2015年04月06日



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南極の気温が「1年半で110 度も上がった」かのように響く報道の真実。そして、カリフォルニアの歴史的な干ばつの真実



数日前、下のような「南極大陸で観測史上最高気温か」というような報道が、ほとんどの報道メディアでいっせいに報じられたことは、ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。

antarctic-175-top.gif

▲ 2015年4月2日の CNN 南極大陸で観測史上最高気温か 17.5度を記録より。


さて、下はその1年4ヶ月ほど前の 2013年12月の英国ガーディアンの報道です。

こちらも「南極の気温」に関しての報道です。

antarctic-minus-90.gif

▲ 2015年12月10日の Guardian Coldest temperature ever recorded on Earth in Antarctica: -94.7C より。


どちらの報道が正しいとか正しくないとかの話ではないのですが、単純に上のふたつの報道を見比べますと、

「南極って、1年半で 100度以上も気温が上がったのか!」

と、つい思ってしまうような印象があるかと思います。

そういう意味も含めて、どうも違和感を感じざるを得ません。

そして、記事を冷静に読むと、カラクリというのか、「南極で観測史上最高気温」報道は、「方向性の意志」を持っている記事であることが見えてきました。

今回の南極の記事に、やはり同じような違和感をもたれた方もいらっしゃるのではないかとも思いまして、今回はそのことを書こうと思いますが、その前に、別の気象現象で、カラクリとはいいえないものの「考えていた状況と違った」ものがあります。

それは「カリフォルニアの歴史的な干ばつと深刻な水不足」です。

先に、そのことを書いておきたいと思います。




カリフォルニアの「世紀の大干ばつ」の本当の原因

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THP より。下に「 1 THESS. 5:17」とあるのは、新約聖書『テサロニケの信徒への手紙一』 の 5章 17節のことのようです。その節のフレーズは、「絶えず祈りなさい」です。


カリフォルニアの干ばつは 2013年頃から「過去最悪」と言われ続けていましたが、2014年も今年 2015年も「過去最悪」という表現がされています。

最近の報道では「カリフォルニアの水はあと1年で枯渇する」ということも言われています。


「水は残り1年分」NASA警告 米カリフォルニア州の干ばつ深刻
日本経済新聞 2015.03.20

全米最大の人口を抱えるカリフォルニア州で水不足が深刻さを増している。今年で4年目に入った干ばつは、野菜や果物、アーモンドの主要産地である同州の農家を直撃。米航空宇宙局(NASA)は「州内の水源に残された水はあと1年分」と警告する。非常事態を宣言した州政府による水の利用制限が強化される中、海水を飲み水に変える技術に注目が集まっている。


その後、非常事態宣言の下で、節水に関しての行政命令が発令されています。

カリフォルニア州は、アップル、グーグル、フェイスブックなどの巨大 IT 企業が集まるシリコンバレーを有していますが、IT 企業とはいっても、動かしているのは「人間」ですので、カリフォルニアが「飲む水がまったくなくなってしまうような場所」になれば、何らかの影響もあるかもしれません。

それ以上に、

産経新聞の記事によれば、このカリフォルニアという場所は、

> 野菜と果物の全米収穫量の約半分がカリフォルニア州で生産されている

という場所でもあり、カリフォルニアはワインの輸出でも有名で、それらの価格の高騰を含め、今後急速に悪い影響が出始める可能性があります。

さて、この結構大変な状況となっているカリフォルニアの干ばつですが、私も、そして多分、多くの人々も、異常気象、あるいは気候変動のために起きたというように思われているように思います。

たとえば、昨年 12月の「来たるべき地球のかたち」の記事で、アメリカ地球物理学連合( AUG )の科学者たちの研究についての記事を載せています。その記事のタイトルは、

カリフォルニアの干ばつは過去1200年で最悪であることがアメリカ地球物理学連合の調査で判明
 2014年12月18日

というもので、翻訳した記事の中には以下のような部分があります。

最新の研究データによれば、カリフォルニア州は、過去数世紀で最悪の干ばつに陥っていることがわかった。

気温の影響について研究しているアメリカ地球物理学連合( AUG )の科学者たちは、降水量などの低さや、その他の状況と照らし合わせて、この干ばつが、過去 1,200 年で最悪のものであることを見出した。

研究者たちは、カシの木の年輪などから、過去の降雨、河川や貯水地の状態などを計算した。

これだけ読むと、

「何と激しい地球の変化!」

とか、

「まさに荒れ狂う地球の姿!」

などのように思えてしまうかもしれないですが、実際はそうではなく、

カリフォルニアの水不足は「人災」であることがハッキリした

のです。

この「ハッキリした」というのは、そのような報道があったわけではなく、データ上で、それが比較的明らかになったということです。報道はなぜかほとんどありません。

そのデータは、アメリカ海洋大気庁( NOAA )にある「降水量」の公式データです。

NOAA には、クライメート・アト・グランス( Climate at a Glance / ひとめでわかる気候) というデータページがあり、1895年から 2014年までの気温や降雨量などについて、アメリカのすべての州についての「 NOAA が保管する気候データ」を検索できます。

そして、1895年から 2014年までの 119年間のカリフォルニアの「降水量」のデータを調べてみますと、意外なことがわかります。

カリフォルニアで水不足が最もひどかった 2014年の降水量は「平年よりさほど低くはなかった」

のです。

数値でいうと、平年より 2.46インチ(約 6.3センチ)少ないだけで、率でいうと、「平均の降水量より11%少なかっただけ」でした。

下のグラフは、その推移を示したもので、これを見ると、2014年より降水量の少ない年がたくさんあったことがわかります。


1895年から2014年までのカリフォルニア州の降水量
precipitation-california.gif
sunshinehours

その前年の 2013年は確かに記録的に雨が少なかったですが、カリフォルニアの干ばつはそれ以前から始まっています

そして、2010年頃からの降水量は普通か、普通より多かったことがわかります。少なくとも、アメリカ建国史上最悪の水不足のような状態になるほどの降水量不足ではなかったのです。

では、一体何がこの歴史的な水不足の原因なのか?

これは下のグラフが表していることが、ひとつの大きな原因であることは間違いないと思われます。

1900年から 2013年までのカリフォルニア州の人口の推移
population-california.gif
Orange County Register

何とカリフォルニアの人口は、約 110年間で 30倍近くにまで増えたのです。

アメリカ全体でも人口は増えていますが、1900年のアメリカの人口は 7621万人で、現在は 3億2000万人ほどすので、4倍ほどの増加です。

ここから見ますと、カリフォルニアの人口の増加はすさまじいものです。

人間は何よりも水がないと生きていけない生物です。

それに加えて、カリフォルニアは水を大量に使う農業や工場なども多いことなどを考えますと、この現在の状況になることは「かなり以前から予測できていたもの」だと考えられます。

そして、もうひとつの原因は、水不足が起きることは予測できていたであろうに、「大きなダムが 1982年以来建設されていない」のだそう。

こうなりますと、カリフォルニアには、必ずいつかは深刻な水不足がやってきていたということになります。

人口の増加のグラフを見ますと、人口 3000万人を越えた 2000年より以前から対策をとっていれば、こんなひどいことにはならなかったと思われます(今から対策しても多分もう遅いです)。

陰謀論とかではないですけど、何となく「意図的に起こされてしまった水不足」という感じも受けないではないです。

あまり関係ないですが、カリフォルニアでの海岸には、「飢餓に陥って」いる状態のアシカの子どもたちが次々と打ち上げられています。

カリフォルニアに打ち上げられたアシカの子どもの数が1800頭に達する
 2015年03月25日


さて、このカリフォルニアのことを先に書きましたのは、報道の傾向に「南極の最高気温の話」と、やや似た部分があることを感じたからです。

例えば、カリフォルニアの干ばつの報道も、気候変動や地球温暖化などの面が強調されて報道されていますが、降水量のグラフを見る限り、この 100年間でどちらかに向かう「方向や傾向」というものは特にはなく、「雨の多い年があったり、雨の少ない年もあったり」というだけのことです。

確かに今は、世界中で、気候そのものがおかしいことは確かですが、何もかも「気候変動」という言葉に含めてしまうのはどんなものかなと。




南極「最高気温」のカラクリ

数日前の、南極の過去最高気温報道も、例えば、下のような見出しで報じられることもありました。


南極で過去最高気温を観測か 17.5度、温暖化の影響も
日本経済新聞 2015.04.03

南極大陸の半島部分で、南極としては過去最高の可能性がある気温17.5度が観測されていたことが分かった。英紙ガーディアンなどが報じた。

これまでの最高気温は1961年に同じ地点で観測した17.1度とされている。今回の観測気温が正式に確認されれば、地球温暖化の影響を示すとの見方が出そうだ。



「温暖化」という言葉が出てきます。

この最高気温を観測したとされる基地は、エスペランザ基地というアルゼンチンが管理する南極基地ですが、場所は下の位置にあります。

エスペランザ基地の場所
esperanza-base.gif
Esperanza Base, Antarctica

地図でおわかりのように、この基地は、南極点よりアルゼンチンに近い場所にありで、実際、ここは南極圏ではありません

先ほどの日経新聞にも、


エスペランサ基地は南米大陸に向かって突き出た半島の先端部分にあり、南極圏の外に位置することから、同基地の気温を「南極の気温」とみなすのが妥当かどうか議論の余地もあると同紙は伝えている。


とあり、ここは「南極基地」という名の基地ではあるけれど、「南極圏にある基地ではない」ということです。

それを「南極」と言葉で一括りにしてタイトルで見てしまうと、まるで南極の中心点で 17.5度の気温が記録されたかのような錯覚をもたらします。

しかし、その最高気温が記録されたとされる 3月 24日のエスペランザ基地の気温を見てみますと、確かに高い気温が記録されていたことがわかります。

エスペランザ基地の2015年3月24日の気温
esperanza-1.gif
Esperanza Base

ただ、上の気温の推移で少しだけ奇妙に思うのは、唐突に 10度以上も気温が上がっているところです。

気温の推移を見ると、この時期の南極は1日のうちでそんなに大きく気温の変動がないことが多いように感じられます。たとえば、下のような日が多いです。

esperanza-2.gif

もちろん、例外はあるのでしょうけれど、この日、確かにこのあたりで「何かがあった」のかもしれません。

地球ではいろいろなことがあるわけで、たとえば、2012年には、グリーンランドの氷床が4日ですべて溶けてしまったという出来事がありました。

メルトダウンの序章? : 「たった4日間でほぼすべて溶けて消えた」グリーンランドの氷床
 2012年07月26日

グリーンランドの2012年7月8日から7月12日の間の氷床の変化
Greenland-meltdown2.jpg
・NASA


エスペランザ基地の周辺で 3月24日に何か特殊なことがあったのか、あるいは、通常の気温変化として、17度を記録したのかはわからないですが、報道を見ていると、

「南極全体の気温が少しずつ上がっている」というようなイメージを抱かせる

ものが多く、それは違うということを書いておきたかったのだと思います。

現実には南極は今も普通に寒いです。

たとえば、南極高原中央部のドームAと呼ばれる場所の今日( 4月6日)の気温は下のようになっていました。

南極ドームAの気温
dome-a.gif
Weather Underground




南極の海氷面積は過去最大クラス

というより、南極の気温そのものについては、実際にはそんなに大きく変化しているわけではないということも下のグラフを見ると言えそうです。

antarctic-kion.gif
Not A Lot of People Know That


しかし、気温以上に、南極の現在のもうひとつの事実として、

「海氷面積が過去最大レベルで推移し続けている」

ということがあります。

昨年の9月に「南極の海氷面積が記録的なレベルに達し、過去最大面積を更新中」という記事で、南極の海氷面積が記録的なものとなっている報道をご紹介したことがあります。

antarctic-0914.gif

▲ 2014年9月14日のオーストラリア ABC ニュースより。


それは現在も継続中で、3月の南極の海氷量は観測史上2番目で、過去最大に近づきました。

sea-ice-03.gif
Not A Lot of People Know That


そんなわけで、気温や天候に関しての報道の場合、どうにも「誘導的な要素」が含まれているものもあるとは感じますので、いろいろな報道を冷静に見る必要があると感じています。もちろん、気温や天気のことだけではなく、すべてのジャンルの報道に言えることだとも思います。

何をどこに導こうとしているのかはともかく、かつてないほど、多くの報道には「方向性がつけられている」ように感じます。あるいは、「報道されないものはされない」ことも多くなっているのかもしれません。

ところで、「水」と関連して、4月6日の毎日新聞の「水危機:アジア太平洋地域…アフリカ下回る水量 水害顕著」という記事の中に、


アジア太平洋地域では、この40年余りに自然災害で約200万人が亡くなっているが、その93%が豪雨や台風、干ばつなど水関連の災害だった。


という下りがありまして、アジア太平洋地域では、「 40年間で自然災害で 200万人が亡くなっている」という事実を知るのでした。

そして、そのほとんどが水関係の災害だそう。

ということは・・・次の 40年間でも、同じように、あるいはそらに多くの同じような事象が起きるということになるのだなあと改めて思った次第でした。