【地球という場所の真実】 の記事一覧

2014年12月13日



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12月16日から22日までの6日間「地球は完全な暗黒に包まれる」という…デマ報道なんですが、その日も近づいたので一応思い返してみました



デマ・ストーリーを報道大手が躍起にして否定した理由

今年10月の終わり頃に、下のような報道が、海外のツイッターや、フェイスブックに拡散されたことがありました。

nasa-6days-darkness.gif
Huzlers






 


12月16日(日本時間17日)から22日まで「6日間、地球は暗黒となる」というものです。

とはいえ、そのタイトルを読まれるだけでおわかりかと思いますが、これはもちろん作り話で、虚実混ぜた「ニュースのような記事」を発信する Huzlers.com が掲載したものです。

しかし、こういうような「虚実ミックス報道サイト」は英語圏には数多くありますし、それ以外にも、インターネット上での作り話やホラ話はどこにでも満ち溢れているわけで、普通、このようなものを大手の報道メディアが「否定する報道をする」というようなことはあまりないはずです。

ところが、この報道が出て、しばらくして、

「この記事はデマだ」

とする内容の報道が、非常に多くのメジャー報道サイト、たとえば、英国のインディペンデントや、インターナショナル・ビジネス・タイムズ、あるいは、ロシア・トゥディ、といったメディアが記事にしていたのでした。

普通だと相手にするようなものとも思えないのに、真剣に記事で否定した」という出来事が相次いだのです。

independent-hoax.gif

▲ 2014年10月28日の英国インディペンデントより。


参考までに、最初の発信元となった Huzlers.com の報道(のようなもの)の概要をご紹介します。

NASA Confirms Earth Will Experience 6 Days of Total Darkness in December 2014!

2014年の12月に地球は6日間の完全な暗闇に包まれることを NASA が確認!

NASA は、12月15日から 22日まで、地球がほぼ完全な暗黒の6日間を経験することを確認した。塵やスペースデブリが太陽嵐によって満たされることによって、太陽光の 90%が遮られる。その太陽嵐は過去 250年間で最大のものとなる。

この発表を行った NASA のチャールズ・ボールデン( Charles Bolden )長官は、人々に冷静さを保つよう求めた。

当局は、地球は6日間の暗闇に包まれても、何か特別な問題や被害が起きるということはないと述べる。

このような記事を間に受けることもないでしょうが、一応書かせていただきますと、

・太陽嵐により宇宙空間が数日間も塵や宇宙ゴミで満たされるという状態はあり得ない(太陽嵐の速度は桁違いに高速)
・そもそも、2カ月も先の太陽嵐を予測することはできない
・仮に、過去250年間で最大の太陽嵐が起きたとすれば、「問題や被害が起きるということはない」ということはない(必ず磁気嵐による被害が起きる)


などがあり、このような記事を高級メディアが相手にすることはない・・・とは思ったのですが、しかし、これを躍起に否定する、その「背景」は、まったく理解できないというものでもないのです。




2011年の NASA 長官の緊急メッセージ

3年前の 2011年 9月6日に、NASA のウェブサイト上に、唐突に、NASA のチャールズ・ボールデン長官の、「自然災害に対して、来たるべき事態に備えて下さい」といった内容の緊急非常事態に関するメッセージを述べるビデオがアップされて、憶測を呼んだことがあります。

その後、日本語吹き替えをしてくださった方がいらっしゃいまして、日本語で見ることができます。それが下の動画です。




最後のフレーズなどは、

「まずは、とにかくこれ以上ないというような準備を整えて下さい」

となっていて、何となく緊急性の漂うメッセージです。

内容の全体としては「いつ、どんな自然災害が来るかわからないので、日頃からその準備をしておいて下さい」という、どこの国でもよくあるメッセージですけれど、しかし、

「自然災害への準備を促すことは NASA の職務上の分担ではないのでは?」

とは思ってしまうわけです。

アメリカには、連邦緊急事態管理庁( FEMA )を始めとして、自然災害を担当する部署は多くあり、メッセージが出るのなら、そういう方面から出るのが自然な気がします。

というより、予測される何らかの自然災害に対しての、こういうメッセージは「アメリカ大統領が言うべきことなのではないのか」という気もします。

NASA は地球関連の調査も数多くおこなっていますが、それでも、

基本としては NASA の担当部署は「宇宙」

であるわけで、そのことなどもあって、人々のあいだに、

「何か宇宙からの災害が起きることを予測しているのじゃないだろうね」

というような憶測が流れたのでした。

幸い、NASA の長官が緊急メッセージを掲載した 2011年10月から現在まで、特別に大きな「宇宙からの災害」はなかったわけですが(強いて言えば、2013年チェリャビンスク州の隕石落下くらいだと思います)その「緊急メッセージ」の記憶が、いまだにある部分もあるのかもしれません。

A_trace_of_the_meteorite_in_Chelyabinsk.jpg
・チェリャビンスク州の隕石落下。Wikipedia

実際、ロシア・トゥディでは、このホラニュースを取り上げた際に、2011年の NASA 長官の緊急メッセージを引き合いに出していましたので、結構多くの人がこの時の NASA 長官の緊急メッセージを覚えているのかもしれません。

rt-nasa-hoax.gif
RT

このロシア・トゥディの記事もご紹介しておきたいと思います。




Earth to face a 6-day blackout, viral hoax cites NASA as saying
RT 2014.10.29


地球が6日間の暗転に直面するという NASA の発言を引用したホラ話がウイルスのように広がる


NASA が「地球は 12月に6日間の完全な暗闇」に包まれることを確認したことを暴露したとする主張は完全な「宇宙デマ」だった。

しかし、この話がデマだとわかる前に、この内容はツイッターを通して、全世界に広がっている。

オリジナルのレポートは、風刺的なニュースサイト Huzlers.com に掲載され、内容のソースとして、NASA のチャールズ・ボールデン長官の発言を引用したとされていた。

タイトルは「2014年の12月に地球は6日間の完全な暗闇に包まれることを NASA が確認」というもので、12月15日から 22日まで、太陽嵐による塵やスペースデブリよって、太陽光の 90%が遮られ、地球がほぼ完全な暗黒の6日間を経験することを確認したとしている。

ボールデン長官の 2011年の緊急事態への準備に関してのビデオは、このレポートの内容に重みを追加するために文脈に付け加えられた。


nasa-bolden.jpg
Youtube

しかし、全体として見た場合、このビデオは、地震やハリケーンが起きた時のための防災の準備について語っているものにすぎない。





というものですが、先ほども書きましたように、「 NASA の職務上の分担というのは、地震やハリケーンに対しての防災上の意識をアメリカ国民に促すものなのだろうか」という疑問が出るのも不思議ではない気がします。




暗黒になるはずの12月18日には地球外生命体まで地球に来訪

なお、Huzlers.com は最近の記事(のようなもの)で、

地球外生命体が、12月18日に地球に到着することを NASA が報告した

というストーリーを載せています。

nasa-extraterrestrial-beings .gif
Huzlers.com


この記事(のようなもの)でも、 NASA の科学者の名前を挙げ、その人物の言葉を引用して書かれています。

記事によれば、

NASA のハップル宇宙望遠鏡により6機の宇宙船が地球方向に移動していることが観測された。6機の宇宙船のサイズは、それぞれがサッカー場の半分ほどもある。地球へ向かっている目的は今のところ不明。

とのことですが、Huzlers.com の記者たちは、「その 12月 18日は地球が真っ暗になるって記事を書いた」ことを忘れたのですかね・・・。

それとも、意図的にその日に合わせて書いたのでしょうかね。

いずれにしても、人騒がせなニュースサイトではありますけれど、「地球が真っ暗になる」という話題にそんなに多くの人びとが惹きつけられるということは、そのような現象を「願う人々」、あるいは、願わないまでも、「そういう現象を経験したい人」が多いということなのかもしれません。

もちろん、私も経験してみたいです。

しかし、そうなる状況というのは、普通の考えではどうしても現実として想像することが難しい。

特に「地球全体が暗黒に陥る」という状況は、太陽が一方向から光を照らしている以上、太陽そのものが消えてしまう(あるいは太陽の光が消えてしまう)」ということにならない限り無理だと思いますが、太陽や、その光そのものが突然なくなるというのも、それもまた考えづらい。

そういえば、私の NASA の太陽写真コレクションの中で最も好きなものに「太陽が消えた」ものがあります。下の一枚です。

2010年1月29日1時26分19秒に NASA の太陽観測衛星 SOHO が撮影した「太陽」の写真

20100129_no-sun3.jpg


消えてますでしょう(笑)。普通は真ん中に太陽が写っているのですが、理由はわからないですけど、この時の写真には太陽が写っていなかったのでした。

この写真は、過去記事の、

「太陽騒動」から3年目の 2012年に再び太陽の周囲に集まる「巨大物体」たちを前に無視もできずに呆然と見つめる私
 2012年12月18日

にあります。

ちなみに、2012年の 12月18日に「太陽の光が消えていた」ように見えた観測のことについて記事でふれたこともあります。




2012年の暮れに「光が消えていた」太陽

このことは、

「暗黒の3日間」を実際に NASA の太陽観測衛星で見た日: そして、12月21日から突如として「凶暴化し始めた地球」
 2012年12月24日

という記事に、

「太陽は3日間消えていた」かもしれないことを示す NASA の写真

として下の写真を載せたことがあります。

sun-black3.jpg


写真は、NASA の太陽観測衛星 SOHOのものです。

この時の現象も合理的に説明がつくものなのだろうとは思いますが、見た目には、確かにその数日間、「太陽の光は消えていた」ようにしか見えなかったのです。

まあ、「地球が数日間の暗黒に包まれる」というフレーズは、さまざまなところで語られることでもありまして、それが「地球の変化のきっかけとなる」としているものも多いわけで、確かに現実感はあまりないですが、魅力を感じる現象でもあります。

何はともあれ、 「暗黒の6日間が来る」とされた 12月16日はもうすぐです。

日本には「ひょうたんから駒」なんて言葉もありますしね。

故事ことわざ辞典より「瓢箪から駒が出る」の意味

瓢箪から駒が出るとは、思いもかけないことや道理上ありえないことが起こること。また、冗談半分で言ったことが現実になること。




  

2014年12月06日



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2014-fall-snow.gif

▲ 2014年12月4日のワシントンポストより。






 


北半球の降雪面積が観測史上最大に

先日の記事、

元 NASA の気候学者が「地球はすでに今後30年以上続く寒冷期、あるいはミニ氷河期に突入した」と断定
 2014年12月04日

では、地球はすでにミニ氷河期に入っていると述べる気候学者の主張を取り上げました。

その気候学者で、元 NASA のコンサルタントのジョン・L・ケイシー( John L. Casey )氏が著作『ダーク・ウインター』で述べたことはおおむね以下の通りです。

・太陽活動の縮小による地球のミニ氷河期はもう始まっている。
・今後、地球は急速に寒冷化に入る。
・寒冷化は2020年代終わりから2030年代始めをピークとして数十年続くだろう。
・農業不振による食糧不足から社会情勢が不安定になる。
・アメリカは食糧輸出を停止するだろう。


などでした。

食糧輸出に関しては、「アメリカが輸出を停止する」とアメリカに言及しているのは、ケーシーさんご本人がアメリカ人だからだと思われます。世界的にそのような不作状態になれば、食糧輸出大国のカナダやロシアやオーストラリアなども同じような措置をとるでしょう。

ミニ氷河期には飢饉が起きやすいです。
小氷期 - Wikipedia には、

1315年には150万人もの餓死者を記録

とあり、食べられなくなりますと、体力も落ちて病気も流行しやすくなるためなのか、

疾病による死者も増加した。

ともあります。

このような状況となってきますと、自給率の低い、日本を含めた東アジアの国などはかなり厳しい状況となりそうですが、何か手はあるのかというと、数年間ならともかく、「数十年」も続くのであるならば、ちまちまと食糧備蓄をしてみても、個人ではどうにもならない面はありそうです。

さて、そんな「ミニ氷河期」の話題を書きました直後に、米国のワシントンポストの記事で、

今年の秋、北半球の雪で覆われた面積が観測史上最大になった

という報道を見つけました。

これは、ニュージャージー州のラトガース大学の降雪研究所が調査したもので、9月から11月の北半球の、「雪で覆われた面積」をデータ化したものです。

下のグラフで一目瞭然だと思います。

Northern-Hemisphere-snow2.gif

▲ 1967年から2014年までの雪で覆われた面積の推移。 ラトガース大学 全球降雪研究所( Rutgers University Global Snow Lab ) より。以下のデータも同じです。


これまでは 1976年が最も多い雪面積だったのですが、今年の秋はその記録を上回り、3500平方キロメートルを越える雪面積となりました。

下はそれぞれの年の平均との比較ですが、こちらに関しても今年は観測史上最大となっています。

snow-nov-na.gif

▲ 1967年から2014年までの雪で覆われた面積の偏差。




その一方で大気の温度と海水の表面温度も観測史上で最も高いとは、これいかに

このように、今年の秋(9月、10月、11月)は、雪の降った面積が、過去最大クラスに多いということがわかったわけで、それなら「気温もさぞや低かったのだろう」と考えるところですが、ワシントンポストの記事のタイトルにありますが、なんということか、

今年の北半球の秋の気温は観測史上で最も暖かった

のです。

私としては、むしろこちらのほうが信じられないところがありますが、下のように、アメリカ海洋大気庁( NOAA )の平年との気温の比較の図は、今年の秋の北半球は明らかに平年より気温が高いことがわかります。

2014年9月、10月の全世界の気温の偏差
201401-201410.gif

▲ NOAA が発表した2014年9月、10月の全世界の気温の平年との比較。赤が濃いほど、平年より気温が高いことを示します。


ワシントンポストによれば、

通常より少し暖かい気温は、大気中の水分含有量を増加させて、雪の量を増加させる可能性をもっている。

ということですので、「気温が高いために雪が増える」という理屈はわからないでもないのですが、しかし、何となく不思議な感じはいたします。

実は、大気温度だけではなく、「海面温度」もそうなんです。

過去記事、

冬のカオス:凍てつくアメリカ、焼け付くオーストラリア…
 2014年11月21日

で、私は下のように書いています。

現在、アメリカは強い寒波に見舞われていますが、実はアメリカ周辺の「海」では奇妙な現象が起きています。

それは「海水温が異常に高い」のです。

低いのならわかる気もするのですが、「高い」のです。
しかも、一過性のものではなく、最近ずっと高いままなのです。

下はアメリカ海洋大気庁( NOAA )による9月の世界の海水温度の平年との差異ですが、アメリカ西海岸からアラスカにかけての海域と、東海岸沿いの一部の海水温度が平年に比べて異常に高いことがわかります。


sea-temp-high.gif
・NOAA

上の記事ではアメリカについて書いていますが、記事にある全世界の海水温度の平年との差異を見てみますと、「今年の秋は全体として海水表面温度が高かった」ことがわかります。

さらに「来たるべき地球のかたち」の、

海に何が起きているのか:世界の海水の表面温度が観測史上の130年間で最も高くなっているけれど、その理由がわからない
 2014年11月26日

という記事には下の表を載せています。

1880年から2014年までの海水表面温度の推移
sea-temp-2014.gif
・NOAA

2014年は、太平洋も他の多くの海域も 1880年からの観測史上でもっとも海水の表面温度が高かったことがわかります。

しかし、秋が過ぎた 11月の終わりには、アメリカやカナダ、ロシア、ヨーロッパの一部、中国などに、「北極からの爆風(極渦」が、ジェット気流に乗ってやってきました。

これにより、アメリカでは、ニューヨーク州などで非常事態宣言まで発令されるような「異常な寒波」に見舞われたことはご記憶の方も多いと思われます。

emergency-us-cold.jpg

▲ 2014年11月22日のニューヨーク経済新聞より。


つまり、この秋の北半球、あるいはその一部は、

・観測史上で最も気温が高く暖かかった
・観測史上で最も高い海水表面温度だった


のにも関わらず、

・観測史上最も雪の降る面積が広かった

と同時に、

・北極からの寒気で100年以上の記録を更新する寒波

を経験する場所があったり、

・観測史上最大の積雪を記録する地域があった

などのムチャクチャな秋から冬の動きだったのですが、この「急変」という状態から感じることとしまして、先ほどリンクいたしました過去記事「冬のカオス…」に書きました、かつてのミニ氷河期はたった数ヶ月でその気温が定着し、その後、1300年間も続いたという調査などを思い出させてくれます。

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New Scientist

つまり、寒冷化は過去の場合には「急速にやってきた」という歴史もあるということですので、寒冷化に入る際にはあっという間にその状態になってしまうという可能性もあると思われます。




どう想像しても「荒れる」イメージしか湧かないこれからの冬

そして、世界各地から寒波と大雪のニュースが毎日飛び込んできています。

何より日本も昨日あたりから、かなり拾い範囲で雪の被害が出始めていて、毎日新聞の「大雪:四国と島根で次々車立ち往生 徳島では50世帯孤立」などを読みますと、改正災害対策基本法というものが初適用されたりしています。

ヨーロッパも、特に中央ヨーロッパはカオスじみた光景が寒気によって作られています。

オーストリア・コッテス 12月3日
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オーストリア北部のヒムブルク 12月3日
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ハンガリーの首都ブダペスト 12月3日
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DARK ROOM

ロシアも場所によっては大変なことになっているようで、ロシアの声には下のようなニュースがありました。

Khabarovsk-50.jpg

▲ 2014年12月3日のロシアの声より。


この先どんな冬になってくるのか、いよいよわからなくなりますが、海水の表面温度が高いということは、海から蒸発する水分などを考えますと、世界的に大気中の水分量が高くなっているのかもしれず、「大雪」という状況はしばらく続くのかもしれません。

そこに北極からの寒気が重なってくると、

暖かい気温と高い湿度の中に超寒気が突っ込んでくる

という図式になり、これだと、やはり「荒れる」というイメージしか湧かないのですが、どうなりますかね。

そして、元 NASA のケーシー氏は「ミニ氷河期は 30年続く」とか言っていたり、1万3千年前のミニ氷河期なんてのは 1300年間も続いたりしていたりなど、いろいろと「寒い話」は尽きません。

それでは、ここから、ワシントンポストの記事です。




Fall snow cover in Northern Hemisphere was most extensive on record, even with temperatures at high mark
Washington Post 2014.12.04


この秋の北半球は気温は高い状況にも関わらず、雪に覆われた面積が観測史上最高の広さを記録


過去46年の積雪面積の調査から、今年の秋の北半球では、他のすべての年よりも雪で覆われた面積が最も多くなっていることがわかった。

これは非常に驚くべき結果と言わざるを得ない。なぜなら、北半球の気温そのものは、過去の同時期と比べて最も高いレベルで推移しているからだ。

米国ラトガース大学の全球降雪研究所( Rutgers University Global Snow Lab )のデータによれば、この秋の北半球の雪面積は、2200平方マイル(約 3540万キロメートル)以上に拡大しており、これは、1976年に記録された積雪面積を大きく越えている。

研究をおこなっているニュージャージー州の気候学者、デビッド・ロビンソン( David Robinson )氏は、以下の積雪に関しての統計情報を追加する。

・9月、10月、11月に、北半球の雪面積が記録を更新した。
・北米は観測史上で最も広範囲での積雪があった。
・ユーラシア大陸では観測史上3番目の積雪面積があった。

さらに、11月に絞ると、

・北米は観測史上で最も広範囲での積雪があった。
・ハワイとアラスカを除くアメリカ本土48州で観測史上で最も広範囲での積雪があった。(これは北極からの爆風での豪雪があったことを考えると不思議ではない)
・カナダは観測史上2番目に多い積雪面積だった。

この結果は、アメリカ海洋大気庁( NOAA )の発表した今年 9月と 10月の全世界の平均気温が、観測史上で「最も暖かかった」という結果を考慮すると、まるで、お互いに反している現象のように見えるかもしれない。

また、アラバマ大学ハンツビル校の衛星解析データによると、11月の全世界の気温も観測史上2番目に高かった。

しかし、雪の量は、気温との相関関係を持つものではない。雪が降るには、単に氷点下、あるいは氷点下近くの気温が必要とされるだけだ。

平年より1〜2度高い気温は、多くの場所に降雪を与える可能性がある。

また、通常より少し暖かい気温は、大気中の水分含有量を増加させ、雪の量を増加させる可能性をもっている。

最近のモデリング研究によれば、地球温暖化のシナリオの中では、今世紀末までに雪の量は高緯度地域で 10パーセントほど増えるとされる。

降雪の条件としては、気温よりもむしろジェット気流の循環の要素が重要に関与している。ジェット気流は、中緯度へ北極からの冷たい空気を輸送することができる。この秋には北極からのジェット気流が、ふだんの秋なら降雪がないような地域に降雪をもたらした。

今年の秋の珍しいジェット気流の動きの理由については、科学研究で活発な議論がおこなわれており、現在、

1. アメリカは雪と寒さの進行中の中にいる。しかし、それはなぜか。

2. 地球温暖化がこの狂気的な冬を作り出しているという証拠が出始めている。

という2つを柱として議論が進められている。




  

2014年12月05日



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地震が起きたアメリカのセドナは世界7大霊山のひとつだった

先日の記事、

オレゴンの亀裂、ネバダやカリフォルニアの群発地震:アメリカ大陸の西側で今何が起きている?
 2014年12月03日

で、アメリカの西部のあたりで下のようにいろいろなことが起きていることについて書きました。

sedona-earthquake-201411.gif






 


上の図で、マグニチュード 4.7の地震が起きた場所は「セドナ」という場所です。

記事を書いていた時は、「どこかで聞いたことがあるなあ」くらいに思っていたのですが、その後になって、

「ここって何かの聖地じゃなかったっけ」

と、過去記事を探してみますと、2年以上前の記事ですが、

北京の空に現れた「終末の雲」や富士山のレンズ雲から思う世界の7つの「聖なる山」
 2012年06月20日

の中に「世界の七大聖山」と呼ばれている世界の7つの聖なる山々について記していました。

その7つの山は下のようになっています。

シャスタ山 (米国)

shasta-03.jpg
Mount Shasta Resort

このシャスタ山は、古代からネイティブアメリカンたちによって崇められている山だそうで、スビリチュアルな場所としても有名である他にも、シャスタ情報というページには以下のようなことも書かれています。

シャスタ山には、シャスタ、シャスティーナと呼ばれる山頂が2つ重なっています。その2つの山頂は、聖なる男性性と女性性の統合を示してくれているとも言われています。

というような「男性性と女性性の内なる統合」というような意味も語り継がれてきたようです。


富士山 (日本)

fuji-mountain.jpg
Hello Navi しずおか


マチュ・ピチュ (ペルー)

Peru-machupichu.gif
ペルー観光情報サイト


シナイ山 (エジプト)

Mount-Sinai.jpg
38 Days In Egypt

モーセが神から十戒を授かったとされる場所として信仰の対象となっているのだそう。

旧約聖書 出エジプト記/ 31章 18節

主はシナイ山でモーセと語り終えられたとき、二枚の掟の板、すなわち、神の指で記された石の板をモーセにお授けになった。


チョモランマ / 英名エベレスト (ネパール)

chomolungma-1.jpg
Karangkurung Mountaineering Club


キリマンジャロ (タンザニア)

Kilimanjaro.jpg
・Reddit


そして、先日、マグニチュード4.7の地震が起きたアメリカのセドナ山となります。

セドナ (米国)

sedona-3.jpg
Sedona Bed and Breakfast

このセドナは、シャスタ山と同様に、ネイティブアメリカンの聖地でしたが、1970年代から、突如、ヒッピーたちの「聖地」となっていったようです。セドナ - Wikipedia によりますと以下のようなことで、今のような観光スポットへとなっていったようです。

1970年代にセドナは大きく変化した。ボルテックス(パワースポットの別称)の街として注目されたのがきっかけだった。既存の価値観に反発し、スピリチュアルな世界を信じる人々や、当時多かったヒッピー と呼ばれる人々が、ボルテックスを求めて、大挙してこの地に押し寄せてきたのだった。

このようにして、もともとネイティブアメリカンの聖地だった場所は、「スピリチュアルな街」になり、世界中から、国籍や宗教を超えて、人々を吸い寄せるようになったのである。

近年では、セドナにはボルテックスと呼ばれるパワースポットが10カ所ほどあるとされている。

というようにスピリチュアル的な観光地になっているようで、そのような地で、この場所としては珍しい地震が起きたと。

このセドナでの地震報道を見て、よく考えてみると、昨年以来、

聖地と呼ばれる場所での異変や災害がとても多かった

ことに気づきます。




崩れ続ける聖地の問題から話は飛躍して

今年9月に噴火した御嶽山もまぎれもない聖山です。

過去記事、

御嶽山の噴火やマヤカレンダーが示した「 5000年間」という時代の区切りに「日本神話の根源神」は何を私たちに示そうとしているのだろうかと考える
 2014年10月06日

では、この山に、国之常立神(クニノトコタチノカミ)という神様がいらっしゃるとされていることについて書いています。

そして、この神様こそ、天地開闢(かいびゃく / 日本神話でこの世ができた時)の際に出現した神様であります。

ところで、国之常立神は、純粋な「男性の神様」だそうで、これは中国の古代神話でいえば、盤古(ばんこ、中国語読みでパンク)にあたる神様ですね。

盤古を描いた古代の絵画はいろいろとありますが、私がお気に入りなのが下のです。

pan_ku.jpg
phys.ncku.edu


中国の神話では、この男の神様が「天地を作った後」に、女性の神様nuwa-joka.png (じょか、中国語ではヌーワ)が、土の人形から「人類を創造する」ということを始めるわけですね。

このあたりは、古い記事ですが、クレアなひとときの、

中国の天地創造神話 - 盤古
 2011年05月30日

中国の天地創造神話 - 女媧(Nüwa)
 2011年06月01日

などでふれていますので、ご覧いただければ幸いです。

しかし、この頃は特に疑問視もせず、この中国古代神話を読んでいたのですが、今となっては、「科学的な矛盾」を感じるようになっています。

そのことはおいおい記すとして、これらの中国古代神話は「神様が世界を創造」したり、「人類を創造する」という部分があるのですが、日本神話ではどうなのかといいますと、どうやら、

日本の神様は宇宙も生命も創造していない

ようなのです。

まず、宇宙に関しては、天地開闢 (日本神話) - Wikipedia に、

日本神話の天地開闢といえば、近代以降は『古事記』冒頭の「天地初発之時」(あめつちのはじめのとき)が想起される。ただし、ここには天地がいかに創造されたかの記載はない。

というように「天地がいかに創造されたかの記載はない」とあります。

では、「人類の創造」は?

これはわかりやすい回答例が、Yahoo!知恵袋の「神話では人間の誕生をどう言っているのですか?」という質問に対してのベストアンサーに、

日本神話では、神の子孫が人間、人間の祖先が神、という漠然とした話だけが存在していて明確な人類の起源は見られません。

人によってはイザナギとイザナミを最初の人間と解釈している事もあり、受け取る人によって日本神話はかなり違うので、人間の起源に関しては曖昧な物になっています。

そして、もうひとつの回答は、

『気が付いたら居た!』です。
日本神話は、そこら辺は、かなりいい加減(-_-;)


というものでした。

これは、「気が付いたら人間がいた」という意味だと思いますが、この回答者は、「かなりいい加減」と書かれていますが、このことを知らなかった私は非常に感動したのです。

日本神話は、いい加減どころか、私が思うところの科学的な意味での「この世の真理そのもの」だと思います。

日本神話が、

この宇宙や人間の誕生についてふれてもいない

ということそのものが

「この世の永遠性」を現している

と思うからです。

何だかわかりにくいことを書いている気もしますが、たとえば、過去記事の、

145億年前の星が発見される : その星の由来の人物メトセラの死の直後に地球は創世記の大洪水に包まれた
 2013年08月26日

という記事の最初の小見出しが、

宇宙も生命も「その起源」というものは考えにくい

となっています。

この意味は、物理学の基本(質量保存の法則)からみて、

・宇宙がこの世に生まれ出たことはない(もともとあった)
・生命がはじめてこの世に誕生したという時はない(もともとあった)


という考え以外をもつことができないのです。

このあたりの考えを持たせてくれましたのは、物理化学の創始者の1人であるスヴァンテ・アレニウスの『宇宙の始まり―史的に見たる科学的宇宙観の変遷』の中に何度も出てくる概念や、あるいは、そこに出てくる 19世紀のイギリスの哲学者のハーバート・スペンサーの文章などによる影響があります。




無から有は生まれない

過去記事の、

「宇宙は膨張していない」
 2013年08月16日

にその文章を載せたことがあります。

スペンサー『生物学原理』(1867年)より

spencer-02.jpgおそらく、多くの人々は虚無からある新しい有機物が創造されると信じているであろう。

もしそういうことがあるとすれば、それは物質の創造を仮定することで、これは全く考え難いことである。この仮定は結局、虚無とある実在物との間にある関係が考えられるということを前提するもので、関係を考えようというその二つの部分の一方が欠如しているのである。

エネルギーの創造ということも物質の創造と同様にまた全く考え難いことである。生物が創造されたという信仰は最も暗黒な時代の人類の間に成り立った考えである。

ここで、スペンサーは、

・無から有は生まれない

・無からエネルギーは生まれない

・生物は(どこからも)創造されない


ということを明確に述べています。

アレニウスも、ほぼ同じ考えを持っていたことが、『宇宙の始まり』の中に、

宇宙とそこにある物質が突然に存在を開始したという過程には奇妙な矛盾が含まれている。

と書いているところからもわかります。

つまり、神話や宗教的な意味ではなく、科学的な考えからだけなら、

・何もないところからは何も生まれない

・生物は誕生しない

という結論にしかならないはずなのです。

日本神話はこの2つの条件を満たしていることになります。

それは「天地の創造にも人類の創造にふれていない」ということだけで、このふたつの概念に適合していることになると思うのです。

そういう意味では、日本神話おそるべし。
ちゃんと読んだことないですけど、読んでみようかなあ…。





現実の科学世界は神話より劣化していった

神話の世界はともかくとして、現実の世界では、上のスペンサーの『生物学原理』から 80年後くらいの世界、つまり、1950年前後には、「ビッグバン仮説」という物理学の前提を無視したような、奇妙で、多くの偉大な前任科学者たちの顔に唾を吐きかけるような科学仮説がこの世に定着し始めたのでした。

このビッグバン理論は、アレニウスがそれより何十年も前に記述していた、

「宇宙とそこにある物質が突然に存在を開始したという過程には奇妙な矛盾が含まれている」

という矛盾を解消できないまま、今でも主流仮説として存在しています。

昔の科学者たちは……というより、アレニウスのみならず、きちんとした科学者の中で「宇宙に始まりがある」なんてことを考える人はいませんでした。アインシュタインもです。

下は、ビッグバン - Wikipedia からの抜粋です。

20世紀初頭では天文学者も含めてほとんどの人々は宇宙は定常的なものだと考えていた。「宇宙には始まりがなければならない」などという考えを口にするような天文学者は皆無だった。

ハッブルも、柔軟な考えを持っていると評価されているアインシュタインですらも、「宇宙に始まりがあった」などという考えはまるっきり馬鹿げていていると思っていた。

しかし、20世紀の中盤までに、徐々にこの「宇宙に始まりがある」という「病巣」は科学界の細部にまで浸透していきます。悪性腫瘍の転移のように。

ちなみに、この「ビッグバン」という名称には皮肉が詰まっています。下も Wikipedia からの抜粋です。フレッド・ホイル博士の悲劇と、その心中をお察し下さい。

なお、「宇宙は原始的原子の“爆発”から始まった」という現在のビッグバン仮説に通じるモデルを提唱したのは、ジョルジュ・ルメートルという天文学者です。

フレッド・ホイルは「宇宙に始まりがあった」という考えをとことん嫌い抜いていた。ホイルが1948年に出したモデルは「定常モデル」と呼ばれる。

これは「宇宙は永遠で無限だから偉大なのだ」と考える科学者たちの心をつかんだ。おまけにホイルの説はビッグバン説よりエレガントだった。

ところが……です。

ジョルジュ・ルメートルの理論にビッグバン (Big Bang) という名前を付けたのはホイルで、1949年の BBC のラジオ番組の中で彼がルメートルのモデルを "this 'big bang' idea" とからかうように呼んだのが始まりであるとされている。

つまり、ホイル博士は「宇宙は最初の爆発で誕生した」という不思議な理論を、からかった意味で、

「それじゃまるで、宇宙はバンッ!と大爆発(ビッグ・バン)してできたと言っているようなもんじゃないか」

とラジオ番組で使った「ビッグバン」という言葉が、そのまま科学用語として使われるようになってしまったのでした。つまり、ビッグバン理論というのは、「その理論を最も嫌い続けて生きたひとりの科学者フレッド・ホイル博士が名付けてしまった」ものなのでした。

ちなみに、ホイル博士は、「地球の生命が地球の無機物から偶然生まれた」という説にも徹底して反対し続けました。

hoyle-said-so.jpg
iz quotes

上は、ホイル博士が、「偶然、生命が生まれる確率について語った言葉」です。

最も単純な単細胞生物がランダムな過程で発生する確率は「がらくた置き場の上を竜巻が通過し、その中の物質からボーイング747が組み立てられる」のと同じくらいだ。 --- フレッド・ホイル


ところで・・・なんで、いつのまにビッグバンの話になってるんだ・・・。


完全に今回のテーマの論点がズレてきているのはすでにずいぶん前から気づいていますが、もう止まらない。

まあ何はともあれ、かつての常識的な科学の時代に「宇宙の始まり」なんて概念はなかったんです。

その宇宙に「始まり」を作ったのが、現在の科学という「神話」です。

なので、上のほうに書きました、「日本神話で宇宙はどのように出現したのか」ということに関して、

『古事記』には天地がいかに創造されたかの記載はない。

とあり、そして、「日本神話で人類はどのように出現したのか」に関して、

『気が付いたら居た!』です。
日本神話は、そこら辺は、かなりいい加減(-_-;)

という「気づいたら人間がいた」というのは、いい加減ではなく、日本神話は非常に正確な科学の観点から描かれていることがわかります。

他の神話の中では、ギリシア神話が比較的それに近いですかね。創造神話によりますと、

ギリシア神話では、天地は神によって作られるものというより、むしろ神が天地そのものであり、神々の誕生の系譜がそのまま天地の由来とされる。

となっていまして、日本神話にも近いものがありそうです。

どちらもよくは知らないですが。

それにしても、話の逸脱がものすごいことになってしまいましたが、今回、本当は最初に書こうと思っていたのは、最近、「聖地と呼ばれる場所が災害などで被害を受ける」ことがとても多く感じるということでした。

他にもいろいろなところで、「聖地」と呼ばれるような場所で異変が起きたり、あるいは自然災害に見舞われたりしています。

しかし、それらのことはまたの機会にしまして、今回はあまりにも混沌とした展開になりましたので、ここまでとさせていただきます。



  

2014年12月01日



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earth-shield-top2.gif

▲ 2014年11月26日のコロラド大学 ニュースリリースより。






 

地球を保護する奇跡的なメカニズムのおかげで私たちは生きている

地球という惑星は「太陽系の他の惑星には見られないようなメカニズムで生命が保護されている」ということについては、これまでも書いたことがあるかもしれません。

宇宙からはいろいろなものが降り注いでいるわけですけれど、中にはダイレクトに地表に降り注ぐと、生命に害のあるものも多いとされています。

母なる太陽にしても、太陽風プラズマという、科学的な説明では「電子と陽子が分離してイオン化したプラズマ粒子のガス」という温度 100万度のそういうようなものを常に地球に向けて吹きつけているとされています。

こういう環境の宇宙空間では、地球に何らかの「バリア」がなければ、地球の生命は維持されないのですが、「地球の磁場」が私たちを保護する役割を果たしています。

イメージとしては下のように地球は、磁場によって防護されています。

Magnetosphere_rendition2.gif
Geomagnetic storm

これらは、地球に磁場があるからこその防護であるわけで、もし地球から磁場が消えた時には、この最大の宇宙からの防御システムが消滅するわけです。

その場合、どのようなことになるのかは実は誰にもわからないのですが、それでも、何らかの影響や被害は出るものだと考えるのが一般的です。

とはいっても、地球滅亡だの人類の終わりだの、そういうような概念での何かとの関連は「ない」と私は考えています。なぜなら、かつての地球では「磁場は何度か消滅していた」という可能性があり、それでも、地球の生命は哺乳類を含めて生存し続けているからです。



過去の地球で何度も起きていたかもしれない磁場の消失

磁場が消滅していたかもしれないと考える理由は、過去の地球は何度か「磁極の逆転」を起こしていたことが現在ではわかっていることと関係しています。

下は、気象庁地磁気観測所にある表を見やすくしたもので、黒い場所と白い場所は、それぞれN極とS極を現しています。その位置が時代によって色が違うということは、過去 358万年のあいだに、何度もN極とS極が入れ替わっているとことを示します。

mag-rev-3.gif


過去の地球では比較的短い間に何度も磁場の逆転が起きていたことがわかります。

この気象庁のサイトには、

78万年前N極とS極は逆転しており、また少なくとも過去360万年の間に11回は逆転したと考えられています。

とあります。

過去 358万年でこれだけ起きているのなら、この範囲を何千万年とか何億年とかに広げれば、「地球は日常的に磁極を逆転させてきた」と言っても差し支えないかと思われます。

ちなみに、上の鮮新世とか新第三紀とかは、聞き慣れない単語ですが、地質時代の名称だそう。


この磁場の逆転と、地球の磁場の関係については、一般的に、

磁極が反転する時には一時的に地球の磁場がゼロになる

とされています。

この「されています」というのは、それは磁極の逆転が起きてみないと、そうなるのかどうかは誰にもわからないからです。

しかし、ともかく、仮にその説が正しく、「磁極の反転の際に、地球の磁場がゼロになる」のだとすれば、過去の磁極の反転の時代に地球に生きていた過去の生物たちは何らかの影響を受けていたはすです。

しかし、この地球上の記録では、6550万年くらい前に、恐竜などをはじめてとして、地球の生物の70パーセント程度が絶滅した K-T境界と呼ばれる時代の大量絶滅以降、地球の生物の大量絶滅は確認されていないという事実があります。

なので、仮に地球の磁極が逆転して(その時期はわりと近いと私は思っています)、その時に地球の磁場が消滅して、「地球の防御が消滅」という事態になっても、絶滅イベントが起きることではないはずです。

では何が起きる可能性があるのか。

それは、生命の消滅のほうではなく、「文明の消滅」の可能性です。




磁場の消失で起き得る電気文明の終焉

過去記事の、

急速に消えていく地球の磁場 : 地球の「磁場の反転」は今すぐにでも起きる可能性を示唆する ESA の科学者の言葉
 2014年07月15日

の中で翻訳してご紹介したアメリカの科学サイト「ライブサイエンス」の Earth's Magnetic Field Is Weakening 10 Times Faster Now(地球の磁場は現在 10倍の速度で弱まっていっている)という記事では、欧州宇宙機関( ESA )の地球磁場観測ミッションのスウォーム( SWARM )により、地球の磁場が、それまで考えられていたよりはるかに速いペースで減少していることがわかったということが記されていると共に、その記事には、

地球の磁場が弱められたからといって、それが地球に大量絶滅などのような終末的な現象をもたらすという証拠はない。過去の磁場の反転時に大量絶滅は起きてはいないし、地球上が放射線で壊滅的な影響を受けた形跡も見当たらない。

ただ、それでも、研究者たちは、電力網と通信システムが危険にさらされる可能性は高いと考えている。

とあります。

宇宙空間は、「地球の電気通信システムに壊滅的なダメージを与える電子やら宇宙放射線やらが無数に行き交っている」わけで、地球も常にそれにさらされ続けているわけです。

人口衛星などの宇宙の機器にはそれに対応している防御システムがある(それでも、ときにダメージを受けます)ので、宇宙空間でも稼働しているのでしょうが、地球上の電気通信インフラで「宇宙対策」などしているものなどないはずです。

もし、磁場の保護がなくなり、「地球が丸裸の状態になってしまった場合」には、現在の電気系統に頼る文明システムは一時的かもしれないですが、大きなダメージを受けるか、あるいは存続不可能になる可能性もあるように思います。

そして、上にリンクした記事でも示しましたが、現在、磁場が加速度的に弱くなっています。

下の図は、2014年 6月までの半年間の地球の磁場の強度の変化です。
青色が濃いところになるほど「磁場が弱くなっている」ことを示します。

magnetic-2014-jun3.gif
・Livescience

北米大陸の周辺の磁場の弱体化が著しいです。

また、欧州宇宙機関の観測によって、

現在、従来考えられていたより 10倍の速度で地球の磁場の弱体化が進行している

ことも確認されています。

これは、 2000年頃から磁場の弱くなる速度が加速しているという理解でいいと思われます。

下のグラフはいい加減に作ったもので、正確なものでも何でもないですが、イメージとしてはこのように、最近は以前より 10倍の速度で磁場が弱くなっているのです。

simulation-mag-2.gif


磁場が弱くなることによって、地球の電気や通信のインフラがダメージを受けるかもしれないことは、以前から指摘されていて、今年2月の、

地球の磁気圏が崩壊を始めた : 英国の科学者たちが地球の大規模な磁場の衰退と、それに伴う磁気圏の崩壊と気候の大きな変動を警告
 2014年02月05日

という記事では、下の英国デイリーメールの記事をご紹介しました。

magnetsphere-collapse.gif

▲ 2014年1月27日の英国 Daily Mail より。


上の記事で、英国リバプール大学の科学者リチャード・ホルム( Richard Holme )教授は、以下のように述べています。

「深刻な事態です。あなたの生活から数ヶ月間、電力が消え去る事態を想像してみるとよいかと思います。今の生活はどんな些細なことでも、電力なしでは成りっていないことに気づかれると思います」

そして、この現在、磁場が弱くなっていることに対して、欧州宇宙機関の科学者ルーン・フロバーガーゲン( Rune Floberghagen )博士は、ライブサイエンスのインタビューで、

「これは地球の磁場が反転する前段階かもしれない」

と述べています。

このまま地球の磁場が加速度的に弱くなり、それが「ゼロ」に近づいた時、あるいは、「磁極が逆転した時」、地球の防護はどうなるのだろうということは多くの人が考えることです。

しかし、すべては起きてみないとわからないことで、磁極が反転して、地球の磁場が何ヶ月かゼロになっても、何も変わらないかもしれないし、あるいは、「ひとつの文明が終焉に向かう」ということもあるかもしれないですし、それは多分、世界のどの科学者も明快な答えは持っていないと思われます。




そして新たに発見された地球のシールド

そんな中で、「地球に新たな防御シールドがあることが発見された」という記事が今回ご紹介するものです。

発見された「シールド」をイメージ化したのが下のイラストです。

shields.jpg


これがなぜ存在していて、どんな性質のものなのかの詳細はわかっていないですが、「キラー電子」と呼ばれる電子の防御壁になっていることについてはわかったのです。

キラー電子というのは俗称で、人工衛星や宇宙飛行士の健康などにもダメージを与えるとされている電子で、それがこの「バリア」で、すべて弾かれていることがわかったというものです。

つまり、「地球を電子から守ってくれている防御シールド」が存在したということが新たにわかったということのようです。

なお、このコロラド大学の記事のタイトルにある「スター・トレックのシールド」というのは、アメリカで 1966年から放映されていたテレビドラマ「スター・トレック」に出て来る宇宙船 U.S.S.エンタープライズ号に搭載されている「デフレクター・シールド」というバリアのことを言っているのだと思います。

enterprize-01.jpg
Trek Annoyances

これが必要な理由は、戦闘用というより、デフレクター盤 - Wikipedia にある、

宇宙空間には、デブリと呼ばれるいわば『ごみ』が無数に漂っていて、数kmの小惑星サイズから水素原子ほどの超微小なものまで様々ある。

惑星連邦の宇宙艦のように、光速を越えるスピード(=ワープ)で移動する物体にとっては、水素原子のような微小なものでも自らを破壊する脅威となる。その危険性から艦を守るための装置がデフレクター盤である。

という説明のほうが妥当だと思われます。

ちなみに、私が見たことのあるスター・トレックは 1960年代のものだけですが、小学生の高学年か中学1年くらいの時に、『宇宙大作戦』というタイトルで再放送されていたものをよく見ました。

ドラマの時代設定は西暦 2264年頃で、地球からはすべての差別が消えている時代の宇宙開拓を描いた「理想の未来」を描いたドラマでした。

オープニングの、

「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない」

というナレーションで始まるこの番組をワクワクして見ていました。

この宇宙大作戦を見て以来、アメリカのドラマに興味が湧きまして、中学時代は結構アメリカのドラマを見ていました。

特に 1974年から放映された『事件記者コルチャック』は、新聞記者のドラマなのに、取材する事件が、亡霊、狼男、ゾンビ、吸血鬼、地底怪物、宇宙からやってきた謎の生物と、オカルトやスビリチュアリズムなどを題材にしながらも、それをお笑いペースで進めていくという離れ業をやってのけた傑作ドラマでした。

五芒星と悪魔の関係とか、ブードゥー教とゾンビの関係なんてのは、事件記者コルチャックで初めて知りました。

今もたまに見たいなあと思うんですが、 DVD はどうやら、ややプレミア状態で価格が下がらないのですよ。
Amazon ではいまだに中古ですら7万円以上。

Kolchak-dvd.gif
Amazon

いくら思い出の作品だとしても、購入するには躊躇する価格です。

そんなわけで、何だかとんでもない話の逸脱をしてしまいましたが、コロラド大学のニュースリリースをご紹介します。

このニュースは、科学者たちには不可解なことのようですが、もしかすると、地球の周囲には、まだ発見されていない「保護してくれている何か」が存在している可能性もあるのかもしれません。




Star Trek-like invisible shield found thousands of miles above Earth
コロラド大学 ニュースリリース 2014.11.26


地球の数千キロ上空にスター・トレックに出てくるような見えないシールドが発見される


米国コロラド大学ボールダー校が率いる研究チームは、地球上空約 7200マイル(約 1万1000キロメートル)に見えないシールドが存在していることを発見した。

これは、いわゆる「キラー電子( killer electrons )」と言われる電子を遮る役割を持っていることがわかった。キラー電子は、地球の周囲を光速に近い速度でまわっており、宇宙飛行士や人工衛星などにダメージを与えることが知られている。このキラー電子への「バリア」がヴァン・アレン放射線帯で発見されたのだ。

ボルダー大気宇宙物理学研究所( LASP )のダニエル・ベーカー( Daniel Baker )名誉教授によれば、このバリアは、地球上空に2つのドーナツ状のリングの形で存在し、高エネルギー電子と陽子で満ちているという。

ヴァン・アレン放射線帯は、地球の磁場により適所に保持され、定期的に膨張し、太陽からのエネルギーの遮断に応じて縮小する。

ヴァン・アレン放射線帯は宇宙時代の最初の重要な発見で、米国アイオワ大学のジェームズ・ヴァン・アレン( James Van Allen )教授によって、1958年に検出された。


Van-Allen-5.jpg


今回の研究を率いたベーカー名誉教授は、そのヴァン・アレン教授のもとで博士号を取得している。

2013年、ベーカー氏は、2012年に「第3層目のヴァン・アレン帯」を発見した NASA の研究チームとの調査で、ヴァン・アレン帯の内側と外側のベルトの間に、過渡的な「ストレージ・リング」( storage ring )があり、宇宙天気の強弱によって、これが出現することがあるとした。

ヴァン・アレン帯に関しての最新の謎のひとつが、地球上空の約 1万1000キロメートル付近の、外側のベルトの内側にある淵に「非常に鋭いエッジ(境界)」が存在していることだった。

これは、超高速の電子を遮断しているように見え、そして、地球の大気の方向に向かって深く移動する。

研究を率いたベイカー氏は以下のように言う。

「それは、宇宙の中でガラスの壁に電子がぶつかっていくような状態なのです。まるで、スタートレックの中でエイリアンの攻撃からエンタープライズ号を守るために使用したフォース・シールド(ディフレクター・シールド)のような透明なバリアといえるものです」

「私たちは、電子を遮断する見えないシールドを見つけたのです。これは極めて不可解な現象だといえます」

この研究の論文は 11月27日号に出版された科学誌ネイチャーに掲載された。

チームは当初、非常に帯電した電子(毎秒 16万キロメートルの速さで地球の周囲を回っている)は、ゆっくり宇宙空間から地球の上層大気まで落ちるように到達して、空気の分子によって破壊されると想定していた。

しかし、ヴァン・アレン帯の宇宙観測船から見えた光景は、電子は消える前に不可解なバリアにより止まるというものだった。


共同研究者で、マサチューセッツ工科大学ヘイスタック天文台の所長であるジョン・フォスター( John Foster )氏は、

「これは私たちが新しい装置と共に、新しい目で現象を見ているようなものです。これは私たちに”そこに固くて早い境界が存在する”ことを語ってくれています」

と述べる。



  

2014年11月12日



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▲ 2014年11月11日の Examiner より。






 


クリム・チュリュモフさんとスヴェトラナ・ゲラシメンコさんのお二方に恨みはないですが

最近、物忘れが激しくて、今回の「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」なんてのも、今まで何度も記事でその名前を書いているのに、どうしても覚えることができません。

チュリ……くらいまで覚えるのに数日かかっているのが現状で、こんなことになったのも「彗星は第1発見者の名前がつけられる」という決まり事のせいでもあるんですね。この彗星を 1969年に最初に発見したのが2人の天文家で、その2人の名前が、

・クリム・チュリュモフさん
・スヴェトラナ・ゲラシメンコさん


という、どこの国の人だかしらないですが、もともとが難解な名前を持つふたりが発見したせいで、このようなことになっています。

もうこうなったら、2人のフルネームを全部くっつけて、

「クリム・チュリュモフ・スヴェトラナ・ゲラシメンコ彗星」

とでもしたらどうだ? ああ?(誰に怒ってるんだよ)

……とかも思ったりもいたしますが、まあしかし、この「発見者の名前がつけられる」ということで、オーストラリアのアマチュア天文家テリー・ラブジョイ( Terry Lovejoy )さんが見つけた4つの彗星はすべて「ラブジョイ( Lovejoy )彗星」なんて素敵な名称がついたという過去もあります。

love-joy-12-15-01.jpg


ラブジョイ彗星に関しては、

史上最大の太陽接近型彗星「ラブジョイ」の太陽からのサバイバル
 2011年12月16日

など何度か取り上げたことがあります。
ラブジョイ彗星は興味深い動きをするものが多かったです。

しかし、今回の主役は、エコエコアザラク系の名称を持つチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星です。

まあ何度も書いていれば、覚えるかもしれないですしね。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

(意地にならなくていいから)




「歌」をうたっていたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

欧州宇宙機関( ESA )の探査機のロゼッタが、そのチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の軌道に到達した頃、

「彗星は強烈な悪臭を放っている」ことが観測されたことから改めて思う「宇宙塵も彗星の母体も生き物」で、さらに言えば宇宙はすべてが生き物かもしれないという感動
 2014年10月27日

という記事を書いたことがあります。

comet-smell-002.gif

▲ 2014年10月14日の米国ニュー・サイエンティストより。



このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、名称も難解ですが、形も難解というか奇妙で、下のような形をしています。

Churyumov-Gerasimenko-003.jpg
・ESA


この彗星は形状も興味深いですが、上の過去記事にあるように「強烈な匂い」を放っているということもロゼッタに搭載されている ROSINA と呼ばれ分析計のデータによりわかりました。

このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、

・硫化水素
・アンモニア
・シアン化水素
・ホルムアルデヒド
・メタノール
・二酸化硫黄


などが混合した「すさまじい悪臭」を発しているのです。

そして、無機物と有機物が混合しているという点で、「ただの無機的な氷のかたまりなどではない」ということもわかります。

そして、今度は、匂いだけではなく、この彗星は「音」を発していたことがわかったのでした。

正確にいうと「信号」です。

そして、探査機ロゼッタは、今日 11月12日に、人類史上初めてとなる「彗星への着陸」を試みます。以下は、ITmedia ニュースの記事です。

人類初の彗星着陸へ 探査機「ロゼッタ」、12日に着陸機投下
ITmedia ニュース 2014.11.11

欧州宇宙機関の彗星探査機「ロゼッタ」は日本時間の11月12日午後5時半ごろ、着陸機「フィラエ」をチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に向かって投下する。成功すれば人類史上初の彗星着陸となる。

ロゼッタは2004年3月に打ち上げられ、途中で電力を節約する「深宇宙ハイバネーション」に入り、今年1月に2年7カ月ぶりに再起動。総距離60億キロという旅を経て8月に同彗星に到着した。

ロゼッタは周回しながら同彗星の観測を続け、いよいよ着陸機・フィラエの投下に挑む。着陸ポイントは公募によって「アギルキア」と名付けられた。

さて、着陸に関してはともかく、この「信号」なのですが、欧州宇宙機関は、ロゼッタから送信されたデータを受信して、すぐにこの音を、サウンドクラウドというインターネット上で音楽などを公開するサイトにアップしました。

欧州宇宙機関は、アップした音源にに下のように「歌う彗星( A Singing Comet )」と名付けています。

singing-comet.gif
Soundcloud

上に書いてある内容は以下のようなものです。プラズマ・コンソーシアム( Plasma Consortium )というのが何かわからなくて、そのままカタカナにしています。

歌う彗星

探査機ロゼッタのプラズマ・コンソーシアム装置( RPC )は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が宇宙空間に向けてミステリアスな「歌」を放っていることを明らかにした。この「歌」の原因だが、彗星の環境での磁場の振動により「歌」が作られているように考えられる。

それらの音は、人間が一般的に聞き取ることができる 20ヘルツから 20キロヘルツよりはるかに下の周波数である 40から 50ミリヘルツの周波数だ。今回アップしたものは、人間の耳にこのサウンドが聞こえるようにするために、録音の際に周波数を増している。

というわけで、ここにアップされている音はそのままのものではないようですが、どんなものか興味のある方もいらっしゃると思いますので、欧州宇宙機関がアップしたものをそのまま貼っておきます。




聴いてみますと、「音程」も「音質」もかなり頻繁に変化していて、欧州宇宙機関が「歌」と表現した気持ちもわかります。

それで、その音の原因は、欧州宇宙機関は、

「磁場の振動により起きているのではないか」

ということを書いています。

この彗星は地球から「4億キロメートル」離れた場所を飛んでいて、そこがどんな環境なのかを想像することは難しいですが、「磁場の振動」という表現が出てくるということは、「磁場が存在する」ということでいいのでしょうかね。

しかし……巨大とはいえ、たかだか4キロ程度の天体に、クリアな信号を出すほどの磁場が存在し得るのですかね。そのあたりの科学的なことはさっぱりわかりませんので、とりあえず、ESA の言うことを素直に聞いておくことにします。




地球や宇宙の音や信号の正体

こういう「音」や、あるいは「信号」、「電波」は巨大な天体ならどこでも発生していて、たとえば地球そのものも様々な周波数の音や信号を発しています。

木星からの信号も有名です。

木星電波 - Wikipedia

1955年、バーナード・バーグとケネス・フランクリンは、木星から発せられた断続的な22.2メガヘルツの電波信号を検出した。研究によって、木星は3種類の電波を発していると判明した。

あるいは、さらに「遠くからの宇宙の信号」といえば、

110億光年の彼方の宇宙から 10秒ごとに正確なサイクルでシグナルが発信されている

ということが判明したこともありました。

これについて、マンチェスター大学での調査が始まったことについて、

銀河系外の宇宙から 10秒周期に発信されている電波信号の存在の探査が始まる
 2013年07月08日

という記事に書いたことがありますが、わりといろいろなところから「信号」は来ているようです。

しかし、その発生源が生じる原因について、正確にわかったことはないようで、いろいろと「謎だらけ」というのが宇宙というもののようでもあります。

今回のチュ…………(考えるんじゃない、感じるんだ)……チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の音に関しても、磁場で説明できるものなのかどうかは今のところ何ともいえないわけで、諸説出てくることかと思います。

謎の音……というと、「地球」の謎の音についても、

世界中で響き渡る音から「ヨハネの黙示録」の天使のラッパを考える
 2012年02月21日

をはじめとして、過去にずいぶんと書きました。

最近はブームも去ったようで、 YouTube などへの投稿は減ったようですが、しかし報道ベースでは、特にカナダとアメリカでは一貫して「謎の音の報道」が常になされています。

insane-noise-top2.gif
Extinction Protocol


しかし、地球の「音」については今回は余談ですので、ここまでとしておきます。

そんなわけで、冒頭の Examiner の記事をご紹介します。

この記事は一種の陰謀論系の内容で、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星彗星から発信されている音は自然のものではなく、この彗星に知的生命体がいる可能性について書いています。

そのあたりの考え方は人それぞれですが、「磁場のない宇宙空間での生物と生命の関係性」についての私の考えは、わりと最近の記事、

人類は本当に「ヴァン・アレン帯を通過して月に行ったことがあるのだろうか?」という疑問を各地で噴出させている NASA の次世代宇宙船オリオンのミッション
 2014年10月31日

に書いていますが、やはり、強力な磁場と大気を持たない天体に(微生物以外の)生命が滞在するということは大変に難しいことではないかと思ってはいます。

それでも、彗星にそのような、知的生命のようなものがいるかもしれないというロマンを持つことも決して悪くないと思いたいところもあります。



Mystery signal from Rosetta comet confirmed by European Space Agency
Examiner 2014.11.11

探査機ロゼッタが着陸する彗星から謎の信号が発せられていることを欧州宇宙機関が確認

欧州宇宙機関(ESA)は本日、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星( 67P/Churyumov-Gerasimenko )から謎の信号を受信したことを確認した。その音はライブストリーミングサイトで公開され、記事で、ESA は、この信号を「謎の歌」と表現した。

以前から探査機ロゼッタには「本来のミッションがある」という噂があった。そのミッションとは、20年前に地球で受信した信号を確認するために、ロゼッタを彗星に派遣したというものだ。

11月12日にロゼッタは彗星への着陸を試みる。この模様はライブストリーミングで世界に公開される。

しかし、今回の ESA の「信号」に関しての発表は、人類初の彗星への着陸ということ以上に驚きであったといっていい。

ESA は以下のように記事で述べている。

「探査機ロゼッタのプラズマコンソーシアム装置( RPC )は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が宇宙空間に向けてミステリアスな「歌」を放っていることを明らかにした。この「歌」の原因だが、彗星の環境での磁場の振動により「歌」が作られているように考えられる」

メディア「 UFO サイトニング・デイリー( UFO Sightings Daily )」は、9月29日に「 NASA はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から 20年以上にわたって、ラジオ信号を受信していた!」と題する記事を掲載した。

記者のスコット・ワリング( Scott Waring )氏は、探査機ロゼッタの本当のミッションは、この NASA が 20年前に検出した信号の調査だと ESA の匿名の内部告発者が語ったことを記している。

ワリング氏と同じような主張をする人たちは他にもいたが、彼らは多くのメジャーメディアから非難された。ハフィントン・ポストの記者、マイケル・ランドル( Michael Rundle )氏は、以下のように述べる。

「もし、彗星が電波を発しているのならぱ、なぜ、これまで誰もそれを拾うことができなかったのか。そして、それが NASA によって傍受されたのなら、なぜ、 NASA は自ら宇宙の調査ミッションを行わずに ESA がそれを行ったのか」

今回、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から信号が出ていることが確認されたことによって、ワリング氏が正しかったことになる。

ESA はこの信号は、磁場の振動によって起きるとしているが、大きな問題は、この音が ESA が主張するように、自然現象として作られたものなのか、それとも、あるいは知的生物によって作られた可能性があるのか、ないかだ。

ロゼッタが 9月10日に撮影した写真には、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面に、無線タワーのようにも見えるものや、 UFO といえる可能性がある物体が写っている。 ESA の匿名の内部告発者はこの彗星の写真の背後にはいくつかの謎があることを示した。

もし、今回の彗星からの信号が、20年前に NASA が検知したもので、そして、探査機ロゼッタがその調査のために向かったのだとすれば、 NASA も ESA も、その信号を自然現象を越えたものだと確信していたと考えることもできなくはない。

もし、知的生命体がこの地球に彼らの存在をアナウンスしたいと思っているのならば、遠く離れた彗星から放たれる美しい歌は「ファースト・コンタクト」の優雅なフォームを現している。



  

2014年10月29日



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人々から消えていく「神」の存在

最近、イギリスのメディアで下の記事を見つけました。

god-alien-top.gif

▲ 2014年10月27日の英国ザ・ヘラルド More people believe in aliens than God より。






 



後述しますが、英政府通信本部( GCHQ )のあるイギリスという国の調査として、わりと興味深いものでしたので、先に翻訳してご紹介します。




More people believe in aliens than God
Herald 2014.10.27

より多くの人々が神よりもエイリアンの存在を信じている

より多くのイギリス人が神よりもエイリアン(宇宙人)の存在を信じていることが、最近の研究で明らかになった。

調査は、成人 1,500 人と、子ども 500 人を対象として行われた。

研究の詳細な内訳は成人と子どもでそれぞれ下のような結果となり、エイリアンを信じている成人は全体の半数以上( 51 %)となったのに対して、神を信じている成人は全体の4分の1( 25 %)に過ぎなかった。


英国の成人が信じる超自然的な存在トップ5

1位 幽霊( 55 %)
2位 エイリアン( 51 %)
3位 UFO( 42 %)
4位 天使( 27 %)
5位 神( 25 %)



英国の子どもが信じる超自然的な存在トップ5

1位 エイリアン( 64 %)
2位 幽霊( 64 %)
3位 UFO( 50 %)
4位 神( 33 %)
5位 天使( 27 %)



この研究は、子どもだけではなく、大人たちが実際に幽霊やエイリアンを高い比率で信じていることを示し、また、神や天使よりも UFO の存在を信じている大人の方が多いことを示す。

さらにこの調査では、5人に1人のイギリス人が超自然的現象( supernatural ) を経験したことがあり、 10人に1人は、それまでの生活の中で、自分の家に幽霊が住んでいることを体験していると述べたことも明らかとなっている。

子どもでは、3分の2近く( 64 %)がエイリアンと幽霊の存在を信じ、半数( 50 %)が UFO を信じていた。

この調査結果について、ロンドンの調査会社のナターシャ・クランプ( Natascha Crump )ゼネラル・マネージャーは以下のように述べている。

「今回の調査で、超自然的な存在を信じているのは子どもだけではなく、大人でもその傾向が強いことが明確にあらわされました。私たちは科学の時代に生きて、私たちは科学でほとんどの答えを得ることができますが、それでも依然として、私たちは、私たちの理解を超える存在への信仰を持っていることが示されています」

興味深いのは、子どもたちの 26 %は、エイリアンは地球で人間に扮して生活していると考えていることで、20人に 1人の子どもたちは、彼らが実際にエイリアンと会ったことがあると答えている。

そのような中には「自分の母親は実は地球外生命体だと思っている」と答えた子どもたちも多い。

また、子どもたちのエイリアン像には一種の判で押したような先入観(ステレオタイプ)が見てとれ、たとえば、子どもたちの 43 %は「エイリアンは緑色である可能性が高い」と考えている。

クランプさんは、なぜこのような先入観があるのかは調査では明らかになっていないと述べた。





という内容でした。

「もはやこの世に神の立場なし」

といったレベルになっているわけですが、大人の方の、

1位 幽霊( 55 %)
2位 エイリアン( 51 %)
3位 UFO( 42 %)
4位 天使( 27 %)
5位 神( 25 %)


は、一歩間違うと、神の存在がランク外となってしまうところでもあります。

幽霊についてはよくわからないですが、エイリアンについて、記事に「なぜこのような先入観があるのか明らかではない」とありますが、そりゃあ、子どもの頃からエイリアンやミステリー関係のテレビや映画やコミックなどを見続けていれば、後述しますが、映画『未知との遭遇』以降の三十数年、メディアに出てくるのはそのタイプのエイリアンばかりで、そんなメディアを見て育つのですから、そこから自然とステレオタイプは生じてくるものだと思います。

現在、「エイリアン像」を作り出しているのは主にアメリカのハリウッドなわけですが、世界で初めての「宇宙人」が出てくるSF映画は、1902年にフランスで作られた『月世界旅行』という無声映画でした。 この映画は今は YouTube で見られます。

この『月世界旅行』には月の住人である異星人も出てきますが、現在のステレオタイプのエイリアンとは違った姿で、人間やトカゲのようなものたちでした。

Trip-Moon.gif

▲ オリジナルのモノクロではわかりにくいですので、後に彩色された『月世界旅行』より。左のほうが月の住人。真ん中が王様的な存在らしく、後ろに立っているのは兵士の模様。右のほうの人々は月の住人に捕らえられた地球人です。格好は貴族の服です。


少しずつエイリアンの姿がステレオタイプ化していくのは、映画製作の主流が次第にアメリカとなっていく 1930年代頃からだと思いますが、それでも、まだまだ「いろいろな姿」でした。

私は若いころ、ずいぶんと映画を見ていまして、その中でも、B級と呼んではB級映画に失礼だと思えるほどひどいデキの「Z級」とも呼ばれていた 1950年代に乱作されたアメリカの数多のSF映画を、ビデオや、今のテレビ東京の昼や深夜枠で放映されていた映画などでずいぶんと見ました。

その 1950年代頃でもまだエイリアンはステレオタイプ化してはいなく、バラエティに富んでいたものでした(あるいは単に手抜きなんですが)。

ロボット・モンスター(1953年/米国)

Robot-Monster.jpg

▲ 地球にやって来て、人々を襲い、男性は殺して女性はさらう凶悪エイリアン(笑)。サーカス用か何かのクマの着ぐるみを着て、当時の潜水用のヘルメットを被っただけです。



金星人地球を征服(1956年/米国)

it_conquered_the_world.jpg

▲ アメリカ軍も撃破する凶悪エイリアン(笑)。このエイリアンはその後、「金星ガニ」と呼ばれ、長く愛されているキャラクターとなっています。しかし、愛されてはいても、金星ガニはエイリアンのステレオタイプにはなれませんでした。




エイリアンのイメージ定着化はいつ頃始まったか

そして、最終的に、現在に続くエイリアンのステレオタイプ化が始まったと考えられるのは、1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』のラストに出てくる、人類を超越した存在である「スターチャイルド」であり、

starchild.jpg
・2001年宇宙の旅のスターチャイルド

そして、1977年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』のエイリアンによって、そのイメージは決定されたと思われます。

Close_Encounters_of_the_Third_Kind_Aliens.jpg
・未知との遭遇のエイリアン。他にも背の高いエイリアンなども登場します。


その後、「異星人」のタイプは、たとえば、グレイというような名称のものも含めて、そのイメージが上のようなパターンとして定着していき、そして、その「形」が映画やメディアで繰り返されて使われ続けることによって、多くの人たちの頭の中に刷り込まれていったと考えられます。

上の英国の記事で「大人でも超自然現象を信じている人が多い」というように書いていますが、上の映画はそれぞれ今から 30 年から 40 年以上も前の映画ですので、刷り込み期間が長い分むしろ大人のほうがそれらを信じるのは当然なのかもしれません。


さて、しかし、映画の話をしたいのではないのです。


私は今回のイギリスの記事を読みまして、過去のふたつの記事、

ミスター・スノーデンが示唆する米英政府機関の「 UFO での大衆マインドコントロール作戦」
 2014年03月19日

イギリス政府の機密作戦の結果が教えてくれる「私たちのいる現実の世界」
 2014年02月28日

を思い出しました。

どちらも、観察衛星や電子機器を用いて情報収集などを担当するイギリスの諜報機関である英政府通信本部( GCHQ ) が行っていることについて書いたものです。

上の記事のうち、「イギリス政府の機密作戦の結果が教えてくれる……」のほうでは、イギリスのウェスタン・モーニング・ニュースの記事を翻訳していますが、英政府通信本部がプレゼンテーションで使った UFO 文書がエドワード・スノーデンさんによって暴露されたことについて書いています。

記事では UFO 専門家のナイジェル・ワトソンという人の談話などが記されています。

暴露された文書の何枚かの UFO 写真を見た後、ワトソンさんは「これらはニセモノ(作りもの)の写真であることがすでにわかっているものです」として、記事は、

そして、ワトソン氏は、これらはイギリス政府機関のインターネットにおける大衆に対してのマインドコントロールの試みのひとつだと確信しているという。

氏は以下のように述べる。

「政府機関はいまだに人々の UFO 信仰の力と大きさを認識しています。そして、彼らは人々の信念を悪用するためにインターネットを使うことには問題はないと考えているようです」。

としています。

ちなみに、この作戦を担当しているのは英政府通信機関内の「合同脅威研究情報班」( JTRIG )という部署で、彼らは「新しいオンライン世代のための秘密工作訓練」と題された、インターネット上でいかに「誤った情報を流布させるか」というオペレーションを行っています。

これはスノーデン氏の告発によって明らかになったものです。

そして、そのようなアメリカやイギリスの努力のお陰なのかどうなのかはわからないですけれど、冒頭の記事にあるような、

英国の成人が信じる超自然的な存在トップ5

1位 幽霊( 55 %)
2位 エイリアン( 51 %)
3位 UFO( 42 %)
4位 天使( 27 %)
5位 神( 25 %)


というようになったわけで、今の時代というのは、かなり多くの人びとが、

「神や天使を捨てて、エイリアンや UFO に信仰を求めている時代」

となっているということになります。

同じ調査を日本でおこなった場合はどのようになるのでしょうかね。
日本だとツチノコが1位かも(それはない)。


まあしかし……それにしても……。


たとえば、大昔は、どこの国や地域でも空を見上げた人々は、そこに神の存在を考えたと思われます。

しかし、今、空から神は消えつつあり、空を眺めて思うのはエイリアンと UFO という時代となっています。

そして、このように「この世から神という概念を消したいと考えている存在」というものは確かにあると私は思っています。

それが具体的にどのようなものなのかは想像もできないですが、このことに関しては、もう少し考えて、いずれは書いてみたいです。


ところで、最近、

「人類が火星に行くのは不可能だ」

という説が、アメリカのマサチューセッツ工科大学( MIT )の研究チームや、ニューハンプシャー大学の研究者たちにより相次いで発表されています。

そして、それらのうちのひとつは「もしかすると人類は基本的には宇宙へは行けない」ということを示唆するものかもしれないのです。



人類は月より遠くの宇宙へは行けない

マサチューセッツ工科大学の研究については、新華社 日本語版の記事「米国の最新研究、人類は火星で68日間しか生きられない」と予想」などにあり、こちらは、「火星に到着後」の問題を書いていて、食糧や空気などのことについてを解析したものです。

それによると様々な条件により、火星到着後 68 日後には移住した人々は死亡するとしたものですが、こちらに関しては、上のリンクの記事は日本語記事ですので、詳しくお知りになりたい場合はそちらをお読み下さい。

それよりも、ニューハンプシャー大学の研究者たちによって発表された研究。

これは、

「そもそも火星にまで到着することができない」

という可能性を発表したものでした。

mars-mission-radiation.gif

▲ 2014年10月22日の英国デイリーメールより。


これは、ニューハンプシャー大学のネイサン・シュワドロン( Nathan Schwadron )という科学者が、火星への有人飛行をおこなった場合、現在の太陽活動の減少によって宇宙飛行士たちは壊滅的な放射線量を浴びることになり、火星への有人飛行は事実上不可能だ、という研究結果を導き出したというものです。

非常に長い記事ですので、内容の要点だけ箇条書きで記しますと、




・現在、太陽活動が減少している。太陽活動が減少している時は、宇宙放射線量が増えることが知られている。

・今後さらに太陽活動は減少すると見られ、その場合での放射線の推定値から計算すると、30歳の男性を想定した場合、約 320 日間で放射線量が生命に危険が及ぶレベルに達する計算となる。

・この計算からだと、火星に到着する前に身体が破壊される可能性がきわめて高い。





というものです。

その火星なんですが、太陽系での位置関係としては下のようになっています。

solar-system-2014.gif
私たちの太陽系


こういう図で見ると、「火星などすぐ隣」というように見えるのですが、それでも「行くのは無理」だというのが、あくまでも今回のシミュレーションですが、そのような結論となるということです。

宇宙放射線については、JAXA の放射線被ばく管理というページに以下のように説明があります。

宇宙には、宇宙放射線と呼ばれる放射線があります。

宇宙放射線は、地球の大気と磁場に遮られて、地上にはほとんど届きません。しかし、宇宙では、宇宙放射線が宇宙飛行士に与える影響が問題になってきます。

しかし、ふと、「それだと、長い期間、宇宙空間にいる国際宇宙ステーションの搭乗員は大丈夫なんだろうか」ということを思うわけですが、 JAXA によると、

ISSが周回している高度400km前後の上空では、非常にエネルギーの高い粒子が降り注いでいます。宇宙船の船壁や遮へい材によって、ある程度は遮ることができますが、宇宙滞在中の宇宙飛行士は、宇宙放射線による被ばくをすべて避けることはできません。

とあり、やはり影響はあるようです。

国際宇宙ステーションに滞在中の乗務員の1日の被ばく線量は、地球上での約6ヶ月分にも相当するのだそうで、乗務員たちはかなりの放射線を浴びているようです。

しかし、それでも乗務員たちが命に関わるような致命的な状態にならないのは、国際宇宙ステーションも実際には地球の磁場に守られている場所」にあるからです。

下の図で、国際宇宙ステーションはそれほど遠い宇宙空間ではなく、地球に近い磁場の中の宇宙空間にあることがわかります。

iss-2.jpg
JAXA


火星というか、火星以外でも、宇宙空間を進んで他の惑星に行く場合は、地球の磁場の保護が完全にない空間を進むわけで、上の「乗務員の1日の被ばく線量が地球上での約6ヶ月分に相当する」どころではない放射線を浴びることになります。

ニューハンプシャー大学の科学者たちは、このことから「火星に行くのは事実上不可能」としたということのようです。

この不可能性を解消するためには、

1. 宇宙船の速度を上げる
2. 放射線に負けない材質の壁を持つ宇宙船を作る
3. 放射線に負けない強い体を作る(苦笑)


くらいしかないわけですが、現時点では3つとも不可能だと思われます。

さて、こうなってくると、「人類は、宇宙的にはほんの隣に見える火星にさえ行けない」ということになり、宇宙に対しての夢は非常に小さくなります

もっと言えば、

人類は磁場で守られている地球近隣の宇宙空間以外には行くことができない

ということにもなります。

もちろん上の3つのどれかが実現するような遠い未来には、あるいは遠くへの宇宙旅行も可能になるのかもしれないですが、現時点では難しいことです。


・・・さて。


実はこの、

「人類が遠い宇宙へは行けないかもしれない」

ということはもうひとつの可能性を示唆します。

それは、

「他の惑星の人間も地球には来られないかもしれない」

ということです。

どうしてそう考えられるのか?



私たちは宇宙のきょうだいとは多分会えない

それは、先日の記事、

「彗星は強烈な悪臭を放っている」ことが観測されたことから改めて思う「宇宙塵も彗星の母体も生き物」で、さらに言えば宇宙はすべてが生き物かもしれないという感動
 2014年10月27日

という記事でも書きましたが、私がパンスペルミア説(地球の生命は宇宙からやって来た)とする説の信奉者だからです。

このパンスペルミア説は、

「宇宙が生命をばらまいている」

と言い換えてもいいのですが、だとすると、「生命(あるいは生命のパーツなど)を配布する場所が同じならば、すべての宇宙で環境によって同じような生命が存在している」と考えるのが妥当です。

つまり、すべての宇宙の生き物がきょうだいだとした場合、その生物が(物質的に)どんな特徴を持っているかという可能性を考えるには「地球の生物を見てみればいい」のだと思います。

たとえば、人間や哺乳類などの大型動物は、

・気温が極端に高い、あるいは低い場所
・酸素のない場所
・放射線量が異常に多い場所

などでは生きられなく、これは結局、植物も含めた多くの生命に言えるのですが、居住可能な空間というのは、適度な温度、水や酸素などがあり、気圧も放射線量も生命維持が可能な場所ということになります。

何百度も温度のある場所や強い放射線が降り注ぐ中では、極限環境微生物と呼ばれるような一部の微生物以外は、多くの生き物は生存することができません。

そして、パンスペルミア説が正しければ、宇宙のすべての生物はこの掟から逃れられないと私は考えています。

そこから考えますと、

地球の人間ができないことは、他の惑星の人間もできない。

と思わざるを得ないのです。

つまり、他の惑星の人間も、強い放射線の中を旅してくることは難しいと思うのです。

過去記事の「人類は孤独ではない:見つかり出した数多くの地球型惑星」などにありますように、現在、地球と同じような環境かもしれないと考えられている惑星は数多く存在します。

しかし、それらは最も近いようなものでも、10光年以上の距離があります。

この「光速でも 10年かかる」ということは非常に大事なことです。

仮に(現在の科学では)この世の限界の速度である「光速」で進むような宇宙船を持っている異星人がいたとしても、「 10年も宇宙放射線を浴び続けて生存できるような人間タイプの生物」がこの宇宙に存在しているとは思えません。

つまり、地球に来られる「人間タイプ」を想定することが難しいのです。

何だか夢のない話に聞こえるかもしれないですが、普通に考えるとそのようになってしまいます。

しかし、同時に、パンスペルミア説を思う時には、

「生命を配布している者の存在」

を考えざるを得ません。

私は特定の宗教を持ちませんけれど、そこに「神」というような概念が生じても違和感はないです。

パンスペルミア説の最大の研究者だったフレッド・ホイル博士は晩年の著作『生命(DNA)は宇宙を流れる』の締めくくりにこのように書いています。

生命(DNA)は宇宙を流れる』(1998年)より

われわれが到達した結論、すなわち宇宙に知性があることをロジカルに要請することは、世界の主だった宗教の教義と整合性がある。世界中のさまざまな文化の中で、「創造主」は独自のすがた形をとる。エホバ、ブラフマー、アラー、天の父、神……宗教の数だけ呼び名もある。

けれども、その根底に横たわる概念は、どれも一緒だ。それは、宇宙は ー 特に生命の世界は ー 想像もつかないほど強力な人間型の知性を持つ「存在」によって創造されたということだ。

天体物理学の発展に寄与した稀代の大科学者だったホイル博士が行き着いた先にあったものは、具体的な正体を確認することもできない「存在」でした。

それを神と呼ぼうと他の名称で呼ぼうと、あるいは、名前などつけなくとも、それはどちらでも構わないのですけれど、今の世の中は冒頭の英国の報道のように、生命の創造主なのかもしれない「存在」を軽視する人々がどんどんと増えているということになりそうです。



  

2014年10月25日



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sea-volcano-map.gif

▲ 2014年10月3日のロサンゼルス・タイムズより。






 



「カルデラ破局噴火」がメディアで大きく報道された日

先日、下のような報道を見ました。

巨大噴火100年で1% 神戸大教授予測
東京新聞 2014.10.23

巨大なカルデラ(陥没地形)をつくる巨大噴火が今後百年間に日本列島で起きる確率は約1%とする試算を神戸大の巽(たつみ)好幸教授(マグマ学)らがまとめ、二十二日発表した。最悪の場合、一億二千万人が死亡し、実質的な「日本喪失」もありうるとしている。(中略)

巽教授らは、二万八千年前の姶良カルデラ噴火と同規模の噴火が九州中部で起きたと想定する被害を予測した。

九州のほぼ全域が火砕流に襲われ、約二時間で七百万人が死亡する。西日本は一日のうちに五十センチの火山灰が積もり、四千万人の生活の場が埋没する。北海道と沖縄以外は十センチ以上の火山灰で覆われる。生活の糧を奪われ救援もできないため、日本の総人口に近い一億二千万人が死亡する恐れがあるとした。

この記事を読んで、

「こういう記事が出ると、海外に過剰に伝わりがちで……」

と思っていましたら、今朝の海外の報道は下のようなものでいっぱいでした。

volcano-japan-01.gif

▲ 2014年10月23日の Yahoo! News (米国)より。


2011年以来、「日本と自然災害」というキーワードは、特に西欧では敏感に反応されるようになっているのか、日本の政治のことは西欧世界で話題になっているのを見たことがないですが、日本の自然災害関係は大きく扱われやすいです。

上のニュースの冒頭を訳しますと、下のようなものとなっています。

日本は次の世紀までに超巨大火山噴火によって破壊され尽くしてしまうかもしれない。

大学による新しい研究によると、日本の人口の 1億 2700万人以上が、この脅威にさらされている可能性があるという。「それは日本を絶滅に陥れることになるかもしれないといっても過言ではない」と神戸大学の巽好幸教授は研究の中で述べている。

話がどんどん大きくなっていっている感じもしまして、何というか、まるで「日本版イエローストーン的な話題」として海外で伝えられているわけですけれど、神戸大学の教授の言う、

> 巨大噴火が今後百年間に日本列島で起きる確率は約1%とする試算

のそのものが何らかの具体的な目安になるというものではないとは思います。

というのも、ここでいう「巨大噴火」の発生のサイクルの「期間」には非常に幅があるために、発生確率のパーセントでの表示での理解は難しい感じがするのです。

なお、報道では「巨大噴火」という言葉が使われていて、「破局噴火」という言葉はあまり使われていないようですが、ここでは「破局噴火」という言葉を使わせていただきます。

過去記事で何度か記したことがありますが、今一度、この噴火について書いておきます。

破局噴火 - Wikipedia

破局噴火とは、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式で、しばしば地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となる。

大規模なカルデラの形成を伴うことからカルデラ破局噴火と呼ぶ場合もある。また、そのような噴火をする超巨大火山をスーパーボルケーノとも呼ぶ。

確率の予測に意味があるかどうかはともかくとして、神戸大学の巽教授の「 700万人が火砕流で2時間で死亡し……」というような描写そのものは、破局噴火においては誇張ではなく、たとえば、アメリカのイエローストーンが破局噴火を起こした場合のシミュレーションについて、上の Wikipedia では、以下のように記されています。

イギリスの科学者によるシミュレーションでは、もしイエローストーン国立公園の破局噴火が起きた場合、3 - 4日内に大量の火山灰がヨーロッパ大陸に着き、米国の75%の土地の環境が変わり、火山から半径1,000km以内に住む90%の人が火山灰で窒息死し、地球の年平均気温は10度下がり、その寒冷気候は6年から10年間続くとされている。

イエローストーンとなると、そのサイクルはさらに大きく、数十万年単位(前回の噴火は 64 万年前)となったりしますが、巨大火山がある国や地域では、海底の巨大火山を含めて、いつかは必ずこれらの災害に遭遇する時が来るということになります。



地球の文明のリセットを考える

先日の、

タイムリーな黒点の姿と「 X 100,000 クラス」の超特大スーパーフレアの存在
 2014年10月21日

では、太陽系外の星で「 X 100,000 」クラスの超巨大フレアが観測されたことを書いたのですけれど、記事の最後のほうに、もし、私たちの太陽が同じような超巨大フレアを「連発」して地球に直撃させたような場合、それは、

「地球のリセットを意味する」

というようなことを書きました。

そして、火山もそうです。

日本だけでも数千年〜1万数千年に1度は、どこかで破局噴火が起こり、その場合には、日本列島の全部ではないにしても、基本的に「命も文明もリセットされる」ことになります。

これらの太陽や火山の存在が示すことは、

「地球はひとつの場所で1万数千年以上同じ文明が存続できないようになっている」

ということを示すものなのかもしれないとも思います。

それは決して火山の周辺の局地的なものに限られるわけではなく、たとえば、上のほうに書きましたイエローストーンのシミュレーションの破局噴火のシミュレーションで、

> 地球の年平均気温は10度下がり、その寒冷気候は6年から10年間続くとされている。

とあるように、広い範囲で農業の存続も難しいような状況となるようなことが何年も続くわけです。


今までぼんやりとは思っていましたが、今回の報道で、、

地球には同じ系統の文明を継続させないメカニズムがある

ということを知った気がします。


ところで、日本で破局噴火が最後に起きたのは、今から 7,300年前のことです。

これは、過去記事、

アメリカ政府はイエローストーンが噴火した場合のために、南アフリカ、ブラジル、オーストラリアなどへの「米国人の数百万人規模の大量移住」を要請していた
 2014年05月09日

などにも書いたことがありますが、東大名誉教授の藤井敏嗣さんが書かれた「カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか?」というページによれば、

わが国では、100立方q以上のマグマを放出するカルデラ噴火は、1万年に1回程度発生しています。数10立方q以上の噴火ならば12万年間に18回、つまり6千年に1回程度は「起こっている」ことになります。

もちろん、これは平均発生頻度で、前のカルデラ噴火から2,000年のうちに起こったものもあれば、1万数千年以上の後に起こったものもあり、このような規模の噴火で、最後に起こったものが先の鬼界カルデラ噴火なのです。

ということになり、破局噴火は平均サイクルが非常に長く、そして規則的でもありません。
1万数千年起きないこともあれば、2000年で起きることもあるというものです。

ですので、

「 2000 年の間隔で起きたことがある」

という事実と照らし合わせれば、前回の破局噴火から 7300 年経っている現在は、日本のどこかで破局噴火が起きる可能性は十分にあるということにもなります。

しかし、

「1万数千年の期間起きなかったこともある」

という視点から見ると、「まだまだ起きることはない」とさえ言えそうで、結局、カルデラ破局噴火の予測に「今後何年で何パーセント」というような数字を入れることの意味にはやや疑問も感じますが、それでも、

新聞記事にある

> 九州のほぼ全域が火砕流に襲われ、約二時間で七百万人が死亡する。

という響きには確かに迫力があります。

今回の神戸大学の巽教授の研究に従って作成した想定される被害地図は下のようになります。

super-volcano-japan.jpg
東京新聞


これは 7300 年前の鬼界カルデラの破局噴火の際の被害の構図とほぼ同じで、7300 年前には下のような被害を出したとされています。

鬼界カルデラから噴出した火砕流の分布域とこの噴火で降り積もった火山灰の暑さ分布
kikai-7300.gif
NHK


そして、この 7300 年前の噴火の後、九州から四国に関しては、藤井名誉教授によれば、以下のような状態になったとされています。

南九州から四国にかけて生活していた縄文人は死滅するか、食料を求めて火山灰のない地域に移動し、1,000年近く無人の地となったようです。というのも、この火山灰層の上下から発見される縄文遺跡の土器の様式が全く異なっているからです。

ふと、「そういえば、富士山が破局噴火を起こしたら、自分が住んでいるあたりはどうだろう」と思い、大体同じ縮尺で、「2時間で 700万人が死亡する」範囲の円を富士山に合わせてみましたら……その中にきれいに収まりました(ああ、ダメだ)。

LocMap-Fuji-Mountain.gif


ここに越してきたときには「富士山がベランダから見えていいなあ」と思っていましたが、富士山が破局噴火を起こした場合、この地は周囲に存在するすべてと共に(多分、分子レベルで)消滅してしまう地域でもあるようです。

確かに、こんなことを心配するのは馬鹿馬鹿しいことではあるかもしれないですが、

「太陽にも火山にも地球の文明をリセットする力がある」

ことは、おそらくは事実で、その「リセットされる時代はいつか」というような話とも関係するのかもしれません。


群馬大学教育学部の早川由紀夫教授は「現代都市を脅かすカルデラ破局噴火のリスク評価」というページの最後をこのようにしめています。

ひとの一生の長さはせいぜい百年であるから、そのようなリスクがあることはすっかり忘れて、日々の暮らしを楽しく送ったほうがよいとする人生観もある。

一生の間に遭遇する確率が1%に満たないカルデラ破局噴火を心配するのは、たしかに杞憂かもしれない。愚かしいことかもしれない。しかし地球上のどこかの現代都市をいつか必ず襲うだろうカルデラ破局噴火を、純粋理学の研究対象だけに留めておいて本当によいのだろうか。


そして、冒頭のロサンゼルス・タイムズの報道のように、最近になって、

「今まで知られていなかった数千以上の海底火山の存在が明らかとなった」

ということがありました。

今回の研究によれば、海底には 10,000 以上の火山が存在するということのようです。

海底火山は今まで、その存在が知られていなかったものが多く、「噴火して初めてわかる」ということが多いものでした。

hung-haapai1.jpg

▲ 2009年 3月 18日に爆発的噴火を起こした海底火山フンガ・ハーパイ( Hunga Ha'apai )。場所はトンガから北西に約60キロメートルの場所でした。


ちなみに、7300 年前に破局噴火を起こした鬼界カルデラも基本的には海底火山です。

そして、

御嶽山の噴火やマヤカレンダーが示した「 5000年間」という時代の区切りに「日本神話の根源神」は何を私たちに示そうとしているのだろうかと考える
 2014年10月06日

という記事に書きましたように、現在の日本の火山学では「死火山」という言葉も概念も存在せず、「どんな火山でも、いつでも噴火する可能性を持つ」という考え方が普通になっています。

そんな「いつでも噴火する可能性を持つ火山」が地球の海底に「万単位」で存在する。

そういう場所に私たちは住んでいます。

というわけで、ロサンゼルス・タイムズの記事をご紹介します。




Thousands of undersea volcanoes revealed in new map of ocean floor
LA Times 2014.10.03


何千もの海底火山の存在が新しい海底地図で明らかに


最近、科学者たちにより最高解像度の海底地図が作成された。そして、その地図によって現在は活動していない火山を含めて、今まで知られていなかった数多くの海底火山の存在が明らかとなった。

この地図と研究結果は 10月 23日に発表された。この地図は 20年前に作成された海底地図より少なくとも2倍正確だという。

研究を主導したカリフォルニア大学サンディエゴ校のデヴィッド・サンドゥエル( David Sandwell )教授は以下のように述べる。

「良い話には聞こえないかもしれないですが、海底には 5,000 以上火山の海底火山があると思われていましたが、今回の解像度の地図では、10,000 以上の古い海底火山を見ることができます」

深海の海底の状態については、科学者たちもいまだにほとんどのことを知らない。サンドゥエル教授は、海底の探査は、太陽系の別の惑星を探査することと同じようなものだと考えている。

新しい海底地図を作成するに当たっては、欧州宇宙機関( ESA )の地球観測衛星 CryoSat-2 と、米航空宇宙局( NASA )とフランス宇宙機関 CNES が運営する海洋観測マッピングミッションでの宇宙艇「ジェイソン-1 ( Jason-1 )」が使用された。

両宇宙船は、海洋表面の形状をインチ( 1インチは約 2.5センチ)単位で計測することができる機器を搭載している。海底の巨大な山や火山は、海の表面の水位に影響を与えるため、海水面を計測することが海底で起きていることを知るための手がかりとなる。

今回の研究以上に正確な海底地図の作成ができるかどうかについて、サンドゥエル教授は「不可能ではないですが、予算と時間がかかりすぎるのです」と述べる。

観測衛星ではなく、船に機器を搭載して計測すれば、さらに正確な海底地図を作成することが可能だが、 10隻程度の船に機器を搭載したとしても、計測が完了するのに10年間かかるという。しかし、そのためには莫大といえる予算がかかり、それを喜んで拠出してくれる機関は存在しないだろうという。




  

2014年10月16日



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▲ 2014年7月6日の Extinction Protocol より。






 



10月11日の関東の重低音

私はリアルタイムでの情報発信を読んだりする習慣がありません。つまり、ツイッターなどでの情報を得るということや LINE なども使ったことがありません。

でまあ、それはそれとして、数日前の 10月 11日の夜に聞こえた「音」のことが、昨日( 10月 15日)になっても、まだ気になっていました。

時間は正確には覚えていないですが、夜の8時くらいでしたかね。

うちの奥さんが、「何これ?」と言って、部屋の周囲を見回したのですね。

わたし 「何って?」
奥さん 「この音」
わたし 「……あ……なんだこれ?」


どこかでとてつもない「重低音」が響き渡っているのです。

私は、ベランダを開けて、外に音を聞きにいきましたけれど、これは低音の特徴でもあるのですが、その発生源の方向がつかめません。つまり、「空から鳴っているのか、地面のほうから鳴っているのかさえよくわからない」のでした。

空か地面かわからないけれど、そのあたり全体が「ゴゴゴゴゴ」と鳴っている。

音の感じとしては、

・雷(ゴロゴロの時)
・大きな花火大会の低音
・飛行機の超低空飛行(ソニックブーム)


などの「低音」の部分を彷彿させるのですが、とりあえず雷の可能性はありません。また、私の住んでいる場所は米軍や自衛隊の軍事基地が近いということもあり、このあたりに住む人は、毎日、空軍機の音を聞いていて、かなりの低空飛行の轟音をも日常的に聞いています。

したがって、「軍用機の音を聞く回数についてはプロ」(笑)である住民たちが多いのですが、この音がそれらの航空機でもないこともわかります。

今までの経験を凌駕する「ものすごい低音」が、ゴゴゴゴゴ……と、わりと長い間続いているのです。

わたし「うーん……なんだろう、この音」
奥さん「花火大会?」
わたし「花火でこれだけの低音が出るとすると、すぐそこの駅前あたりで、史上最大級の花火の打ち上げが行われて、さらにその花火大会で戦後最悪の爆発事故が立て続けに 10回くらい起きないと、こんな音にはならいなと思うな」


私は大きな花火大会も比較的近くで何度か経験していますけれど、こんな低音は聞いたことがない。

その時に、何かリアルタイムの情報でも見ていれば良かったのですが、上に書きましたように、私はリアルタイム情報をあまり見ない上に、夜はインターネットを見ません。

そして、実は、私はその翌日の昼もどうも釈然としない低音を聞いたのです。ここに至り、「ちょっと調べてみよう」と思いまして、今日ネットで検索してみましたら、関東の全域でその「音」を聞いた人たちがツイッターなどに書き込んでいたことを、まとめサイトで知りました。

10-11-twitter.gif
まとめサイト


それで、上のまとめサイトの流れとしては、下の投稿によって、「ギネス級の花火によるもの」という方向になっていったのですね。

鴻巣(こうのす)市商工会青年部主催の「第13回こうのす花火大会」が11日、鴻巣市の糠田運動場で行われ、1万5千発を超える花火が秋の夜空を彩った。重さ464キロの4尺玉の打ち上げにも成功し、「最大の打ち上げ花火」としてギネス世界記録に認定された。

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鴻巣花火大会

私もこの「ギネス」という言葉に惑わされたのかどうなのか、一瞬、「ああ、花火だったのか」と思ったのですが、

「ちょっと待て。鴻巣市?」

と、「位置関係」について疑問が出てきたのです。

埼玉県の鴻巣市と、私の住む所沢市の周辺の位置関係は下のようになります。

kyori.gif


距離は、バスの路線から調べて見ると、最も直線距離に近いコースの道路で 所沢周辺から 鴻巣市周辺までは 40キロメートル以上あります。

この距離だと、私の住む場所を中心としますと、東京都の大部分までをカバーする距離であり、もし、あの音が鴻巣市の花火の音だとすると、夏に東京でおこなわれる、すべての大きな花火大会の音が全部聞こえてくるという計算になります。

さらに、当日のツイッターの投稿を見ますと、

湘南地区、20時頃に地鳴り?地響き?すごかった。(・・;)以前から聞こえている音とちょっと違ってゴゴゴゴゴ…と連続音。雷かと思ったけど明らかに違う。埼玉のギネス級の花火の音が聞こえるわけないし…。

というものや、

関東広域で地鳴りが聞こえたとの噂が多数? 鴻巣花火が原因? しかし、四尺玉は最後の一発だけど。 地鳴りの鳴っていた時間や長さが分からないし、いくらどうでも横須賀まで届くわけないと思うが。

というものなどがあり、千葉や神奈川方面まで轟音が拡がっていたようで、こうなってくると、私個人としては、常識的に考えて、この轟音は「埼玉県のギネス級の花火」とは関係ないと思います。

しかし、じゃあ何かというと、それはわからないです。

とりあえず「首都圏一帯」に、この重低音が聞かれていたらしいんですけれど、関係ない話ではありますが、ちょうど同じ頃、アメリカでも「轟音」のニュースが報道されていました。




同じ頃、アメリカでも謎の轟音

海外の「謎の音」といえば、2年以上前に、

世界中で響き渡る音から「ヨハネの黙示録」の天使のラッパを考える
 2012年02月21日

などで、世界各地で聞こえた(とされる)奇妙な音のことを何度か記事としてご紹介したことがあります。

実際にはそれ以降も、アメリカでは「謎の音」の報道が頻繁になされています。

そして、つい先日の 10月 12日に、アーカンソー州にあるアークラテクス( ArkLaTex )という場所で広範囲で重低音が響き渡るという出来事があり、比較的大きく報道されました。

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▲ 2014年10月13日の KSLA より。

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▲ アークラテクスの位置。


上のニュースは毎日アップデートされていて、最初は「原因不明」とされていたのですが、10月 15日になり、その轟音の聞こえた時に、

「上空を何かの破片の大群が横切っていた」

ことがレーダーで確認されたという記事になっています。

下がそのレーダーに写った「何かの破片の集まり」の通過の様子。
広範囲です。

rader-ArkLaTex.gif
KSLA


しかし、この日には、航空機の事故や、あるいは周辺の工場や石油関連施設での爆発事故のような、つまり、このような「大量の破片を生じさせる」いかなる出来事も起きていないということで、むしろ、レーダーによって、この「破片の大群」を見つけられたことによって、この出来事はさらに謎が深まっているようです。

この破片の大群が轟音の原因かどうかもわからない上に「そもそも何の破片の大群なのか」もまったくわかりません。

このニュースは、何か興味深いことがありましたら、ご紹介します。




謎の音に対しての一般的な見解

この数年は世界中で、「謎の音」の報告が頻繁にありましたが、あまりに報告が多くなるにつれて、単なる気のせいやオカルトでは済まされなくなってきた頃から、科学者の人々もコメントを出すようになりました。

たとえば、もう3年前の記事ですが、

あらかじめ予測されていた小氷河期の到来
 2011年11月07日

では、地球が寒冷化に入る可能性について言及した NASA の太陽物理学者デイビッド・ハザウェイ博士のインタビューを何度かにわかりご紹介しました。

このデイビッド・ハザウェイ博士も Earth Files という米国のサイトの中で、

「太陽からの激しいプラズマと地球の重力の相互作用によって発生する重力波によって、これらの謎の音を説明することができるかもしれません」

と言っていたことがありました。

謎の音の原因が、太陽活動と地球の重力の関係の中で起きているかもしれないという説です。

あと、

世界中での異常な音は「地球内部の新しいエネルギー活動の始まり」という学説
 2012年02月08日

という記事では、アゼルバイジャン出身の科学者エルチン・カリロフ博士( Dr.Prof. Elchin Khalilov )という人の説をご紹介したことがあります。

カリロフ博士の所属する GNFE という団体は国際科学団体ではありますけれど、いわゆる西欧の一般的な科学の視点とはやや違うものですが、その主張は下のようなものです。

当時の翻訳は読み直すと無用に長いですので、訳し直して短めにしました。




世界中で報告される空からの不可解な音 - これらは何なのか?

この数年、世界の異なる国や地域から「空からの奇妙な音」についての報告が相次いでなされている。

科学者たちによれば、報告された音のうち、実際にそれが奇妙な音だと認定されるようなものはごくわずかだというが、しかし、その中には確かに説明がつかない音が含まれており、そして、それらは、米国、英国、コスタリカ、ロシア、チェコ、オーストラリア等、位置の異なるさまざまな国々から報告されている。

これらは一体何が原因で起きているのか?

地球物理学と地質学を専門としているエルチン・カリロフ博士によると、これらの奇妙な音を分析する中で、これらの音の大部分が「超低周波」であり、不可聴音(人間が聴くことができない低い音)の範囲にあることがわかったという。

カリロフ博士は、「このような非常に強力で巨大な音響の重力波を作り出すためには、極めて大規模なエネルギー・プロセスがなければならない」と述べる。そして、その巨大なエネルギーは、太陽フレアを含む太陽表面で発生する巨大なエネルギーの流れと関係していると博士は言う。

同時に、カリロフ博士は、私たちの地球の内部からの要因についても語る。

「これらの不可解な音の発生源の可能性としての他の要因は、地球のコアにあるかもしれない。地球の磁場を作っている内側と外側の殻の移動のプロセスは 1998年から 2003年の間に5倍に増加している。現在、地球の北の磁極の移動が加速しているが、これは地球の中心のエネルギー・プロセスの増大を示していると思われる」。

地震と地球の重力を記録するための世界的ネットワークであるアトロパテネ・ステーションは、2011年11月に、強力な重力の衝撃を世界で同時に記録した。この理由について、博士は、「2011年の年末に地球のコアで起きた大きなエネルギーの解放は、地球の内部エネルギーが新しい活発な活動段階に入ったか、あるいはエネルギーの移行の開始を示す何らかの信号なのかもしれない」と述べる。





ここまでです。

この「地球が新しい活動期に入った」というフレーズは、最近の地球の「磁場の移動」や、火山活動、そしてシンクホールの多発などの地殻変動などの頻発を考えましても、いい加減な考え方とは言えない面もありそうです。

ところで、「謎の音」に関しては、2004年にすでに「謎の音が拡大している」という主旨の論文が出されていることを知りました。




2004年の「世界に拡がる謎の音」の研究論文から思い出す「良い周波数」と「悪い周波数」

下の文書は、オクラホマ州立大学の地球物理学者デビッド・デミング博士が 2004年に書いた論文の1ページ目です。

the-hum.gif
The Hum: An Anomalous Sound Heard Around the World


上に赤いラインで示しましたが、LORAN (ロラン)、 HAARP、TACAMO などとある文字列は、通信用語、あるいは、アメリカ軍の軍事関係の頭文字です。

それらの文字が並んでいるということは、このデビッド・デミング博士という人は、世界に拡がる謎の音とこれらの関係を書いているという可能性が高そうです。

「可能性が高そうです」と書きましたように、私はまだ中は全部は読んでいないのです……というか、読めないほど長いのです。しかし、これについて説明しているサイトも見つけましたので、今後またご紹介できるかとも思います。

何より「謎の音」が 2004年にすでに科学者でさえ無視できないほど、世界中で報告されていたということを知ったということの方が驚きでした。

ところで、上の中の HAARP (高周波活性オーロラ調査プログラム)については、昔からいろいろと言われていますが、公表されている目的自体はいまだに曖昧な説明となっています。

ですので、その目的についてはどの意見も憶測に近いものがあるのですが、目的はともかくとして、 HAARP のシグナルが「低い周波数である」ということを以前知りました。

今年の4月に書きました、

太陽黒点と事故の関係。そして、太陽と HAARP の関係。あるいは「太陽にとって替わりたい人たちの存在」を感じる最近
 2014年04月22日

という記事では、

・太陽の磁場エネルギーは低周波
・人間が発信している波長も低周波


という、太陽と人間の波長が同じ領域にあることを記していますが、HAARP のシグナルである「5Hz 程度の非常に低い周波数」も同じような領域にあるものです。

ここから、

「HAARP のシグナルは、人間と太陽が共有している周波数に干渉している可能性がある」

ことがわかります。

ただし、これが偶然なのか、意図的なのかまでわかるはずもありません。

他の TACAMO も超長波の関係のようですし、LORAN(ロラン)というのも、地上系の電波航法システムの一つだそうで、すべてが、軍事用の通信システムと関係しているということになりそうです。

そして、デビッド・デミング博士の論文には、どうも、

「それらのシグナルが人間の精神に影響を与えている可能性がある」

ことについて書かれているようです。

要するに、人間が耳では聞こえない低い周波数のシグナルも含めて、轟音や重低音などで、人間を一種の狂気や暴走に走らせるというようなことなのでしょうかね。

きちんと論文を読んでいないですのでわからないですが、もし、そういうことができるのなら、たとえば、誰かが、あるいは、国家や組織が、

「ある国や地域を暴動や混乱が起きやすいように導きたい」

という願望を持ったとした場合、意図的に「起こりやすい状態」に人の精神を導くことができたりする・・・というような研究もどこかではおこなわれていたり、あるいは、実験や実践がなされているという可能性もあるのかもしれません。

そんなことは無理っぽい……と思いつつも、しかし、過去記事の、

ジョン・レノンの曲に DNA を修復するといわれるソルフェジオ周波数 528Hz コード「だけ」で作られていたものがあることに気づいた日……
 2014年08月26日

などで書きましたような「音(あるいは周波数)には人間の肉体と精神に直接影響を与える力がある」とするソルフェジオの理論が本当ならば、

人間にとって良い音(周波数)

の反対となる、

人間にとって悪い音(周波数)

も存在すると思われます。

5000年前の古代人が「良い音」を探求していたのと逆に、現在の世界のどこかに「悪い音」を研究し続けている人(たち)が存在するとしたなら、そして、それに効果が認められるとするなら、なかなか手強い世の中であるかもしれません。

しかし、現在の地球の各地で報告される轟音は、それらとは関係のない「地球内部の営み」であるのかもしれないですし、それは私たちには推測の域以上は何もわからないです。



  

2014年10月14日



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▲ 2014年10月12日の Space.com より。






 



アメリカの10月第2月曜日の祝日

昨日のアメリカは「コロンブス・デイ」という祝日だったんですけれど、今回はそのことと少し絡んだ話です。

このコロンブスという人物がアメリカでおこなったことは、よく考えれば、「歴史的に巨大な出来事」だったにも関わらず、その詳細があまり学校教育などでも教えられていないために、「コロンブスがアメリカ大陸を発見した」という、ある意味では間違ったイメージが定着しているような気もします。

たとえば、コロンブスがアメリカ大陸においておこなった「インディアンへの大虐殺」は、彼の2度目の航海の時で、 1493年のことでした。

その様子は、クリストファー・コロンブス - Wikipedia によりますと、下のようなものでした。

コロンブスの率いるスペイン軍はインディアンに対して徹底的な虐殺弾圧を行った。行く先々の島々で、コロンブスの軍隊は、海岸部で無差別殺戮を繰り返した。まるでスポーツのように、動物も鳥もインディアンも、彼らは見つけたすべてを略奪し破壊した。

という壮絶なもので、そして、

コロンブスの襲撃戦略は、以後10年間、スペイン人が繰り返した殺戮モデルとなった。

というものとなりましたが、このことについては後で少し書きます。

いずれにしても、昨日のアメリカの祝日は、こういう人の名前を冠した祝日でした。

ところで、この「コロンブスの虐殺」が起きた 1493 年という年代なんですが、これは過去記事、

西暦が始まって以来の「4回連続する皆既月食」(テトラッド)の発生はたった8回。そして、その時に起きていたこと
 2014年10月03日

で書きました、西暦が始まっての約 2000年の間に、たった8回しか起きていない「4回連続する皆既月食」の中に含まれているのですね。

1. 西暦 162 - 163 年
2. 西暦 795 - 796 年
3. 西暦 842 - 843 年
4. 西暦 860 - 861 年
5. 西暦 1493 - 1494 年
6. 西暦 1949 - 1950 年
7. 西暦 1967 - 1968 年
8. 西暦 2014 - 2015 年


やはり「4回連続する皆既月食」と大量死は関係しやすいのでしょうかね。

とはいえ、これは今回の本題ではありません。

本題は、

「コロンブスは赤い月(皆既月食)を利用して生き残ったことがある」

というエピソードを宇宙関係のサイト Space で見かけましたので、ご紹介しようと思った次第です。



戦いをせず、所有の欲望がない「過去にいた未来の人びと」にコロンブスたちがおこなったこと

ちなみに、この「コロンブス・デー」という祝日は、概要としては「 1492 年に北アメリカ大陸にクリストファー・コロンブスが到着したことを祝う」となっていますが、その一方では、この日( 1 0月の第 2 週)に毎年、アメリカの各地では下のような「祝日」がいとなまれるようになっています。

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▲ 2014年10月13日の CNN より。


記事の内容はシアトルとミネアポリスの市議会が、毎年「コロンブス・デイ」として祝われている祝日を「アメリカ先住民の日(Indigenous Peoples' Day)」に変更するという議案を可決したというものです。

コロンブス・デイは国家の祝日ですが、アラスカ州、ハワイ州、オレゴン州、カリフォルニア州バークリーなどでは祝日とはされていません。

まあ、そして、冒頭のほうにも書きましたけれど、このコロンブスを含めた、当時の征服者たちがアメリカなどでおこなったことをほんの少し読むだけで、この日を祝日をすること自体がおかしなことに気づきます。

今回の本題ではないですが、この「コロンブス」および、当時「新世界」を発見していった白人たちがどのようなことをしていたのかを簡単に書いておきたいと思います。

私もすぐ忘れるのですが、こんなに巨大な大量死のことを世界全体が忘れがちになっているというのも何だかあれですので。

コロンブスという人については、一言でかくと、 Wikipedia - クリストファー・コロンブスの冒頭の

クリストファー・コロンブスは探検家・航海者・コンキスタドール、奴隷商人。大航海時代において、キリスト教世界の白人としては最初にアメリカ海域へ到達したひとりである。

となり、私たちの子ども時代などは、上の肩書きの中の「探検者」という側面だけをクローズアップして教えられたような気がします(あんまり覚えてないですが)。この「キリスト教世界の白人としては最初にアメリカ海域へ到達したひとりである」コロンブスに発見されてしまったアメリカ大陸は、どのようになったか。

これも Wikipedia からの抜粋です。

1492年の「新大陸」へのコロンブスの上陸時に約800万人いたインディアンの人口は、1496年の末までに、その3分の1までに減った。

さらに1496年以降、死亡率は倍加していった。

量的にもスケール的にも、コロンブスは、虐殺目的で戦争を楽しんだ最も悪名高いコンキスタドール、征服者の一人と言えるだろう。

この数字が正しいのならば、コロンブス一行は、アメリカ大陸発見後、たった約4年間で、500万人から 600万人の先住民を殺した計算となりますが、この2回目の航海では、植民地化を目的としていたもので、スペイン人側の乗組員の数も多く約 1500人と言われています。

しかし、 1500人 vs 800万人なら、先住民が本気で戦えば、何とかなりそうな数字ですが、後のほうに書きますけれど、当時のアメリカの先住民たちは「そういうこと(戦争や争い)と無縁な生活をしていたらしい」人びとだったようです。

なので、一方的にやられるだけやられてしまったようです。なお、先住民たちの死因として、「西欧から持ち込まれた疫病」も大きかったとされています。

ここに「コンキスタドール」という耳慣れない言葉が出てきますが、15世紀から17世紀にかけてのスペイン人などのアメリカ大陸の征服者、あるいは侵略者といってもいいと思いますが、その人たちを指します。

コンキスタドールはたくさんいますが、現在名前が残っている中では、その代表格ともいえるコロンブスは、冒頭にも抜粋しましたように、「行く先々の島々で、まるでスポーツのように、動物も鳥もインディアンも、彼らは見つけたすべてを略奪し破壊した」ようなのですが、 Wikipedia では、その後に次のような一種救いようのない文章に続きます。

> スペイン軍は面白半分に彼らを殺す楽しみを決してやめなかった。

この「面白半分」という部分には、この文章を書いた人の主観が入っているように思えるかもしれないですが、コロンブスの航海に同行し、その虐殺を目のあたりにしたキリスト教宣教師のバルトロメ・デ・ラス・カサスという人の日記を読むと、「面白半分に近い」状態であったかもしれないことを伺わせます。

宣教師の日記には以下のように記されています。

「彼らはインディアンたちの手を切り落として、それが皮一枚でぶらぶらしているままにするでしょう、そして、『ほら行け、そして酋長に報告して来い』と言って送り返すのです。 彼らは刀の切れ味と男ぶりを試すため、捕虜のインディアンの首を斬り落とし、または胴体を真っ二つに切断し、賭けの場としました。彼らは、捕えた酋長を火炙りにしたり、絞首刑にしました」

「イスラム国」も真っ青な非道ぶりですが、とにかく、コロンブスとその部下たちは「黄金」と「奴隷の調達」にしか興味がなかったようです。

そして、私がしみじみと悲しみを感じた部分は、コロンブス自身の記述にあります。

コロンブスが最初にアメリカ大陸に上陸した時、どうやら、その地の先住民たちは「戦争や殺し合いを知らなかった」ふしが伺えることです。

以下はコロンブスの日誌の記述です。
太字の部分は、もともとの Wikipedia でも太字となっていて、私が太字にしたものではありません。

「彼らは武器を持たないばかりかそれを知らない。私が彼らに刀を見せたところ、無知な彼らは刃を触って怪我をした。 彼らは鉄を全く持っていない。彼らの槍は草の茎で作られている。彼らはいい身体つきをしており、見栄えもよく均整がとれている。彼らは素晴らしい奴隷になるだろう。50人の男達と共に、私は彼らすべてを征服し、思うままに何でもさせることができた」

さらに、どうやら、この先住民たちには「個人所有」という意識がなかったようです。

下もコロンブスの日誌からです。

「原住民たちは所有に関する概念が希薄であり、彼らの持っているものを『欲しい』といえば彼らは決して『いいえ』と言わない。逆に彼らは『みんなのものだよ』と申し出るのだ」


・争いがなく(武器を知らない)
・所有意識がない



これこそまさに「理想的な未来の人類の姿」だと感じます。

というか、未来の人びとはこのような人類であってほしいと。

この、「所有意識がない」というのは、かつての先住民の多くにあった概念だと思われ、日本のアイヌもそうだった可能性があります。縄文人と古代アイヌというページには、

もともと、アイヌの生活領域は狩猟生活を中心に移動していたから、「和人」のような土地所有意識を持たなかった。彼らの間に基本的に、土地や獲物の争いごとはなかった。

とあり、そして、そういう民族は下のような思想へと発展しやすいものなのかもしれません。

アイヌは、人間と人間がお互いを助け合うこと。自然を愛すること。生き物をむやみに殺してならないこと、などを伝統的に学び取りかつ実践した。

今では既知の世界にはこういう人々は、ほとんど消えてしまったかのように見えます。

もちろん、現在の社会でも学校でも「道徳観念」として、自然、あるいは他人を愛することや生き物をむやみに殺してならないという概念を「強制的」に大人にも子どもにも浸透させていますが、現実の世の中はそういう道徳だけで貫かれているわけではないこともまた誰でも知っています。

住居でも食料でも「所有」しなければ生きていくことは難しく、あるいは、自然や他人を愛することだけでは「所有して生きていく」ことはできない社会が現在の非常に多くの国と民族の姿だと思います。

こう考えると、「所有」という概念は諸悪の根源である可能性もありそうですけれど、「所有の願望」は現在の経済活動を支える根幹でもあるわけで、経済的に進んだ国では、「所有欲」をさらに鼓舞する方向で今の時代は進んでいます。



でもねえ……。



実際には最近は、多くの人びとが、この「所有することが価値である社会」に疲れてきている気はするんですよね。

たとえば、新しいスマートフォンが出てワーッとそれに飛びついたりする報道を見ますけれど、すでにそれを手にすることによる幸福感は存在していないような気がします。

「所有の時代の意志」を惰性で持続させているみたいな。

なんか……たまに疲れますよね。


今のこの世の中で「きれいで素敵なものばかりが見えるし、そういう体験しかしない」という人たちは羨ましいとは思いますけれど、そこにはどこかコロンブスと似た一方的な視点を感じます。

もちろん……本当に見えないなら、それを悪く言うのはおかしな話でしょうけれど。


それにしても、この日本もちょっと間違っていれば、先住民が数百万人殺されたアメリカ大陸のようになっていたかもしれないのですけれどね。何しろ、Wikipedia には、

> 『東方見聞録』にある黄金の国・ジパングに惹かれていたコロンブスは

という記述があります。

この人は狙ってたんですね、この国を。

ちなみに、その東方見聞録には、マルコ・ポーロが中国で聞いた噂話の中の日本が書かれていて、それがどのように描写されているかというと、

ジパングは、中国北部の東の海上1500マイルに浮かぶ独立した島国で、莫大な金を産出し、宮殿や民家は黄金でできているなど財宝に溢れている。また、ジパングの人々は偶像崇拝者であり、外見がよく、礼儀正しいが、人食いの習慣がある。

と書かれてあります。

当たっているのは……人食いの習慣くらいですかね(やめろって)。

いずれにしても、コロンブスが「惹かれていた」のは上の中の「黄金」だけだと思われますので、彼に発見されていたら、日本もえらいことになっていたかもしれません。


そんなコロンブスですが、1493年の「コロンブスの部隊によるインディアンの大虐殺」が、4回続く皆既月食の中で起きたことを最初に書きましたけれど、

赤い月と黒い太陽: 2014年から 2015年まで「4回連続する皆既月食」がすべてユダヤ教の重要宗教祭事の日とシンクロ
 2014年04月06日

という過去記事から書いている「皆既月食」と、犠牲や大量死との関係についての話とは違うものですけれど、コロンブスは、助かるために「赤い月」を利用していたことが記事になっていました。

その記事をご紹介したいと思います。

現地の先住民を「血のような赤い月はキリスト教の神の怒りだ」として騙す話です。


ところで、コロンブスという人物は 15世紀の人で、それほど遠い昔の人ではないにも関わらず、「出自」に関してはよくわかっていないのだそうです。 Wikipedia には以下のようにあります。

出自に関する諸説

コロンブスに関してはその出自が明らかではない事、また大航海の目的自体があまり明確に語り継がれていない事等から様々な異聞が流れている。また、残されている肖像画は全て本人の死後に描かれたものであり、今となってはコロンブスの真の素顔を知る術はない。

この時期のいわゆる有名人としては珍しいことのように思います。
そして、その中には、

多く語られているものとしては、コロンブスはユダヤ人の片親から生まれたのではないか、とする説である。(中略)コロンブス出航の真の目的はユダヤ人の移住地探しではないか、とする奇説も存在する。

ということものもあるのだそう。

赤い月とユダヤの歴史のこれまでの関係を見ると、あるいは、この一見珍説に見えるこの説もあり得るものなのかもしれません。

ここから記事です。




How a Total Lunar Eclipse Saved Christopher Columbus
Space 2014.10.12

クリストファー・コロンブスはどのように皆既月食によって生きのびたのか


blood-moon.jpg


10月 13日はアメリカに住む人たちにはコロンブス・デーの祝日だが、この有名な探検の旅に「月」が関わっていたことをご存じだろうか。

1492年 10月 12日、コロンブスは、後に彼がサン・サルバドル(「聖なる救い主」の意)と名付けるキューバの北東部の島に上陸した。

この 10年間の航海の中で、コロンブスは3つ以上の「新世界」( New World )を発見したが、コロンブスの4度目の探検では、中央アメリカの海岸を探索する中で、コロンブス自身が苦境に陥ることになる。

コロンブスは、 1502年 5月 11日にスペインのカディスを、カピターナ号、ガレッガ号、ヴィズカイナ号、サンティアゴ・デ・パロス号( Capitana, Gallega, Vizcaína , Santiago de Palos )の4隻の船と共に出発した

ところが、船の板張りの木材を食べる虫が発生したことによって、 1503年 6月 25日に、今はジャマイカとして知られる島の北部の海岸に、2隻の船を放棄する他なくなったのだ。

最初のうちは土地の先住民だったアラワク・インディアンたちは、漂流者を歓迎して、食糧や避難所を提供した。しかし、日が経つに従って、両者には緊張が増してきた。

そして、漂着から半年以上経った後、コロンブスの乗組員の半数が反乱を起こし、先住民に対しての強奪と殺戮が始まった。

それまで、先住民たちは、コロンブスたちの部下たちに笛や装身具などと引き換えに、キャッサバやトウモロコシや魚を与えていた。しかし、自らや部下に飢餓が迫る中、コロンブスは独特な方法による脅迫という絶望的な計画を打ち立てた。


救助への暦

ジャマイカに取り残されたコロンブスたちを救ったのは「暦」だった。

その暦は、ドイツで高く評価されていた数学者であり、レギオモンタヌスの名前で知られている天文学者であり、占星術師でもあったヨハネス・ミュラー・フォン・ケーニヒスベルク(1436-1476年)によって作成されたものだ。

レギオモンタヌスは自分の死の前に、西暦 1475年から 1506年までをカバーする天文表を含む暦を発表した。

彼の天文表は、太陽、月や惑星についての詳細な情報だけでなく、より重要な星や星座による航海のナビゲーションに大きな価値があることがわかった。

この暦が発表されて以来、航海に出る者で、この暦の写しを持たない者は誰1人としていなかった。この暦の示す星の位置のナビにより、未知の大洋上でも、新たな方角へに向かって探検することができたのだ。

ジャマイカに取り残されたコロンブスも当然その暦を持っていた。

コロンブスは、その暦の表組みの中に 1504年 2月 29日の夕方に皆既月食が起こる項目を発見した。

この知識を武器に、コロンブスは、月食の3日前に、先住民アラワク族の首長との会談を要請した。そして、自分の部下たちに十分な食糧が供給されていないことに対して(コロンブスたちの)キリスト教の神が大変に怒っておられる、と首長に述べた。

そして、コロンブスは首長に対して、「神の怒りは3日後に現れる。(このまま食糧の供給が滞れば、神の怒りにより)夜空から満月が消え、不吉な徴候を示すだろう」と脅した。

そして、3日後の夕暮れの後、普通なら満月の時期のこの日の月は赤いボールのようだった。完全な闇の中に現れたその月は「血を流している」かのような真っ赤に染まっていたのだ。

先住民たちはこの光景を見て恐怖し、コロンブスと部下たちに協力することを約束するので、月を元の色に戻してほしいと願い出た。

コロンブスは、「それには私ひとりで神にお願いを申し出なければならない」と言い、ひとり、小屋の中に 50分間こもった。コロンブスは暦から「皆既月食が終わる時間」を砂時計で計算していたのだ。

そして、コロンブスは、満を期して小屋から出てきた。

「神はすべてを赦したもうた」

と語った。

すると、次第に、月は赤い色から通常の満月へと戻っていった。

その後、先住民たちは、コロンブスと部下たちに多く食糧を供給した。

1504年 11月 7日にコロンブスと一行は無事にスペインへ戻った。



  

2014年10月07日



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▲ 10月 8日は「4回連続する皆既月食」の2回目が発生し、また、ユダヤ教の重要祭事「仮庵の祭り」が同日から始まります。その前日の 10月 7日には、イスラム教最大の行事のひとつのハッジと呼ばれる大巡礼が終わります。



今日から明日にかけては上のような日なのですね。

このことに関してましては、今年4月に記しました、

赤い月と黒い太陽: 2014年から 2015年まで「4回連続する皆既月食」がすべてユダヤ教の重要宗教祭事の日とシンクロ……
 2014年04月06日

から、わりと何度も取り上げていることで、関係記事は、こちらのリンクで表示されると思います。

そして、今まで気づいていなかったのですが、今年は、上のユダヤ教と重要な祭事と、イスラム教の重要なイベントが、

「皆既月食の日に向かって収束するように進んでいた」

ことに昨日気づきました。

先日の記事、

イスラム国によるアメリカへの「エボラウイルス・自爆テロ」は実行されるのか
 2014年10月05日

で、イスラム教の最も重要な宗教的行事のひとつであり、数百万人のイスラム教徒たちが集う「大巡礼」は、今年 2014年は 10月 2日から 7日までおこなわれることを書きました。

そして、その大巡礼が終わった翌日の 10月 8日。

この日に、ユダヤ教の重要祭事である「仮庵の祭り」(あるいは、スコット)が始まります。
そして、それと共に、皆既月食が発生するのです。

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・10月 7日までイスラム教の重要行事
 ↓
・10月 8日からユダヤ教の重要祭事
 ↓(同時)
・皆既月食


と、まるでバトンタッチするかのように、ふたつの相反する宗教の重要行事が続きます。

ちなみに、どちらのイベントも現代の暦でおこなわれているものではなく、イスラム教の行事はイスラム暦、ユダヤ教では太陽暦をもとに行われるので、それぞれ、毎年行われる日が違うのです。

つまり、こんなことが毎年起きているわけではないです。

たとえば、ユダヤ教の「仮庵の祭り」は、今年は 10月 8日からですが、昨年 2013年は 9月 18日からでした。

あるいは、大巡礼ハッジは、今年は 10月 2 - 7日の日程ですが、来年は、9月 21 - 26日と、毎年ずいぶんと違うようです。

それだけに、今年のイスラム教の重要行事からユダヤ教の重要祭事への流れが、

「まるで皆既月食(血の月)にバトンタッチするかのようにきれいに流れていく」

という今年の時間に何か因縁めいたものを感じないでもないです。




コロンビアの先住民ウィワの精神的指導者たちの命を消し去った雷

御嶽山の噴火は、その山頂付近にある「聖」や「信仰」に関係するものや、あるいは人の命を容赦なく破壊しましたが、またも「容赦ないなあ……」と思った出来事がありました。

先住民の儀式中に落雷、11人死亡 コロンビア
AFP 2014.10.07

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南米コロンビア政府の6日の発表によると、同国北部の山岳地帯で先住民ウィワ(Wiwa)の精神的指導者たちが儀式を行っていたところ落雷に遭い、11人が死亡、15人が負傷した。

落雷があったのは同国北部マグダレナ州のシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタ山脈。コロンビア先住民族全国組織(ONIC)によれば、集まっていたウィワの部族の指導者たちが儀式を行っていたところ、稲妻に打たれたという。

これって、「精神的指導者たち」が儀式を行っていたということですから、単なる部族の伝統行事ではなく、このウィワ族という人たちの、多分は神聖な儀式だったわけですよね。

そして、コロンビアの先住民族の人口を考えると、このウィワという先住民の人口も多くはないと思われます。その中の「精神的指導者たちの人数」というのもそれほど多くはないと思うのですけれど、その中の 11人が亡くなっている。

しかも、昔から「神の怒り」のような表現もされることもある落雷によって……。

上の AFP の記事の写真を見ると、建物の原型はなく、焦げた柱が少し残っている程度で、建物全体が雷によってほぼ完全に破壊された様子がうかがえ、壮絶な落雷だったことがわかります。

ところで、この、コロンビアのウィワ族とはどのような先住民なのか。

名称自体も初めて聞くのですが、調べると情報が少ない。

日本語でも英語でも本当に少なく、 IC Magazine という英語のサイトででやっと見つけました。翻訳します。

WIWA
IC Magazine

ウィワ族は、コロンビア北部サンタマルタのシエラネバダに住んでおり、ウィワという名称の他に、アルサリオス(Arsarios)やマラヨ(Malayo)とも呼ばれる。

彼らは山岳地帯に住む4つの先住民族のなかのひとつで、ウィワは自分たちを、地球に現れた人間の中で最も古い兄弟だとしている。

コロンビアの文化省によると、ウィワ族の人口 13,627人。このうちの 12,803人は農村部で暮らしており、都市部には 824人が住んでいる。全体の約 79%が 30歳未満で、 60歳以上は 2%に満たない。

ウィワは、「文明化した世界」との接点を断つことによる独自の生存戦略を持つため、世界でも、西洋社会との歴史的な接点が最も少ない先住民のひとつでもある。

しかし、今日、彼らは、コロンビア革命軍( FARC )や国民解放軍( ELN )といったような不法武装グループとコロンビア政府との紛争に巻き込まれている。

ということで、自称とはいえ、

地球で最古の兄弟

であり、そして、

西洋文明との接点を断った独自の精神文化を持つ

といったような、本来なら「これからの世の中に一番残っていてほしかったようなタイプの民族」の精神的指導者たちが「自然現象によって大量に死んでしまう」。

やりきれない……というより、冒頭に書いたように、「容赦ない」というような形容詞が浮かびます。

ちなみに、ウィワは下のような人たちのようです。

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IC Magazine


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First Peoples


なお、さきほどの翻訳記事にあります「紛争」に関しては、アムネスティ・インターナショナルの「コロンビア:先住民族が生存の危機」という記事などに書かれてあります。

詳しいところは上のアムネスティの記事をお読みいただきたいですが、

「コロンビア先住民族全国組織(NIOC)の統計によれば、2009年だけで少なくとも114人の先住民族の男女や子どもが殺害され、数千人が強制的に立ち退かされた」

とのこと。

どうして「最古の兄弟たち」が、ゲリラなどのターゲットになっているかというと、

コロンビア先住民族たちが住む多くの地域は、生物多様性に富み、鉱物・石油などに恵まれた土地に住んでいるため、拠点として狙われやすく、その場から追い出されるか殺されている。

ということで、これだけではないですが、たとえば、このような理由により存続が危ぶまれているようです。

ただ、これらは人為的な事ですけれど、今回のウィワの件は「雷」ですからね。

人口約1万3千人(そして、その中の 80%が 30歳未満)のウィワ族の中に精神的指導者が何人くらいいるのかわかりませんが、60代以上の人口比率が 2%未満ということは、長老的な存在は多くはなさそうです。この落雷によって1度に 11人が亡くなり、15名が負傷したというのは、部族の精神的な伝統の上ではかなりの痛手なのではないでしょうか。

なんかこう、特に最近の「落雷」は信仰の種類を問わず、「精神的」あるいは「宗教的」なものを直撃します。



自然現象 vs 聖なるもの

今年1月には、ブラジル・リオデジャネイロで、落雷がイエス像を直撃し、像の指が破損しました。

ブラジル・リオデジャネイロ 2014年1月16日

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Gizmodo


昨年は、前ローマ法王ベネディクト16世の退位の発表の直後に、バチカンの聖ピエトロ大聖堂に稲妻が何度も何度も落ちるという出来事も。

バチカン 聖ピエトロ大聖堂 2013年2月11日

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▲ 2013年2月13日の過去記事「最後の法王と呼ばれ続けたベネディクト16世: 聖マラキの予言とコナン・ドイルの未来感の時間軸」より。


また、昨年 12月には、アフリカのマラウイ共和国にあるキリスト教の教会に雷が直撃して、8名が死亡するという出来事もありました。

マラウイの首都リロングウェ 2013年12月29日

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Independent


そういえば、雷ではないですけれど、つい先日の台風18号では、横浜のお寺(成田山水行堂の仮本堂)が倒壊して、1人が不明になっています。

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▲ 倒壊した寺。2014年10月6日の毎日新聞「台風18号:横浜で寺倒壊、1人不明」より。

他の建物なども数多く壊されたならともかく、今回の台風18号で、横浜で建物と人命に関わる被害を受けたのは、報道で知る限りは、他に共同住宅が1軒だけだと思います。


どうもこう……聖なるものや人物(と、その地で言われるもの)が「自然現象に狙われている感じ」がしたり……。


そういえば、今年の1月には、イタリアで、崖から転がり落ちてきた岩石が、他の建物を一切損傷させず、カトリック教会所有の建物「だけ」を押しつぶしたというようなことがあったのも思い出しました。

イタリア・トラミン 2014年1月29日

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Independent


御岳山の白川大神の頭部の破壊も含めて、この「自然 vs 神聖」の構図が続いているのは気にはなります。

日本・御嶽山 2014年9月27日

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過去記事


「たすけて……」

と言いたくなったりしても、変に TASUKETE なんて文字にしますと、過去記事、

ローマ字「 TASUKETE (たすけて)」から偶然導かれた日月神示や神様と悪魔の関係。そして、バチカンに正式に承認された「国際エクソシスト協会」の存在
 2014年07月26日

にありますように、日月神示に行き着いたりしてしまって、この世は何が何やら。

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Weblio TASUKETE


上の意味はよくおわかりにならないと思いますが、ご興味のある方は、上のリンクの記事などをお読み下されば幸いです。

ちなみに、上の日月神示の日本語訳(?)は、

「仏もキリストも何も彼もはっきりたすけて七六かしいご苦労のない代が来るから みたまを不断に磨いて一筋の誠を通してくれよ。いま一苦労あるが、この苦労は身魂をみがいて居らぬと越せぬ、この世初まって二度とない苦労である。」

になるのだとか(ひふみ神示データー ひふみ神示 第01巻 上つ巻より)。

その仏やキリスト、あるいは「神」を象徴するものが自然からムチャクチャに「やられて」いる。




悪の意味。善の意味

これらのことは、いわゆる「偶然」がどんどんと積み上がっただけなんでしょうか。

それとも、こちらの記事の「「善は悪から生まれる」と同じことを述べる日月神示とメリン神父」というセクションに書きましたように、このような破壊や、あるいは最近続けて起きまくっている「悪」としか言いようのない出来事も、小説『エクソシスト』の中で、メリン神父の言う

「このような悪からでさえ、善が生じてくる。なんらかの方法でだ。われわれには理解できず、見ることもできない何らかの方法でだ。……おそらく、悪こそ、善を生み出す『るつぼ』であるからだろうな」

「そしておそらく、大悪魔(サタン)でさえもが −− その本質に反して −− 何らかの意味で、神の意志を顕示するために働いているともいえるのだ」

や、あるいは、日月神示の第21巻 空の巻 第八帖にある、

悪も元ただせば善であるぞ、その働きの御用が悪であるぞ、御苦労の御役であるから、悪憎むでないぞ、憎むと善でなくなるぞ

というように、「悪」が生じない限り善はないという理解で、この世界を眺めるのがいいということなんでしょうか。

そのようにしていれば、日月神示・第21巻 空の巻 第十帖にある、

此の方 悪が可愛いのぢゃ、御苦労ぢゃったぞ、もう悪の世は済みたぞ、悪の御用 結構であったぞ。早う善に返りて心安く善の御用聞きくれよ。

という気持ちでいられる世界になるということなんでしょうか。

この4月頃から半年以上見続けている、

・大量死
・完全な悪
・犠牲


というような概念は、私が思っている「4回続く皆既月食」の考え方でいえば、来年の9月が終わる頃まで続くことになります。

メリン神父や日月神示のような心境でその間を生きていけばいいのかもしれないですけれど、それより前に精神的に疲弊して、その時代を走り抜けることへの自信を失ってしまう人も多く出てしまいそうな気もします。

もちろん、私も含めて。


TASUKETE ……(それを書くと複雑なことになるからやめなさい)。