは、英国の医学博士の見解として、「妊娠 10週以前の妊婦は避けるべき」としていますが、アメリカ食品医薬品局に関しては、妊娠の経過週についての言及はありません。

ちなみに、私の子どもが生まれた病院は、東京の西荻窪で現在残っている産婦人科の中では最も古くからある病院で、外観も内観も簡単に書くとボロボロの、しかし、昭和を彷彿とさせる風情のある病院で、最新機器などはほとんど見かけませんでした。

(……と思って、久しぶりにその病院の様子でも見てみようと検索してみましたら、新築されてキレイになっていました)

そんな古典的な病院でもエコーは何ヶ月かに1回かは撮影していたと記憶していますが、エコー(超音波検査)って、いつ頃から普及したのですかね。




エコー検査の歴史

現在の日本の産婦人科医で、3D や 4D はともかくとして、エコー検査そのものがないという病院は多分ないと思うのですが、いつ頃から普及したものなのかを調べていましたら、川崎医療福祉学会誌に「超音波診断を含む妊婦健診の導入と普及要因」という研究論文がありました。

そこにある歴史を箇条書きにしますと、




日本における胎児の超音波検査の歴史

・1960年代までは妊婦検診は一般診察、外診、聴診、骨盤計測などで、当時は医師も助産婦も妊婦に対しての検診項目は同じようなものだった。また、定期検診も特にはなかった。

(私が生まれたのは 1963年でしたので、このあたりです)

・1965年に「母子保健法」が制定され、医師の定期的な妊婦検診が奨励された。

・1968年に超音波ドップラー法を応用した分娩監視装置の普及が進み、1,000台以上が市販される。

・1970年代になり、早期妊娠診断に超音波診断が有効であるとされ、この頃から普及が始まる。

・1980年代になって、胎児の詳細な形態診断や臓器の診断のための超音波検査機の開発が進む。

・1990年代になり、3D 超音波診断が臨床の現場に登場する。





という感じのようです。

超音波応用機器の市場の拡大は下のグラフのようになるようで、太い線が現在まで続く系統の超音波機器だと思いますが、このような大きな伸びを見せてきました。数百億円規模の市場ですから、小さくはないです。

1969年から2001年までの超音波検査機器の市場規模の拡大
echo-market.gif

まあ……このグラフを何かと関連させたくはないですが(エコー検査そのものには、大事な面があるとは思いますので)、最近の記事に載せたグラフで年代などと比較的連動しているものをふと思い浮かべてしまいます。

日本における低出生体重児の1970年から2000年までの推移
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▲ 2015年01月30日の記事「「そのうち日本から子どもが消えちゃうんじゃないか」と思わせる日本をめぐる統計グラフ…」より。元グラフは赤ちゃん通信より。


日本におけるおける先天異常発生頻度の1974年から2004年までの推移
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▲ 2015年02月01日の記事「胎内で200種類以上の汚染物質に包まれながら成長して生まれてくる赤ちゃんたちのサバイバル…」より。グラフはニコチル調査より。


うーん……まあ、いろいろと考える部分もないではないですが、ちなみに、最初のほうにも書いていますけれど、イギリスの産婦人科学会は、「妊娠初期の超音波検査と医療的な根拠のない過度な超音波使用は避けるべき」と言っているわけで、エコー検査そのものを否定しているわけではありません(ただ、アメリカ食品医薬品局は基本的にすべての妊婦に「非推奨」としています)。

しかし、たとえば、エコーで赤ちゃんの病気や異常が実際に見つかるケースは多いと思われ、また、お母さんにしても、今のこの時代に、お腹の中の赤ちゃんの様子を少しでも詳細に知りたいと思うのは、ある程度は当然だと思います。ですので、なかなか難しい問題ですよね。

自分のお腹の中の状態をまったく知らないまま、すべての妊娠期間を過ごすというのも、今の時代ではやや勇気がいることだと思います。

結局、イギリスの産婦人科学会の言うように「妊娠初期には(できるなら)控える」ことや、あるいは、例えば、超音波ドップラー心音計などを個人で「医療上の根拠のないまま何度も使う」というようなことは慎んだほうがいいということなのかもしれません。

ただ、日本ではこの理論は通用しないと思いますが。

ところで、関係ないんですが、昨日の朝日新聞に、

島から子どもが消える 「その日が来てしまったんじゃ」
 朝日新聞 2015.03.12

というタイトルの記事がありまして、内容は、高齢化が進む広島県福山市の走島(はしりじま)という小さな島で、今月、島に一つずつあった小・中学校と幼稚園が閉じて、島から「子どもがいなくなる」ことが記されたものでした。

このような光景そのものは、今では日本のあらゆる地方で見られていると思うのですが、この記事の最後の文章が「まるで未来の日本で誰かが呟く言葉のようだ」と感じてしまいました。

それは、島の公民館の副館長の高橋松美さんという方が述べた以下の言葉です。


「ずっと前から『このままじゃ子どもがいなくなる。何とかしよう』と思っていたのに、その日が来てしまったんじゃ。でも、もう遅い」


何だかこの方の言葉がとても切なく響いてしまいました。

これが未来の日本という国の単位で、

> でも、もう遅い。

となるような日が来ないといいのですけれど……。

そんなわけで、脱線しながら来てしまいまして、何だかわからくなってきましたが、デイリーメールの記事をご紹介いたします。

なお、この記事にある「危険性」には現時点では医学的なエビデンスはなく、この意見は英国でも米国でも「統一した見解ではない」ということは書いておきたいと思います。




Souvenir scans 'should be banned for first ten weeks of pregnancy': Ultrasound used to capture photos could expose foetus to unknown risks
Daily Mail 2015.03.12


記念のための胎内スキャンは「妊娠初期10週は禁止されるべき」。超音波での画像撮影は胎児が未知のリスクに晒される可能性がある


お腹の赤ちゃんの記念のスキャンは妊娠の初期 10週以内で行われるべきではないと医師たちは言う。

今はこれから両親になる人々が、記念のために妊娠のあらゆる時期的段階において胎児の画像を超音波で撮影し、それらを記念として部屋に飾ったりする人々も多い。

そのような中で、英国産婦人科学会は、医学的な理由がない場合の妊娠初期の妊婦に対してのエコー検査はおこなわない方向でのルール作りを進めている。

胎児の画像撮影には高周波数の超音波を使用するが、これによって、胎児が未知のリスクにさらされる可能性があることが新たな科学レビューで述べられているのだ。

現時点で、超音波が胎児に有害であるというエビデンス(医学的証拠)はない。
しかし、レビューは「予防原則は適用されるべきだ」だと述べる。

レビューの主筆の英国インペリアル・カレッジ・ロンドンの胎児医学者であり産婦人科医のクリストフ・リーズ( Christoph Lees )博士は、特にそれは妊娠 10週以内では顕著に見えたと語っている。

本来なら、エコー検査は、臨床医によって潜在的な問題を識別された場合に使用されるものであったが、クリニックの数が増え、今では妊娠6週目から画像提供をおこなう場合もある。

リーズ博士はこのように述べる。

「胚の期間での超音波検査は、いくつかの重要な筋書きから、胚に対してのリスクを持つ可能性があるのです。もっとも、現在、超音波診断の安全性に対しての問題があるという根拠はありません」

「しかし、現実として、超音波画像診断が、ますます明白な医療的な目的ではないことでも使用されるようになっており、胎児が胚という脆弱な妊娠初期の時期におこなわれる超音波の長期的な悪影響を認識する必要があると考えます」

アメリカ食品医薬品局( FDA )は、昨年 12月、妊娠のどの段階であっても、必要のない超音波検査をするべきではないという勧告を出した。

リーズ博士は、有害性の可能性とひとつとして、超音波によってわずかに発生する過熱効果をあげる。博士は、記念の胎児の画像がほしい場合、妊娠 20週以降にしたほうが良いと述べている。

また、同時に、超音波を使用するドップラー心音計も、妊娠初期 10週以前に使うことは全くお勧めできないと博士は言う。

さらに、3D 、 4D の超音波エコーに関しては、特に4D 超音波は、リアルタイムで、スキャン時間が長く、また、通常より高い電力放出を伴うことにも言及している。