
▲ 2015年01月26日の英国ミラーより。
世界に何が起ころうとしているのか
否定的ニュースには事欠かない最近ですが、そのような中で「気になるランク」が高いものとして、「アメリカから国外へスーパーリッチやエリートたちが逃げ出している」というものがあります。
これは今年に入ってから繰り返し語られているものではあり、たとえば冒頭の記事は、今年1月の英国の報道ですが、最近、「アメリカ発」のものとして多く見かけるようになりました。最近のヤスの備忘録の記事でも、このことにふれられていました。
冒頭の記事は新しいものではないですが、これらのことをリークしている人物の「国際社会での地位の高さ」もいろいろと気にさせるところでもあります。冒頭の記事の「インサイダー」は、ジョージ・ソロス氏が資金提供する「新経済思考研究所」(The Institute for New Economic Thinking)という経済研究所の所長であるロバート・ジョンソン氏という人でした。
新経済思考研究所は、リーマンショック後に設立されたもので、かなり大層な組織でもありそうです。
新経済思考研究所を創設 ノーベル賞受賞者らが発表
ビジネスEX 2009.10.28
経済危機が示す政策面の挑戦と経済理論への新鮮なアプローチを発展させる必要に応えて、学術、政策立案、民間分野のトップリーダーのグループが28日、新経済思考研究所(INET)の創立を発表した。
INETの創立諮問会議のメンバーにはノーベル賞受賞者のジョージ・アカロフ、ジェームズ・マーリーズ…(略)
この新経済思考研究所の現在の代表者が、ダボス会議(世界経済フォーラムが毎年1月にスイスのダボスで開催する年次総会)の場でのインタビューに対して、
「多くのヘッジファンドマネジャーたちが脱出を計画している」
という発言をしたのでした。

▲ 2015年ダボス会議。左が新経済思考研究所のロバート・ジョンソン所長。 YouTube
そ最近になり、いろいろと金融や経済について緊迫度が増しているようなものが増えてきました。
下はつい最近の英国テレグラフの記事ですが、「今は(銀行に預けたりではなく)現金を身近に持ちなさい」というファンド・マネージャーからの警告などが書かれています。

▲ 2015年06月20日の英国テレグラフより。
上の記事では、そのファンド・マネージャーは「起きる出来事は全世界的になる」ということも述べています。
さて、一体、今何が起きていて、これから何が起きる必要があるのか。
そして、どうしてアメリカのスーパーリッチたちは逃げているのか。
今回は、新しい記事ではないですが、アメリカの金融ブログ「ゼロヘッジ」の「彼らは何を知っているのか? なぜ、こんなに多くの超富裕層が逃げ出しているのか?」というタイトルの記事をご紹介したいと思います。

・Zero Hedge
ここに書かれてあることは、「アメリカの最近の富裕層の行動」というものがよくわかる興味深いものです。どうも、今のアメリカの富裕層は「サバイバル・モード」に突入しているようなのです。
ところで、このゼロヘッジというのは、人気のある金融系ブログですが、この作者の方は、男性か女性かはわからないですが、自分の名前を、
「タイラー・ダーデン( Tyler Durden )」
としていることに最近はじめて気づきました。
そして、ご自身の顔アイコンも、

を使っています。
「ああ、なるほど」
と思いました。
新しい暗黒時代を目指して
何が「ああ、なるほど」なのかと申しますと、この「タイラー・ダーデン」という名前を持つ人物は、20世紀を代表する恋愛映画のひとつで、エドワード・ノートン主演の『ファイト・クラブ』という映画で、ブラット・ピットが演じたキャラクターなのです。

・『ファイト・クラブ』
これを知った時に、
「ゼロヘッジを書いている人は、多分、金融も経済も全部壊れればいいと思っているんだ」
と思うに至ります。
というのも、この『ファイト・クラブ』には、小説の原作があるのですが、登場人物たちの目的は、
・消費社会を終わらせること
・金融システムを消滅させること
などを行うことにより、
「新しい暗黒時代」を作り出し、「人類の文明の歩みを遅くする」
ことなのです。
この目的を達成させるための計画名が「騒乱計画(メイヘム計画)」。
映画そのものは、そのような深い意味を越えて、ひたすら爽快な展開で最後まで楽しませてくれますが、原作では、そのような意志があったようです。
もう6年も前ですが、クレアなひとときの、
・都心で夢見たメイヘム計画による「歴史の消去」の日は来るか
2009年12月23日
という記事にそのことを書いたことがあります。
その記事にも書いていますが、この映画を見終えた時の快感というのは、
「もしかすると《家や車や家具を持っていないと、ちゃんとした社会的人間ではない、という強迫観念》から、自分たちも逃れられる日が来るのかもしれない」
という「感覚」を残してくれたことです。
金融崩壊も経済混乱も良いことではないです。
しかし、何らかの理由で、心から本気で「新しい世界」を目指したいと「考えて」いるのなら、この世は、創造と破壊の繰り返しである以上、
「創造と現状維持だけという世界はあり得ない」
ということは言えます。
それどころか、「創造のためには何よりも破壊が必要である」としているものも数多くあります。
破壊神
ヒンドゥー教の宗教的観念では宇宙は生成と消滅を繰り返すとされる。再生と消滅の循環において“死、破壊”こそが万物の支配者であり、消滅を経て宇宙は清らかで秩序ある姿に帰り、新たな創造が始まるのだ。破壊無くして創造はなく、破壊と共に再生を願う性格と機能を備えた存在こそが「破壊神」なのである。
これからどんなことが起きるのかは、スーパーリッチではない私たちにはわからないことですが、ゼロヘッジの記事には、多少の示唆があります。
どんな地球上のシステムにも「破壊」の日は来ます。
それならそれで、積極的な気持ちで立ち向かいたいところです。
というわけで、少しだけ話が逸れましたが、ゼロヘッジの記事です。
なお、現在のアメリカでは、ここに「戦争」というキーワードが含まれたり、いろいろな要素があるのかもしれないですが、どんな形式をとるにしても、「変化」は、おそらくは必ず訪れるということのようにも思います。
そして、その変化は将来的に考えれば好ましいものであるに違いないと確信しましょう。
What Do They Know? Why Are So Many Of The Super Wealthy Preparing Bug Out Locations?
Zero Hedge 2015.01.31
彼らは何を知っているのか? なぜ、こんなに多くの超富裕層が逃げ出しているのか?
その時に備えて、多くのスーパーリッチたちが静かに逃避する準備を進めている。
彼らは遠い国に農場を購入したり深い地下壕を購入したりすることによって、生存するための財産を蓄えている。
実際、ダボス会議で、世界経済フォーラムの著名なインサイダーは、「非常に権力のある人々が、彼らが非常に脅えていると私に話した」と言い、また、「世界中のヘッジファンド・マネージャーが、ニュージーランドのような場所に自家用の滑走路と農場を購入している」と語り、聴衆たちに衝撃を与えた。
彼らはいったい何を知っているのか。
なぜ、多くの超富裕層が突然、逃避の準備をしているのか。
世界のエリートたちが終末の日の準備を始めたとなると、非常に厄介なサインといえる。そして、今のエリートたちは、これまでにないような災害のための準備をしているように見えるのだ。
さきほど書いた新経済思考研究所のロバート・ジョンソンがダボス会議で聴衆に語ったこと・・・。
格差と不平等の拡大と、市民の不安などから、世界中のスーパーリッチは、すでにそれらの「結果」に対しての準備を進めている。世界中のヘッジファンド・マネージャーたちが、すでに逃走を計画していたことがダボスで明らかにされている。
彼らはニュージーランドなどに滑走路や農場を購入している。
ロバート・ジョンソンはさらに、「エリートたちが、ファーガソンなど、社会不安の増加や、暴力の増加の証拠を示し、彼らは非常に怖れている」ことを述べた。
エリートたちの一部が、ニュージーランドなど地球の反対側に行こうとしているのに対して、「地下へ逃避」することを計画しているエリートたちもいる。
例えば、カンザス州の地下にある退役したミサイルのサイロは、不動産開発業者が「高級サバイバル・コンドミニアム」に建て替えた。
ウォールストリート・ジャーナルによれば、そのコンドミニアムは「サバイバル・コンドミニアム・コンプレックス」と呼ばれ、価格は、150万ドル(1億8000万円)から 300万ドル(3億6000万円)までで、75名まで収容可能だ。
購入者には、医者、科学者や起業家なども含まれていると開発者のラリー・ホール氏は述べる。ホール氏は、2008年にカンザス州で最初のミサイル・サイロを購入し、2012年に竣工した。
その1年後には物件はすべて完売した。
ホール氏は現在、次のコンドミニアムに取り組む計画を立てており、テキサス州や、他の場所の建設も検討していると言う。
元核ミサイル地区は、アメリカ陸軍工兵隊の監督の下で構築されており、構造はもともと核爆弾の直撃に耐えられるように設計されている。
内部と地上は、 16000ポンド( 7257キログラム)の重量がある装甲ドアで密閉することができる。また、水の処理施設、空気処理施設、最先端のコンピュータ・ネットワークと、代替の発電能力を備えているという。
他の富裕層たちは、自宅を、ハイテク・セキュリティ要塞へと変えている。
これらのサービスを提供するアメリカのビジネスは、著しく高騰を続けている。
全米の富裕層たちが、侵入者などから自分の愛する家族を守るために、何百万ドル(数億円)かけ、黙示録的な自然災害から守るためのホーム・セキュリティはますますSF的になってきている。
懸念する住宅所有者たちに未来的な小道具、そして、金額では見積もることのできない安心を提供している企業の数々は、現在、高価な地下壕やパニックルーム、そして、個人認識ソフトウェアの需要が高まっていることを明らかにした。
ポラック+パートナーズ社の代表は、経済誌フォーブスに、「セキュリティは、常に富裕層の顧客には重要だったが、過去5年で、ホーム・セキュリティへの支出がさらに著しく成長している」と述べた。
では、なぜ、これらの裕福な人々のすべてはそのように心配しているのか。
真実は、彼らは何が起こるのかを見ることができるということだ。
彼らは、アメリカの何百万人もの人々が、中流階級より下のクラスに落ちることを見ることができる。アメリカ社会が何千もの異なった方法で破壊されることを彼らは見ることができる。
彼らは、アメリカの人々の怒りや不満が、かつてないレベルにまで上昇していることを見ることができる。
そして、彼らは次の経済危機の直撃が、怒りの爆発をおこさせる可能性があることを見ることができる。
経済は今のところ、しばらくの間かなり安定しているにもかかわらず、経済的な苦しみを経験する人々が増加する兆しにあふれている。
例えば、ロサンゼルスタイムズは、ロサンゼルス地域にホームレスの野営地が急速に拡大していることを報告している。
この2年間で、道路の野営地は、彼らの歴史的な境界だったロサンゼルスのダウンタウンから飛び出し、高速道路を抜け、南ロサンゼルスのエコーパークの地下通路まで埋まっている。
ロサンゼルス・ホームレス・サービス局( Los Angeles Homeless Services Authority )によると、ホームレスの道路の野営地は、2013年の 479地点から、2014年には 767地点と、60%上昇した。
私たちは今、エリートたち以外の多くの人々が少しずつ貧しくなっている時間の中を生きている。この世界は、上位1%の人々が、全世界の富の 50%近くを持っている。そして、その裕福層の富は毎年増え続ける構造だ。
エリートたちは、最終的にこれが「弾ける」ことを知っている。
それが起きた時に右往左往したくないのだ。
本当の危機が訪れたとき、何が起きるだろうか?
エリートたちが逃避の準備を進めていても、彼らを責めることは難しい。
誰も噴火の際に火口の真ん中にいたくはない気持ちはわかる。
私たちの人生は劇的に変化しようとしている。
そして、その嵐の徴候に満ち溢れている。
もし、あなたが、アメリカを直撃するかもしれない事態に対して、まだ何も準備をしていないのなら、今すぐ準備を始めることを望む。