2015年09月16日



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「シオン」と名づけられたアメリカの国立公園でシュミータの翌日に起きた洪水の悲劇。そして「血の月」とシュミータを信じるモルモン教の「準備者」たち



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▲ 2015年09月15日の米国ウォールストリート・ジャーナルより。






 


洪水の悲劇の光景の中の「違和感」

9月14日に、アメリカのユタ州で、豪雨による洪水と鉄砲水が発生したことにより 15人以上の方が亡くなるという出来事がありました。

冒頭の写真は、その報道記事のひとつで、えぐられた地面などから鉄砲水の規模の大きさなど伺い知ることができますが、その光景とは別に、私は、この被害を受けたと思われる女性たちの「格好と髪型」が気になったのです。

mormons-flds-01.jpg


服装、髪型、どちらもどうにも現代のアメリカ人女性のようには見えません。

中世のような服と、そして、やはり中世のような髪型・・・。これが一人だけなら、そういう趣味の人もいるのだろうという程度のことで住むのかもしれないですが、女性全員が同じような格好をしている。

下はニュース報道の映像からで、住民たちが救出されている光景ですが、やはり、女性全員が基本的に同じような格好と髪型をしています。


flds-05.jpg
FOX 13 NOW



「なんだろう、この違和感は・・・」


と思い、どういう状況かを調べてみることにしました。

というのも、この出来事が起きたのが、最近書いていました「シュミータ(ユダヤの安息年)」の最終日の「翌日」だったからということもあります。

[参考記事]シュミータとは何か?:ユダヤ教のラビ、ジョナサン・カーンが語る「市場の崩壊、国家の盛衰、戦争、高い塔、9/11…etc」との関係についての全語録。そして「2015年9月13日の意味」


そのような時に起きた自然災害の光景が「どうも奇妙だ」ということが気になったのでした。
上の女性たちの格好は、日常の感覚から逸脱している感があります。

まず、この洪水が起きた場所を報道から見ますと、下はロイターの記事です。

米ユタ州で鉄砲水、15人死亡 車ごと押し流される
ロイター 2015.09.16

米ユタ州で、大雨による鉄砲水が発生し、アリゾナ州との州境近くで12人が死亡、州境よりやや北に位置するザイオン国立公園でも3人が死亡した。

ユタ州のヒルデールでは数百人のボランティアが行方不明者1人の捜索に加わっているという。鉄砲水によって車ごと押し流されたとみられる。

また、ザイオン国立公園では4人が行方不明になっている。

> ザイオン国立公園

とあります。

これは、英語では

> Zion National Park

となり、 Zion …… つまり「シオン」です。

この「シオン」という言葉は、私たち日本人には非常にイメージが湧きにくく、Wikipedia には、

シオンは、イスラエルのエルサレム地方の歴史的地名。日本語では英語にならった「ザイオン」との表記も見られる。

とありますが、「地名」というニュアンスには、何だか違和感があります。

むしろ、この「シオン」が語源となった「シオニズム」という言葉の語感から、この言葉を考える方が感覚的にはいいのかもしれません。

シオニズム - Wikipedia

シオニズムは、イスラエルの地(パレスチナ)に故郷を再建しよう、あるいはユダヤ教、ユダヤ・イディッシュ・イスラエル文化の復興運動(ルネサンス)を興そうとするユダヤ人の近代的運動。

シオンとは、こういう言葉や概念の源となっているということのようです。

いずれにしても、わかりにくいことはわかりにくいですが、「イスラエルやユダヤ人と深く関係している言葉」と理解でいいように思います。

今回の洪水の発生地となったザイオン国立公園は、「シオン」の名のつくアメリカの場所であったことがわかります。

ザイオン国立公園の場所
zion-map.gif
・Google Map


その「シオンの地」で起きた悲劇。

しかし、それはそれとしても、上の女性たちの服装との関係は?

ザイオン国立公園というところがどのような歴史を持っているのかは Wikipedia に書かれてありました。

ザイオン国立公園 - Wikipedia

1858年にモルモン教徒によって発見され、1860年代初めにはモルモン教徒が定住した。

あー、モルモン教徒が定住している場所。

とはいえ、モルモン教(正式名「末日聖徒イエス・キリスト教会」)の教徒は、日本を含めた各国にたくさんいますし、その人たちが上の女性たちのような特別な格好で生活しているということは聞いたことがありません。


「うーん・・・」


これだけでは、やはりよくわかりませんので、いろいろと、モルモン教関係で検索していましたら、次の写真が見つかりました。

flds-03.jpg
KUAIKE.CO


服装も髪型もこの人たちと似た感じです。

キャプションを読んでみますと、

> Women Of The FLDS Church ( FLDS の教会の女性たち)

とあります。

「 FLDS ・・・」

聞いたこともありません。

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モルモン教原理主義者たちの宗教的思想

今度は FLDS で検索しますと、ナショナルジオグラフィック日本語版に記事があったのでした。
抜粋いたします。


FLDS 一夫多妻制を守るモルモン教分派の原理主義教団
ナショナルジオグラフィック 2010年2月号

ここコロラドシティーと、州境をはさんで隣り合ったユタ州ヒルデールは、教団FLDS(The Fundamentalist Church of Jesus Christ of Latter-Day Saints)の発祥の地だ。FLDSは、モルモン教の分派で、原理主義を掲げて今も一夫多妻の慣習を守っている。

この地域に、信徒が入植したのは1920年代から30年代。米国社会からの孤立を避けようとしたモルモン教会が、一夫多妻の伝統を捨てる方針を固めたため、一部の信徒が教会を離れ、この地に入植した。

教会は1935年、一夫多妻制を廃止しなければ破門すると、彼らに最終通告を突きつけた。だが、ほぼ全員が意志を貫き、独自の教団を発足させた。



ということで、モルモン教の原理主義団体ということのようですが、英語版でも日本語版でも、モルモン教の Wikipedia の項目には、FLDS という単語はひとつも出ていないですので、異端にも近いようなものなのかもしれません。

上の記事の中に FLDS の正式名が英語で記載されていますが、日本語にしますと、大体ですが、

末日聖徒イエス・キリスト教会原理主義

というような感じになるかと思われます。

まあ、異端っぽいとはいえ、モルモン教徒ではある彼ら彼女らですが、しかし、そもそも私は、「モルモン教ってどんなものだっけ?」というような宗教オンチでもあります。

モルモン教のことは全然知りませんので、末日聖徒イエス・キリスト教会 - Wikipedia を見てみますと、モルモン教は、下のような宗教体系となっているようです。

・三位一体説を否認
・キリストおよび死者の復活を信じる
・キリストの再臨を信じる
・千年王国を信じる


千年王国とは、

終末の日が近づき、神が直接地上を支配する千年王国(至福千年期)が間近になったと説く。千年王国に入るための条件である「悔い改め」を強調する。

また、至福の1000年間の終わりには、サタンとの最終戦争を経て最後の審判が待っているとされる。
Wikipedia

というものだそう。

モルモン教の「聖典」は、

・モルモン書
・聖書


などとなっていて、宗教的「戒律」に関しては、

・モーセの十戒
・智恵の言葉


ということになっています。

神の再臨を含め、多くの宗教と共通項があるもののようです。

ふと、

「終末の日を信じているのなら、モルモン教徒にもプレッパーが多そうだな」

と思っていましたら、下のような記事を見つけました。

つい数日前のものです。

mormons-preppers.gif

▲ 2015年09月12日の米国 THP より。


プレッパーというのは、比較的最近の記事、

世界の終わりに向かって本当に必要なもの:プレッパーズの方法だけでは持続的なサバイバルは成し得ないという確信
 2015年08月27日

中東とイスラエルの「赤い朝」の光景も含めて、何となく漂う「終末感」を感じて過ごす安息年の9月11日
 2015年09月11日

などでご紹介したことがありますが、プレッパーとは、「終末の日に向けての物質的な備蓄やサバイバル訓練などを行っている人たち」のことで、特にアメリカには数百万人の武装したプレッパーたちがいると考えられています。

上の記事は、モルモン教徒たちの間にもプレッパーがいる・・・というより、「9月に終末が来ると確信している人ずモルモン教徒たちの間にものすごく多い」こことが書かれています。

そのように「終末」を強く意識するコミュニティの一派が、安息年の最終日の翌日に自然災害で甚大な被害を受けるというのは、単に皮肉的なことなのか、それとも「それを意識している人に終末は訪れる」というものなのか・・・。

実際、「想いと現実化」の話にまで拡大すると、「この世が終わる」ことも想念の世界次第で達成しちゃう部分もあるかもしれないですしね。

最近は、そのことをいろいろと考えることもあるのですが、いずれにしても、テトラッド(4回続く皆既月食)の4回目(9月28日)まで、あと2週間ほどとなり、毎日起きるいろいろなこととの関連を思います。

あんまり考えすて、本当に終わっちゃうのもアレですので、曖昧に、冬くらいまでにどうなっているのかなあと漠然と夢想する程度にしておくのがいいのかもしれません。

では、上の記事をご紹介しておきたいと思います。

ちなみに、記事の中に「ユタ州の人々は」という表現がありますが、ユタ州というのは独特な州のようで、ユタ州とモルモン教についてというサイトによりますと、

ユタ州は人口223万人のうち約70%がモルモン教徒である。2000年の国勢調査では、ユタ州人口の68%がモルモン教徒であると答えていた。

ということで、この比率ですと、議員や政府職員、教師などにも多いはずで、そういう意味では、「州そのものがモルモン教徒によって構成されている」といっても過言ではないような州なのかもしれません。

そういう意味では、ユタ州は「アルマゲドン感が強い州」といえるのかもしれないです。
非常用グッズもユタ州では、爆発的に売り上げを伸ばしているようです。



Why Some Mormons Are Preparing For Doomsday
THP 2015.09.12


一部のモルモン教徒が終末の日に向けての準備をする理由


多数のユタ州の住民たちは、聖書の預言やヘブライ暦、不安定な経済や世界政治、そして、天文学的な出来事などがミックスされた概念の中で … 彼らによれば、それは今月(2015年9月)の終わりころまでに … 終末的な出来事が差し迫っていることを確信している。

彼らは「プレッパーズ( preppers )」と呼ばれ、食糧の備蓄、懐中電灯、毛布、テントなどを用意し、中には、家自体を改造している人たちもいる。

主にフリーズドライにした食品を販売している会社「アメリカン・フォークス・スライヴ・ライフ社」によれば、同社のフリーズドライ食品の売り上げは、過去と比べて 500%以上アップしたと、顧客サービス担当者は言う。

「何かが差し迫っているような切迫感がありますね。多くの人々が、この9月に、たとえば、財政破綻のような、起こる何かについて述べるのです」

緊急時用品を売る「エマージェンシー・エッセンシャル社」の販売担当者は、驚異的な売り上げアップに「壮絶な忙しさです」と語る。

同社が販売する 72時間緊急キットは、「お店の商品棚に並ぶことは考え羅ないですね。どれだけ出荷しても、すぐに売り切れてしまって、棚に並ぶ時間がないほどです」というほどの売れ行きだ。

この販売担当者は、「お客様の多くは、この9月にそれが起きると言いますね。血の月(皆既月食)に伴って、ドルの崩壊などが起きると信じているようです」と述べる。

歴史的に見て、7年ごとに大きな経済破綻のサイクルがあると彼らは信じている。

この7年のサイクルは、ヘブライ語の shmitah (シュミータ)という安息年のサイクルの概念に則っている。確かに、たとえば、2001年や 2008年などには、壊滅的な株式市場の暴落と景気後退が訪れた。

今年は 2008年の景気後退(リーマンショック)から7年目で、この夏は、中国の自国通貨切り下げをきっかけに、株価は激しく変動した。

ユタ州の多くの人たちは、この7年のサイクルを信じ、ユダヤの新年祭となる 9月13日から、アメリカで大きな金融危機が発生し − 聖書に書かれてあるような「邪悪」な「苦難の日」が起ち上がる − と確信している。

さらに、「血の月」の出る 9月28日に、ユタ州の近くで大地震が発生し、そこに国連軍が侵入して混乱が起きると考える人たちもいる。

これらの憶測は、作家ジュリー・ロウ( Julie Rowe )氏の著作『偉大な明日:ベールを超えた私の旅( A Greater Tomorrow: My Journey Beyond the Veil )』と、『時は今( The Time Is Now )』の内容に由来している。


『偉大な明日』
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ロウ氏は3人の子を持つモルモン教徒で、これらの著作は、彼女が 2004年に経験した「臨死体験」の内容を元に、2014年に出版された。

臨死体験の際に、ロウ氏は死後の世界を訪問し、そこで地球の過去と未来を見たとしていて、その内容を本にまとめたのだ。ユタ州の人々の未来の推測はこの本の内容に沿うものが多いようだ。

しかし、ロウ氏は、記す出来事に特定の日をつけてはいない。

彼女は、フォクス・ニュース・ラジオのインタビューで「光の都市」について述べている。それは、人々が山の中の白いテントで、マンナ(聖書で神から与えられたとする食物)を食べて生きている光景だという。

彼女は、「イスラエルから離陸したリビアの飛行機から爆撃を受ける」光景を見た。

そして彼女は、モルモン教の聖典「モルモン書」に出てくるガディアントン・ラバーズ( Gadianton robbers )という、古代アメリカの腐敗した秘密犯罪組織のリーダーが、「すでにここにいる」と言った言葉を聞いた。

ロウ氏がその内容を明らかにしたのは、「人々に目覚めてほしいから」だと、インタビューで答えている。

この数年、ロウ氏は、彼女の話を聴きたがっているアメリカ中のモルモン教徒の前で、彼女が見たヴィジョンを語って回り、その意識を共有させてきた。

彼女の2冊の本は、2万部以上売れている。

その彼女の発言内容について、異例ともいえることだが、モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)の当局者は、教会の教育システムの教師たちにメモを送った。

その内容は、

「シスター・ロウは、モルモン教の熱心な信者ですが、彼女の本の内容は、教会によって承認されたものではありません。生徒たちに教える際に、彼女の本を源として使用するべきではありません。シスター・ロウの経験は、必ずしも教会の教義を反映していないか、あるいは、教義を歪める可能性があります」

というものだった。

モルモン教使徒ボイド・K・パッカー氏は、2011年のモルモン教の総会で「終末の日は近くではない」と語っている。

「若い信者の人々は長く生きることを考えて下さい。結婚して家族を持ち、あなたの子どもや孫、そして、ひ孫と暮らす幸せな未来を考えて下さい。そして、あなたたちは、未来を前向きに見て行動する。それができるのです。終わりの日は近くになどは来ていないのです」