▲ 2015年5月のネイチャーより。
女性「性」の意味
震災直後から、どういうわけか、ふいに「女性性」というものが頭に浮かぶことが多くなり、ブログでも「女性性社会の獲得」ということがひとつのテーマにもなっている感があります。
そして、この「女性性の社会」という概念は、前回の記事、
・ギリシャ暴動の意味:彼らは自分自身と世界を「カイロスの地球」に戻す責任を果たせるか…
2015年07月17日
の内容と強くリンクすることに気づきます。
その記事で、私は以下のようなことを書いています。
「ギリシャ暴動の意味…」より
先に書きました、民主主義や、貨幣制度や、西洋医学、競技スポーツ、神話、あるいは、哲学もギリシャが発祥っぽいですが、そういうものは、人間本来の生活には不要なはずです。
この記事では、これらを「精神的な文明」では不要なものとして書きましたが、過去記事を読み返してみますと、2011年の震災1週間後くらいに書きました、
・人類の大きな希望 : 女性「性」の文明
2011年03月19日
という記事には以下のように書かれています。
「人類の大きな希望 : 女性「性」の文明」より
「男性"性"」の社会とは要するに今です。
この2000年くらいの世の中の中心的なシステムの全部です。
政治とか法律とか宗教とか市場とか学校などの存在する現在のシステム全部です。
つまり、「女性"性"」のもとではそれらは存在し得ない。
と書いていて、さらに、
「人類の大きな希望 : 女性「性」の文明」より
「カオス」と「無制御」という2つの概念は、実は「女性性」です。
その反対の男性性は、「制御」と「秩序」が大好きで、たとえば、「階級」というのも秩序から生まれており、金銭的なものを含む区別と差別というのも、秩序から生まれています。
そういう意味ではこの 2000年くらいの地球は「秩序」から作られていたことがわかります。
なんとなくいい響きのある「秩序で構成された世界」。
しかし、実際は今の世の中はどうだろうかという話ではあるのです。
「カオス」と「無制御」というのは、それらをすべて取り去る概念です。
階級、差別、無意味な価値観、法律、組織といったようなものはすべて「男性性」である秩序や制御から生まれていて、反対の「カオス」と「無制御」からこそ、その反対のものが生まれるものだと私は思っています。
「法律などなくても平安に過ごせる」というのが本来の人類の姿のはずですが、それがどうしてできていないのか。あるいは、いつかはそうなれるのか。
としていて、人間本来の生活には、
・法律
・制度化された秩序
・階級
・学校(教師)
・制度化された治安
・貨幣
とか、他にもいろいろありますれれど、そういうものは本来は必要ないはずです。
さきほどの 2011年の記事は、
> いつかはそうなれるのか。
で終わっていますが、2015年の前回の記事では、
「そうなれる」
としていて、4年越しの回答となっています。
こう比べてみますと、「精神的な文明」というのは、「女性性の文明」と同じような意味ということもいえそうで(「女性の文明」ではないです)、これはつまり、今の時期は、
破壊という男性性のターンから創造という女性性のターンへの橋渡し
のうちの、今は前半戦にいることになりそうです。
まあ、そして、今までの In Deep というのは、非常に「男性に冷たいブログ」であったわけで、「男性不利」の記事を数多く書いてきました(今後も男性には冷たいままだと思いますが。いや、絶対に冷たくする ← そんな決意をしてどうする)。
その最たるものとして、「人類の男性の滅亡の可能性」をご紹介したこともありました。
・「確定的な未来」を想起する驚異的な2つの科学的資料から思うこれからの太陽と地球と女性(そして消えるかもしれない男性)
2014年04月10日
という記事では、科学的な側面と科学的ではない側面から、男性の「絶滅」について書いています。
▲ 男性のY染色体の消滅についての 2009年5月21日の英国テレグラフの記事。
また、「処女懐胎」のことについて、つまり「女性の単独妊娠」についても、
・米国女性200人のうちの1人は「処女懐胎」しているという調査結果に思う「進むY染色体の終末時計」
2013年12月19日
などでふれることがありました。
しかし、そもそもが「オスとメスの生殖によって増えていく」という構図は、生物学的にいえば、そして、仮に進化論というものがあるとすれば(そんなものはないですが、一応あると仮定しまして)おかしいのです。
たとえば、一般的な生物学の見地から見れば、無性生殖、つまり、メスの単独によって子孫がつくられていく方が有性生殖より効率的なんです。
「有性生殖と無性生殖の比較」というページの比較で、いかに無性生殖(メス単独で種を増やすことができる)の方が「効率」がいいかということがわかります。
有性生殖と無性生殖の比較
有性生殖 = 増殖の能率が悪い ×
・雄と雌が出会わないと子をつくれない。
・卵(卵細胞)や精子(精細胞)などの生殖細胞をつくる必要がある。
無性生殖 = 増殖の能率がよい ○
・1個体で子をつくれる。
・体の一部が分離して子ができるので、わざわざ生殖細胞をつくる必要がない。
そういう意味では「すべての生物はメスだけでよかった」し、その方が「繁殖の効率がいい」という点から、科学者たちは、
「なぜオスが進化の中で生き残ったのか」という謎
と直面し続けていた歴史があります。
合理的な考え方からだと、オスは不要なのです。
なぜ、男性と女性という「性別」が存在するのか。
男性・・・。
そして、女性・・・。
・チャイナ - Wikipedia
そして、つい最近、この2つの性が存在する合理的な理由がわかったのですね。
それが冒頭のネイチャーに掲載された論文で、研究はもイギリスのイースト・アングリア大学の研究者たちによって、実に 10年に渡っておこなわれたという執念の研究です。
一言でいえば、
オスは、遺伝子を強くする役割を持っている
のです。
そのメカニズムは、オスたちが、メスをめぐって競争する時に、性選択というものがおこなわれて、競争の中でおこなわれる性選択は、長期にわたってその集団の遺伝子を良質に強く保つのだそうです。
実験は、コクヌストモドキという虫・・・まあ、これは、いわゆる穀物なんかにつく「害虫」とされている下のような輪郭の虫ですが、それの 50世代などの長い期間の観察でおこなわれたものです。
e-c-c.co.jp
それで、最も大事なのは、
「メスをめぐって、オスが競い合うこと」
なんだそうです。
競争のない環境では、コクヌストモドキは 10世代目で「絶滅」したそうです。
これは人間にも当てはまるとすれば、女性をめぐって、男子たちが競うことは、遺伝子的に「人間という種が絶滅しないため」にはとても良いことになるようです。
まあしかし・・・最近は社会も変わりました。
「恋人はいますか?」への回答(20〜30代の独身男女)
・ITMedia ビジネス
上のは 2012年の調査ですが、20〜30代の独身男性は 80パーセント近くが「恋人がいない」となっています。
それで、少子化の現在、ただでさえ、若い人の実数が少ないことに加えて、
「恋人欲しくない」4割弱=未婚若者に調査−少子化白書
時事通信 2015.006.22
政府は22日午前の閣議で、2015年版の「少子化社会対策白書」を決定した。内閣府が20歳代と30歳代の男女を対象に実施した結婚に関する意識調査の結果を紹介。未婚で恋人がいない男女に恋人が欲しいかを尋ねたところ、「欲しい」は60.8%、「欲しくない」は37・6%だった。
欲しくない理由を複数回答で聞いたところ、男女全体で最も多かったのは「恋愛が面倒だから」46.2%で、「自分の趣味に力を入れたい」45.1%、「仕事や勉強に力を入れたい」32.9%と続いた。
> 全体で最も多かったのは「恋愛が面倒だから」46.2%
これでは、「女性をめぐって、男性が競争する」どころの話ではないようで、なかなかいろいろと複雑な世の中になっております。
私などの世代の若い時はみんなギラギラしていましたけどね。
20〜30年くらいで、恋愛環境は大きく変わってしまったようです。
私の父方のじいちゃんは、テキヤだったんですが、良家のお嬢さんを好きで好きで仕方なくなってしまい、その家の前に行き、土下座をして、
「好きで好きだたまらないんだ。オレの嫁になってくれ」
と頭を下げたところ、お嬢さん(後の父方のおばあちゃん)は、
「誰がヤクザもんなんかと一緒になるかい!」
と一蹴(こちらも強い)。
じい 「結婚してくれないのなら、ここで腹を切る!」
ばあ 「おお、上等だ。カタギになるか腹を切れば結婚しちゃるわ」
じい 「腹を切ったら、結婚してくれるんだな?」
ばあ 「やれるもんならやってみな」
じい 「よし、腹切るぞ」
子分 「親分、よしなさい」
じい 「止めるな!」
子分 「大体、腹切ったら死ぬんだから結婚もなんもないでしょ」
じい 「ありゃ?」
と、ここで我に返ったじいちゃんは、結局、カタギになって、結婚してもらったのだそうです。
まあ、これだけの大恋愛だったのが理由かどうか知らないですが、子どもも作りに作りまして、うちの父親は 8人だか9人きょうだいの末っ子ということになっています。
いろんな人に聞きましても、実は昔の男性の方が、やたらと大恋愛をしていた感じなんですよね。
だから、今の高齢者たちは、そもそも遺伝子が強いのだと思うのですよ。
もともとが強いので、これだけ薬漬けになったり、自立できなくなったりしても、長く「生きてはいる」ということになっているのだと思います。
それはともかく、「女性をめぐる競争が遺伝子を強くする」という説がすべてにおいて説明できるものならば、今の時代などで生まれてくる子どもたちは、あまり遺伝子が強くないということもあるのかもしれません。
あるいは、過去記事、
・「そのうち日本から子どもが消えちゃうんじゃないか」と思わせる日本をめぐる統計グラフと、それと同じ曲線を描くいくつかの統計
2015年01月30日
など、何度か現代の子どもたちの「妙な弱さ」について書いたことがありますが、そういうことも関係しているの「かも」しれません。
日本における児童生徒のぜんそく被患率の推移
・エコチル調査
しかし、こういう意味から見ますと、「革命」(3)という記事に書きました、エドゥアルド・スエンソンという幕末の日本に滞在したデンマークの軍人が、「日本には、悪習らしい悪習は2つしかない」として、その悪習として、
「すぐに酒に手をだすことと、あまりに女好きなことである」
としていましたが、これらも悪習ではなく、遺伝子的には良いことなのかもしれません。
こう考えると、
「強い人間を作る方法」
というのも、それほど難しいことではないことがわかります。
というわけで、そのネイチャーの論文を報道した記事をご紹介します。
「性」は種の絶滅を防ぐ役目を持つ
最近の科学誌ネイチャーに発表された重要な研究は、生殖のためのオス同士の競争が子孫の遺伝的健康を向上させること、そして、性選択が、有害な遺伝子変異を除去するためのフィルタとして作用することを述べている。
この作用により、その種の集団は長く繁栄し、長期的に絶滅を避けることができるのだ。
英国イースト・アングリア大学( UEA )のチームによれば、性選択は、オスが生殖のために競争した後にメスを獲得した時に動作するという。
「オス」と「メス」という2つの異なる雌雄の存在が、これらのプロセスを促進している。
UEA 生物学校のマット・ゲージ( Matt Gage )教授は、「これは、次の世代に自分の遺伝子を再現するための最終的な決定であり、広範で非常に強力な進化の力といえます」と言う。
性選択の役割を明らかにするために、チームは、実験室の制御された条件の下で 10年以上にわたり、コクヌストモドキを観察し続けた。
その結果、集団間の生存力の唯一の違いは、それぞれの成虫の生殖段階における性選択の強さのみだったことがわかったのだ。
90匹のオスが、わずか10匹のメスと生殖のために激しい競争をおこなった集団は、これらの条件の下での生殖の7年後、約 50世代を経て、チームは、これらの集団の根底にある遺伝子的な健康と健全を見出した。
強い性選択を経験した集団は、高い適応度を維持し、近親交配に直面しても、絶滅から復活した。
しかし、性選択が「弱い」か「まったくない」選択を経験した集団は、近親交配の後、より急速な健康の低下を示し、すべてが 10世代までに絶滅した。
これは、性選択が、健康と集団の持続性のために重要であることを示すものだ。
これまで、生物学者は、長い間、生殖の効率化の観点から進化の選択について「オスの存在の理由」について理解できないでいた。効率化の点で、オスという存在が、精子の提供という以上に何が必要かが不可解だとされていたのだ。
今回の研究の結果は「生物が子孫を長く残すための重要なメカニズム」として性別が存在すると理解することができ、なぜ、性が存在するのかという長年の謎の説明となる。
性選択は、種の絶滅を防ぐためのメカニズムなのだ。