DARPAの資金提供で開発された史上最強の輸送ロボ「ビッグドッグ」
・BigDog
新約聖書「マタイによる福音書」 24章 6-8節
戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞くだろうが、慌てないように気をつけなさい。そういうことは起こるに決まっているが、まだ世の終わりではない。
民は民に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に飢饉や地震が起こる。
しかし、これらはすべて産みの苦しみの始まりである。
混乱の雰囲気が漂う中、淡々とプロジェクトを進める DARPA
アメリカ軍が使用する装置やシステムなどの技術開発と研究を行うアメリカ国防総省の機関に「アメリカ国防高等研究計画局( DARPA / ダーパ)」というものがあります。
ダーパは、「インターネットの原型」や「全地球測位システム( GPS )」を開発した部署でもある優秀な機関でもあります。
このダーパの研究は、いつでも興味深いものが多く、In Deep でも過去何度も取りあげたことがあります。
・アメリカ国防総省が『時間を止める装置』を開発
2012年01月06日
という記事では、ダーパが資金提供をしている研究機関が、原理はよくわからないものでしたが、『タイム・クローク』という「時間を隠す装置」の開発を続けていることをご紹介しました。
また、
・アメリカが「国家機密扱いの人口衛星」を搭載したロケット「アトラス5」を宇宙に向けて発射
2014年05月29日
という記事では X-37 という「飛ばす目的が一切発表されないし、軌道上で何をおこなっているかも公表されていないスペースブレーン」のことを取りあげましたが、これを主導しているのもダーパです。
下が X-37 打ち上げ前の写真ですが、搭乗員の格好は、ほとんど宇宙服で、それなりに高所の宇宙空間まで行くものかもしれないことを伺わせます。
・space.com
それと、
・エドワード・スノーデン氏かく語りき : 「地球の地下マントルには現生人類よりさらに知的な生命が存在している」
2013年07月10日
という記事では、エドワード・スノーデンさんが、以下のような証言をしたことにふれていて、ここにダーパの名前が出てきます。
「弾道ミサイル追跡システムと深海のソナーは国家機密として保持されているために、科学者たちはそのデータにアクセスすることはできません。しかし、 DARPA (アメリカ国防高等研究計画局)の関係者たちのほとんどは、地球のマントルに、ホモ・サピエンス(現生人類)よりもさらに知的な人類種が存在していることを確信しています」
こういう系の話にまで出て来るダーパですが、今回は、最近の記事ではないですが、「アメリカ国防高等研究計画局が取り組んでいる9つの奇妙なプロジェクト」というタイトルの米国ビジネス・インサイダーの記事をご紹介したいと思います。
ブレードランナーに出てきたような「撮影時に写っていないものを、撮影後に見られるカメラ」だとか、「植物を食べて燃料にして走り続ける偵察車両」とか、相変わらず、いろいろなものを研究、あるいは実際に作っています。
この記事を今ご紹介しようと思ったの理由としては、冒頭のマタイによる福音書にある、
> 戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞くだろうが、慌てないように気をつけなさい。
という言葉を思い出したこともあります。
最近は、どこもかしこも、かつてないほど戦争や衝突の空気が増しているような感じもありますが、その中で、この記事をご紹介しようと思いました。
軍事や戦略が好きな人には、単純に興味深い記事だとも思います。
いくつかの項目では、専門用語や背景などに対して、かなり個人的な考えに及ぶ「訳者注」が入っていますが、ご了承下さい。
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The 9 weirdest projects DARPA is working on
Business Insider 2015.04.09
アメリカ国防高等研究計画局( DARPA )が取り組んでいる9つの奇妙なプロジェクト
アメリカ国防高等研究計画局( DARPA )は、いくつかの非常に異様なプロジェクトに取り組んでいる。
その定められた任務目標のひとつは、アメリカの敵に対して「技術的サプライズ」を引き起こすことにある。敵の戦闘員たちが、戦場で「自分たちが何と対峙しているのかわからない」ような状態を作り出したいと思っているのだ。
これら9つの DARPA のプロジェクトのうちのいくつかは、現実世界の中でも役に立つ可能性がある。
1. 90トンの貨物を乗せて移動できる飛行船
DARPA は、新しいタイプの飛行船を建設するプロジェクトを進めていた。しかし、技術上の問題により 2006年に計画は中止されていたが、2013年にこのプロジェクトが再始動した。
プロジェクトの目標は、200万ポンド(約 90トン)の貨物を搭載した状態で、5日間で世界を半周する性能を持たせることだ。
このことにより、戦場で迅速にユニットを展開、あるいは撤退できるようになる。
2. 車そのものが自身で運転する超高速軽量車両
・TechRepublic
このグランドX車両( Ground X-Vehicle )は、四輪車として作られたクモのように見える形状をしている。
兵士たちがこの車を運転することもできるし、方向と行き先を車のコンピュータに入れるだけでも、その地に到着する。
手動でもオートでも、この車が攻撃を受けた際には、その対処を自身で考え、攻撃を避けたり、必要に応じて衝撃を吸収する。
3. 空中でのドローンの着陸と燃料補給を可能にする作業飛行機
攻撃用や偵察用のドローン(無人機)が、地上に降りることなく、燃料の補給をおこなうことのできる「飛行するプラットフォーム」は、アメリカの無人機プログラムが敵の上空をうまく飛び続けることを支持するだろう。
このプロジェクトは、ドローンが「隊列を組む」ことを実現するプロジェクトと組み合わせて進められている。
うまくいけば、これらのドローン作戦は、アメリカ軍が行った最後の空中キャリアでの実践よりも、うまく働く可能性がある。
4. 情報を収集し、植物を食べて燃料とするロボット
(イメージ)
・ROBOTS THAT EAT BUGS AND PLANTS FOR POWER
DARPA の「無人地上車両プログラム」は、燃料補給を必要とせずに、時間無制限で偵察をおこなうことのできる UGV (無人走行機)を求めている。
そのようなものをエネルギー自律型ロボット戦略と呼ぶが、 DARPA では、無人機が自ら植物を食べ、それをエネルギーに変換することによって走行を続けるマシンの開発をおこなっている。
また、このような無人機は、必要に応じて、敵の燃料を盗むことができるようになっているかもしれない。
5. 遠隔コントロールのできるスパイ昆虫(生きた昆虫)
DARPA は、すでに、生きた昆虫に制御装置を移植することに成功している。これは、昆虫がサナギの時に装置を移植し、その昆虫が成虫になった時には、コントロール可能となっている。
基本的に、遠隔コントロールする昆虫は、その背中に搭載された偵察用センサーに電力を供給する。
DARPA は、昆虫の動きによって発電するシステムを作る技術を持っており、今後は、スパイ用のセンサー、通信方法と昆虫発電機のテクノロジーを融合させることで、「昆虫スパイ」が誕生する。
昆虫たちが収集した情報は、オペレータによって収集され、解析されるだろう。
6. あらゆるアングルから見ることのできるカメラ
DARPAは、このようなカメラを作る方法を確立しているわけではないが、DARPA は、あらゆる角度からエリアを見ることができるセンサーを作成するために、プレノプティック関数を使用する方法を探している。
(訳者注) プレノプティックという初めて聞く単語を調べてみると、「ライトフィールド」という言葉と同義のようなのですが、下のようなもののようです。不思議なカメラが相次いで登場より
ライトフィールドとは “ある時、ある場所に存在する光の状態をすべて記録した情報” とでも言うべき概念で、専用のライトフィールド・センサーで記録します。
ライトフィールド・センサーの前には無数の小さなレンズが並んでおり、その一つ一つが、その場所に在る光の波長、強さ、方向に関する情報をセンサーに送ります。
というもので、「一種のホログラム的な記録」をするカメラということになりそうで、下のような光の情報を完全に記憶するということのようです。
このようなものは、すでに現実に存在しているようです。もちろん、完全ではないようですが、仮に「完全なもの」ができたとすると、「撮影した後からでも、別のアングルからその光景を見られる」ということになりそうです。
たとえば、普通に写した光景の「建物の裏に敵がいる」ことがわかったりとか。
これは映画ではたまに描かれる光景で、1982年のSF映画『ブレードランナー』には、この概念の写真が出ていて、「昔の写真の物体の裏側にあるもの」を再現する有名なシーンがあります。
映画『ブレードランナー』より写真を別のアングルから見るシーン
1998年の『エネミー・オブ・アメリカ』という映画でも、「すべての方向から撮影できるカメラ」が登場しました。「かつて小説や映画に出てきたもの」が、後に現実に開発される例は結構多いような気がします。
7. 原子力発電の GPS 追跡装置
この核物質は、速度を決定するために使われるもので、発電用や爆発用のものではないので、心配無用だ。
アメリカ軍は、たとえば、潜水艦が水中にいる時など、GPS 信号がブロックされるか、あるいは妨害されるような地域で、車両やミサイルからの受信のトラブルを持っている。
この「チップサイズ・コンビナトリアル原子ナビ」( C-SCAN )は、非常に高度な技術的なもので、原子核崩壊から原子を測定することにより、GPS 信号がなくとも正確なナビゲーションを可能にするだろう。
8. 心的外傷後ストレス(PTSD)に打ち勝つ鍵を握る脳インプラント
PTSD の厳密な治療を DARPA は確約する。
このアイデアは少し不安に響くかもしれないが、脳内のマッピングされた場所に電流を流すことを可能にし、脳の機能を変化させる SUBNET (神経学テクノロジーをベースにした新規治療法)と呼ばれる DARPA が開発している治療法だ。
これは PTSD および、外傷性脳損傷患者のための大きなブレークスルーである可能性がある。
(訳者注) なぜ、 DARPA が、PTSD (心的外傷後ストレス)の治療法の開発を進めているのかというと、
「米軍に PTSD と、それによる自殺者がとても多い」
ためだと思われます。
これは、2001年の同時多発テロ以降、イラクへと派兵された帰還兵たちの間に、ものすごい数の PTSD 患者が発生したことと関係していることが報道されて明らかになりました。そして、これは実は、ベトナム戦争でも、第二次世界大戦でも、どんな戦争でもそうでした。
2004年に放映された NHKドキュメンタリー『イラク帰還兵 心の闇とたたかう』という番組では、イラクに派兵された兵士のうち、
肉体的な負傷者 2万1000人
精神疾患 3万1000人
ということが語られていましたし、あるいは、過去記事の
・ノーベル賞とロボトミー : 「科学の歴史」を振り返って、ちょっと考え込んでしまいました
2013年12月20日
では、第二次世界大戦において、
・戦闘などでの肉体的な負傷で入院した軍人は 68万人
だったのに対して、
・戦時中に精神的・神経内科的な障害で入院した兵士は 120万人
だったという「肉体よりも精神をやられて入院した人のほうが多かった」ということも書いたことがあります。
戦争は兵士たちの肉体よりも、兵士たちの精神を破壊する部分が大きいことがわかります。
そういう過去と現在の現実の中、「想定される実際の戦争」において、DARPA は、戦場でメンタルヘルスの状態が悪化する兵士たちを「治して、また戦闘員としたい」と考えているはずです。
何十万人もの兵士が精神的障害によって戦闘不能に陥る状態に対抗するための研究となっていると思われます。
しかし、「脳インプラント」というような、こういう「脳への物理的刺激方法」の多くは「症状を治す可能性はほんの少しはあるかもしれないが、人間性も失われてしまう」ことが多いです。
先ほどの記事のロボトミーもそうですし、精神疾患に「電気ショック」を行うような治療法が、かつて……いや、もしかしたら、今でもあるのかもしれないですが、これなどは、電気けいれん療法 -Wikipedia によりますと、作用機序は不明である。
と明記されています。
つまり、「なぜ効果があるのかいまだにわからない」のに、何十年もおこなわれてきたのです。
人間は、過去の恐怖を恐怖として持てるからこその人間であるわけで、それを克服するのは、機械や物理的刺激では無理だと私は思います。自分で何とかするしかないのだと思います(私も PTSD です)。
9. 敵の生物兵器に対して反撃する病原体
アメリカへの新たな脅威のひとつは、抗生物質への耐性菌を使用した生物兵器だ。
DARPA は、敵がそのような生物兵器を用いてアメリカ軍や民間人が大規模な感染症を引き起こす前に、その芽を摘み取りたいと考えている。そのために、その生物兵器に攻撃されている時に、それらを培養し、展開することができる病原体を調査している。
これらの細菌兵士たちは、敵のバクテリアを顕微鏡レベルで探し出し、壊滅させるだろう。