【パンスペルミア】 の記事一覧

2015年09月18日



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[驚愕の発見]パンスペルミア2015(2):地球外生物の「生命の種」はチタンで作られた微細な球の中に収められて飛来していることを英国の大学研究者たちが突き止める



前記事:パンスペルミア2015(1):地球の生命は「地球や太陽系よりも古い歴史を持つ可能性」がアメリカの国立研究所により示される

alien-first-image.jpg
INQUISITR






 

髪の毛の幅のチタンの球に収められた「生命の素材」

前回の記事で少しご紹介した「高層大気圏で捕獲された地球外微生物」についての、英国シェフィールド大学の研究に関しての記事をご紹介します。冒頭の写真がそうです。

今回はご紹介する記事そのものがかなり長いものですので、あまり前置きなしに本題に入らせていただことかと思います。

なお、この「パンスペミア説」というものがどんなものかということに関しては、今回の記事に出て来る英国シェフィールド大学の分子生物学者であるミルトン・ウェインライト教授の 2013年の言葉がそのままパンスペミア説を表していると思います。


私たちの結論は、生命が絶えず宇宙から地球に到達しているということです
 --- 分子生物学者ミルトン・ウェインライト


ミルトン・ウェインライト教授
Professor-Milton-Wainwright.jpg
EXPRESS


それにしても、今回のウェインライト教授たちの発見には、正直いくつも驚く点がりまして、本文を読まれて下さればわかることですが、以下の点は本当に驚きました。


・チタンで作られた直径30ミクロンほどの球の中に生物的な素材が入っている
・採取された塵には、レアアースが含まれていた。



下がその実際の写真ですが、このようなものが、絶えず地球に降り続けていることがわかったというような驚きというのか。


2014年に採取された「生命の球」

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ここまで来ますと、「自然に作られたもの」なのかどうかもよくわからなくなる部分もありますが、しかし、考えてみれば、この地球の生物の DNA の構造や、私たちを含む生物の体内メカニズムなども、「自然に作られたもの」としては、あまりにも複雑です。

自然とはそういうものなのかもしれないです。

なお、今回の高層大気での微生物の単離(塵から分離して採取)は、2014年のペルセウス座流星群の時に行われたのですが、「流星群の意味」ということも関係してくることかもしれません。

今度、「彗星」と「流星群が存在する本当の意味」について今度書かせてもらうかもしれません(もちろん私自身の思い込みですが)。


なお、記事の中に、

> 未知の文明によって地球に送信されたと述べるような人たちもいる

というような下りがありますが、このあたりは微妙な話だなとは思いますが、この精巧な「球」を見ていると、誰かというのは別としても「人為」というようなキーワードも感じられなくもはないです。

ちなみに、「レア・アース」が含まれていたことが、なぜ重要なのかといいますと、含まれていた中に「ジスプロシウム」というレア・アースがあったのですが、Wikipedia を読むと下のようにあります。

ジスプロシウム - Wikipedia

ジスプロシウム は原子番号66の元素。元素記号は Dy。希土類元素の一つ。きわめて偏在しており、現在99%が中国で産出されている。

> 99%が中国で産出される

というようなレア・アースが「英国の上空 30キロメートルの物質から発見されている」というのは、この物質が「地上から噴き上げたのではない」ことを物語るのと同時に、

「宇宙からは、生命だけではなく、レア・アースも降っている」

ということになりそうです。

では、前置きが長くならないうちに、本題に入ります。

ちなみに、この同じ研究チームによる、同じ研究については、過去記事「パンスペルミア説を証明できる実験が数十年ぶりにおこなわれ、成層圏で宇宙から地球への「侵入者」が捕獲される」で、2013年の研究をご紹介しています。




First Ever Image Of An Alien Or An Extraterrestrial Organism Has Been Captured, Says University Of Buckingham Scientist
INQUISITR 2015.09.06


捕獲されたエイリアン、あるいは地球外生命体の初めて公となる写真だとバッキンガム大学の研究者は語る


英国バッキンガム大学・宇宙生物学研究センター( University of Buckingham Center for Astrobiology )とシェフィールド大学の科学者たちは、彼らが、歴史上初めてとなるエイリアン、あるいは地球外生物の写真を撮影したと述べている。

科学者たちは「牛の形」をした「生物」としており、それを「完全な生命体」と説明する。


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英国シェフィールド大学の分子生物学者、ミルトン・ウェインライト( Milton Wainwright )教授が率いる科学者チームによると、 写真(上記)は、エイリアンや地球外生命体が、私たちの地球の大気圏の外宇宙に存在することの証拠だと、サンデイ・エクスプレス紙は報じている。

科学者たちは、この画像は「地球上の生命は宇宙に起源がある」とするパンスペルミア説の理論を支持する新たな証拠を提供するものだと述べた。

科学者たちはまた、今現在も、宇宙から生きた微粒子が地球に常に降り続けているという理論を支持するものであるのとも語っている。

研究者たちは、強力な磁石を使用し、領域の成層圏の境界から収集した塵からこの生物を単離した。

塵は、宇宙空間の境界付近の成層圏で集められた。これは、英国ダービーシャー州で実施された、地上から 30キロ近い高度へ塵を収集する風船を送るプロジェクトの一環だ。

ウェインライト教授によると、画像は、その表面に付着した生命体の「非晶質固体」(訳者注 / 原子や分子が規則正しい空間格子をつくらないで、乱れた配列をしている固体)と、塩の結晶の粒子を示しているという。


「この写真は、成層圏で単離した中の最大の地球外微生物であると私たちが確信しているものです。私たちのチームは、これらの微生物は絶えず宇宙から地球に到着していると主張していましたが、そのために、過去4年間ほどにわたって、非常に物議を醸しているのです」

「しかし、私たちを批判する人たちの中には、今のところ、誰ひとりとして、私たちのこの作業と主張に対しての代替えの説明を提供した人はいません」


塩の粒子からは、ジスプロシウム、ルテチウム、ネオジム、および、ニオブなどの希少元素が同時に発見されたと科学者たちは述べている。

(訳者注 / それぞれ、いわゆる「レア・アース」で、ジスプロシウムは、地球では、ほぼ中国でしか産出されないものです)


ウェインライト教授は、「私たちが言える限りのこととして、ここに付着していたものが、地球(地上)由来の粒子とは関係がないということです」と述べる。

このこと、つまり、30キロに近い高さで、希土類元素(レア・アース)を含む粒子を発見したということも、この最新の研究のエキサイティングな部分だ。

英国シェフィールド大学とバッキンガム大学の科学者たちが、地球の成層圏における微細構造体の発見を主張したのは、これが初めてのことではない。

2015年1月18日に当メディアでは、彼らが、上空 27キロメートルの高層大気から収集した粒子から、彼らが「幽霊粒子( ghost particle )」と呼ぶ生物を単離したと主張していることを報告した。

それは人間の髪の毛ほどの幅のものだ。



幽霊粒子( ghost particle )の写真
gohst-particles.jpg


高層圏の粒子を収集する風船は、昨年のペルセウス座流星群の際に、上層大気圏に打ち上げられた。

チームは、上層大気から収集した破片のサンプル中から、彼らが「ドラゴン粒子」と呼ぶ粒子を発見したことを 2014年9月に報告した。

そして、2015年1月30日に、科学者たちは、地球外生命体が「チタンの球」の中に存在して、それは地球に舞い降り続けていることを報告したのだ。

研究者によると、約 30ミクロンの微細なチタン球(下の画像)に、生物学的物質が含まれているという。30ミクロンは人間の髪の毛の幅とほぼ等しい。



生物学的素材が含まれているチタンの球
titanium-sphere.jpg


「この人間の髪の毛ほどの幅のボールの中心からネバネバとした生物的な素材が滲み出るのです。つまり糸状の生命を内包しているのです」

私たち記者は、この球のX線分析を見た時に大きな感銘を受けた。

というのも、この球は、主にチタンでできていて、そこにバナジウムの痕跡があるのだ。

一説として、この球は、数々の惑星たちに「生命の種」を播種し続けるために、何かの未知の文明によって地球に送信されたと述べるような人たちもいる。

研究者たちは、この極めて小さなチタン球を、宇宙から地球の大気に落下する「地球外生命の種( extraterrestrial life-seed )」だと説明する。

その後、この地球外生物は、地球上で広がっていく。

研究者たちによると、これらの粒子は、地上から上層大気に上昇したものではないと述べる。チームはまた、彼らが集めた塵の試料の中に、地球からの粒子による汚染の証拠は認められなかったと述べた。

パンスペルミア説の有名な支持者として名高い、チャンドラ・ウィックラマシンゲ教授の最近の、『地球中心の生物学から、宇宙生命への移行( The Transition from Earth-centered Biology to Cosmic Life )』というタイトルの論文では、ウィックラマシンゲ教授は、「研究者たちは、パンスペルミア説理論を支持するパラダイムシフトが過去 30年間にわたって行われてきた」と主張している。

しかし、今なお、ウィックラマシンゲ教授や、ウェインライト教授たちのようなチームの研究成果は、主流派の科学研究者たちから疑いの目で見られ続けており、また、パンスペルミア説の支持者たちは、彼らの理論を支持する説得力のある科学的証拠を提供していないともいわれている。






ここまでです。なお、

この今回の英国での研究については、実は同じような「高層大気での収集」は、1960年代にはアメリカの NASA がおこなっていて、1970年代には、ソ連でも実験がおこなわれましたが、「理由を示さないまま」どちらの実験も打ち切られました

このことを、フレッド・ホイル博士は著作『生命・DNAは宇宙からやって来た』に書かれていますので、参考までに、抜粋しておきます。




『生命・DNAは宇宙からやってきた』第2章「地球大気へ侵入する彗星の物質たち」より
フレッド・ホイル / チャンドラ・ウィクラマシンゲ共著


1960年代には、アメリカの科学者たちが高度 40キロメートルまで気球を飛ばして、成層圏にバクテリアがいるかどうか調査した。その結果、ごく普通のテクニックで培養できる生きたバクテリアが回収され、実験者を当惑させた。

さらに問題だったのは、バクテリアの密度分布だった。成層圏の中でも高めのところでは、1立方メートルあたり平均 0.1個のバクテリアがいて、低めのところでは 0.01しかいないという結果になったのだ。

高度が高いほど多くのバクテリアがいるという結果は、バクテリアが地上から吹き上げられたと考える人々が期待していたのとは正反対の傾向だった。不思議な結果に、研究資金を出していたNASAはこれを打ち切ってしまった。

1970年代後半には、旧ソ連で同じような実験が行われた。彼らは、成層圏より上の中間層にロケットを打ち上げて、高度 50キロメートル以上の高さでパラシュートにくくりつけた検出装置を放出した。パラシュートが落下するにつれて、いろいろな高さで次々にフィルムが露出され、粒子を付着させては密封された。

回収されたフィルムを研究室に持ち帰って微生物を探したところ、 50から 75キロメートルの高度について、バクテリアのコロニーが 30個ほどできた。中間層は空気が薄く、バクテリアはすみやかに落下する。したがって、中間層のバクテリアの密度は成層圏では数ケタ低いはずだ。それにも関わらず、これだけの結果が出たのである。

なお、この実験もたったの3回で打ち切られてしまった。

アメリカと旧ソ連で行われた実験は、はからずしてバクテリアが宇宙からやってきたというわれわれの仮説に見方してしまった。





ここまでです。

> 研究資金を出していたNASAはこれを打ち切ってしまった。

から 50年が経ち、実験は盛んになり、今回のような驚異的な発見もなされたのでした。



  

2015年09月17日



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「太陽系が生成される数十億年前から地球の生命は継続し続けている」
 - アレクセイ・シャロフ(アメリカ国立老化研究所)


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パンスペルミア説も動き始めた2015年

9月に入って以来、「地球の生命の正体」や「パンスペルミア」に関しての、いくつかの興味深い報道を目にしていました。

しかし、最近は、ユダヤとかシュミータとか長野県とか、そういう記事が多くて、なかなかパンスペルミア関係の記事は書けなかったのですが、ここに来て、ろいろいろと大きく動いている感じがします。

パンスペルミア説とは、平たく書けば、


他の天体で発生した微生物の芽胞( DNA を組成する物質や、あるいはアミノ酸などの生命の素材を含めて)が地球に常に飛来していて、地球の生命はすべてそこから始まっていて、今もなお、生命の飛来は続いている。


という主張で、古代の時代からあったですが、近代の科学史で登場したのは、物理化学の祖ともいえるスヴァンテ・アレニウスが、ノーベル化学賞を受賞した1903年に、

「微生物の芽胞が恒星からの光の圧力で宇宙空間を移動する」

と主張したのが始まりです。

アレニウス(1859-1927年)
Arrhenius-2015.jpg
Wikipedia


その後、いろいろな科学者たちが、この説を主張してきましたが、20世紀の世の中はダーウィンの「進化論」に包まれていて、なかなかパンスペルミア説は陽の目を見ませんでした。

私がこの In Deep を書き始めた大きな動機のひとつが、パンスペルミア説の強力な提案者であった、フレッド・ホイル博士の著書『生命はどこからきたか』と、『生命(DNA)は宇宙を流れる』などを読んで感銘を受けたことによるものでした。

その時初めて、

地球の生命は、自分の起源も含めて、始まりは宇宙のどこかだった

ということを知ったのです。

フレッド・ホイル(1915-2001年)
hoyle-2015.jpg
panspermia.org


ホイル博士の主張は複雑ですが、パンスペルミア - Wikipedia には、一言で、

1978年にはフレッド・ホイルが、生命は彗星で発生しており彗星と地球が衝突することで地球上に生命がもたらされた、とした。

と書かれてあります。

実際には、「遺伝子を変化させるウイルスが生物を(遺伝子ごと変化させることによって)進化させてきた」というようにニュアンスの方が強いと想います。

著作から少し抜粋します。


『生命(DNA) は宇宙を流れる』 第4章「進化のメカニズム」より

生物が進化するには、遺伝子が変化する必要がある。

もともときわめて安定している遺伝子が、コピー・ミスによる突然変異を起こしたおかげで優れた形質を獲得すると考えるのは、かなり無理がある。

けれども、ウイルスなら、宿主がそれまでもっていなかったまったく新しい遺伝子を導入することができ、生物の基本的な構造を一新させることもできるのだ。ウイルス感染による遺伝子の移動は、まさに理想的な進化の原動力となりうるのだ。

ウイルスの本質は、もっぱら他の生物に感染して、これを病気にさせたり、死に至らしめることにあるように考えられている。

けれどもそれは、ウイルスが病気の原因となる微生物の一種として発見され、研究されてきたことに由来する偏見である。

ウイルス感染の影響は、細胞破壊だけではない。細胞を壊すかわりに、細胞の代謝や機能を変えたりする場合もあるのだ。



> ウイルスが生物の基本的な構造を一新させる

これが、地球の生命の進化の根幹だと述べているのです。

そのウイルスたちもまた、すべて宇宙空間を旅してきていると。
人類を含む生命を進化させるために。

ただし、生命の素材もウイルスたちも、一体宇宙のどこで生まれたものなのかはわからない(生まれたという言い方が正しいかどうかもわかりません)。

しかし、それらのメカニズムは私たちが知ることのできることではなく、「宇宙(神)のみぞ知る」ことか、あるいは宇宙も知らない巨大な知性の下に存在する「秩序」というだけの話なのかもしれない、と、まあ、この話をし始めると、ややこしいことになるのですが、いずれにしても、このホイル博士の主張を知ってから、私の「地球観」、「生命観」がすべて変わったといってもいいと思います。

私たちは、何か得体の知れない生物から環境に適応して進化してきたのではなく、

宇宙の明確な意志の下に進化している

と思うに至ったのも、ホイル博士の著作を読んだおかけです。

そんなわけで、少しパンスペルミアと関係した記事を久しぶりに書いてみたいと思いました。

過去のパンスペルミア説に関しての記事は、

カテゴリー:パンスペミア

に一覧があります。

パンスペルミア関係の記事の最も最近のものは、

確証が進むパンスペミア仮説 : 「DNAの大気圏突破の熱と衝撃に耐えられるか」というロケット打ち上げ実験が行われ、DNAは無事に「生還」
 2014年12月09日

でした。


ちなみに、冒頭に載せました「英国バッキンガム大学が発表した宇宙大気圏で採取された生命」は、地球の上空 30キロメートルの高層大気圏で採取された微生物で、バッキンガム大学の科学者たちは、「完全な宇宙生物」と述べています。

このバッキンガム大学の発表も興味深いですが、次の(2)のあたりで、ご紹介したいと思います。

この発表と似た内容のものとしては、

パンスペルミア説を証明できる実験が数十年ぶりにおこなわれ、成層圏で宇宙から地球への「侵入者」が捕獲される
 2013年09月23日

という記事で、英国シェフィールド大学が、上空 25キロメートルで「珪藻」(ケイソウ)という単細胞生の藻類を捕獲したことをご紹介したことがあります。

下がその時に捕獲された珪藻の写真です。

keisou-2013.jpg


その記事でも書きましたけれど、こういうものが高層圏で「地上から上に上がっていく」という可能性はほとんどないのが地球の環境なんです。

下の図のように、高層大気圏は「垂直(上下に推進力が基本的にない」ので、火山の噴火の影響が及ぶ上空 10キロメートルくらいまでなら、それで説明もできますが、それ以上の高層大気圏となると、重力に則って、上のものが下に落ちるという運動しか起こりえないのです。

atomosphere-25.gif


さて、今回ご紹介するのは、いろいろな意味で大変に興味深いデイリーギャラクシーの記事です。






 



地球の生命の歴史は100億年に達する

それは、アメリカのふたつの国立研究所の科学者が、研究によって、

地球の生命の継続時間は、地球や太陽系が作られた時より以前に遡る可能性がある

という発表をしたのです。

まあ、基本的には、この発表は「進化論」に基づいているものですので、実際なのかどうかということを別にしましても、たとえば、

「地球ができるはるか前から、地球の生命は進化し続けていた」

という概念は、まさにパンスペルミア的であり、また、何だか楽しげな感じがしたのですね。

それでご紹介したいと思いました。

なお、地球の年齢の方ですが、一般的なところでは、「 46億年」というように教えられることが多いですが、以前、

「地球の年齢がわからない」: ミシガン工科大学の調査が地質学に与えるショック
 2011年11月26日

という記事で、これまでの調査での結果は、

地球の年齢に関しての主張は「 200億年から 5000年」と多岐にわたる

というようなことを書いたこともありますが、地球の歴史というもの自体もわからないことのひとつです(私は、地球に歴史はないと思っていますが)

なお、ご紹介する記事のタイトルになっている「ムーアの法則」というのは、生物学や宇宙物理学とは関係のないもので、インテルの創業者のゴードン・ムーアという方が提唱した、半導体の性能に関しての法則です。

ムーアの法則

ムーアの法則とは、世界最大の半導体メーカーIntel社の創設者の一人であるGordon Moore博士が1965年に経験則として提唱した、「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増する」という法則。

この法則によれば、半導体の性能は指数関数的に向上していくことになる。


コトバンク


今回ご紹介する記事の内容自体は、かなり専門的で、あまりわかりやすくはないのですが、とにかく、「地球の生命の歴史は非常に古い」というひとつの示唆があったということをお知らせできれば幸いだと思います。

では、ここからです。



Life Older Than Earth --"Does Moore's Law Imply Its Existence?"
Daily Galaxy 2015.09.14


生命は地球より古くからある - ムーアの法則はその存在を暗示する?


地球の生命は、その進化と共に、まるで集積回路上のトランジスタの数が2年ごとに約2倍になることを述べたムーアの法則のように、生命としての複雑さを指数関数的に増加させてきた。

それはまるで、集積回路上のトランジスタの数が2年ごとに約2倍になることを述べたムーアの法則のようだ。

ボルチモアのアメリカ国立老化研究所( NIA )の遺伝学者アレクセイ・シャロフ( Alexei Sharov )氏と、フロリダにある湾岸標本海洋研究所( Gulf Specimen Marine Laboratory )のリチャード・ゴードン( Richard Gordon )氏のふたりは、この傾向を既知の事柄から推定することにより、地球の生命が、ムーアの法則に尺度によっていることを見出した。

そして、それに従えば、「地球の生命は地球自身の歴史よりも古い」ということが示されるのだ。

研究チームは、ムーアの法則を、生命のゼロの地点である生命の起源の地点まで戻し適用した。

そして、原核生物から真核生物へと、生命としての複雑さが増加した速度を測定することにより、次に、虫や魚などの、より複雑な生命、そして、両生類や、最終的には哺乳類に至るまでの進化の速度を測定した。

その結果は、生命の構造が複雑化していく進化の倍加時間とムーアの法則の背後にあるものとは同一の指数関数的増加を見せることがわかった。

ところが、この見地から、1塩基対の遺伝的複雑さの線形回帰から推測すると、「生命の起源は 97億年前」という時間軸を示唆するのだ。

つまり、これらの示唆は、生命の進化のための宇宙時間スケールに関して重要な結果をもたらす。

----- それは、地球の生命が、まずは、バクテリアのような複雑な生命に達するためにも「 50億年」かかるという結論だ。

生命の起源と、原核生物への進化の時間的スケールの環境は、この地球で想定されているものとはかなり違っていたのだ。

このことは、もし、生命がホモ・サピエンスと関連するほどの複雑さに進化するのに 100億年かかるとすれば、私たち人類という存在は「まったく最初のこのレベルの複雑さを持つ生命」だと言えるかもしれない。

(※訳者注 「人類という複雑な生命体としての存在は、この宇宙で初めてのもの」というような意味かと思います)

もし、私たちが最初のそのような複雑な生命ではないとすれば、宇宙にどのくらいの高度な地球外生命が分布しているのかを推定する「ドレイクの方程式」を否定することになる。

下のグラフは、ヌクレオチド塩基対(bp)によって、ゲノムごとのの非重複 DNA の長さから、生命の複雑さを示すものだ。時間の経過と共に、生命の複雑さは直線的に進化する。

時間は、現在の時間を「0」として、その前の 100億年までをカウントしている。


shinka-10billions.gif


高度な生物の進化は、情報処理システムの進化をも伴う。たとえば、それは、エピジェネティック( DNAの配列変化によらない遺伝子の発現を制御・伝達するシステム)な記憶や、原始的な心、多細胞な脳、言語、書籍、コンピュータ、そして、インターネット。その結果、複雑さの倍加時間は 20年ごとに到達することがわかった。

シャロフ氏とゴードン氏はまた、天文学者たちは、私たちの太陽系が、それ以前の星の残骸から形成されていることを確信していることを指摘する。

これは、パンスペルミア説の概念においては、元々あったガス、塵、氷の雲などの中に生命が保存されていた概念を示唆するものだ。

地球上の生命は、私たちの太陽系が形成されるより数十億年も前から、生命のプロセスを継続している可能性があるのだ。




  

2014年12月09日



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CoEXIST






 



「DNAが宇宙から地球の大気圏内突入に耐えられるか」を確かめる実験が行われていた

先日、タイトルだけ読むと、英語だろうが、日本語にしようが、どうにも意味のわからないタイトルの下の科学論文が掲載されました。

dna-return-01.gif

▲ 2014年11月26日の科学雑誌 PLOS ONE より。

直訳といっていいのか、そういう感じなのですが、それにしても、この「地球の大気圏に突入後のプラスミドDNAの機能は活性。弾道宇宙飛行実験のための新しいバイオマーカー安定性アッセイ」という日本語は、自分で書いていて、まるで意味がわかりません。

このページにはその論文の概要が載っているのですが、それも難解ではありながらも、おぼろげにわかるのは、実験の主旨は、

DNA が大気圏突破の熱と衝撃に耐えられるか?

ということを試すための実験だったようで、そのために DNA を載せたロケットを宇宙空間まで飛ばして地球の大気圏に再突入させて、DNA を回収するという、なかなか大がかりな実験ですが、その結果、

地球の大気圏に再突入し、地上に戻った後、 DNA の何割かは生存して回収され、その後も活動を続けた。

ということ結果となったようです。

つまり、「 DNA は大気圏突破の際の熱を耐えた」ということになるようです。

日本語で記事になっていないか探しますと、ロシアの声に、内容は大ざっぱながら紹介されていました。

DNA、宇宙旅行を生き延びる可能性あり
ロシアの声 2014.11.30

チューリッヒ大の研究グループによれば、DNAは宇宙空間という過酷な環境を生き延びるばかりか、大気圏突入後も生存し、活動することが出来る。

低軌道へのロケット発射実験でこうした結果が得られた。地球の生命の起源や、地球の生命の異星への拡散の可能性といった問題に大きな影響を与える可能性がある実験結果だ。

ロケット「テクサス49」が、北極圏内にあるキルンのエスレインジ発射場から打ち上げられた。

下が実験で使われたロケット「テクサス49( TEXUS-49 )」の構造と、カプセル群のようです。

DNA大気圏突入回収実験に使われたテクサス49

dna-cupsle.jpg


論文に掲載されたグラフのひとつ

dna-recov.png
PLOS ONE

上のようなグラフはいくつかあり、細かい数字の意味はわからないですが、多分これは、ロケットの部位による DNA の回収率を示しているもののよようです。

詳しい率や部位はともかくとしても、どの部位でも、10数パーセントから20数パーセントの DNA が大気圏突入後に回収され、そして、それらは地球に帰還後に「また活動を始めた」ようです。

これは DNA のサイズを考えると納得のできることではあり、やや長くなるかもしれないですが、少し書かせていただきます。



DNA は宇宙空間を旅するのに最適な生命物質

私は「すべての地球の生命は宇宙空間から地球に侵入して進化した」とするパンスペルミア説の支持者でして、その地球の生命の「進化」もまた、宇宙からやってきたウイルスやバクテリオファージといったような、生物の細胞を根本的に変えてしまうような働きを持つものによって起きると思っています。

もちろん、これはフレッド・ホイル博士の説を代弁しているだけで、私のオリジナルの部分などはひとつもありません。

しかし、「宇宙空間から生命が地球内に入る」ためには、地球の大気圏の突破という非常に過酷な条件をクリアする必要があります。

なぜ大気圏突破が過酷かといいますと、宇宙空間は基本的に真空ですので、移動する物体は、無抵抗に加速していきますので、ものすごい速度となります。

宇宙空間を移動する物質の速度は「秒速」何キロメートルという、とてつもない速さで移動します。抵抗がないので、大きな物体でも小さな物体でも基本的には同じはずです。つまり、DNA や細菌のような微小なものでも、そのような速度で宇宙空間を移動します。

その勢いですと、まずは大気のない惑星、たとえば「月」のようなものと衝突した場合は、完全に破壊されてしまい、微生物だろうと DNA だろうと、分子サイズまでバラバラになってしまいます。そして、惑星自身も、壮絶な速度で自転しているわけで、その衝突の破壊力はかなりのものです。

ですので、大気のない星に形が残る姿で生物が着地することは不可能だと思われます。

着陸できるとすると、地球のような大気のある惑星ですが、それでも、大気圏を突破する際には、すさまじい熱を発します。

これに関しては、4年以上前のクレアなひとときの、

地球の成り立ち:宇宙はすべて生き物からできている
 2010年05月09日

という記事の中に、1986年に英国カーディフ大学でおこなわれた「大腸菌の過熱実験」の際の風景を、私が臨場感たっぷりに小説風にしたもの(苦笑)がありますが、そこから抜粋します。

地球大気に秒速 10キロのスピードで物体が突っ込んできた場合、その摩擦熱は物体の大きさ(粒子の直径の4乗根)と比例する。

その場合、物体が針の先くらいのものでも、摩擦温度は 3000度に達し、ほとんどの物質は残らない。あるいは生物なら生き残ることができるものはいないはずだ。

可能性があるとすると、それより小さなものとなる。

たとえば、細菌やウイルスくらいの大きさの粒子なら、突入した際の摩擦温度は約500度となる。

摩擦で加熱される時間は約1秒間と推定される。

この「1秒間の500度の状態」を生き残ることができない限り、生物は彗星に乗って地球に侵入してくることはできない。

というわけで、フレッド・ホイル博士とチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士たちのチームは、「大腸菌の1秒間の、500度での過熱実験」を続けるのです。

そして、大腸菌たちはこの実験をクリアしました。

大気圏突入の際の熱の高さは、上の文章に、

> 物体が針の先くらいのものでも、摩擦温度は 3000度に達し

となり、つまり私たちが目視できるような大きさのものでは、摩擦熱が大きくなりすぎて、それに耐えうる生物は存在しないと思われます。逆にいえば、サイズが小さくなればなるほど摩擦熱は少ないですので、宇宙から地球にやってくるためには「小さければ小さいほど好都合」なのです。

ところで、大腸菌とか DNA の大きさってどのくらいなのかといいますと、そのあたり、私も曖昧でしたので、調べてみますと、下のような大きさの比較となるようです。

bacteria-dna.gif
ナノテクノロジーと医療

大腸菌が 0.001ミリくらいで、 DNA に至っては 0.000001ミリとかいう、もうよくわからない小さな世界なわけです。

実際には、DNA は 0.000002ミリくらいらしいですが、そのあたりの誤差はともかくとして、すごいのは、この非常に小さな DNA の螺旋を全部伸ばしますと「 DNA の長さは2メートルにもなる」のですよ。

イメージとして考えますと、まず、細胞と細胞核があります。

私の頭脳に応じて、ここでは「小学生のための理科の王国 - DNA ってなあに?」から説明をお借りいたしますと、

細胞の一つの大きさは、0.05 mmくらい、核の大きさは0.01 mm くらいといわれています。

ということで、下のようになっています。

cell-dna-01.gif


イメージとしては、毛のようにもわもわと描かれているのが DNA のあるあたりということでいいのだと思われます。そして、ひとつの細胞に含まれすべての DNA を繋げるとすると下のように、2メートルにも達するそうなのです。

dna-2.gif
DNA がもつれないわけとは?


つまり、DNA は非常に小さい存在であるにも関わらず、長さにすれば、細胞の数万倍の長さを持つというもので、それだけにすさまじい情報量を小さな直径の中に収められるのかもしれません。

そして、小さければ小さいほど、大気圏突入の際のダメージが少ない。
すなわち、DNA は宇宙空間の惑星の大気に突入するのに最も適した「生命パーツ」であること。

そして、それ( DNA )が私たち人間を含めた、ほぼすべての生命の根幹をなしているという事実。

何というか、もうやはりこれも一種の「奇跡」であると思います。

そして、今回、その DNA の大気圏突入実験が成功したということのようですが、このような実験を試みるということそのものに、「 DNA が宇宙からやってきた」と考える科学者の意志を感じます。

考えてみると、最近の無人宇宙探査の目的は、かなりの部分で、「地球の生命が宇宙由来である証拠を掴もうとしている」ものが多い気がしますし、報道でも、すでにそのこそが普通に語られています。




生命は宇宙からやって来た方向で固まりつつ科学界

フレッド・ホイル博士の存命中は理解を得られなかった「地球の生命が宇宙からやって来た」ことについて、今ではどのような見解になっているのかというと、それは最近の報道のタイトルを見てもわかります。

先日打ち上げられた日本の「はやぶさ2」のミッションも「生命の起源を探る」というように、明確に記されている報道が多いです。

「はやぶさ2」 生命の起源探る壮大な旅だ
読売新聞 20104.12.06

生命の起源に迫る手がかりはつかめるのか。

小惑星探査機「はやぶさ2」は、3日に打ち上げられて以来、順調に飛行を続けている。目指す小惑星「1999JU3」には、2018年夏に到達する。地球への帰還は20年暮れの予定だ。成果を期待したい。

あるいは、欧州宇宙機関( ESA )の探査機ロゼッタが着陸した彗星チュ……。

まあ、名称不明(勝手に名称不明にすな)のあの彗星にしても「生命の起源」とタイトルにつく報道が当時多くありました。

下はスイス・インフォの報道ですが、もう記者は「チュリ彗星」で済ませていますので、このあたりの表記でもOKのようです。そして、この記事の冒頭には「水と生命がどこから地球にやってきたのかが今解明されようとしている」とあります。

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▲ 2014年11月10日の Swissinfo 「チュリ彗星に探査機着陸か?生命の起源もやがて解明?」より。


また、ロシアでも「ビアンM」という人工衛星と「フォトンM」という人工衛星に、さまざまなバクテリアを積み、宇宙のフライトから大気圏突入の実験を行っています。

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▲ 2014年12月1日の「ロシアの声」より。


この記事には下のように、実験の詳細が記されています。

ロシアの研究グループは生命外来説の真偽に実験によって迫ろうと試みた。

昨年、宇宙に向け、「ビオンM」衛星が打ち上げられた。その外壁には様々な微生物をつめたコンテナーが備えられた。

衛星は軌道上で30日を過ごし、地球に帰還。調べてみれば、全ての微生物のうちで、生き残ったのはわずか一種類のみであった。しかしその一種類は、大気圏突入時の、摂氏数千度という高温を耐え抜いたのだ。

と、ここにも、フレッド・ホイル博士が 1989年に行った実験を裏付ける、

> その一種類は、大気圏突入時の、摂氏数千度という高温を耐え抜いたのだ

というくだりがあります。

また、上の記事には、

ロシア人科学者、アレクサンドル・スプリン氏は、長年にわたり、リボ核酸の研究を行っている。リボ核酸、それは三つある基幹的高分子のうちの一つであり、あらゆる生命体の細胞内に存在するものである。

氏は、その分子がどうやって発生し得たのか、を研究しつづけ、ついに、地球環境ではそれはどうやっても発生し得なかった、との結論にたっした。すなわち、生命は宇宙から来たとしか考えられない、と。

などというような記述もあります。

いずれにしても、多くの科学者たちが、「地球の生命」がどこからやってきたのかということについて、ほぼ「宇宙から」という方向で結論付けている雰囲気が最近はあります。

しかし必要なのは「確証」です。

たとえば、「 DNA が地球の大気圏の突破をなし得た」という結果が、「地球に宇宙から DNA が運ばれている」という推論を確証できるものではありません。

じゃあ、どのようにすれば確証が得られるのかと考えますと・・・てへッ(何だ?)

それを確証する方法は多分、「存在しない」と思います。

その確証には、

生命の発生源
生命の運搬ルート


にまで遡ることを余儀なくされることであって、そんなことを証明できるとも思えないのです。

ふと思ってみれば、晩年のフレッド・ホイル博士は、仏教にでも帰依していたのか、やたらとブッダの言葉を引用していたりしました。

もしかすると、自分が人生を賭けて研究し続けた「パンスペルミア説」というものが、ホイル博士本人が「科学的に納得できる」形で証明されるということがとても難しいことであるということがわかってしまったのかもしれません。




宇宙時代の区切り、あるいはひとつの終焉に進む中で

ホイル博士は晩年の著作で、

「無限の宇宙が存在する」

というブッダの「宇宙の無限と永遠性」について述べていますが、計算式上ではともかく、「永遠」を実験的、あるいは実証的科学で証明することは難しいことだと思います。

もちろん、私は科学とか計算式の詳しいことはわからないですが、もし「計算」でそれが可能だとしても、誰にでも現実にわかる形として証明することは難しいことだと思います。

あと、「宇宙探査の時代がひとつの節目を迎えているという感じがする」ということもあります。

最近の、

太陽系の宇宙線量が異常に増加している : 仮にオリオンが 2020年代に有人火星ミッションをおこなった場合「 300日」で宇宙飛行士たちの身体は被爆の限界値に達する
 2014年12月08日

という記事などでも書きましたけれど、今後、太陽活動が低下し続けた場合、太陽系の宇宙線の量は増え続け、有人宇宙ミッションが厳しい状態にさらされる可能性があります。宇宙線の量が極端に増え続ければ、無人探査機への影響も出て来るかもしれません。

あるいは、宇宙ミッションは、各国の経済状態とも関係します。

もしも、ですけれど、今後、先進国などで途方もない経済崩壊が起きたような場合は、もはや宇宙探査や開発どころではなくなるはずです。

そんなような経済崩壊が来るのかどうかは私にはわかりません。
でも、そのような意見は根強くあり続けます。

そういうことも含めて、あらゆる面で、私は「宇宙時代はひとつの区切りを迎えた」と感じています。
あるいは「宇宙時代の終焉」といってもいいのかもしれません。

そういう時に、次に何が大事か、ということのヒントを、最近、うちの子どもが図書館で借りて家で読んでいた子ども本の最後の1行で知りました。

それは、ロバート・フローマンという人の書いた『もっとはやいものは − スピードの話』という絵本の体裁のものでした。

読んだ後に子どもが、

子ども 「おとうさん、1番早いものは何だったと思う?」
わたし 「ま……いきなり答えを言ってしまうのも悪いが、光」
子ども 「そう思う?」
わたし 「え? そうじゃないの」
子ども 「じゃあ、読んでみて」


と本を渡され、そのページには以下のように書かれていました。
すでに「1番早いものは光」と書かれていた後の下りです。

『もっとはやいものは − スピードの話』最終ページより

宇宙船が、光ほどのはやさでとぶとしても、太陽にいちばんちかい恒星にたどりつくのに、4年以上かかるだろう。

けれども、あっというまに、その星にいける方法がある。

世界一よく見える望遠鏡でみわたせる宇宙のはしから、光がとんでくるのに、何十億年という年月がかかる。

ところが、あなたの心のなかでは、あっというまにそのくらいの距離を、それどころかもっと遠くまで、とんでいくことができる。

あなたの考える力、想像する力は、いつでも、どこでも、すきなところへ、すきなはやさで、いくことができる。

あなたの想像力は、なによりもいちばんはやいのだ。

なんという真理!

目からうなぎ(こわいわ)。

もし、物理的な宇宙時代が終わった時には「あなたの想像力は、何よりもいちばんはやいのだ」という言葉を思い起こしたいと思います。



  

2014年10月27日



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▲ 2014年10月14日の米国ニュー・サイエンティストより。






 


彗星の香り…それは「強烈な悪臭」だった

今年夏に書きました、

アイスランドの火山の状況のその後と、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
 2014年08月29日

という記事で、「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」というものを取り上げたことがあります。

欧州宇宙機関( ESA )の観測衛星ロゼッタが「 10年 5ヵ月の旅」を経て 8月 6日に、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の軌道に入ったという報道をご紹介したものでした。ロゼッタは、今年の 11月にはこの彗星に着陸する予定です。

そのチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星ですが、大きさは、最大部分で約3キロメートルある彗星で、下の写真のような形をしています。

67p.jpg


現在、観測衛星ロゼッタは、この彗星の観測と分析をおこなっているわけですが、最近、ロゼッタが、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の「匂い」のデータを送信してきました。

そして、その匂いが「きわめて悪臭」だということがわかったのですね。

後で再びふれますが、これは、過去記事の、

宇宙空間に「強烈な匂い」が漂っていることを知った日: 「それは焼けたステーキと金属の匂い」と語る NASA の宇宙飛行士たち
 2012年07月24日

などとも関係しそうな話でもあると共に、この観測結果は、彗星が単なる無機的な氷の塊ではないことを意味します。

ロゼッタには、成分の分析のための「機械の鼻」がついていて、それによって緻密に成分を分析するのですが、送られてきたデータの主な成分は、

・硫化水素
・アンモニア
・シアン化水素
・ホルムアルデヒド
・メタノール
・二酸化硫黄


などで、つまり、この彗星は硫黄やらアンモニア臭やらが混合した「ものすごい悪臭」を発していることがわかったのです。

先に、冒頭のニュー・サイエンティストの記事の翻訳を載せておきます。

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Comet stinks of rotten eggs and cat wee, finds Rosetta
NewScientist 2014.10.24

彗星は、腐った卵や猫のおしっこの悪臭を放つことを探査機ロゼッタが発見

彗星とはどのような「匂い」がするものだと思われるだろうか?
その答えを端的にいえば、かなりひどい匂いのようだ。

欧州宇宙機関( ESA )の彗星探査衛星ロゼッタから送信されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のデータからは、この彗星からは腐った卵や猫の尿やアーモンドの匂いなどが混合した匂いが放たれていることが明らかとなった。

しかし、この悪臭は、実は朗報といえる。

この悪臭の背後にある硫化水素、アンモニア、および、シアン化水素は、凍結した水と二酸化炭素と混合されたものだが、ロゼッタの分光計がこのような様々を検出するとは誰も思ってはいなかったのだ。

成分中には、さらに、ホルムアルデヒド、メタノールおよび二酸化硫黄が含まれていた。

「これは本当に素晴らしいものです。10年待ち続けた後、突然、私たちの前にこのようなもの(匂いの成分のこと)が現れたのです」

と、スイス、ベルン大学のカスリン・アルトウェッグ( Kathrin Altwegg )教授は言う。

アルトウェッグ教授は、 ROSINA と呼ばれるロゼッタのイオン分析計と中性分析計、つまりロゼッタの機械の「鼻」の担当者だ。

「驚くべきは、太陽からこれだけの距離がありながら、非常に豊富な化学的性質を持っているということです」

氷の彗星がさらに熱を帯びると、 ROSINA は、より複雑な分子を検出することができるであろう。
アルトウェッグ教授は、それらの匂いの成分が共通の発生起源を持っているかどうかを判断するために、他の氷玉とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の分子を比較しようとしている。

彗星は、太陽系の初期の時代から残ったビルディング・ブロックであり、彗星観測衛星ロゼッタの目的のひとつが、それらの彗星がすべて同じ発生源から来ているものかどうかを同定することにある。

もし、彗星それぞれの発生源が違った場合、それは地球上に生命が発生するために必要な分子の起源を説明することができる可能性がある。

ちなみに、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の匂いは非常に低い成分であり、人間の鼻では気づかない程度のものだ。「私たち人間が彗星の上に立っても、この匂いを検出するには犬の力を必要とするでしょう」とアルトウェッグ教授は言う。





翻訳記事はここまでです。

それにしても、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から検出された成分を見ていると、

「妙に毒性の強いものが多い」

ことに気づきます。

今回の彗星から検出された成分の性質は下のようなものです。
すべて Wikipedia の説明を引用しています。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から検出された成分

硫化水素 → 水によく溶け弱い酸性を示し、腐った卵に似た特徴的な強い刺激臭があり、目、皮膚、粘膜を刺激する有毒な気体である。

アンモニア → 無機化合物。特有の強い刺激臭を持つ。

シアン化水素 → メタンニトリル、ホルモニトリル、ギ酸ニトリルとも呼ばれる猛毒の物質である。

ホルムアルデヒド → 有機化合物の一種で、最も簡単なアルデヒド。毒性は強い。

メタノール → 有機溶媒などとして用いられるアルコールの一種である。

二酸化硫黄 → 無機化合物。刺激臭を有する気体で、別名亜硫酸ガス。自動車の排気ガス等で大量に排出される硫黄酸化物の一種であり、環境破壊、自動車公害の一因となっている。

彗星とは、かくも毒々しいものでもあるようですが、しかし一方で、この成分たちからは、一部、「生命」の雰囲気が漂います。生命というか「有機物」といったレベルでの話ですが、少なくとも、彗星は「単なる汚れた氷の塊ではない」ということが今回のデータでわかったのではないかと感じます。

さて、この「宇宙の悪臭」ですが、上にもリンクしました過去記事「宇宙空間に「強烈な匂い」が漂っていることを知った日……」では、宇宙飛行たちが「自分が宇宙空間で感じた匂い」を、考え得る限り挙げたディスカバリーの記事をピックアップしていますが、宇宙空間というのは、おおむね、

・アジア料理の香辛料
・ガソリン
・汗をかいた足の匂い
・体臭
・マニキュア取りの薬剤
・肉を焼いた匂い


などが混じったような強烈な匂いがするのだそうです。

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▲ 何となく「無臭」のように思える宇宙空間には、実は「強力な匂い」が漂っています。


上の記事では、宇宙ステーションでの任務をおこなった NASA のドン・ペティット宇宙飛行士が、自らのブログに記した以下の文章をご紹介しています。

「宇宙空間の匂いを説明することは難しいです。これと同じ匂いを持つものの比喩ができないのです。強いていえば、『チキンの料理の味がする金属の匂い』というような感じでしょうか。甘い金属のような感覚の匂い。溶接とデザートの甘さが混じったような匂い。それが宇宙の匂いです」

どうして「匂い」がするのかというと、その理由として、現在の科学では、

・酸素原子
・イオンの高エネルギーの振動

などの理由ではないかとされていますが、しかし、よくは分からないながらも、そのような理由で、

・アジア料理の香辛料
・ガソリン
・汗をかいた足の匂い
・体臭
・マニキュア取りの薬剤
・肉を焼いた匂い

の匂いが全部出ますかね?

特に「汗をかいた足の匂い」などという臨場感に富んだ匂いからは「生物」という雰囲気をとても感じます。

ちなみに、私自身はぶっちゃけ、これらは「有機物や、大量の微生物」だと思っていますし、あるいは、彗星の「悪臭」を作っているものもそうだと思います。

とはいえ、そのようなことを私のような科学の素人が書いても説得力がないわけで、ここは、現代物理化学の神様的な存在でもあるスヴァンテ・アレニウスと、フレッド・ホイル博士にご登場いただきたいと思います。



宇宙の「チリ」自身がすべて生命だと考えたアレニウス

スヴァンテ・アレニウスという科学者は、Wikipedia の説明をお借りしますと、

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スヴァンテ・アレニウス( 1859 – 1927年)は、スウェーデンの科学者で、物理学・化学の領域で活動した。物理化学の創始者の1人といえる。1903年に電解質の解離の理論に関する業績により、ノーベル化学賞を受賞。

という方です。

そのアレニウスは、19世紀以降の科学者の中で最初に「地球の生命は地球外の宇宙から飛来してきたものだ」とする説を持ち、この説に「パンスペルミア」という名をつけました。この言葉はギリシャ語で、「パン」は日本語で「汎」を意味して、「スペルミア」は「種」という意味です。

要するに、パンスペルミアという言葉自体は、

「生物のタネは(宇宙も含めて)広くそのすべてにわたる」

という意味の言葉で「どこにでも生物はある」ということを表しただけであり、言葉の意味自体は難しいものではないです。

宇宙塵自身が生命であることに言及した 100年前のノーベル賞学者の実験
 2011年05月07日

という過去記事にも抜粋したことがありますが、「エピソードで知るノーベル賞の世界」というサイトにはこのように記されています。

「生命の地球外起源説」にも挑戦したアレニウス

アレニウスは、化学の分野のみならず、あらゆる科学にも通じていた。彼が貢献しなかった科学の分野はほとんどなかったとも言われている。

彼は、宇宙空間を漂っている「生命の種子」を想定し、これが太古に地球上に降り注いだ可能性もあり、地球上の生命の発生にもつながったのではないかとする「パンスペルミア説」(汎宇宙胚種説)なども提唱。

彼は、そうした生命種子は「太陽風を受けて、秒速100Kmの速度で宇宙を旅してきた」とまで計算していた。

その後、20世紀に入ってから、「地球の生命は、原始の海の中で《偶然》発生した」という珍説が登場して以降、生命が偶然に発生したという説(自然発生説)が科学上での一般学問となっていたことがありました。

さすがに最近では、遺伝子学などが進み、生物のあまりにも複雑な構造を知るにつれて、この「自然発生説」を信じる科学者はあまりいないと思われます。

たとえば、上のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の記事にも、

> もし、彗星それぞれの発生源が違った場合、それは地球上に生命が発生するために必要な分子の起源を説明することができる可能性がある。

というような記述があることからわかるように、いつの間にか、地球の生命は宇宙からもたらされたとする考え方が、現在の科学界ではむしろ主流になっているという事実があります。

生物学や生物の DNA 構造などが明らかになるにつれて、「物質が偶然組み合わさって DNA やアミノ酸ができて、そこから細胞ができ、そしてそこから何百万という種類の生き物ができる」などということは「無理だ」と考えざるを得なくなったということもあると思います。

それほど生命の構造は複雑です。

だから、科学の探求を真剣におこなった科学者ほど、「神」や「この世の始まり」ということを多く考えるものなのかもしれません。

近代物理学の祖であるニュートンが、現代では一種のオカルト扱いをされているエメラルド・タブレットの解読で「この世の仕組み」を解明しようと試みたり、前述したアレニウスが、『宇宙の始まり』という、天地創造神話を科学的側面から検討するような著作を記したりするというのも、そのようなことかもしれません。

それほど、この「現実の世界」は複雑で「奇跡のようなもの」とも言え、優秀な科学者になればなるほど、そのことを強く感じる傾向はあるようです。

フレッド・ホイル博士も、晩年は、お釈迦様の言う「無限の宇宙」を自著で語っていました。


話をパンスペルミアに戻しますと、結局、

宇宙塵そのものが生命(アミノ酸、 DNA 、バクテリアなどを含めて)である

ということなのだと、私はアレニウスの言葉を解釈しています。

宇宙塵などと書くと難しいですが、宇宙塵というのは Wikipedia の説明を借りますと、単に、

宇宙空間に分布する固体の微粒子のことである。

というもので、つまり、宇宙空間に漂っている微粒子の総称です。

アレニウスは、それらの宇宙塵を含めて、

> 宇宙空間を漂っている「生命の種子」を想定した

のですが、しかし、これだけでは問題があります。

塵は推進力を持ちません。

単に「漂う」だけでは、宇宙空間に生命(あるいは DNA やアミノ酸などの生命の素材)が存在していたとしても「宇宙塵そのものに推進力も方向性もない」という重大な問題があります。

アレニウスは「太陽風に乗って、宇宙空間を生命が移動する」と想定していたようですが、それだと、生命の移動が太陽活動の強弱に支配される(太陽活動が弱い時には推進力が弱い)と共に、太陽から遠く離れた場所に生命が到達することはなくなってしまいます。

宇宙空間全体に生命を行き渡らせるためは、太陽とは関係なく、「何らかの推進力」が必要です。

そんな中で、彗星の観測と分析の中から

「彗星は微生物の塊なのではないか」

とし、彗星こそが生命の運搬役ではないかとしたのが、フレッド・ホイル博士でした。

彗星は自ら軌道をもち、推進力を持ちます。

推進力を持つものには小惑星もありますが、小惑星が「岩」なのに対して、彗星は基本的に「氷の塊」ですので、衝突の際や、あるいは太陽のような熱をもつ天体近くを通過する際でも内部が保護されやすい構造です。

また、今回のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の「匂い」は、彗星が、単なる氷ではないことも示唆していますが、この「匂いの原因」の可能性として考えられるのが「バクテリア(細菌)」です。

これは、フレッド・ホイル博士たちが、1980年代に彗星の尾が「バクテリアである可能性」を観測・分析したことによります。




彗星は生命の運搬を担う

この観測については、過去記事の、

良い時代と悪い時代(3): 2013年の巨大彗星アイソンのこと。そして宇宙から地球に降り続ける生命のこと
 2012年10月11日

に書いたことをそのまま抜粋したいと思います。

ちなみに、彗星は以下のような構造となっています。

comet-core.jpg
コニカミノルタ プラネタリウム


ここから抜粋です。

良い時代と悪い時代(3)より

彗星はそのほとんどが軌道周期を持っており、ある意味では、「自主的に移動」しています。

さらに、彗星の内部に微生物が存在していれば、仮に彗星が大気を持つ惑星に突入しても、大きさにもよりますが、衝突と摩擦による熱から「内部」が守られる可能性があります。

このあたりは何年か前にクレアなひとときの「宇宙はすべて生き物からできている」に書いたことがあります。

そこに英国カーディフ大学のチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士が、1986年に、シドニーのアングロ・オーストラリアン天文台にあるアングロ・オーストラリアン望遠鏡で観測した、「ハレー彗星の赤外線吸収スペクトル」のグラフを載せたことがあります。

下のグラフです。

fred-comet.jpg

この図が何を示しているかというと、「ハレー彗星と地球の大腸菌は、成分分析上で一致した」ということです。

この観測結果が「彗星は微生物の塊であるかもしれない」という推測につながっています。

また、隕石の場合にしても彗星の場合にしても、大気層に突入する際には表面は熱と衝撃によって、分子レベルで破壊されますので( DNA も残らないということ)、「守られる頑丈な外殻」は必要だと思います。そして、それが彗星の構造とメカニズムなのだと私は思っています。

あるいは、「摩擦熱の問題でそもそも微生物しか大気圏を突破できない」ということもあります。

抜粋はここまでです。

上にある「摩擦熱の問題」というのは「彗星の破片は時速3万6千キロ(秒速 10 キロ)という超高速で移動している」ということと、地球を含めた惑星が「非常に高速で自転している」ということと関係します。

大気のない惑星にこれらが衝突すると、その摩擦で生じる衝撃によって、その物体は分子レベルでバラバラに破壊され、生物が生き残る可能性はありません。しかし、地球には大気があり、高層圏では気体の密度が低いために、侵入した破片の速度は減速され、分子レベルでの破壊は免れます。

それでも摩擦による非常に高い熱が生じるのですが、摩擦熱は、「小さな物質であればあるほど、熱も小さく」なります。

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▲ 大きさの比較。髪の毛の直径が 0.1ミリメートルで、細胞は髪の毛の直径の10分の1の大きさ。大腸菌は髪の毛の直径の 100 分の 1 の大きさ。ウイルスは、大腸菌の 10 分の 1 なので、髪の毛の……えーと、計算できないですが、このようになっています。図は、東京都臨床医学総合研究所より。


摩擦熱については、フレッド・ホイル博士の著作『生命はどこからきたか』から抜粋します。

フレッド・ホイル『生命はどこからきたか』より

地球大気に秒速 10キロのスピードで物体が突っ込んできた場合、その摩擦熱は物体の大きさ(粒子の直径の4乗根)と比例する。その場合、物体が針の先くらいのものでも、摩擦温度は 3000度に達し、ほとんどの物質は残らない。あるいは生物なら生きられるものはいないはずだ。可能性があるとすると、それより小さなものだ。

たとえば、細菌やウイルスくらいの大きさの粒子なら、突入した際の摩擦温度は約500度となる。摩擦で加熱される時間は約1秒間と推定される。この「1秒間の500度の状態」を生き残ることができない限り、生物は彗星に乗って地球に侵入してくることはできない。

ホイル博士は、英国カーディフ大学のチームと共に執拗な大腸菌の実験を続けます。そして、大腸菌たちは、「1秒間の 500 度」をクリアしたのでした。

つまり、 DNA や、アミノ酸といった「生命の部品」ではなく、大腸菌のような、生物として完成している大型の生き物でも宇宙から降ってくることが可能であることがわかります。ウイルスは細菌よりさらに小さいですので、摩擦熱も小さくなり、いくらでも地球に降り立つことが可能だと思われます。


この地球において、病気が「突然現れる」ということを不思議に思われたことはないですか?

どんな細菌でもウイルスでも歴史の中で「唐突に」現れる。


それほど広大とも言えない地球で、しかも、たとえば、エイズにしてもエボラにしても、サルとかコウモリなどの動物由来でヒトに伝わったとされていますが、人間より短い寿命の彼らが何千万年も代々、ウイルスを温存して伝えてきた? このことは昔から不思議に思っていました。

まあしかし、そのことはともかく、今回の彗星の「匂い」で、さらに彗星そのものが生命の塊であることを確信した次第です。



  

2013年09月23日



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「このような大きさの粒子が地球から成層圏まで運ばれることが可能なメカニズムは存在しないため、この生物学的存在は宇宙由来であると結論付けることができます。私たちの結論は、生命が絶えず宇宙から地球に到達しているということです」 --- 分子生物学者ミルトン・ウェインライト教授(英国シェフィールド大学) Earthfiles - "Unusual Biological Entities” from Outer Space" より。


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▲ 英国シェフィールド大学の研究チームにより上空 25キロの成層圏で回収された珪藻(ケイソウ)という単細胞性の藻類に属する生命。






 

成層圏の生命


先日、英国シェフィールド大学というところから「地球の大気から彗星由来と考えられる生物学的存在を回収」という主旨の論文が発表されていることを知りました。

上の写真が論文に掲載されているその珪藻といわれる生命の写真です。

概要は下にあります。

ISOLATION OF A DIATOM FRUSTULE FRAGMENT FROM THE LOWER STRATOSPHERE (22-27Km)-EVIDENCE FOR A COSMIC ORIGIN
下部成層圏(22〜27キロ)から珪藻の被殻の断片を分離 - 彗星由来である証拠


これに関しての科学記事がいくつかのメディアで取り上げていました。
下は先週末の米国デイリーギャラクシーの記事です。

dg-2013-09.jpg

Daily Galaxy より。


今日は上の記事をご紹介したいと思いますが、これは、パンスペルミア説という、つまり、「宇宙全体に生命種が存在している」というこのブログ最大のテーマのひとつとも関係することですので、翻訳の前に補足説明をしておきたいと思います。





西欧で 50年ぶりの実験再開の中で


タイトルに「パンスペルミア説を証明できる実験が数十年ぶりに再開」というように書きましたが、かつて、この実験は米国NASAとソ連の国立研究所によっておこなわれていた事実があります。そして、共に「理由が明らかにされないまま実験は打ち切られた」ものでもあるのです。

これに関しては、フレッド・ホイル博士の『生命・DNAは宇宙からやってきた』という著書の中に記述があります。


(ここから抜粋)




『生命・DNAは宇宙からやってきた』第2章「地球大気へ侵入する彗星の物質たち」より
フレッド・ホイル / チャンドラ・ウィクラマシンゲ共著


1960年代には、アメリカの科学者たちが高度 40キロメートルまで気球を飛ばして、成層圏にバクテリアがいるかどうか調査した。その結果、ごく普通のテクニックで培養できる生きたバクテリアが回収され、実験者を当惑させた。

さらに問題だったのは、バクテリアの密度分布だった。成層圏の中でも高めのところでは、1立方メートルあたり平均 0.1個のバクテリアがいて、低めのところでは 0.01しかいないという結果になったのだ。

高度が高いほど多くのバクテリアがいるという結果は、バクテリアが地上から吹き上げられたと考える人々が期待していたのとは正反対の傾向だった。不思議な結果に、研究資金を出していたNASAはこれを打ち切ってしまった。

1970年代後半には、旧ソ連で同じような実験が行われた。彼らは、成層圏より上の中間層にロケットを打ち上げて、高度 50キロメートル以上の高さでパラシュートにくくりつけた検出装置を放出した。パラシュートが落下するにつれて、いろいろな高さで次々にフィルムが露出され、粒子を付着させては密封された。

回収されたフィルムを研究室に持ち帰って微生物を探したところ、 50から 75キロメートルの高度について、バクテリアのコロニーが 30個ほどできた。中間層は空気が薄く、バクテリアはすみやかに落下する。したがって、中間層のバクテリアの密度は成層圏では数ケタ低いはずだ。それにも関わらず、これだけの結果が出たのである。

なお、この実験もたったの3回で打ち切られてしまった。

アメリカと旧ソ連で行われた実験は、はからずしてバクテリアが宇宙からやってきたというわれわれの仮説に見方してしまった。





(抜粋はここまで)


この時の実験では今回の英国の実験よりもさらに高い上空 40キロ、あるいは 75キロというところでも生命を回収しているのですが、地球の地表からそのような上空にまで生命が運ばれるメカニズムというのは地球には存在しないことを少しご説明できる範囲でしてみたいと思います。





地球の大気構造は「下から上へは上がりにくい」


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▲ 正確なところではないですが、上空の大気の様子を記してみました。


高層の大気圏で微生物が発見されると、「地球の地表から上へ飛ばされていったのではないか」と思う方も多いと思うのですが、その概念が適用できる高さにもある程度の上限があります。

今回の英国の大学での実験では、高層 27キロメートルにまで気球を上げていますが、このような高さにまで微生物などの小さな物質を押し上げる上昇気流は地球には存在しないのです。

気流以外に上空に大気を押し上げる自然現象として代表的なのは火山の噴火ですが、ちょうど今年の夏の記事の、

世界の火山活動がマックスへと向かう気配を見せている中で知る「火山のマグマは噴火後たった数日で再充填される」という事実
 2013年08月19日

の中で、いくつかの最近の火山の大噴火の噴煙について記しています。

日本では8月に桜島が激しい噴火を続けていましたが、それでも高さ5キロ。

sakurajima-2013-08.jpg


他に最近の大きな噴火では、

・カリムスキー火山(カムチャッカ)の噴煙が 7.5キロメートルの高さ
・パブロフ火山(アラスカ)の噴煙が 8.5キロメートルの高さ


などとなっていて、かなり大きな火山噴火でもこのあたりが上限のようです。

もっとも、20世紀で最大の噴火を起こしたフィリピンのピナツボ火山の 1991年の噴火などは、噴煙が最大で 34キロメートルにまで上り、このレベルの噴火が日常的に世界でいつも起きているのなら、成層圏くらいまでなら微生物が噴き上げられることもあり得るかもしれません。

そのためには、たとえば、毎年何度かピナツボ火山レベルの噴火が世界のどの国でも発生し続ける必要がありますけれど、そんなことはありえないです。

何より、 1960年代の NASA の実験や、 1970年代のソ連の実験ではピナツボ火山の 1991年の大噴火のような事象でも届かない上空での生命の回収をおこなっています。

もともと高層の大気圏は、上にも下にもどちらも「垂直方向の動き」が少ないそうなのですが、成層圏を越えて高層にいけばいくほど大気が薄くなり、真空に近い状態だと「ものは落下していく」ということになります。

なので高層大気圏では、下に現象はあっても、上に行く現象は存在しません


そういう意味でも、そこで見つかる生物が宇宙由来であるということには特に不思議なものではないと思うのですが、それでも、たとえば、今回の下の記事にも懐疑派の人が出てきますが、いかようにも反論のできる余地はある話でもあるようです。


ちなみに私自身は、パンスペルミア説が生命由来の学説として確立するとかしないとか、そういうことには興味がありません。「学説」は学者の人たちの問題で、たとえば、私などは学説がどうあろうと「宇宙全体に生命が普遍的に存在している」という考えが変わることはもうないです

ただ、私はパンスペルミア説を足がかりとして、そこから生命の永遠性(あるいは DNA を規準とした「永遠の連続性」)についてを知りたいとは思っています。


そのあたり、少し前の記事の、パンスペルミア関係の記事、

「生命発祥の要因は宇宙からの彗星によるもの」という学説が確定しつつある中でも「幻想の自由」の苦悩からは逃げられない
 2013年09月18日

でも少し書きましたけれど、しかし、このことを書き出すと、また無意味に長くなりますので、今回はそろそろ翻訳記事に入ろうと思います。

ここからです。





Evidence of Extraterrestrial Life found in Earth's Atmosphere
Daily Galaxy 2013.09.21


地球の大気で地球外生命体の証拠が発見される


carbon-01.jpg

▲ 米国ローレンス・バークレー国立研究所の放射光実験 ALS でのX線顕微鏡で撮影されたコンドライト隕石の中の有機炭素。この画像では、炭素は赤で示され、鉄は青、そして、カルシウムはグリーンで示される。


英国シェフィールド大学の科学者たちは、彼らが地球外生命体の証拠を発見したと主張している。研究チームは 25キロメートル上空の成層圏に気球を打ち上げた。そして、それらの気球は、地球に戻ってきた時に小さな生物を運んできたのだ。

研究チームを率いたミルトン・ウェインライト( Milton Wainwright )教授は「これらの生物的存在が地球外の起源のものであることは 95%の確率で確かだといえます」と言う。

さらに教授は以下のように続ける。

「もし、私たちの確証が正しければ、宇宙空間に生命が存在することを意味し、そして、それが地球に来ている。これは、地球の生命の起源が宇宙にあることを示しているものです」。

「多くの人々は成層圏に漂流している生物学的な粒子が、地球上から上空まで上がったという仮定を示しますが、成層圏で一般的に見られるサイズの粒子が地上から 25キロメートルもの高さにまで噴き上げられる可能性はないのです」。

しかし、天文学者のフィル・プレイト( Phil Plait )氏は、この「生物的な物質」のように見えると科学者たちが述べる物質は、宇宙外から来たものではないだろうと述べる。

プレイト氏は、「彼らの主張には根拠がないと考えられる多くの理由が存在します。たとえば、見つかった珪藻(ケイソウ)が非常に綺麗で無傷であるという点などもそうです。もし、その珪藻が彼らの言うように彗星や流星から来たというのなら、この珪藻のように断片が綺麗なままである可能性はほとんどないはずです」と言う。

プレイト氏は、また、シェフィールド大学の科学者たちの理論で、地球からの微生物が風と乱気流により長い期間の中で空中に展開することはないとした意見にも懐疑的だ。

プレイト氏は、この研究結果が英国バッキンガム大学宇宙生物学センターの所長であるチャンドラ・ウィクラマシンゲ( Chandra Wickramasinghe )氏の研究に影響を与える可能性があるという。

ウィクラマシンゲ氏は、英国の偉大な天文学者だった故フレッド・ホイル卿と共に、生命は宇宙全体を満たしており、彗星や流星がその生命を運んでいるということを示唆し続け、その理論を「パンスペルミア説」として知られる理論として、ホイル卿と共同で研究した。

宇宙科学専門誌ジャーナル・オブ・コスモトロジー( Journal of Cosmology )に掲載された『新炭素質隕石の中の化石珪藻』と題された論文の中で、ウィクラマシンゲ氏は、彼が 2012年 12月 29日にスリランカのボロンナルワ村近くに落下した隕石の研究を進める中で、生命は宇宙を通して存在しているという強力な証拠を発見したと主張した。

プレイト氏は、これに関しても「ウィクラマシンゲ氏はすべてにおいて飛躍し過ぎです。それらが宇宙からやって来たという証拠はまったくないのです」と述べる。

しかし、シェフィールド大学の科学者たちはさらに複数のテストを今後おこなう。たとえば、特定の同位体比が地球の生物のそれと一致しているかどうかを決定する「同位体分別」などだ。

ウェインライト教授たちは、彼らの起源が地球外であることを確信している。彼らの研究の続報を待ちたいところだ。





ここまでです。

上の記事の中でやや残念だったのは、シェフィールド大学の調査方法です。最初に「微生物が宇宙から来た」ということを立証したいためにこの実験をおこなったのなら、旧ソ連の実験のように高度を変えて数多く採取をすべきだったと思います。

その理由は、翻訳記事の上に抜粋しましたフレッド・ホイル博士の著作にあるこの部分を確かめるためです。


成層圏の中でも高めのところでは、1立方メートルあたり平均 0.1個のバクテリアがいて、低めのところでは 0.01しかいないという結果になったのだ。



要するに、「高い場所になるほど生命(微生物)の数が増えていく」ということが確認されれば、上(宇宙)からやって来たという大きな証明のひとつになるはずです。

また、「特定の同位体比の地球の生物との一致」というようなことが書かれてありますけれど、これらの宇宙からきた微生物は結果的には、地球の単なる微生物として生活するのですから、「地球の生命と違う部分がない」はずで、そこをいくら研究しても、意味がないように思います。

こういうような科学者たちの方々でも、いまだに「宇宙の生物と地球の生物は違う」と決めつけているような感じがありますけれど、宇宙全体を同じ生命体系が貫いているのだとすれば、環境により生きられる生命種が違うだけで、どれだけ地球から離れた宇宙でも、基本的には大差のない DNA 構造の生物が生きているはずだと私は思っています。



  

2013年03月07日



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「宇宙全体に DNA ブロックが散らばっている可能性」を示唆する論文からふたたび議論が活発化するパンスペルミア説

gin-dna.jpg

▲ 銀河中心の星間雲でも生命の素材の有機物が作られている可能性が大きい。






 



宇宙に疎外された宇宙人みたいな気分の春の日

米国の科学記事で「パンスペルミア説」という文字を久しぶりに見たので、今回はその記事を翻訳してご紹介します。

ちなみに最近、私の「双極」のアップダウンがさらに激しくなっていて、ウツが本格化する日などには、本当に生きているのがイヤで(自分がこの世に存在していることに穢らわしさを感じる)、昨日なんかも1日ほとんど動けずに寝てまして、 In Deep の記事は更新できませんでした。

若い時にもウツは多かったですけど、昔と違うのは「ひたすら自己否定に向かう」というところで、他人や周囲への攻撃的な面はほとんどなくなっています。

カート・コバーン予備軍のような感じはあります。

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▲ 90年代の米国で最も人気のあったバンドのひとつニルヴァーナのカート・コバーンの自筆の遺書の最後の部分。「 I LOVE you . I LOVE you (愛してる 愛してる)」で終わっています。






「生命の生まれた場所」に対しての最終的な可能性の提示


人の遺書を参考にしている場合でもないのですが、まあ最近の私はそんな感じで、今日もまだ本調子ではないですので、あまり前振りなしで翻訳に入ろうと思います。

本題はタイトルの通りですが、2月に「天の川銀河の中心付近の星間雲の状態のシミュレーション実験」に関しての科学論文の発表がありました。その中で DNA ブロックは宇宙空間でも作られているということが示されたということについての記事です。

もちろん、DNA そのものが見つかったということではなく、DNA を構成する要素となり得るもの(星間分子と呼ばれるもの)の話なのですが、それは下のような感じのもののようです。

星間雲で形成され得る物質

dnablock2.gif

Daily Galaxyより。


図に入れた日本語は読みにくいかもしれないですので、下にも記しておきます。

Methyltriacetylene メチルトリアセチレン
Acetamide アセトアミド
Cyanoallene シアノアレン
Propenal プロペナール
Propanal プロパナール
Cyclopropenone シクロプロペノン
Methylcyanodiacetylene メチルシアノジアセチレン
Ketenimine ケテンイミン
Cyanomethanimine シアノメタンイミン


となります。

さすがに個別にこれがどんなものかは私にはわからず、日本語にするので精一杯でしたが、そのうち、調べたいと思っています。

(追記) 上のリスト以外にも、星間の分子については、星間分子の一覧という「天体望遠鏡の電磁波観測により発見され、同定された星間分子」の一覧が載せられているページがあることを教えていただきました。



こういう「宇宙に DNA の素材が散らばっているかもしれない」という可能性の中で、再びパンスペルミア説も大きく議論されています。

パンスペルミア説はこの In Deep を始める動機となった最大のテーマとなる学説ですけれど、先述しましたように、今の私にはそれを熱く語ることのできる情熱が欠如しておりますので、「星間雲」と「パンスペルミア説」をそれぞれ Wikipedia から抜粋しておきます。


パンスペルミア仮説

パンスペルミア仮説とは、「宇宙空間には生命の種が広がっている」「地球上の最初の生命は宇宙からやってきた」とする仮説である。

この説のアイディア自体は元々は 1787年ラザロ・スパランツァーニによって唱えられたものである。この後、1906年にスヴァンテ・アレニウスによって「panspermia」という名前が与えられた。

この説の現代の有名な支持者としてはDNA二重螺旋で有名なフランシス・クリックほか、物理学者・SF作家のフレッド・ホイルがいる。

アレニウスは以下のように述べた。

「生命の起源は地球本来のものではなく、他の天体で発生した微生物の芽胞が宇宙空間を飛来して地球に到達したものである」。





星間雲

ngc660.jpg

星間雲(せいかんうん)は、われわれの銀河系内や銀河系外の星雲(小宇宙、外宇宙ともいう)にみられるガス・プラズマ・ダスト(塵)のあつまりを総称したものである。



私の地球の生命の起源に関しての考え方は、上のパンスペルミアの説明にあるとおりですが、「アレニウス」という人については震災の後の頃に、

宇宙塵自身が生命であることに言及した 100年前のノーベル賞学者の実験
 2011年05月07日

という記事に書かせていただいたことがあります。

arrhenius.jpg

▲ 実験中のアレニウス。1900年代の初頭。


アレニウスは、

> 「生命の種子は、太陽風を受けて、秒速 100Kmの速度で宇宙を旅してきた」


と記述していました。

もっとも、アレニウスがノーベル賞を受賞したのは、パンスペルミア説とは関係なく、「電気解離の理論」というものによってした。その貢献で 1903年にノーベル化学賞を受賞しています。

その後、100年以上、パンスペルミア説は無視されたままです。

はっきり言わせていただきますと、パンスペルミア説は、まるでオカルトか、スピリチュアルの世界の話のような扱い方をされてきたような部分がありますが、この何世紀もの間に、多くの科学者たちが情熱と人生を傾けた「現代科学の世界の最大のテーマ」の1つです。

しかし、この 200年くらいの間にそれは見事に「握りつぶされた」という感じがあります。いろいろな理由はあるでしょうけれど、その背後に、進化論と現代宇宙論(ビッグバン理論)があることは確かだと思われます。

もうそろそろ進化論だとかビッグバン理論だとかいう科学論から人類は脱却すべきではないかと本気で思います。もうそんなに時間がないと思うのですよ、地球とかの意味も含めていろいろな意味で。

ちなみに、In Deep パンスペルミアのカテゴリーはこちらです。


では、ここからカリフォルニア大学の最近の論文を紹介した記事の翻訳です。





Panspermia: New Evidence Comets Seeded Life On Earth
IIAI 2013.03.05


パンスペルミア説 : 彗星が地球に生命をもたらしたことに関しての新しい証拠


halley.jpg

▲ 彗星が地球に生命をもたらしている可能性を米国カリフォルニア大学の化学研究チームは述べた。


遠い宇宙での状況をシミュレーションした最新の実験によると、生命の複雑なビルディング・ブロック(生命の分子などの構造)は、星間での氷の塵の中で形成された後、地球へともたらされたかもしれないことを明らかにした。

カリフォルニア大学バークレー校の化学研究者たちの最新の研究では、すべての生命が共有するアミノ酸と関連する生命のビルディング・ブロックに必要な酵素や糖、タンパク質といった複雑な分子が、宇宙空間で形成されることが可能であることが提示された。この見解は、それらの生命の構成要素が、彗星や隕石によって地球にもたらされるという可能性をも示唆するものだ。

ハレー彗星のような彗星は、ジペプチドなどの複雑な分子の温床となりうる。そして、彗星は地球に衝突した際に、これらの分子、あるいは「生命の種(胞子)」を地球にばらまいている可能性がある。

これまで、地球の科学では、生命は地球での原始の海にその起源があると想定した中で生命起源の研究が続けられてきたが、地球の生命の起源についての新たな提示となり得る可能性がある。

今回のカリフォルニア大学バークレー校の実験では、二酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、プロパンなどの様々な炭化水素を含む空間でのシミュレートや、超低温の高度な真空状態内で宇宙線の状態を高エネルギーの電子でシミュレートした中で、複雑な有機化合物が形成、反応することが確認された。





ここまでです。

記事はわかりにくいですが、簡単に書くと「宇宙空間と同じ条件で有機物が形成され、化学的な反応が起きることが示された」ということのようです。

つまり、宇宙のどこでも生命、あるいは生命の素材が誕生し続けているという意味だと思います。



  

2013年02月19日



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latimes-2013-02-18.jpg

▲ 今朝のロサンゼルスタイムスの記事より。2月17日にフロリダで上のような隕石かもしれない(現時点では何かは不明)ものが目撃されたことついての報道です。なんだか毎日のように、この手の報道があります。






 


中世までの人間の大きな死因のひとつが「天体の衝突」だった


最近、天候が不安定なので、天気予報を見ます。昨日、夕食時に天気予報を見ようと NHK の7時のニュースの終わる頃にテレビをつけました。

天気予報が終わった後、「クローズアップ現代」が始まったのですが、先日のロシアの隕石爆発の事件の内容だったようです。「ようです」というのは、天気予報が終わったのでそのままテレビは消して、番組そのものは見ていないからですが、テレビをよく見るうちの奥さんは、「最近は、朝の番組とかでも隕石のことばっかりやってる」と言っていました。

わたし「今後どんどん増えて日常的になっちゃえば、大騒ぎしなくなるんじゃないの」
奥さん「また起きるってこと? テレビでは 100年に一回とか言ってるけど」
わたし「フレッド・ホイルっていう昔のイギリスの科学者がさ、時代によっては、一生のうちでひとりの人間が天体の衝突で死ぬ確率は 20パーセントだか30パーセントほどあったって書いてた」
奥さん「そんなに?」
わたし「大昔の話だけどね」


そんな話をしていたのですが、実際どのように書かれていたのか曖昧にしか覚えていなかったので、ホイル博士の本を見てみました。すると下のように書かれてありました。

この部分は、過去記事の、

「良い時代と悪い時代」(1): 500年ほど続いた「穏やかだけれど傲慢な時代」は終わろうとしているのかも
 2012年10月06日

の後半で、抜粋したフレッド・ホイル博士の『生命はどこから来たか』という著作の中にある下りです。

読みやすくするために改行を入れています。


『生命はどこから来たか』 エピローグより
 フレッド・ホイル著
 大島泰郎(東京工業大学名誉教授)訳


衝突によって死ぬ範囲を五〇〇〇平方キロメートルとすれば、地球の全表面積は一億平方キロメートルなので、一回の爆発で死ぬ確率は二万分の一となる。

一年に一または二回の割合で衝突があるとすれば、現在の交通事故と同じほどの確率となる。しかし彗星の群と遭遇する頃の、一年間に一〇〇回もの衝突があるとすれば、三〇年間に当たる確率は一五パーセントとかなり高くなる。

もっとも古代では、他の理由で死ぬ確率も同じくらいあったであろう。

さらに重要な結果は、三つの人口中心地帯のうち一つは完全に破壊されるであろということである。生き残った人は一〇〇キロメートル以上遠くから、空から火の雨が降るのを見ただろう。

過去一万年にわたる人類の歴史における文明の盛衰は、周期的またはほぼ周期的な彗星の衝突で説明できるだろう。衰退はほんの短期間で劇的に起きるが、繁栄は長く続く。

悪い時代は厳格な哲学や宗教が興り、途中の穏やかな時代になってそれらは円くなる。



上の文章に「悪い時代」という表現がありますが、このブログで昨年からたまに書くシリーズの「良い時代と悪い時代」というタイトルはそこから連想したものです。

フレッド・ホイル博士は、自身で言うところの「悪い時代」(天体の衝突が日常の時代)が「そう遠くない未来に来る」ことを確信していました(ホイル博士ご本人は 2001年に 86歳で亡くなっています)。


その「そう遠くない未来」は、上の著作の書かれた1990年代から「短くても数十年後には」と博士は思っていたようです。

とはいえ、実際は、先日のロシアの隕石程度の事件がこんなに毎日大きく報道されるほどで、今は「まだ悪い時代ではない」といえます。ホイル博士の書いていた「過去の地球の様相」は壮絶なものがあります。

たとえば、上の『生命はどこから来たか』には下の表がありますが、



著作では、下のような文章の下りもありました。

文中の「表1」とあるのが上の表です。


最初の氷河期が終わってからしばらくの間は、人類は農作を始めていなかったが、その後狩猟生活から抜け出し始めた。そして定住を始めた頃、ツングースカや、もっと強力な宇宙からの爆撃が頻繁に起こったことだろう。表1に示したすべてのレベルのことが繰り返し起こっただろう。



とあります。

先日のロシアの隕石を上の表と照らし合わせますと、「表の一番上の最も被害想定の少ないものの、さらに何分の1」という非常に小さなものとなり、地球の歴史の中での天体の事象としては、非常に小さな出来事であることがわかります。

その氷河期の後の頃、仮にホイル博士の言うように、上の表のレベルが繰り返し起きていたとすると、確かに大変な時代だったと思います。

そして、「その時代は周期的にやってくる」とホイル博士は言っていて、その周期が近いことを天体活動から私たちは今気づき始めています。


ちなみに、恐竜の絶滅の原因として、イリジウムという物質の検出から「彗星の衝突」という説を最初に正式な論拠のもと 1978年に科学界に提案したのもフレッド・ホイル博士でした。





極限に達した文明は「ゼロ」に戻る

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NASA says ‘small asteroid’ exploded over Russia: event took everyone by surprise ( NASA は「ロシアで爆発した隕石はとても小さなものだ」と述べた。)より。


ホイル博士の想定している「悪い時代の日常」は、あのロシアの隕石騒動程度のことを言っているのではなく、基本的に「大きな文明圏の中のいくつかが消滅した」というような出来事が日常的に起きたのが過去の時代だったというようなことを書いています。

今でいえば、例としてはどこでもいいですが、東京、ニューヨーク、北京、ロンドン、バンコクなどいろいろな文明の栄えている年や地域がありますが、「そのいくつかが丸ごと消えながら時代が進んだというように例えられる」ものだったということのようです。

そして、またその時代が近いうちに来ると。

私自身も昨年以来、そのように感じてはいます。


そう思う理由のひとつは、太陽系での天体の衝突などの活動が盛んだという事実もありますが、しかし、私がそう思う「もっと大きな理由」は科学とは関係ありません。

その理由とは、「現代文明がすでに精神的に破局しているから」という感情的な話であり、また、「文明がこれ以上進めないところにまで(これ以上進んではいけないところまで、という意味かもしれません)来てしまった」ということもあります。

過去の多くの巨大文明が「その文明の中での科学や技術、そして精神性がすでに極限に達してしまい、破局しか残されていないような頃」に滅亡していったように見える」ようなことを考えますと、この「感情的な感じ方」というのもそれほど的外れとも言えない気もします。






2013年に入り爆発的な流行を見せ始めた鳥インフルエンザ


さて、今回は、フレッド・ホイル博士の主要な研究テーマであった「パンスペルミア説」、すなわち、「彗星などの天体が宇宙に生命を拡散させている」という説に関係する話です。つまり、地球の生命も、彗星などによって宇宙から地球にもたらされたというもので、このブログ In Deep をはじめた最大のテーマがこの「地球の生命は宇宙からもたらされた」ということではあります。

それはともかく、生命という中には「病原菌やウイルス」含まれます。

すなわち、病気の流行も「宇宙からもたらされる」とするのがパンスペルミア説の主張です。

ホイル博士は、人間を含めた、地球のあらゆる生命、そして「病原菌やウイルス」も、すべて常に天体から地球にもたらされていると考えていました。

このあたりに関しては、過去の資料との照らし合わせでは、昨年の、


西暦 541年の東ローマ帝国でのペスト襲来に関してのヨーアンネースの記録
 2012年09月20日


というものに記していますので、お読みいただければ幸いです。


地球への天体の接近の多い今年はどうかというと、あまり日本では報道されていないので、ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが、「強毒性の鳥インフルエンザが猛威を奮っている」のです。最近の他の年の流行と比較でどのくらいの猛威なのかはよくわからないのですが、「報道数の多さと報道の大きさ」を見ても、普通の出来事では収まらないということがありそうです。

全然関係ないですが、日本でも「風疹」というものが非常に流行しているようで、NHK で先日、下のような報道を見ました。


都内の風疹患者 去年の32倍
NHK 2013.02.14

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首都圏を中心に大流行している風疹の患者が、都内では今月10日までの6週間で260人に上り、去年の同じ時期の32倍となっています。専門家はこのペースで流行が続くと妊婦に感染が広がり、赤ちゃんに障害が出る可能性が高まるとして、妊娠を希望する女性や妊婦の夫などに予防接種を受けるよう、呼びかけています。

風疹は妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんの心臓や耳などに障害が出るおそれがあり、去年10月以降、実際に障害が出た「先天性風疹症候群」の赤ちゃんが全国で6人報告されています。

風疹は去年、関東や関西を中心に流行し、患者の数が過去5年間で最も多くなりましたが、ことしは、それをさらに上回るペースで流行していて、特に都内では、今月10日までの1週間に、90人が新たに報告され、患者数は6週間で合わせて260人に上り、去年の同じ時期の32倍となっています。



風疹はかかった本人の症状よりも、「妊娠中のお腹の赤ちゃん」に強い影響が出る可能性の非常に強いということが問題のようです。国立感染症研究所のページによりますと、


(赤ちゃんの障害の)発生頻度は、妊娠1カ月50%以上、2カ月35%、3カ月18%、4 カ月8%程度



とあり、妊娠初期ではかなり高い確率ですので、妊娠されている方などは、特に気をつけていただきたいと思います。また、同じページには、「妊娠可能年齢の女性で風疹抗体が無い場合には、積極的にワクチンで免疫を獲得しておくことが望まれる。」と書かれてあります。

気になる方は上のリンクのページをご自分で読まれてもいいかと思います。今年の風疹の拡大はちょっと異常な感じで、また赤ちゃんの話でもありますので、関係のある方(妊娠初期の可能性のある方)は気にされてもいいかとも思います。

1ヶ月目だとご自分でも妊娠に気づいていない方もいらっしゃるかもしれないですので。


さて、鳥インフルエンザの件。
各国で報道されている記事のいくつかと、その内容の要約を記しておきます。

まず、中国からです。

中国は、壊滅的な鳥類への感染の拡大が懸念されているだけではなく、すでに、ヒトでの死者も出ていて、ヒトからヒトへの感染による H5N1 のパンデミックの懸念が示されています。

なお、この「鳥インフルエンザ H5N1 」というのは、数年前にパンデミックとなった豚インフルエンザとは比較にならない強い毒性を持っており、2003年にヒトへの感染が確認されてから、感染した人間の死亡率は 60パーセントに達しています

各国の報道を短く要約いたします。

ここからです。






2013年の世界での鳥インフルエンザの報道


中国

Bird Flu Death In China Sparks Fear Of Human-Transmitted H5N1 Strain
インターナショナル・ビジネス・タイムズ 2013.02.15

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中国で鳥インフルエンザが猛威を奮っており、ヒトへの H5N1 の感染が懸念される

中国南西部の貴州省の保健当局によれば、2月6日に鳥インフルエンザ H5N1 に起因する多臓器不全により 21歳の女性が死亡した。同保健省によれば、これは新型の鳥インフルエンザで、同地域でもうひとりが症状を示しているという。ふたりとも発症前に家禽類との接触があったという。

カンボジアでは今年に入り、すでに7名が鳥インフルエンザで死亡している。その中にはまだ3歳の女の子もいた。

保健当局は、鳥インフルエンザがヒトからヒトへ感染するウイルスに変異することを懸念している。東南アジアでは 2003年からの鳥インフルエンザに感染でのヒトの死亡率は 60パーセントに達している。




ドイツ

Bird Flu Symptoms 2013: H5N1 Case Reported On German Duck Farm, Cambodian Girl Dies From The Virus
Latino Post 2013.02.15

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鳥インフルエンザ 2013: ドイツのアヒル農場で H5N1の発生が報告。カンボジアでは少女が死亡

ドイツの保健当局は、ブランデンブルクのアヒル農場で、鳥インフルエンザ H5N1 が発見されたことを発表した。鳥インフルエンザは鳥類に感染する他、人間にも過感染し得る。

中国やカンボジア、インドネシアなどは鳥インフルエンザのヒトへの感染が報告されており、専門家たちは、ウイルスの変異によるヒトからヒトへの感染の拡大に懸念を示している。

ヒトは鳥インフルエンザに対しての免疫を持たないため、ウイルスの変異によっては爆発的感染に発展する可能性がある。




メキシコ

Bird Flu Symptoms: 500,000 Chickens Affected in Mexico, Over One Million Vaccines Distributed
Latino Post 2013.02.15

mexico-flu.jpg


メキシコで 50万羽の鶏が鳥インフルエンザに感染。100万羽にワクチンが接種される

メキシコ農業局によれば、メキシコのグアナファトの7つのニワトリ農場の 58万 2,000羽から鳥インフルエンザが確認された。これらの7つの農場で見つかったのは H7 型と呼ばれる鳥インフルエンザだ。

感染した鳥は殺処分され、また、100万羽分の鳥にワクチンを摂取する。



他に、ネパールでも鳥インフルエンザが発生しています。



英国ではSARSに似た新型ウイルスもヒト感染

鳥インフルエンザではないですが、イギリスで、「SARSに似た新型ウイルスがヒトに感染したことを確認」という報道がありました。下はロイターの記事です。


SARSに似た新型ウイルス、英国でヒト感染を確認
ロイター 2013.02.14

英国健康保護局(HPA)は13日、同国で3人目となるSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスに似た新型ウイルス感染を確認したと明らかにした。同ウイルスの感染確認はこの1週間で2例目で、ヒトからヒトに感染したとみられる。

今回感染が確認された患者は、別の感染者と同じ家族の男性。この新種のコロナウイルス(NCoV)の患者は世界全体で11人となり、うち5人が死亡した。ほとんどの感染者は中東に居住している。

HPAによると、3人目の患者は英国に住んでおり、最近の海外渡航歴はなかった。現在、英中部の病院で集中治療を受けているという。HPAは「中東への渡航歴がない人から新たなコロナウイルスの感染が確認されたことは、英国内でヒトからヒトに感染したことを示している」と述べた。



これらに関しては何か新しい報道がありましたら、なるべく早めに書くようにいたします。



  

2012年11月28日



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red-rain-2012-01.jpg

▲ 11月26日、真っ赤に染まったオーストラリアのビーチリゾート「ボンダイビーチ」。原因は「藻」と考えられています。Daily Mail より。
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地球が赤く染まる時

赤いシリーズ」というのは、私が中学生頃だった 1970年代に、山口百恵さんなどが主演だったドラマシリーズの総称ですが(見たことはないんですが)、私のこのブログにも「赤いシリーズ」というテーマが連綿として続いています。下のような記事です。




などは「様々なものが赤く変色した現象」を取り上げた記事です。


自然現象の中での「赤に変色する」というシーンは、多くの神話や伝説、そして聖書などの聖典に描かれています。そこには、神秘的な意味合いもあるのでしょうが、それ以上に、「赤色への変色は人に強い記憶と印象を植え付ける」ということはあると思います。だから、様々な伝説としても残りやすい。

どうして人間が「赤色に反応」するのかというと、それは赤は血の色だからという理由がひとつあると思います。

上のリンクにもあります「赤の意味: 再び現れた赤い海と赤い雨」という記事を書いている中で、私は、この「血が赤いということ」について興味を持ちました。

その興味の方向性は2点で、

・血の赤は「鉄」であるということ

・そして、血を赤くする赤血球は人体で「 DNA を持たない部位」であること


ということでした。

多分、赤い血を持たなければ(赤血球がなければ)、私たち人間は生きられないと思います。その人間を支えている根幹には「 DNA がない」という事実に、何となく興味を覚えたのです。

とはいえ、今回はこのことが本題ではないですので、上のそれぞれについては、そのことを説明している部分などから簡単に抜粋しておきます。




血の赤は「鉄」であるということ リンクより)

人間の血液が赤いのは、呼吸色素のヘモグロビンが赤いからです。
ヘモグロビンは鉄イオンと錯体を形成しています。

赤いのはこの鉄の色です。

動脈血は鉄イオンが酸素と結合しているため鮮赤色(鮮やかな赤色)をしていて、静脈血は酸素と結合していないので暗赤色(暗い赤色)をしています。

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赤血球は DNA を持たない リンクより)

真核生物の DNA は、細胞核とミトコンドリアと葉緑体に含まれています。

ヒトを含め哺乳類の赤血球は、成熟の途中で細胞核とミトコンドリア等の細胞器官を失っているので、正常ではない場合を除くと、 DNA を持っていません。







そして、「赤は血の色だから」という理由以外にも、人間が「赤」に引き付けられる理由のようなものとして、「赤色が人間の目に見える光の限界だから」ということもあるかもしれません。

「赤外線」という言葉がある通り、可視光線(目に見える光線)で最も波長の長いのが「赤」であり、赤の波長を越えると人間にその光は見えません(光の信号として伝達されない)。人間は「赤」までしか目には見えません

下の図などはわかりやすいかと思います。

ir-red.png

光の届き方と信号の色より。


赤の「外」だから赤外線。赤の反対は「紫色」ですが、紫の「外」だから紫外線。

赤外線も紫外線もどちらも人間の目に見えませんが、この「赤」と「紫」が両極の目に見える限界というか、最大値だということになります。

そして、上の図をみると、実際には人間はそれほど多彩に光を見ているわけではないこともわかります。この世には様々な色がありますが、上のどこかに収まる色が少しずつズレている中で、多彩な、あるいは無数な自然の色なども生み出されます。

しかし、それでも「赤」まで。
赤が、見える中で「最大の色」(変な表現ですが)と言えます。

それが私たち自身の血の色でもあるということで、このあたりのつながりに興味を持つことに、それほど違和感がないということをご理解いただければ嬉しいです。

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2012年に多発する「赤色現象」の原因

前振りが長くなりましたが、今回の記事の一番上に載せたのは、数日前にオーストラリアのビーチの水が真っ赤になったという報道の写真です。

海岸はこのような感じです。

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そして、今年はこのような「赤くなる現象」というものがとても多く、10月から11月には「赤い雨」が各地で降りました。 10月には英国、デンマーク、スウェーデンなどで、 11月にはスリランカでも赤い雨が降りました。


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▲ スウェーデンの報道。タイトルは「アフリカの血の雨がスウェーデンに向かっている」。紀元前8世紀のホメロスの時代にも降った「血の雨」がスウェーデンにやってきたより。


スウェーデンでの赤い雨の原因は、「サハラ砂漠の砂が運ばれて雨と混じったのではないか」という推定となっています。ただ、実際にはやはり「よくわからない」ようです。




古代からある赤い雨と、様々に降るもの

上のスウェーデンでの赤い雨について、10月21日の「ロシアの声」には以下の記載があります。スウェーデンでは、紀元前から「赤い雨についての記述があるということに関してのものです。


スウェーデンに「血の雨」が迫る( VOR 2012.10.21 )」より抜粋。

スウェーデンでは以前、5年に1度の間隔で「血の雨」が降っていた。最初にこの現象について触れているのは、最古期の古代ギリシア詩作品でもあるホメロス(紀元前8世紀)の「イーリアス」だ。

スウェーデンの人々は 17世紀にいたるまで、実際に雨と一緒に空から血が降り注いでいると考えており、この現象は災いの前兆だと考えていた。



ここに「17世紀まで、実際に雨と一緒に空から血が降り注いでいると考えていた」とあります。

紀元前からヨーロッパで長く続いた「赤い雨」の原因がすべて一様に同じかどうかはわからないですが、他の地域でも、「実際の血のようなものが降った」という現象の報告は多く、近代では記録としても残っています。

いわゆる、ファフロツキーズ(空からの落下物)という、空からいろいろなものが降る現象として取り上げられることが多いです。

ファフロツキーズの身近な話としては、2009年 6月に、日本の各地で「オタマジャクシが空から降ってきた」という報道があったのはご記憶にあるのではないでしょうか。

これは下のように当時、海外の新聞にまで興味本位で報道されたものです。

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▲ 2009年6月の米国のサンフランシスコ・クロニクル紙。Mightiest weapon in History! Tokyo Admits Heany Damage! より。「日本がオタマジャクシに見舞われる。日本の歴史上で最強の攻撃! 東京でも被害が確認される」と、やや大げさな見出し(笑)が出ています。


このオタマジャクシ騒動、私は1カ所での話かと思っていたのですが、調べ直してみると、2009年6月に10カ所以上で報じられていたようです。下は、「オタマジャクシ騒動 - 報道状況」の図ですが、各々の記事は、リンク先の Wikipedia からご確認下さい。

otama-1.png


昔からある「異物が降る」ことに関して、もっとも不思議なことは「1種類が降る」ということでした。

たとえば、嵐や竜巻が原因なら、「同じ質量と大きさのものは、無差別に同時に降る」はずで、たとえば、上のオタマジャクシ騒動なら、「オタマジャクシと同じような質量を持つ、木や石や他の動物も同時に降らなければならない」のですが、オタマジャクシだけが降る。

そのような中、オタマジャクシと同様の現象の中に「血の雨」も記録としては残っています。






記録の中の「血の雨」

下は、米国のアバウト・ドットコムというサイトの「奇妙な雨」というページの中の「血と肉の雨」の部分を訳したものです。



Weird, Weird Rainより

記録に残る肉と血の雨

history-of-red-rain.jpg

1841年8月
米テネシー州のタバコ農園で、血液、そして肉と脂肪が空から降ってきたことが確認された。血の雨の直撃を受けた農園労働者たちによると、最初、大きな音が聞こえたかと思うと、突然、血の固まりが空から落下するのを目撃したという。「上空にあった赤い雲から落ちてきたように見えた」と語っている。


1869年
米カリフォルニア州ロス・ニエトス郡にある農場で、約3分間にわたり、猛烈な血液と肉、そして、髪の毛の雨が降り注いだ。それらは数エーカーに渡って土地を覆い尽くした。髪の毛の中の一部には6センチの長さのものもあった。なお、その日はよく晴れており、雲もなかったという。


1890年
イタリア・カラブリア地方で真っ赤な血の雨が降った。血は、強風によって体を引き裂かれた鳥のものではないかと推測されたが、当時、そうした風は発生していなかった。また、血以外に鳥の体の部分などが降る事もなく、血だけが降った。


1968年8月27日
ブラジル・カカパヴァ地区の1キロメートルにわたるエリアで、約5分間に渡って、空から血と生肉が降り注いだ。






さて、今回はいろいろと書きましたが、ここからようやく本題に近づきます。





チャンドラ・ウィクラマシンゲ博士のこと

少し前の記事の、

「狂った太陽」: かつて見たことのない巨大な太陽面の爆発が発生
 2012年11月18日

の最後のほうに、11月の中旬に「スリランカで降った赤い雨」についてふれました。

最近、そのことについて、英国の「バッキンガム大学 宇宙生物学研究センター」の責任者であるチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士にインタビューをしていた記事をスリランカの報道で見つけたのです。

それをご紹介したいと思います。

実は、私が「バンスペルミア(宇宙が生命を拡散させている)」という学説を知ったのも、あるいは、何度も出てくるフレッド・ホイル博士のことを知ったのも、このウィクラマシンゲ博士という人の存在のお陰なのです。お陰というか、3年くらい前に、このウィクラマシンゲ博士の記事を読んだのがキッカケでした。

Chandra-Wickramasinghe.jpg

▲ 最近のチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士( Chandra Wickramasinghe )。


ウィクラマシンゲ博士は、かつて英国カーディフ大学で、まさに「フレッド・ホイル博士の片腕」として、天体観測を続けた人で、特に、ウィクラマシンゲ博士のハレー彗星の観測記録がなければ、バンスペルミア説の発展もなかったと思います。

下のグラフは、ウィクラマシンゲ博士が 1986年にアングロ・オーストラリアン望遠鏡で観測したハレー彗星の赤外線吸収スペクトルというものの図です。



▲ 過去記事「2013年の巨大彗星アイソンのこと。そして宇宙から地球に降り続ける生命のこと」より。


上の観測により、「ハレー彗星と地球の大腸菌の成分が一致した」のでした。

もう一度書きますが、ハレー彗星と成分が一致したのは「大腸菌」です。
特別なものではありません。地球のそのあたりにいくらでもいるものです。

それから、25年以上が経過しましたが、この分析結果を含めて、フレッド・ホイル博士とチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士の「生命の起源への執念」は少しずつ科学の世界でメインストリームともなりつつあります。

それを後押ししたのは、ホイル博士の死後、進んだ宇宙観測技術によるところも大きいです。


スリランカの「赤い雨」のニュースはスリランカのメディアのものですが、ウィクラマシンゲ博士がコメントを求められたのは、ウィクラマシンゲ博士がスリランカ出身であることも関係あると思います。


なお、非常に注目すべきことは、下の記事にある、「赤い雨」から採取された細胞には「 DNA がなかった」という点です。上のほうに書きました人間の赤血球の下りを思い起こしていただけると幸いです。

それでは、ここからです。



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2012年10月13日



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わりとショックな「 DNA には寿命(崩壊)があった」という実験結果


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▲ 映画『ジュラシックパーク』より。琥珀に閉じ込められたジュラ紀の蚊から「恐竜の血」を取り出し、恐竜の血液の中の DNA をカエルの DNA に組み込んで恐竜を復活させるというストーリーでした。






 




(訳者注) ここ数日の科学系の報道で、「ジュラシックパークは不可能だった」という見だしをよく目にしました。

何のことかと思いましたら、これはオーストラリアのマードック大学が、実験から、

DNA はその最後の分子が 680 ,000 年(680万年)後に消滅する

という計算をはじき出したというものでした。

スティーブン・スピルバーグ監督の映画「ジュラシックパーク」(マイケル・クライトン原作)は数千万年前の恐竜の DNA を現代のカエルなどの DNA に移植して恐竜を現代に復活させるというようなストーリーだったのですが、今回のマードック大学での実験では、 DNA は680万年で「分子がすべて消滅する」という計算結果となったということで、つまり「ジュラシックパークの実現化は不可能」ということと結びついて上のような見だしにつながったようです。

今回は、マードック大学のプレスリリースそのものを翻訳してご紹介します。


ちなみに「わりとショック」と書いたショックは、ジュラシックパークの方のことではなく、

DNA に寿命があった

というほうです。

In Deep や、あるいは、昔のクレアなひとときなどの記事の中で書いていたことの前提のひとつに「 DNA は永遠不滅の物質である」という仮定がありました。その仮定のもとに多くの記事を書いていました。

しかし、どうも今回の実験では寿命があるようです。

680万年というのは長い年代ではありつつも、「永遠不滅」というものにはほど遠いものです。

あるいは、この「DNA の寿命のサイクル」というものと地球環境の大変動の時期には関係があるのかもしれません。なぜなら、DNA は「その生物の遺伝と歴史を引き継ぐもの」であり、それが完全に消滅する時があるなら、「その生物の歴史は消える」からです。つまり、DNA の物質的崩壊と共にその生命は文字通り消えると。


ところで、上に映画「ジュラシックパーク」が出てきましたが、この映画の監督スティーブン・スピルバーグが、最近、「子どもの頃からずっと学習障害だった」ことを告白して話題となっています。スピルバーグ監督の場合はディスレクシアという読み書きが苦手な(場合によってはまったくできない)ものです。

これは今回の話題とは関係ないのですが、若い時のことや、あるいは自分のことを含めて、思うところもありましたので、ちょっと紹介しておきます。



スピルバーグ監督とアキヤマくんのそれぞれの人生


スピルバーグ監督の報道記事は下のものです。


スピルバーグ氏、学習障害を告白 「映画で救われた」
朝日新聞 2012年10月3日

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▲ スティーブン・スピルバーグ氏。

映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏(65)が自分に学習障害があり、それが原因で子ども時代にはいじめられていたとインタビューで告白し、話題となっている。「学校へ行くのが大嫌いだったが、映画づくりを通して救われた」と語っている。

スピルバーグ氏が公表したのは、読み書きが困難になる「ディスレクシア」と呼ばれる障害。

5年前に初めて診断され、「自分についての大きな謎が解けた」という。

小学生の時は読み書きのレベルが同級生より2年遅れ、「3年生のころは、クラスの前で読むことを求められるのがいやで、とにかく学校へ行きたくなかった」「先生も心配してくれたが、学習障害についての知識もない時代で、十分に勉強していないと思われた」と打ち明けた。今でも、本や脚本を読むのに、多くの人の倍近く時間がかかるという。

また、学習障害がきっかけでからかわれ、いじめられたことも明らかに。「中学時代が一番つらかった。他人の立場から自分を見ることがまだできない子どもは本当にきつく、嫌なことをする。今は理解できるし、恨みもないが、大変だった」と話した。



私が驚いたのは、比較的、このタイプの発達医学の先進国であり、早くからの歴史がある「米国」という国の、しかも著名人であるスピルバーグ監督が、60歳になるまでその病気だということを自分で知らなかったということです。そして、

> 5年前に初めて診断され、「自分についての大きな謎が解けた」という。


と言っているのを読み、改めて学習障害全般に対しての問題の根の深さがわかります。

ディスレクシアは大ざっぱにいうと、下のようなものです。


ディスレクシア

ディスレクシアは、知的な遅れはないが、読んだり書いたりすることが苦手な人たちのことをいい、「文字とその文字が表す音とが一致・対応し難く、勝手読みや飛ばし読みが多い」、「音読作業と意味理解作業が同時にできないため読み書きに時間がかかる」、「読みが出来ないと文字を書くことはより困難になる」などの特性がある。

「読み書きのLD(学習障害)」ともいわれている。


障害保健福祉研究情報システムのページより)


これは、昔は(あるいは今でも)、「単なる怠け者」、さらには「知的な問題」と扱われてしまうことさえあります。

私自身、こんな「学習障害」とか「ディスレクシア」なんていう言葉を知ったのは最近のことですが、人生の中で思い返すことはいくつかあります。

中学2年のとき(今から35年くらい前です)にクラスで席が隣だったアキヤマくんという男の子がいました。

おとなしい子だったけれど、話も面白く、人あたりのいい人だったので、私は彼と話をするのが好きでした。話も面白く、想像力の豊かなアキヤマくんは普通以上にクレバーな中学生なのですが、「なぜか読み書きがうまくできない」のです。判断力の鋭い彼が読み書きだけが、どうしてもできない。

今にして思えば明らかなディスレクシアなんですが、当時そんな概念があるわけでもなく、本人も周囲も「どうしてできないんだろう」と考えていました。


そして、その学期が終わる頃、アキヤマくんが私にこう言いました。

「二学期から特殊学級に行くことになったんだ」

私は「え? なんで?」と聞き返すと、やはり読み書きが極端にできないことが原因だったようです。でも、私から見れば、ともすると私たちより頭のいい彼が特殊学級に行くというのはどうもわからない。


私 「それって、なんか変だよ」
彼 「でも、僕自身はそれでいいと思ってる。だって全然読み書きできないんだもの」


そして、二学期からはアキヤマくんはそちらの学級へと転入しました。

このような事例は、当時はたくさんあったのだろうなあと思います。
あるいは今でもあるのかもしれません。

何しろ上の障害保健福祉研究情報システムページには、

> 英語圏ではディスレクシアの発現率は10%から20%といわれている。


というものだからです。
日本ではディスレクシア単独の調査が存在しないそうです。


もちろん、特殊学級や養護学校に行くこと自体が問題ではないですが、その人の将来の道はかなり狭められてしまうことも事実のように思います。

スピルバーグ監督はその類い希なる映像センスにより、人生を開くことができましたが、他の多くの学習障害の人たちが同じような人生を歩めるわけではないです。というより、最後まで自分がディスレクシアであることがわからないままで、死んでいった人もたくさんいるはずです。


ところで、私がスティーブン・スピルバーグ監督の出世作である「ジョーズ」(1975年)を映画館で見たのは中学1年の時でした。もう面白くて面白くて面白くて、こんな面白い娯楽がこの世にあるのかと感動したものでした。

それはみんな同じだったようで、ジョーズのラストシーンでサメが爆発するシーンでは、北海道の岩見沢という町の小さな映画館の観客が全員立ち上がり拍手喝采したほどでした。

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▲ スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975年)。サメが海から顔を出すたびに子どもたちが「ヒィィ!」と叫び声を上げた当時の映画館。


映画館で観客が全員立って拍手した、なんていう経験はあれが最初で最後の経験だったような気がします。

あれから三十数年。
時代はどう進みましたかね。

アキヤマくんも元気かな。


そのスピルバーグ監督の大ヒット作である「ジュラシック・パーク」の計画は実行不可能であることがわかったということに関してのオーストラリアのマードック大学のニュース記事です。





Mystery of DNA decay unravelled
マードック大学 (オーストラリア) 2012.10.10

DNA の崩壊の謎が解明される


恐竜が生きていた時代から現代までその DNA が生き残り続けていたのかどうかということに関しての議論についに結論が出そうだ。

オーストラリア・マードック大学の科学者たちは、 DNA の保存には理想的なマイナス5度の環境の中で、DNA 分解の割合とその計算を行った結果、結合組織の DNA の数は時間と共に減少することが分かり、骨の最後の分子は 680万年後に完全に消滅すると計算されるという研究を発表した。

スティーブン・スピルバーグ監督の映画『ジュラシック・パーク』は、 8000万年経過した無傷の DNA を発見し、そこから恐竜を復活させるというアイディアのものだった。しかし、現在までに発見されている最も古代の DNA は 45万年〜 80万年前のグリーンランドの氷床の芯から発見された DNA だ。


研究グループは、かつてニュージーランドに棲息していて絶滅した恐鳥「モア」の 158本の骨の化石の結合組織を調べた。その結果、マードック大学「古代 DNA 研究所」のマイク・バンス博士( Dr Mike Bunce )モルテン・アレントフト博士( Dr Morten Allentoft )らの研究グループは上記の結論に達した。

バンス博士は以下のように言う。

「比較することのできる DNA を含む大きな化石が見つかることは希で、今回の DNA の崩壊の率を計算することは大変難しい作業でした。また、気温や微生物の含有率、酸化の程度なども DNA の崩壊プロセスに影響を与えますので、崩壊の基準を見いだすのは難しいことでした」。

「しかし、モアは彼らがほぼ全員、同じ地域で同じ環境を経験していた生物で、その時代も同じということもあり、モアの骨の DNA の崩壊の比較ができたのです。化石の骨の標本は、炭素データでは 600年〜8000の経過を示し、それぞれの標本の異なる DNA 崩壊から、 DNA の半減期を計算することができたのです」。

その結果、前もって研究所で行われたシミュレーション結果から予測されるより、その崩壊率は、約 400倍遅いことがわかった。これらの計算と他の調査に基づき、研究チームは、生き残っている DNA の崩壊年月の予測を立てることができた。


バンス博士はこのよう述べた。

「今回計算された崩壊率が正しければ、十分な長さを持つ DNA の断片は、凍った化石の中ならば、およそ 100万年単位で保存されると予測します」。

「生物が死んだ後、その DNA の維持に影響を与える要因としては、発掘、土の化学的組成、そして時間の経過などがあります。世界の他の地域での DNA の崩壊についての正しい計算がおこなわれることにより、より正しい DNA の寿命をのマッピングを作っていけるようになることを私たちは望んでいます」


この研究は、英国王立協会ジャーナルで発表された。





ここまでです。

それにしても、今回のことで改めわかったのは、

「宇宙空間というのは DNA の保存場所としても最適」

ということのような気がします。

地球上の場合、上の記事にありますように、土の化学的組成や気温、あるいは時間の経過などで DNA は他の物質同様に崩壊(分子の消滅)するわけですが、そのような外部的な刺激がほとんどなく、気温も氷点下二百度などのごく低温に保たれている宇宙空間というのは、微生物の保存に適していると同様に DNA の保管場所としても最適なように思います。

そのあたりと関連した過去記事をリンクしておきます。


--
[宇宙を旅する微生物]に関連した過去記事:

大気圏の生き物(参考記事:1980年代のチャンドラ博士によるシミュレーション実験等)
2010年10月05日

DNA が宇宙で生産されている証拠を発見: NASA が発表
2011年08月21日

宇宙塵自身が生命であることに言及した 100年前のノーベル賞学者の実験
2011年05月07日



  

2012年09月20日



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今回は、資料として抜粋したところからいろいろと書いてみたいと思ったのですが、どうも、途中から話が複雑化し過ぎてしまいまして、支離滅裂なのですが、書いたところまでアップさせていただこうと思います。

資料はデイヴィッド・キーズというイギリス人ジャーナリストが 2001年に出版した『西暦535年の大噴火』という本の冒頭に載せられている「西暦541年から543年に東ローマ帝国を襲ったペストの状況」についての部分です。






 



6世紀にヨーロッパの人口を半減させた感染症の拡散の原因は?


ところで、この『西暦535年の大噴火』というのは、これは「邦題」でして、英語での原題は「カタストロフィー」( Catastrophe )というタイトルで、これは、日本語だと「壊滅的な大災害」というようなニュアンスです。

「535年に何らかの大災害が起き、それにより世界全体でその後の数年から十数年、深刻な気象変動が発生した」

ということが書かれていて、決して「噴火」ということから始まっているものではないです。

この535年の「出来事」の後、世界がどんな様子だったのかが、様々な文献から引用されていますが、感じとしてわかりやすいのは、6世紀の東ローマ帝国の歴史家であるプロコピオスという人が文章として残しているものです。西暦535年から536年にかけての記述です。




歴史家プロコピオスの記述より


昼の太陽は暗くなり、そして夜の月も暗くなった。

太陽はいつもの光を失い、青っぽくなっている。われわれは、正午になっても自分の影ができないので驚愕している。太陽の熱は次第に弱まり、ふだんなら一時的な日食の時にしか起こらないような現象が、ほぼ丸一年続いてしまった。

月も同様で、たとえ満月でもいつもの輝きはない。





書かれたのは 536年の夏ということで、すでにこの状態を1年経験し続けたということのようです。当然、当時は世界中で未曾有の天候の異変や大飢饉が起きており、この著作『西暦535年の大噴火』では、その頃の世界中の資料から当時の様子をあぶり出しています。日本、中国、朝鮮半島も出てきます。

そして、著者は、このような状態を作り出せるような自然現象というのは、


・小惑星の地球への衝突
・彗星の地球への衝突
・大噴火



のどれかだという推論のもとに検証していく中で、「535年にインドネシアのクラカタウ火山が噴火したことが原因」という可能性が最も高いということを書いていますが、結論づけているという感じでもないです。

そして、著作での「大災害」の記述の最初が「6世紀のペストの大流行」から始まり、これも気候変動とネズミの発生の統計の科学的見地から、「噴火と関係がある」というようなことになっているのですが、さて、そこで私は読んでいるうちに疑問を感じてきたのです。

その理由は、私が「パンスペルミア説」での病原体の拡散を考える人なので、仮に突然ペストが発生したのなら、それは噴火とは関係なく、「宇宙から彗星による拡散によって、ペスト菌がその時、地球に大量に降り立った」と考えたほうが合理的だからです。

そもそも、6世紀はまだ世界の交易はそれほど発達していなかったと思われますが、この『西暦535年の大噴火』の資料を読んでいますと、どうも世界的に(別の病気も含めて)伝播が早すぎる感じもあります。



水平感染だけでは考えにくい病気が実は多いということ

1918年にスペイン風邪という強毒性のインフルエンザが世界中で流行しました。この時には、控えめに見て、全世界で6億人が感染し、3000万人が死亡したと言われています(数の正確な統計は存在しないです)。

1990年代になって、その時のスペイン風邪のインフルエンザの世界での拡がり方について入手可能なすべての記録を調べたルイ・ヴァインスタイン博士という科学者がいるのですが、ヴァインスタイン博士が調査の途中で、下のようなコメントを残していることがフレッド・ホイル博士の著作に書かれています。


『生命( DNA )は宇宙を流れる』 フレッド・ホイル著より、ルイ・ヴァインスタイン博士のコメント

「インフルエンザがヒトからヒトへ感染する病気であるのなら、最初に発生した場所に近いところからじわじわと広がっていくはずである。けれども、実際には、世界の遠く隔たった土地に同時に出現したり、ごく近くの土地に数日から数週間もの間隔をおいて出現したりしている。

ボストンとボンベイ(現ムンバイ)で同じ日に見つかる一方、ニューヨークで見つかったのはボストンの3週間後という調子なのだ。あんなに多くの人びとが二つの都市を行き来していたというのに! 

さらには、シカゴに出現した4週間後に、ようやくイリノイ州のジョリエットにも出現したという記録もあった。二つの都市の距離は、わずか38マイル(60キロ)である。」




「水平感染」というのは「人から人にうつっていく」ことを表します。
たとえば、もっとも身近なものでは「風邪」です。

「風邪がうつっちゃって」

という言い方があるように、「風邪は水平感染する(人から人にうつっていく)」と私たちは完全に思いこんでいます。

しかし、現時点ではわからないですが、2001年頃までの時点の医学実験では、「風邪が水平感染する(人から人にうつっていく)」ことは一度も証明されていないのでした。もちろん、「人から人にうつることが確認されている病原体」もたくさんあります。

しかし、風邪やインフルエンザは違うのではないかということが、フレッド・ホイル博士の『生命( DNA )は宇宙を流れる』という著作では大量のデータなどと共に記述されますが、下がその章の導入部分です。




『生命( DNA )は宇宙を流れる』 フレッド・ホイル著

第5章 宇宙からきた病原体より


彗星から放出されたウイルスやバクテリアは、地球上ではどんなふうに広がってゆくのだろうか?

あるものは、宇宙からやってきて一部のヒトや動植物には病気を起こすが、すぐに病原性が低下してしまうため、そこから先へは拡がりにくくなるかもしれない。

前章でも説明したように、ウイルス粒子の落下は世界規模の大気の動きに左右されるため、後者の分類に属するウイルスでも広い範囲に一度に感染してしまい、伝染病と誤解されているケースが多いと考えられる。しかし、こちらのカテゴリーに入る病気は、ウイルスの侵入と直接的な関係があるから、われわれの仮説を検証するにあたって、より重要である。

われわれは、インフルエンザをはじめとする多くの上気道感染症(いわゆる「風邪」)が後者のカテゴリー、すなわち宇宙からの直接感染によって起こる病気であると考えている。

風邪はうつるというのが常識のように思われているが、実は、その伝染性はいまだにはっきりと証明されていないのだ。コントロールされた条件下で風邪の水平感染性を証明しようとする試みは、ことごく失敗に終わっているのである。








簡単にいうと、風邪やインフルエンザは、

「宇宙からやってきて直接人間に感染する」

という理論となります。

大げさな表現に聞こえるかもしれないですが、そうとしか表現しようがない部分があります。


そんなわけで、また話が逸れているような気もしますが、今回は、6世紀に東ローマ帝国および、周辺諸国をくまなく荒らした「ペスト」について残る資料の記述を抜粋します。



6世紀の東ローマ帝国で起きたこと


書いたのは、6世紀の東ローマ帝国のエフェソスという街で「聖人伝」を記した人物として名高いという、ヨーアンネースという人の記述です。「ヨーアンネース」は一般的には日本語で「ヨハネ」と呼ばれる表記と同じだと思われます。

なお、ヨーアンネースの記述を読んで、実はもうひとつ根本的に疑問に思ったこともあります。

それは、著者が「死ぬまでに何日もかかる者もいれば、病気になってから数分で亡くなる人もいた」と書いている下りなのですが、

「病気になってから数分で亡くなる」

というのはペストの症状としてどうなんだろうと。

これはヨーアンネースの記述にも、「立ち話をしたり、釣りを勘定したりしているあいだに、買い手と売り手の双方が急死し」というモンティパイソンのような下りもあるのですが、どうもイメージとしてのペストの症状と違うような・・・。

ペストには、3種類ほどあって、それぞれ多少違うとはいえ、たとえば、国立感染症研究所のペストのページにある「症状」。

・腺ペスト
通例3〜7日の潜伏期の後、40℃前後の突然の発熱に見舞われ、(中略)通例、発症後3 〜4 日経過後に敗血症を起こし、その後2〜3日以内に死亡する。


・敗血症型ペスト
臨床症状としては急激なショック症状、および昏睡、手足の壊死、紫斑などが現れ、その後、通例2〜3日以内に死亡する。


・肺ペスト
潜伏期間は通例2〜3日であるが、最短12〜15時間という報告例もある。発病後12〜24時間(発病後5時間の例も記載あり)で死亡すると言われている。


ということで、最も危険な肺ペストでも、数時間後に死亡するとされています。

いくら6世紀の医学といえども「死んだか死んでいないかくらい」は知識者である人たちにはわかったと思いますので、

「病気になってから数分で亡くなる」

という記述がわからない。

というか、実際にはこの頃の東ローマ帝国あたりの科学、医学、などについては、相当に進んでいたはずで、聖人伝を書いていたほどの人なら「実際に見たことをきちんと書いていた(倒れただけで「死んだ」とは書かないというような意味)」と思います。

つまり、確かにペストも流行していたけれど、

「同時になんかヘンな病気も流行してたんじゃないの?」

というか。

瞬間的に死んじゃうような。


あと、Wikipedia のペストのページに、「14世紀のペストの流行の年代ごとの図」が載っているんですが、これが面白いのです。

かつて、「緯度(地球の緯度経度の緯度)と感染症の拡散の関係性」を調べた研究者グループのグラフが家にある本のどこかにあるんですけど、それと同じような感じなんです。

Wikipediaにあるのは、下の図です。
ピンクの太い線は私が引いたものですので、オリジナルとは関係ないです

pest-map.jpg


上の地図は「ペストが人にうつっていく」という見方と共に、「地球の周回に応じた緯度からの拡散となっている」とも見えるのです。つまり、「円を描いているのではなく、線を中心としている」ということで、これは、この線を「彗星の軌道と照らし合わせる」と、非常に面白いです・・・が、今回はそこまで話が逸れると、本題の資料が書けなくなりそうですので、ヨーアンネースの543年の資料を抜粋します。

カッコ内は『535年の大噴火』で、著者の記述が入っているところを短く説明した部分です。

それでは、ここからです。






 


西暦541年の東ローマ帝国でのペスト襲来に関してのヨーアンネースの記録


「美しくて理想的な家庭が、人員の多少を問わず、突如として墓場と化した。召使いも同時に急死し、その腐敗はいっしょに寝室に横たわった。死体が裂けて路上で腐っていることもあったが、埋葬してくれる人などいなかった。街路で朽ち果てた遺体は、見る者におぞけを震わすだけだった。腹はふくれ、口は大きく開き、膿はどっと吐き出され、目は腫れ、手は上に伸びていた。遺体は、街角や路上、中庭のポーチや協会内で、腐りながら横たわっていた。海上に浮かぶ何隻もの船でも、船乗りたちが突如神の怒りに襲われ、船は波間を漂う墓場となり果てた」


(ペストから逃れようとして、港を転々とするヨーアンネース。しかし、ヨーアンネースは、都市も田舎もどこもペストに荒廃しつくされている惨状を目にすることになる)


「わたしたちも毎日、みなと同じように墓の門を叩いた(『瀕死の重体だった』の意)。晩になると、今夜はきっと死神がやってくるだろうと考えた。そして朝が明けると、わたしたちは日がな一日、墓のほうを見ていた(『死のことを考えていた』の意)」


「移動中に通り過ぎた村々は、陰鬱なうめき声をあげ、遺体は地面に転がっていた。途中の集落は、ぞっとするような暗さに満ちていて、ひとけがなく、たまたま立ち寄った人は誰しも、すぐに出てきてしまった。砦は打ち捨てられ、放浪者たちは山あいに四散した。人びとを駆り集めようとする人もまったくいなかった」


「畑の穀物はまっすぐ白く立っていたが、刈り取る者はいなかった。ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタの群れは、まさに野獣と化し、飼われていた時代の生活を忘れ、自分たちを引きつれていた人の声もとうに忘れてしまっていた」


(以下は、東ローマ帝国の首都コンスタンティノーブルの様子)


「天罰がこの都に重くのしかかった。まず襲われたのは路上に横たわっていた貧者たちだった。一日のうちにこの世を去っていった人数は、五千人から七千人、さらには一万二千人、そして、ついには一万六千人にのぼった。

 だがこれはまだほんの序の口だった。役人たちは各港や十字路、そして市門の入口に立って、死人の数を数えていた。コンスタンティノーブル市民で生き残っている人はごく少数になった。死者数は確かに数え上げられていたが、路上から運び去られた遺体が三十万を上回ったことは間違いない。役人は二十三万人まで数えたところで足し算を止めてしまい、それ以降はもう『大勢だ』と言うだけになった。こうして、その後の遺体は、数えられることもなく持ち去られたのである」。


「すぐさま埋葬所が足りなくなった。町には死臭が立ちこめた、担架も墓堀り人もいなくなった。遺体は路上に積まれていった」。


「路上や家の中で誰かと話している最中に、急にふらつきだして倒れてしまう例もあった。座って道具を手にし、作業をしていたかと思うと、横によろよろし、この世を去ってしまう者もいた。市場に日用品を買いに出かけて、立ち話をしたり、釣りを勘定したりしているあいだに、買い手と売り手の双方が急死してしまい、二人のあいだに品物と金銭が落ちていることもあった」


(埋葬所がなくなり、遺体が海に葬られ始める)


「遺体は舟という舟に満載され、海中に放り投げられた。舟は次の遺体を運びに、また岸辺へ戻っていった。舟が戻ってくると、担架が地面に置かれ、そこに二、三の遺体がまた放り投げられた。この繰り返しだった。ほかの人たちも、何体かの死体を舟に載せた。腐り始めている死体もあったので、むしろが編まれ、遺体が包まれた。そうした死体は、何本かの棒に載せられて海岸まで運ばれ、放り投げられた。体から膿が流出していた。海岸一帯に重なっている何千、何万という遺体は、一見すると、まるで大河で遭難した船の漂流物のようだった。流れる膿は海に垂れていた」






ここまでです。

さて、ところで、いつもそうですけど、今回は特に全体として、まとまりがないのですけれど、書きたいテーマが多すぎたのが問題でした。

とりあえず、このヨーアンネースの資料からどういうことを私は想定したのかというと、

・535年に火山の大噴火はあったと思われるが、同時に大きな彗星の地球への衝突か、極端な接近があったのではないだろうか。

ということです。

もちろん、大噴火の気候への影響も甚大なものだったはずで、そのあたりを含めて、今後の世の中に生きるための参考となりそうなことを考えたりして、今後書いてみたいと思っています。

多分、サイクルの存在を考えると、歴史はある意味では同じように繰り返すと思います。

まったく同じではないでしょうけれど。

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