長野県・高遠城址公園の桜
・4travel.jp
最もガン死亡率が低く長寿の県がどこか初めて知った日
前回の、
・認知症大国・日本の彼岸(1) …
2015年08月14日
で、本題とは関係ないながら、私の出身地である北海道の「うつ病の多さ」、「肺ガンの死亡者数の多さ」に驚いていましたが、その「肺ガンの死者数」の県別ランキングを見ている時に、ダントツで死亡者数が少ない県がありました。
長野県です。
・肺がん死亡率
そして、さらに他のガンを見てみますと、長野県はどれも驚くほど死亡者数が少ないのでした。
長野県のガン死亡率の順位の一部
胃ガン 45位
大腸ガン 43位
食堂ガン 43位
胆嚢ガン 44位
肝臓ガン 46位
肺ガン 47位
となっていまして、そして、ガン全体となりますと、
長野県のガン死亡率 47県中 47位
となりまして、何だか、やたらと健康そうな空気が漂います。
しかし、面白いのは、長野県は「ガンでの死亡者」は少ないながら、ガン患者そのものが少ないわけではないのです。ガン患者数の都道府県の比較では、47県中 6位と、ガン患者自体は、むしろ多いのです。
しかも、たとえば、脳梗塞での死亡者数は、47県中 4位となっていて、病気自体が少ないわけではないようなのです。
それなのに、その長野県民たちの「生きること」に関しての実態は・・・。
たとえば、平均寿命の上位3県。
・平均寿命:男性ランキング[2010年]
上は、男性ですが、女性も1位です。
長野県が、かなりダントツの平均寿命1位であることがわかります。
私は、長寿日本一っていうのは、漠然と、沖縄なんかが1番かと思っていましたが、現在の沖縄の平均寿命は 47県中 29位で、今や平均より低いのでした。
さらに、人口10万人あたりの死亡者数を比較した死亡率のランキング。
これは数値が低ければ低いほど、「亡くなる人が少ない」ということになります。
と、長野県は、死亡率がすべての県の中で最も低いです。
とにかく、「死ににくい長野県民」たち。
ダイ・ハード長野県民。
象が乗っても大丈夫(いや)。
そんなスーパー県民たちはどんな生活をしているのか。
「長野県ねえ」
とイメージしてみましたが、どうもわかりません。
そこで、他のランキングをいろいろと調べてみることにしました。
意外なランキングでは、長野県は、名字が「小林さん」の人の数が日本で1番多いそうで、長野県には 69,000人の「小林さん」がいるのだそうですが、これが関係しているのか(いや)。
では、たとえば、長野県の人たちは、どんなものをどのように食べているのか。
果たして、それは健康的なものなのか。
最近、私は、少し前の、
・オカ氏の異常な愛情 または私は如何にして心配するのをやめて恐怖を愛するようになったか
2015年08月08日
という記事や、あるいは、他にもいくつかの記事の中で、
「健康というものは、食事や健康法だけで作られるものではないかも」
という考えが出てきていまして、つまり、「楽しい心」や「感謝する心」というものがなければ、真の健康には至らない、つまり、「健康は食事から作られるだけではなく、心の持ち方が最も重要」だと思っている部分があるのですけれど、そういう観点からも、この長寿の人たちの食事は気になります。
長寿の国の食べ方は
長野県民の食生活を調べていくうちに驚いたというのか、奇妙に思えたのは、長野県は、体に悪いと言われることの多い「あるモノ」の摂取量がダントツで多いのでありました。
それは・・・。
・砂糖消費量[2008年]
砂糖消費量
1位 長野県 9,772グラム
2位 長崎県 8,999グラム
3位 宮崎県 8,953グラム
−
45位 福井県 5,109グラム
46位 埼玉県 5,030グラム
47位 東京都 4,963グラム
そうなんですね。
砂糖なんです。
この統計は、1年間の世帯当たりの砂糖の購入量を県別に比較したものですけれど、長野県の砂糖の消費量は群を抜いています。
最も砂糖の消費量が少ないのが東京というのは意外ですが、長野は、東京の倍ほどの砂糖を消費しています。
・長野県の人は砂糖をたくさん消費している
・それで、「ガンの死亡者がとても少なくて、とても長寿」
ということになるようです。
うーん・・・。
砂糖に関しては、このブログでも、
・米国カリフォルニア大学のチームが過去の膨大な科学論文の研究の結果、「砂糖は毒である」という結論をまとめる…
2015年02月12日
という記事などで、砂糖の有害性が確認されたことを記したことがあります。
特に、心臓系や生活習慣病などの慢性疾患との関連が示されました。
しかし、どうやら、大量に砂糖を摂取していると考えるしかない長野県の人々は、少なくとも、ガンでの死亡者は、日本で最も少ない。
じゃあ、長野の人は「塩」はどうか。
塩も、「とりすぎは健康に良くない」とする説はたくさんあります。
長寿の国の人びとは、塩をあまりとっていないのか、あるいは、大量に塩をとっているのか。
下は1年間の食塩の消費量の県別の偏差をあらわしたものです。
・食塩消費量
1位から3位までこそ東北ですが、長野県は、塩の消費量が第4位であり、東北を除けば、ダントツで食塩を消費していることがわかります。
どうも、これを見ているだけでは、
日本で最も長寿で、ガン死亡者の少ない県は「砂糖を大量摂取して塩を大量摂取」している
という生活をしていることになってしまいます。
ちなみに、「味噌」も、長野県が消費ナンバー1です。
・illpop.com1年間の味噌の消費量ランキング
1位 長野県 11,901グラム
2位 秋田県 10,463グラム
3位 青森県 9,800グラム
−
45位 兵庫県 4,558グラム
46位 大阪府 4,382グラム
47位 和歌山県 3,258グラム
長野県は、和歌山県の3倍以上、味噌を消費しています。
同じ日本で、この差は結構すごいですね。
長野県は、醤油の消費量も8位で、塩、味噌、醤油と合わせれば、相当な塩分をとっているといえそうです。
ただ、同じ塩分系調味料でも、
・ソース消費量(46位)
・ケチャップ消費量(45位)
と、これらのものはあまり摂取していないようですが、塩や味噌に比べて、日常的なものでもないですしね。たとえば、うちなどでは、ソースもケチャップも、月に1度使うかどうかといった感じです。
ところで、最近、牛乳なんかも体に悪いって言われることもありますよね。
私もややそう思っているところがあります。
そうか、きっと、長野県の人は牛乳をあんまり飲まないんだ。
と、見てみますと・・・。
長野県は第3位。
どうやら「牛乳もがぶ飲み」であります。
最近は「油」のことも、よく言われますよね。
腸が体の健康を考える上でとても大切だと。
特にサラダオイルなどの食用油は過剰にとらない方がいいと。
そうか、きっと、長野県の人は油をあまりとらないんだ。
と、ここでも長野県は、1位ではないものの、第3位であります。
油もガブガブ飲んでいるようです(飲んじゃいないだろ)。
ちなみに、食用油の使用量が少ない県は、
45位 千葉県 6,906グラム
46位 香川県 6,802グラム
47位 東京都 6,639グラム
となっていて、日本では東京が最も食用油の消費が少ないのでありました。
東京というところは、砂糖もあまり使わない、油もあまり使わない・・・というより、多分、東京は一人暮らしなども多いですから、自炊自体の率が比較的少なく、東京は食事自体が外食や中食が多いことが理由かもしれません。
それにしても、塩と砂糖、味噌、牛乳、食用油を大量に摂取する長野県の人たちが長寿で、ガン死亡率がとても少ないという事実が浮き彫りになります。
ただ、他の項目を見ますと、たとえば、下のふたつの項目は、かろうじて、いわゆる一般的な健康論に通じる部分はあります。
まず、野菜の摂取量。
・野菜摂取量ランキング
野菜摂取量(男性)ランキング[2010年]
1位 長野県 379グラム
2位 新潟県 360グラム
3位 山形県 352グラム
--
47位 徳島県 245グラム
上は男性のものですが、女性の野菜摂取量も長野県が第1位です。
そして、長野県の人は肉をあまり食べません。
肉全体の消費量も 44位と、肉の消費量は全体として低いですが、特に牛肉となりますと、圧倒的に消費量が低いです。
この「牛肉消費量」は上位3県も意外というのか、興味深いです。
牛肉消費量ランキング[2013年]
1位 奈良県 10,617グラム
2位 京都府 10,415グラム
3位 大阪府 10,380グラム
−
45位 群馬県 6,628グラム
46位 長野県 3,385グラム
47位 新潟県 2,958グラム
46位の長野県は 45位の群馬県の半分となっていて、長野県と新潟県の2つの県の圧倒的な牛肉消費量の少なさがわかります。
牛肉消費量の上位が、奈良、京都、と続くのは意外な感じですが、奈良県は 47位の新潟県の3倍以上も牛肉を食べているようです。
奈良県は、さきほどの「牛乳消費量」でも全国2位でしたので、「牛に関係するもの」と関係が深いのかもしれません。
この奈良県のランキングもなかなか興味深くて、奈良は、国宝や史跡、重要文化財の数が1位であるということは理解できるのですが、他に、奈良の1位は、
奈良県のランキング上位のいくつか
・コーヒー消費量(1位)
・ピアノ普及率(1位)
・小学生長時間テレビ視聴率(1位)
・パソコン普及率(1位)
・中学生通塾率(1位)
・1世帯あたりの貯蓄額(1位)
などとなっていて、うーん・・・奈良県もイメージと何だか違うなあ。
まあしかし、奈良県の探究はまた今度にしておいて、長野県に戻ります。
まず、長寿県である長野県は「小林」という名字が日本で1番多い(まあ、それはもういい)。
そして、食べ物では、
・砂糖消費量ナンバー1
・塩、食用油、牛乳もガブ飲み
という、一見すると、健康と相反するような食生活をしている一方で、
・野菜摂取量ナンバー1
・肉の消費量がきわめて低い
ということがあることがわかります。
ちなみに、お酒に関しては、長野県のアルコール消費量は 20位と、やや多いといった程度ですが、日本酒となると、全国5位の消費量で、お酒も決して消費量が少ないとはいえないようです。
巷のさまざまな健康論に沿うのは、野菜の摂取量が多いことくらいなのですが、しかし、その野菜の摂取量の県ごとの差というのは、それほど大きな差ではなく、それと比べますと、砂糖や塩、油、牛乳の消費量の差はかなりのもので、野菜だけではどうも理由になりづらい気がするのです。
そして、その後、私は意地になって、長野県のさまざまなランキングを見ていて「ある方向」が見えてきたのでした。
そして、やはり思ったのは、食べ物は健康に関わる「一部」でしかないと。
人間の健康を支えているのは「心」だと。
そして、おそらく長野県の人たちは自然にそれを達成していると。
他人のために生きて、自らも日々を楽しむ人びと
長野県松本市の河童橋
・河童橋
長野県のランキングの1位の項目で最初に目についたのは、下のいくつかの項目でした。
他にも、たとえば、青年海外協力隊の隊員数でも長野県は第3位で、他のいくつかも見ていますと、どうやら長野県の人たちは、
他人のために何かをすることが好きで、また、地域行事に積極的に参加する
ことがわかります。
そういうような風土というか、雰囲気になりますと、必然的に、殺人などの犯罪は少ないのではないだろうかと見てみますと、
となっていて、長野は全国で最も殺人事件が少ないようです。
長野の殺人事件の数は、1位の大阪の3分の1程度です。
ちなみに、大阪は、「重要犯罪認知件数」、「「性犯罪認知件数」、「刑法犯認知件数」などがすべて1位ですが、それについての論評は避けます。
そして、長野県の人たちが「自然に沿った生活習慣をしている傾向」が伺えるのが、
です。
中学生でこれなら、それ以降もある程度は、早く眠り、早くに起きるという生活が持続している大人も多いような気がします。
この「規則正しい生活」は、健康状態と多少関係ありそうですね。
他にも、長野の若者たちには下のようなデータがあります。
そしてですね、以下のそれぞれのランキングが、長野の人びとが、いかに「仕事以外の楽しみを享受しているか」を表しているような気がするのです。
「博物館の軒数」、「美術館の軒数」、「映画館の軒数」のランキングです。
埼玉・・・ orz...
長野県は、博物館の数が大阪府の 10倍以上、美術館の数が埼玉県の 25倍以上、映画館は東京都と並ぶ率の軒数を誇っている・・・。
もしかすると、長野県人というのは、超「道楽人」の集団なのではないだろうか・・・。
長野県民が楽しみを追求している人びとであることは、次のランキングにも示されています。
楽器の購入額って、県によってこんなに違うんですね。
1位と 47位の差は、10倍で済まないですよ。
また、長野の人は植物も好きなようです。
子どもへの愛はお金で示せるものではないかもしれないけれど
そして、私はひとつのデータを見つけてしまったのです。
私は以前、
・「革命」(3) - 革命的行動の最上位は「子どもたちへの無条件の愛」を獲得した社会に戻すこと
2015年07月12日
という記事で、自分の住む地を理想的な社会にするために真っ先におこなうべきことで、しかも、確実にそれは良い未来に影響することとして、
「子どもたちへの無条件で絶対的な愛を、大人が持つこと」
だというようなことを書いたことがありました。
この長野県のランキングのデータは、お金の絡む話ですので、絶対的な愛ということとは違うとは思いますが、「その一端」を表しているのではないでしょうか。
子どもへの仕送り額[2011年]
1位 長野県 183,984円
2位 山口県 162,898円
3位 徳島県 162,595円
--
45位 兵庫県 28,606円
46位 大阪府 22,758円
47位 京都府 22,758円
上位3県と 45位より下の3県の差!
その中でも長野県はダントツで仕送り額が多く、社会構造的なものもあるににしても、1ヶ月 18万円も子どもに仕送りをしたら、親の方の生活は大丈夫なのか、と心配するほどの額です。
いや、これは平均だから、もっと多く送っている人がいるということになりそうです。
これらの金額の多い少ないは、良い悪いということと関係することではないですが、少なくとも、長野の人たちの多くは、かなりの愛情を子どもたちに注いでいるということは言えそうな気がします。
「そうか、そうか、そういうことか」
と、私はこのあたりで頷きました。
健康や長寿を導くのは、食べ物だけを見ていてもわからない。
長野県がナンバー1か上位である数々、
・映画館の数
・美術館の数
・博物館の数
・楽器購入額
・園芸材料購入量
・ボランティア参加率
・早寝早起き
・子どもの行事参加率
が示すことは、長野県の人たちの生活は、その構造が、
・人生を楽しむ
・他人のことを考え、そのために何かする
・規則正しい生活をする
ことに自然となっているのだと思います。
そして、
・家族(子ども)を徹底的に愛して生活する
という、簡単なようだけれど、今の世の中では少し希薄になっているような気もしないでもない部分を大切にする生き方。
おそらく、そのように生きている長野の人びとは、他と比べて、ストレスの少ない生活をしていると思います。
食べ物にしても、むしろ「自由に楽しく食べる」ということが、塩、砂糖、食用油などの調味料過多に向かっている理由なのかもしれません。
あとは、長野県は、脳梗塞の多さをクリアすれば、「スーバー県民」になれるかもしれないです。
ちなみに、他に、長野県が1位だったのは、
・地震の回数(1位)
・別荘数(1位)
・日帰り温泉の数(1位)
・りんご消費量(1位)
・おそば屋さんの店舗数(1位)
などがあります。
地震は、2014年の1年間で、震度1以上の地震が 67,876回もあったそうで、2014年に関しては、下のようにダントツです。
日本で1番地震が多いということは、少なくとも、人が住んでいる場所では、「世界で1番地震が多い場所」が長野県ということもいえます。
これはすごいことですよ。
年間に6万回以上の有感地震があるような、地震のない国の人からみれば想像もできない場所で、精神的に健やかに生活している。
そして、長野県が最も「低い」か、下の方だったものは以下のものがあります。
・生活保護受給者(45位)
・DV保護命令済件数(45位)
・年間雨日数(47位)
・書道教室数(47位)
・キャンディー消費量(46位)
長野県って、日本で1番、雨の日が少ないんですね。
ところで、最近、東洋経済で「「楽観的」というだけで、10年も寿命が伸びる」というタイトルの、オックスフォード大学の教授の研究についての一連の記事を読んだのですが、「心」が人の健康状態や「命」にまで与える影響は、実に計り知れないものであることがわかります。
また、自分の体の状態に対して、常に肯定的でいることがどれだけ大事かも理解できます。
今回の記事の内容とは関係ないですが、そういう意味では、私は、今の医学の「ガンの告知」というものは基本的にやめるべきだと思います。ガンの告知だけで死んでしまう人がいる、という例があることを知るべきです。
それはともかく、今まで長野県に注目したことがなかったですが、いろいろと勉強になる面がある場所なのかもしれないということを今回初めて知りました。