180人以上を殺害したとされる麻薬組織のボス、通称「中国( La China )」
・Daily Mail
1人の「中国」という名の国家と、2人の「チャイナ」という女性
最近は、いろいろな方面で「中国」というキーワードがとても大きく、アメリカへ行っている習さんは「航空機 300機を購入」( 4.5兆円分)という「超爆買い」をしていたりしているようで、いろいろと派手なことをするわけですが、最近は、いろいろなところに「中国」という言葉が出てくるのですが、
「こんなところにも中国かよ」
と思ったのが冒頭の女性でして、この女性はメリッサ・カルデロンという名前なんですが、この人は、少し前までは、メキシコの麻薬カルテルの最高幹部で、その後、自身の麻薬組織のボスとなった人物なのであります。
今は逮捕されましたが、少し前までは、バハ・カリフォルニア・スル州のラ・バズなどの街を暴力によって支配下に置いていた人でもあります。
メキシコの麻薬カルテルは、ほぼ完全な男社会だと思っていましたので、このように女性が司令官となっていたり、あるいは、麻薬カルテルのボスとなっているのはとても珍しいことだと思いますが、この女性の「残忍性」と「暴力性」は一種異常なほどだったそうで、そのために、組織内でどんどん頭角を現していったそう。
これまで 180人以上の殺人事件に関与していると見られているのだそうです。
で・・・この人のギャングネームが「 La China / ラ・チャイナ 」、La というのは、英語の The のようなもので、つまり、これは、スペイン語で「中国」という名前になります。
メキシコのギャングは、通常、本名では呼び合わないですので、この「ラ・チャイナ / 中国」こそが彼女の業務上の正式な名称といってもいいかと思います。
下のオレンジの服の人物です。
武装した部下たちとラ・チャイナ
この「ラ・チャイナ」という通称が何だか妙に気になりましたので、この記事をご紹介しようと思います。
ところで、「女性の名でチャイナ」といいますと、思い出すのが、少し前の記事、
・もしかすると完全に目覚めたのかもしれない「環太平洋火山帯」…
2015年09月20日
というもので、ザ・ロックという、アメリカのプロレス団体 WWE (旧 WWF )のかつて大人気だったプロレスラーだった人物のことに少しふれたことがありましたが、このロックが人気のあった時と、ほぼ同じ頃の WWF に「チャイナ」という女性プロレスラーがいました(綴りは Chyna )。
まあ・・・彼女に関しては、女性レスラーといってはむしろ失礼なほどの肉体を持っていた方で、筋肉の見た目も実際の筋力も下手な男性プロレスラーより強大でした。
1999年頃のチャイナ(本名も同じ)のポスター
・imageevent.com
チャイナは女性でありながらも、いわゆる女子プロレスのほうではなく、男子のフィールドで、男性のプロレスラーたちと死闘を演じ続けた珍しいレスラーでした。
男性レスラーと戦ってもまったく互角で、軽々と上に持ち上げたりもしていました。
まあ、全然関係のない話とはいえ、この「ふたりのチャイナ」がどちらも、人間離れしているというところなど、何となく思うところがあります。
今回の翻訳記事はわりと長いもので、また写真なども多いですので、早めにご紹介しておきたいと思います。
ちなみに、内容は、わりと「陰惨」です。
5年ほど前に、
・アルジャジーラの記者がメキシコのヒットマンにインタビューを敢行
2010年11月25日
という記事で、中東カタールの通信社アルジャジーラの女性記者が、メキシコの麻薬組織の殺し屋にインタビューをおこなった記事を翻訳したことがありました。
その中のいくつかのフレーズを今でも忘れません。
アルジャジーラ「メキシコの殺し屋へのインタビュー」より
私は「あなたは拷問もするのですか?」と訊いた。
ジョージは「そりゃ、もちろんだよ」と涼しい顔で答えた。
私は彼に、拷問する時に、犠牲者への同情から精神的に苦しむことはないのかを尋ねた。
「あんたは信じられんかもしれないけど、答えはノーだ。同情なんて感じない。俺はアドレナリンが絶頂に達したら怒りが止まらないんだよ。怒りと共に叫んでしまうほどだ」と彼は言う。
「相手が苦しめば苦しむほど、アドレナリンがたくさん出て、俺は強くなる。それに、実は人を拷問をすると、俺はストレスが晴れちゃうんだよな。ストレス解消ってやつだな」
ちなみに、殺人事件の件数を日本とメキシコで比べますと、2013年のもので以下のようになります(世界の殺人発生率 国別ランキングなどより)。
・メキシコの殺人事件数 2万2732件(10万人あたりの殺人事件数が 18.91で、世界22位)
・日本の殺人事件件数 939件(10万人あたりの殺人事件数は 0.28 で、世界 211位)。
メキシコと日本の人口は大体同じくらい(1億2千万人台)ですので、メキシコの殺人件数は、日本の約 24倍になるということになりますでしょうかね。
ちなみに、日本の殺人率は世界で下から8番目ですが、日本より殺人事件が少ない国は、
・ルクセンブルグ(人口 54万人)
・アンドラ(人口 8万人)
・リヒテンシュタイン(人口 3万6000人)
・モナコ(人口 3万7000人)
・サンマリノ(人口 3万人)
・ナウル(人口 1万人)
・ニウエ(人口 1200人)
となっていて、国家と呼ぶのに抵抗があるような人口の国が多いです。私の住む所沢市でさえ 34万人の人口があるわけで、それより少ない国家が並びます。
そんなわけで、数百万人、数千万人以上の人口を持つ国家の中では、日本はダントツに殺人事件が少ない国だということは確かなようで、いろいろと問題がある日本ですけれど、「日本は他国と比べると圧倒的に人の命を粗末にしない国」であるという面はありそうです。
そのあたりを私たちはどう考えるか、ということも大事なことかもしれません。
ちなみに、殺人事件率世界一は、中米のホンジュラスで、10万人あたりの殺人事件数が 84.29 となっていて、 これは日本の 300倍となります。
メキシコよりも凄まじい数値が出ている国が世界にはたくさんありますし、それもわりと現実です。
それでは、ここから、デイリーメールの記事です。
Revealed, the rise and downfall of Mexico's most powerful female Cartel boss: How 'La China's' hitman boyfriend became so horrified by the 'maniacal' murdering monster she'd become – he shopped her to the cops
Daily Mail 2015.09.23
メキシコで最もパワフルといわれた麻薬カルテルの女性ボスの台頭と没落の内容が明らかに:「中国」と呼ばれる殺し屋のボーイフレンドは、彼女が「狂気」の殺人モンスターになっていく姿に怯え、警察に売り渡した
・メリッサ・カルデロン、通称「中国(ラ・チャイナ)」は、ボーイフレンドによって「狂人」と述べられた。
・この強大な麻薬カルテルの女性ボスは、180人以上の殺人事件に関与していると考えられている。
・彼女は、被害者を誘拐し、殺害した後に家族の家の玄関前に切断した遺体を積み上げる
メキシコで広く知られた麻薬カルテルの女性ボス、それは、殺した被害者の自宅のドアの前にバラバラにしたその遺体を積み上げることで恐れられていた。
しかし、彼女は、「モンスター」と成りはてた女性の姿に恐れをなした恋人によって、警察に売り渡された。
メリッサ・カルデロン( Melissa Calderon )、通称「中国( La China / ラ・チャイナ)」は、恋人のヒットマンと、第二司令官の男たちから「狂人」、あるいは「コントロール・フリーク(人を支配することと命令することへの中毒)」と呼ばれていた。
このメキシコで最も強大な女性麻薬組織メンバーは、9月19日、恋人であり、片腕であったエル・チノからの密告により逮捕された。
現在 30歳のメリッサ・カルデロンは、2005年から麻薬カルテル「ダマソ」( Damaso )で働き始めた。
ギャングネームは当初から「中国」だった。
ダマソは、メキシコでもドラッグ戦争の激しいバハ・カリフォルニアを拠点とする麻薬カルテル「シナロア」( Sinaloa )と手を組んでいる。シナロアを率いている通称エル・チャポこと、ホアキン・グズマンは現在逃亡中の身だ。
メリッサは、彼女の無慈悲さと激しい気性を武器に、組織内で次々と早い出世を遂げていき、2008年には、組織内の司令官の一員となった。
ついに彼女は、バハ・カリフォルニア・スル州の主要都市ラ・パズと、毎年何万人もの観光客が訪れる人気の観光地であるカボ・サン・ルカスでの麻薬戦争の責任者にまで上りつめた。
伝えられるところでは、彼女は組織的な殺人の数々を指示し、市の広範囲のテリトリーを支配下においた。
バハ・カリフォルニアでの殺人事件の件数は、彼女が組織の武装行動の実権を握っていた7年間で3倍に膨れあがった。
ラ・チャイナは、狙った相手を家族の家から誘拐・殺害し、そして、地域社会への警告として、殺害した犠牲者をバラバラにして、その家族の家のドアの前に遺体を積み上げるという行為で悪名高かった。
麻薬組織の社会は、一般的に男性優位であるにも関わらず、ラ・チャイナの組織のメンバーの男たちは、彼女に忠誠を誓っていた。また、彼女はよく働いた者には、コカインを無料で配ったといわれている。
彼女の拳銃とアサルトライフルのコレクションでポーズをとる写真には、彼女のその恐怖の人格が重なって見える。
今年6月、彼女は、最近刑務所から釈放されて戻ってきた前任者の殺し屋であるアベル・キンテーロから、組織内での地位に関して、ラ・チャイナの司令官としての地位を辞任するよう求められた。
この降格話にラ・チャイナは激怒し、ダマソから離脱し、彼女自身の犯罪組織を設立することを発表した。
彼女は、ラ・パスと、人気の観光地カボ・サン・ルカスにおいて、すでに制圧している広範なテリトリーを背景に、元のカルテルの仲間たちに宣戦布告した。
そして、ラ・パズでの戦争が始まった。
ラ・チャイナ自身が戦闘部隊の最高司令官となり、恋人のエル・チノは、副司令官に、エル・スカル( El Scar / 傷)こと、セルジオ・ベルトランを起用し、暗殺部隊の隊長をエル・タイソン( El Tyson )とした。
物流の担当はフランコという人物が、そして、麻薬販売と、殺害した遺体の処理に関しての責任者は、エル・ペテル( El Peter )こと、ペドロ・シスネロスが選ばれた。
これらカルテルの上層部に加えて、ラ・チャイナは、自分で動かすことのできる 300人以上のストリート・レベルでのドラッグ・ディーラーを持っていた。ディーラーたちは自分たちを識別するために、赤く塗られたバイクに乗った。
このラ・チャイナの組織の宣戦布告によって、ラ・パズでの殺人率は、それからの2ヶ月で、2014年の同月の殺人率を大きく上回った。
ラ・チャイナの組織したこの残忍な麻薬カルテルは、メキシコ警察にとって、対策を取るための最大の優先事項となった。
彼女は、家や車を定期的に変更しており、捕らえられることはなかった。
8月上旬には、彼女の車が当局に知られることとなり、追跡を恐れたラ・チャイナは、物流を担当するエル・タイソンに、ピックアップトラックの購入を命じた。
エル・タイソンは自分の両親の友人2人の車をラ・チャイナに売ることを決め、2人を彼女に合わせることにしたが、ラ・チャイナは代金を払うかわりに、その2人を殺害してしまった。
死体の処分担当のエル・ペテルが呼ばれ、ラ・パズ北部の人里離れた場所に遺体は捨てられた。
エル・タイソンが現場に到着した時には、紹介した2人は無残に殺されており、この光景を見たエル・タイソンは、無実の友人たちが殺されたことに激怒し、警察に行き、このことを話すと、ラ・チャイナを脅した。
この裏切りの発言にラ・チャイナは再び激怒し、エル・タイソンを殺す前に、生きたまま彼の腕を叩き切ったと伝えられている。
エル・タイソンは、彼女による他の犠牲者と同じ名のない墓地に埋められた。
その直後、暗殺部隊のトップであるエル・スカルは、彼のお気に入りの娼婦が自分の要求を聞かず、拒否されたという理由で殺害している。
そして、ついに、ラ・チャイナは、ラ・パズの縄張り争いを巡って争っている彼女の古巣の麻薬カルテルのボス、エル・トチョを標的にした。
エル・トッチョを誘拐しようと試みたが、それは失敗した。
次に、ラ・チャイナの組織は、ボスの恋人ルルドを誘拐・監禁した。ラ・チャイナは、エル・トチョについての情報を引き出すために、ルルドを激しく拷問し、翌日にルルドは死亡したと見られている。
ルルドの遺体は、エル・スカルが殺害した娼婦と同じ墓に埋められた。
ラ・チャイナの恋人であるエル・チノは、自分の恋人がモンスターになっていく姿に恐れをなし、組織から逃げ、そして、エル・チノはすぐに警察に掴まった。
エル・チノはメキシコシティに連行され、尋問された。
そして、その尋問の中で、いかにラ・チャイナが制御不能の行動をしているかを語り始めた。そして、それらは、1週間後に逮捕されたエル・ペテルの証言で裏付けられた。
伝えられるところでは、エル・ペテルは、ラ・パズの道路で高速警察に追跡されていた際、車を降りて徒歩で逃げようとしていたところを捕獲された。
50歳のエル・ペテロの尋問での話は、エル・チノの話と同じで、ラ・チャイナの常軌を逸した行動が示された。
エル・ペテルは警察に秘密の墓地の場所を告げ、警察により、それらの5体の遺体は回収された。
組織のボスであるラ・チャイナは、9月20日に、カボ・サン・ルカス空港から逃走しようとしていたところを警察に逮捕された。撃ち合いなどはなかった。
彼女はラ・パズの刑務所に連行された。
ラ・パズは、3ヶ月前まで、彼女の支配下にあった場所でもある。
彼女は現在、メキシコシティで尋問を受けており、来年以降、150人以上への殺人の関与についての裁判が始まる予定だ。
(訳者注)ここまでです。
うーん、何か追記しようと思いましたが、何となく翻訳していてグッタリとしてしまいました。
今回はここまでとさせていただきたいと思います。
最近は「中国」という単語を見ますと、
・開きつつある「パンドラの箱 2015」の気配を放つ中国に対して2億年以上前から付随していた「崩壊」というキーワード
2015年08月23日
という記事でご紹介しました「崩壊」という言葉を連想してしまって、何だか疲れやすくなります。