2015年09月29日



2015年10月7日に In Deep は http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




赤い月と赤い惑星が出会った9月28日: NASA が行った火星に関しての重大会見から改めて思う「宇宙探査の無駄」



red-moon-mars.png



5年ぶりの事前アナウンス会見らをした NASA の「事情」

「赤い月+スーパームーン」が世界の半分くらいの地域で観測された 9月28日の夜、 NASA は「赤い惑星」とも呼ばれる火星に関しての「重大会見」を開くことをアナウンスしていました。

事前に記者会見の内容をアナウンスするのは比較的珍しいことで、「それだけ特別なものですよ」というようなニュアンスを漂わせていたのですが、その結果は、


火星に流れる水が存在する可能性がある


という、予想通り「空気のような」内容の会見でした。

本当に何の衝撃もない発表内容で、報道もそれほど大きな扱いではないのは、誰にとっても予想をはるかに下回るインパクトだったからかもしれません。

私などは、むしろ、「衝撃的なほど陳腐」であることに衝撃を受けた部分はあります。

しかし、逆に、


「なんでこんなものを『特別記者会見』的なイベントにしなければならなかったのだろう」


と、ふと思いました。

何だか焦りにも似た不思議な感覚を受けました。

それで、少し報道を探したりしていましたら、9月21日のニューヨーク・タイムズの下の記事を見つけました。


nasa-budget-01.gif

▲ 2015年09月21日の米国ニューヨーク・タイムズより。



「ああ、この問題も多少関係あるのかもしれない」


と思いましたので、このニューヨーク・タイムズの記事を最初にご紹介しておきたいと思います。
意見記事です。




Starving NASA’s Budget
NY Times 2015.09.21


予算不足にあえぐ NASA


当紙の 9月8日の論説「予算の戦いは NASA に害を与える」は、アメリカの政府予算の不確実性が NASA のプロジェクトのコストを増大させ、それが与えるマイナスの影響がいかに深く大きなものかを述べたものだ。

1990年代の半ば以来、NASA はアメリカ議会からの予算の検討に関して、強い圧力を受け続けている。

その結果、NASA のプロジェクトの資金調達に関して、日々の不確実性をもたらし、ミッションの目標を超えた長期的な不確実性をもたらしている。

そして、それは、NASA の職員たちに対して、徒労を増大させ、職員たちの士気の喪失にもつながっている。

NASA は、単に宇宙ミッションを作り出す工場ではない。

アメリカの非軍事部門と、非医療研究のための中枢部なのだ。

NASA の飛行計画や宇宙研究プログラムの数々は、例えば、宇宙ベースの研究をおこなう際には事実上、アメリカの国内すべての科学技術専門家たちと連携する。

NASA と契約する独立した科学団体は、それらの団体が研究できる範囲の技術を持っており、そして、プロジェクト管理や資金調達などを NASA に依存している。

現在のように、常に短期的な予算編成の目標を達成するために NASA が常に予算不足にあえいでいる状態は、長い目で見れば、アメリカ経済にとって良くはない。それは、私たちアメリカの科学技術研究をリードするコードを破壊されてしまっている状態だといえる。

NASA がおこなっていることをおこなえるのは NASA だけであり、代替え機関は存在しないのだ。だからこそ、NASA は長く、アメリカの誇りであり続けるのだ。





ここまでです。

NASA の予算不足は長い歴史がありますが、しかし、予算不足とはいっても、アメリカの宇宙開発の年間予算は、日本などとは比較になりません。

NASA の政府予算は以前より減ってはいますが、それでも現在でも、ざっと2兆円ほどあります。

ただ、以前と比べますと、かなり予算が減ってきているのは確かなようです。


NASA の予算の推移

NASA-Budget-Federal.gif
Budget of NASA



NASA が設立した 1958年と、アポロ計画の際に最も予算が多かった 1966年とも、そして、昨年の予算を比較しますと、次のようになります。

金額はすべて現行のドルの価値に換算されたものです。


1958年
7億3200万円( 878億円 / 政府予算における割合は 0.1%)

1966年
435億ドル( 5兆2264億円 / 政府予算における割合は 4.41%)

2014年

176億ドル( 2兆1176億円 / 政府予算における割合は 0.5%)




ところで、NASA は 2010年にも、今回と同じような「事前アナウンスした大々的な発表」をおこなっています。

その時は「まったく新しい生命」に関しての発表でした。

覚えていらっしゃるでしょうか。


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2010年の NASA の前例「まったく新しい生命の発見」のその末

これは、2010年の記事、


地球上で見つかった「炭素ベースではない」まったく新しい生命: NASA による発表が行われる予定
 2010年12月03日


で、宇宙専門メディア「デイリーギャラクシー」の記事をご紹介したものです。

その冒頭は以下のようなものでした。



「驚異の発見: NASA が新たに発見された「 DNA ベースではない生命形態」の発表をおこなう」 より
Daily Galaxy 2010.12.02


NASA が本日驚くべき発表をする予定だ。

米国カリフォルニアにある湖、モノ・レイクの有毒性のヒ素水の中から、現在の地球上に住んでいるあらゆる生物とは、いかなる生物学的素材を共有しない新しい生物形態を発見したのだ。

これは、この天の川銀河、そして、それを越えたすべての宇宙の生物の概念を変えるものだ。

今、私たちにとっての宇宙は「突然」変わった。

既知の、そして未知を含む何兆にも及ぶであろう宇宙の星の数々にいるかもしれない、あらゆる生物の形態が私たちの前に広がろうとしている。

12月2日におこなわれる科学会議で、 NASA の科学者フェリサ・ウォルフ‐シモン氏は、こんにち我々が知っているものとはまったく違う形態のバクテリアを発見したことを発表する。このバクテリアは、リンではなく、ヒ素を使う。




というように、

> 今、私たちにとっての宇宙は「突然」変わった。

などという、とんでもなく大きな発表のような響きがあります。

私たちにとっても、何だか「この世の概念が変わる」ような期待感がありました。

そして、その NASA の発表は予定通りに行われました。


ところが、その2年後・・・。


2012年7月の In Deep には下のタイトルの記事が踊りました。


nasa-life-2010b.jpg

▲ 2012年07月10日の記事「NASA が 2010年に大々的に発表した「新しい生命」は「普通の地球の生物」であることが判明」より。



発表から2年後の 2012年、アメリカの科学誌サインエンスなどに、スイス連邦工科大学チューリヒ校と、米国プリンストン大学のそれぞれの研究チームが、


あれは単なる普通の生物


だとする論文を発表して、NASA の見解が完全に否定されてしまったのです。

その時に翻訳した記事の冒頭部分をご紹介します。



Biznes Portal
2012.07.09

NASA の科学者たちの地球上での生命についての発見は完全に間違っていた

欧米のふたりの科学者が、米航空宇宙局(NASA)の研究チームが発表した仮説を否定する論文を米国の科学誌に発表した。

NASA の研究チームは、ヒ素を生存に利用する細菌を米国のモノ湖で発見し、これが地球外生命の探索に影響すると 2012年12月に発表したが、今回これを全面的に否定する複数の論文が発表され、NASA の発見した生命は新しい形態の生命ではなかったことがわかった。

発表は、スイス連邦工科大学チューリヒ校と、米国のプリンストン大学のそれぞれの研究チームにより発表された。




> NASA の発見した生命は新しい形態の生命ではなかったことがわかった


ということになり、結局、あの会見の興奮は「なかったもの」のような存在となってしまいました。


その細菌は GFAJ-1 と名づけられたもので、これが新しいタイプの生命であることが否定された経緯などは、GFAJ-1 - Wikipedia などにも書かれています。

この 2010年の時のことに関してはともかく、今回の「火星」についてのアナウンスをした「背景」に関して、以前の記事から思い当たる部分があるのです。

たとえば、現在、「火星探査」そのものが、予算的に非常に厳しい立場に置かれている可能性があるのです。





火星と手を切りたがっているアメリカ政府

2012年2月に、


米国政府が NASA 火星計画の予算を停止。米国の火星ミッションが事実上終了へ
 2012年02月29日


という記事を書きました。

今はそれから3年経っていますので、現状はよくわからないですが、2012年の時点で、アメリカ政府は「火星探査を継続する意志はない」ことを表明していたようです。

これは当時の AP 通信に書かれていたもので、2012年2月の時点で、


・ホワイトハウスは 2016年と2018年に予定されていた NASA の火星計画への予算計上を中止。
・2012年の無人探査機キュリオシティの打ち上げは行われる。
・太陽系探査の優先順位を「火星から木星の衛星エウロパ」に変更。
・火星への有人飛行計画は、白紙(多分消滅)。
・欧州宇宙機関等は、中国とロシアに火星計画を持ちかけている。



ということになったことが記事に書かれています。

どうして、こういうことになってしまったかというと、いろいろな意味はあるのでょうけれど、


「 NASA の火星ミッションが誰にも魅力的に映らなくなっている」


という部分はあると思います。

特に、科学者たちではなく、私たちのような一般人から見て、魅力的に見えない。

アポロ計画のように、アメリカ人、あるいは世界中のみんなに支持されて、喜ばれたようなものとは違い、「無人探査機が淡々と砂と石の上を移動するだけ」(にしか見えない)ような火星探査は、一般の人々にはさほど支持されていないように思えます。

火星に化石の痕跡などを探して記事にしている、アメリカの The Oldest Human Skull というブログの 2012年2月28日の記事には、下のように書かれていました。



ホワイトハウスのメッセージ: 「バイバイ火星。もはやこれまで」より

火星探査に対しての予算削減の理由は経済的な理由だけによるものではない。

簡単にいうと、NASA は火星での生命の発見に事実上失敗しているが、それが最大の原因だ。

科学者たちは長い間、火星で実際の生命を発見することのないまま、議論上だけで「生命が存在する可能性」を延々と語ってきた。

そして、多大な資金が火星探査に費やされてきた。

それなのに、今でもなお、NASA は「火星探査のミッションは火星の生命を探すためではない」とアナウンスし続けている。

そして、科学者たちと NASA は公共の資金から搾り取れるだけ絞り取ってきた。




今回、NASA が「水」についての発表をしたのは、「流れる水の存在 → 生命が存在する可能性」ということを「人々に連想してもらおう」としたのかもしれないですが、水じゃ、もうダメなんですよ。水では。

たとえば、1970年代の探査機バイキングの時から、


火星では、季節ごとに緑の空間が出現したり消えたりしている


ことが、定点撮影の写真で確認されています。

下の写真は火星探査機オポチュニティが撮影したものですが、このようなものです。


mar-green-02.jpg


この緑に植物的な意味合いがある可能性(特に、菌類と藻類からなる地衣類という生命)について、フレッド・ホイル博士が述べていたことなどを含めて、以前、


NASA の火星無人探査計画が無駄な理由
 2012年08月12日


という記事を書いたこことがありましたが、そこに 無人火星探査機バイキングが行った「ラベル放出実験」などのいくつかの「火星の生命の探査実験」のことを書きました。

そして、それらを含めて、 NASA の火星を含めた宇宙探査の歴史を振り返ると、


「 NASA は、本気で火星で微生物を発見しようとはもはや思っていない」


と思えて仕方なくなったのです。





パンスペルミア説から見れば、火星には100%生命は存在する

この見出しの通り、パンスペルミア説のように、宇宙の中を生命の種子が満遍なく行き渡っているならば、どういう形の生命かは別としても、火星に生命が「いない理由がない」わけです。

火星には薄いながら大気が存在し、いや、地球の苛酷な環境に生きている「極限環境微生物」と呼ばれる生命たちを見れば、大気さえも必要ない生物など、数多くいます。


[参考記事] 無酸素状態の湖の中で発見された「スーパー」バクテリア


あるいは、地球には、「極限乾燥耐性生物」という、「カラカラに乾いても死なない」生物などもたくさんいます。


この世に存在する生命というのはすごいのです。


どんな環境の場所でも、たとえ水も酸素のない場所でも生命は生きられる、あるいは、生きられる生命がいる、のが生命の世界の真実であって、そこから考えると、超高熱の惑星などを除けば、生命はそこで生きることができるメカニズムを持っています。


多分、NASA の科学者たちは、その生命の持つ「強靱さと多様性」を信じていない。


そして、多分「宇宙は全体として生命に満ちている」ことを信じていない。


その観点からは、どんなに予算をつぎ込んでも、どんなに高度な観測機器があったとしても、その探査はひたすら無駄であると思います。

水があるとかないとかが問題ではなく、生命存在の根本を見つめない限り、つまり、自分たちも今、おびただしい生命に囲まれて生きている、という感覚を宇宙にも当てはめないと始まらないような気がします。

これは NASA だけではなく、宇宙探査に関わるすべてに当てはまることだとは思いますが。

そして、そういう観点から見ますと、宇宙探査という行為そのものが終焉の方向に向かってもいいのではないかとも思うことがあります。


外に宇宙を見ている限り、宇宙の本当の姿は見えないような気がします。

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