【軍事的カオス】 の記事一覧

2015年09月19日



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植物を食べて永久に走る偵察車 … ホログラム的カメラ … 虫のスパイ … :アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)の前衛的な研究も次第に「戦争の雰囲気の時代」と同調し始めて



DARPAの資金提供で開発された史上最強の輸送ロボ「ビッグドッグ」
BigDog_Snow.jpg
BigDog






 

新約聖書「マタイによる福音書」 24章 6-8節

戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞くだろうが、慌てないように気をつけなさい。そういうことは起こるに決まっているが、まだ世の終わりではない。

民は民に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に飢饉や地震が起こる。

しかし、これらはすべて産みの苦しみの始まりである。




混乱の雰囲気が漂う中、淡々とプロジェクトを進める DARPA

アメリカ軍が使用する装置やシステムなどの技術開発と研究を行うアメリカ国防総省の機関に「アメリカ国防高等研究計画局( DARPA / ダーパ)」というものがあります。

ダーパは、「インターネットの原型」や「全地球測位システム( GPS )」を開発した部署でもある優秀な機関でもあります。

このダーパの研究は、いつでも興味深いものが多く、In Deep でも過去何度も取りあげたことがあります。


アメリカ国防総省が『時間を止める装置』を開発
 2012年01月06日


という記事では、ダーパが資金提供をしている研究機関が、原理はよくわからないものでしたが、『タイム・クローク』という「時間を隠す装置」の開発を続けていることをご紹介しました。

また、


アメリカが「国家機密扱いの人口衛星」を搭載したロケット「アトラス5」を宇宙に向けて発射
 2014年05月29日


という記事では X-37 という「飛ばす目的が一切発表されないし、軌道上で何をおこなっているかも公表されていないスペースブレーン」のことを取りあげましたが、これを主導しているのもダーパです。

下が X-37 打ち上げ前の写真ですが、搭乗員の格好は、ほとんど宇宙服で、それなりに高所の宇宙空間まで行くものかもしれないことを伺わせます。


x37b-space-plane-endurance-record-2.jpg
space.com


それと、

エドワード・スノーデン氏かく語りき : 「地球の地下マントルには現生人類よりさらに知的な生命が存在している」
 2013年07月10日


という記事では、エドワード・スノーデンさんが、以下のような証言をしたことにふれていて、ここにダーパの名前が出てきます。



snowden-s5.jpg

「弾道ミサイル追跡システムと深海のソナーは国家機密として保持されているために、科学者たちはそのデータにアクセスすることはできません。しかし、 DARPA (アメリカ国防高等研究計画局)の関係者たちのほとんどは、地球のマントルに、ホモ・サピエンス(現生人類)よりもさらに知的な人類種が存在していることを確信しています」


こういう系の話にまで出て来るダーパですが、今回は、最近の記事ではないですが、「アメリカ国防高等研究計画局が取り組んでいる9つの奇妙なプロジェクト」というタイトルの米国ビジネス・インサイダーの記事をご紹介したいと思います。

ブレードランナーに出てきたような「撮影時に写っていないものを、撮影後に見られるカメラ」だとか、「植物を食べて燃料にして走り続ける偵察車両」とか、相変わらず、いろいろなものを研究、あるいは実際に作っています。

この記事を今ご紹介しようと思ったの理由としては、冒頭のマタイによる福音書にある、


> 戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞くだろうが、慌てないように気をつけなさい。


という言葉を思い出したこともあります。

最近は、どこもかしこも、かつてないほど戦争や衝突の空気が増しているような感じもありますが、その中で、この記事をご紹介しようと思いました。

軍事や戦略が好きな人には、単純に興味深い記事だとも思います。

いくつかの項目では、専門用語や背景などに対して、かなり個人的な考えに及ぶ「訳者注」が入っていますが、ご了承下さい。

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The 9 weirdest projects DARPA is working on
Business Insider 2015.04.09


アメリカ国防高等研究計画局( DARPA )が取り組んでいる9つの奇妙なプロジェクト


アメリカ国防高等研究計画局( DARPA )は、いくつかの非常に異様なプロジェクトに取り組んでいる。

その定められた任務目標のひとつは、アメリカの敵に対して「技術的サプライズ」を引き起こすことにある。敵の戦闘員たちが、戦場で「自分たちが何と対峙しているのかわからない」ような状態を作り出したいと思っているのだ。

これら9つの DARPA のプロジェクトのうちのいくつかは、現実世界の中でも役に立つ可能性がある。




1. 90トンの貨物を乗せて移動できる飛行船


DARPA-Aircraft-001.jpg


DARPA は、新しいタイプの飛行船を建設するプロジェクトを進めていた。しかし、技術上の問題により 2006年に計画は中止されていたが、2013年にこのプロジェクトが再始動した。

プロジェクトの目標は、200万ポンド(約 90トン)の貨物を搭載した状態で、5日間で世界を半周する性能を持たせることだ。

このことにより、戦場で迅速にユニットを展開、あるいは撤退できるようになる。





2. 車そのものが自身で運転する超高速軽量車両


darpa-car.jpg
TechRepublic


このグランドX車両( Ground X-Vehicle )は、四輪車として作られたクモのように見える形状をしている。

兵士たちがこの車を運転することもできるし、方向と行き先を車のコンピュータに入れるだけでも、その地に到着する。

手動でもオートでも、この車が攻撃を受けた際には、その対処を自身で考え、攻撃を避けたり、必要に応じて衝撃を吸収する。





3. 空中でのドローンの着陸と燃料補給を可能にする作業飛行機


darpa-drones.jpg


攻撃用や偵察用のドローン(無人機)が、地上に降りることなく、燃料の補給をおこなうことのできる「飛行するプラットフォーム」は、アメリカの無人機プログラムが敵の上空をうまく飛び続けることを支持するだろう。

このプロジェクトは、ドローンが「隊列を組む」ことを実現するプロジェクトと組み合わせて進められている。

うまくいけば、これらのドローン作戦は、アメリカ軍が行った最後の空中キャリアでの実践よりも、うまく働く可能性がある。





4. 情報を収集し、植物を食べて燃料とするロボット

(イメージ)
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ROBOTS THAT EAT BUGS AND PLANTS FOR POWER


DARPA の「無人地上車両プログラム」は、燃料補給を必要とせずに、時間無制限で偵察をおこなうことのできる UGV (無人走行機)を求めている。

そのようなものをエネルギー自律型ロボット戦略と呼ぶが、 DARPA では、無人機が自ら植物を食べ、それをエネルギーに変換することによって走行を続けるマシンの開発をおこなっている。

また、このような無人機は、必要に応じて、敵の燃料を盗むことができるようになっているかもしれない。





5. 遠隔コントロールのできるスパイ昆虫(生きた昆虫)


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DARPA は、すでに、生きた昆虫に制御装置を移植することに成功している。これは、昆虫がサナギの時に装置を移植し、その昆虫が成虫になった時には、コントロール可能となっている。

基本的に、遠隔コントロールする昆虫は、その背中に搭載された偵察用センサーに電力を供給する。

DARPA は、昆虫の動きによって発電するシステムを作る技術を持っており、今後は、スパイ用のセンサー、通信方法と昆虫発電機のテクノロジーを融合させることで、「昆虫スパイ」が誕生する。

昆虫たちが収集した情報は、オペレータによって収集され、解析されるだろう。





6. あらゆるアングルから見ることのできるカメラ


DARPAは、このようなカメラを作る方法を確立しているわけではないが、DARPA は、あらゆる角度からエリアを見ることができるセンサーを作成するために、プレノプティック関数を使用する方法を探している。


(訳者注) プレノプティックという初めて聞く単語を調べてみると、「ライトフィールド」という言葉と同義のようなのですが、下のようなもののようです。

不思議なカメラが相次いで登場より

ライトフィールドとは “ある時、ある場所に存在する光の状態をすべて記録した情報” とでも言うべき概念で、専用のライトフィールド・センサーで記録します。

ライトフィールド・センサーの前には無数の小さなレンズが並んでおり、その一つ一つが、その場所に在る光の波長、強さ、方向に関する情報をセンサーに送ります。

というもので、「一種のホログラム的な記録」をするカメラということになりそうで、下のような光の情報を完全に記憶するということのようです。

Light-Field.gif


このようなものは、すでに現実に存在しているようです。もちろん、完全ではないようですが、仮に「完全なもの」ができたとすると、「撮影した後からでも、別のアングルからその光景を見られる」ということになりそうです。

たとえば、普通に写した光景の「建物の裏に敵がいる」ことがわかったりとか。

これは映画ではたまに描かれる光景で、1982年のSF映画『ブレードランナー』には、この概念の写真が出ていて、「昔の写真の物体の裏側にあるもの」を再現する有名なシーンがあります。


映画『ブレードランナー』より写真を別のアングルから見るシーン
Holography.jpg


1998年の『エネミー・オブ・アメリカ』という映画でも、「すべての方向から撮影できるカメラ」が登場しました。「かつて小説や映画に出てきたもの」が、後に現実に開発される例は結構多いような気がします。





7. 原子力発電の GPS 追跡装置


gps-1.jpg


この核物質は、速度を決定するために使われるもので、発電用や爆発用のものではないので、心配無用だ。

アメリカ軍は、たとえば、潜水艦が水中にいる時など、GPS 信号がブロックされるか、あるいは妨害されるような地域で、車両やミサイルからの受信のトラブルを持っている。

この「チップサイズ・コンビナトリアル原子ナビ」( C-SCAN )は、非常に高度な技術的なもので、原子核崩壊から原子を測定することにより、GPS 信号がなくとも正確なナビゲーションを可能にするだろう。





8. 心的外傷後ストレス(PTSD)に打ち勝つ鍵を握る脳インプラント


16wire_electrode_array.jpg


PTSD の厳密な治療を DARPA は確約する。

このアイデアは少し不安に響くかもしれないが、脳内のマッピングされた場所に電流を流すことを可能にし、脳の機能を変化させる SUBNET (神経学テクノロジーをベースにした新規治療法)と呼ばれる DARPA が開発している治療法だ。

これは PTSD および、外傷性脳損傷患者のための大きなブレークスルーである可能性がある。



(訳者注) なぜ、 DARPA が、PTSD (心的外傷後ストレス)の治療法の開発を進めているのかというと、

「米軍に PTSD と、それによる自殺者がとても多い」

ためだと思われます。

これは、2001年の同時多発テロ以降、イラクへと派兵された帰還兵たちの間に、ものすごい数の PTSD 患者が発生したことと関係していることが報道されて明らかになりました。そして、これは実は、ベトナム戦争でも、第二次世界大戦でも、どんな戦争でもそうでした。

2004年に放映された NHKドキュメンタリー『イラク帰還兵 心の闇とたたかう』という番組では、イラクに派兵された兵士のうち、


肉体的な負傷者 2万1000人
精神疾患    3万1000人



ということが語られていましたし、あるいは、過去記事の

ノーベル賞とロボトミー : 「科学の歴史」を振り返って、ちょっと考え込んでしまいました
 2013年12月20日

では、第二次世界大戦において、


・戦闘などでの肉体的な負傷で入院した軍人は 68万人


だったのに対して、


・戦時中に精神的・神経内科的な障害で入院した兵士は 120万人


だったという「肉体よりも精神をやられて入院した人のほうが多かった」ということも書いたことがあります。


戦争は兵士たちの肉体よりも、兵士たちの精神を破壊する部分が大きいことがわかります。


そういう過去と現在の現実の中、「想定される実際の戦争」において、DARPA は、戦場でメンタルヘルスの状態が悪化する兵士たちを「治して、また戦闘員としたい」と考えているはずです。

何十万人もの兵士が精神的障害によって戦闘不能に陥る状態に対抗するための研究となっていると思われます。

しかし、「脳インプラント」というような、こういう「脳への物理的刺激方法」の多くは「症状を治す可能性はほんの少しはあるかもしれないが、人間性も失われてしまう」ことが多いです。

先ほどの記事のロボトミーもそうですし、精神疾患に「電気ショック」を行うような治療法が、かつて……いや、もしかしたら、今でもあるのかもしれないですが、これなどは、電気けいれん療法 -Wikipedia によりますと、


作用機序は不明である。


と明記されています。

つまり、「なぜ効果があるのかいまだにわからない」のに、何十年もおこなわれてきたのです。

人間は、過去の恐怖を恐怖として持てるからこその人間であるわけで、それを克服するのは、機械や物理的刺激では無理だと私は思います。自分で何とかするしかないのだと思います(私も PTSD です)。





9. 敵の生物兵器に対して反撃する病原体

アメリカへの新たな脅威のひとつは、抗生物質への耐性菌を使用した生物兵器だ。

DARPA は、敵がそのような生物兵器を用いてアメリカ軍や民間人が大規模な感染症を引き起こす前に、その芽を摘み取りたいと考えている。そのために、その生物兵器に攻撃されている時に、それらを培養し、展開することができる病原体を調査している。

これらの細菌兵士たちは、敵のバクテリアを顕微鏡レベルで探し出し、壊滅させるだろう。



  

2015年08月05日



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cyberattacks-biginning.gif
Epoch Times






 



すでに泥沼化している「米中戦争」

ヤスの備忘録の記事に、セキュリティー専門会社による、サイバー攻撃の実態をリアルタイムで表示する「ノース( NORSE )」というサービスのリンクが貼られていました。

上のリンクで表示されるページの右上にある「 LIVE ATTACKS 」(サイバー攻撃中継)というボタンをクリックすると、リアルタイムのサイバー攻撃の状態をうかがうことができます。

下の動画のような感じのものです。




このリアルタイム表示が気に入って、暇な時にボーッと眺めているのですが、基本的には、これを見ていると、

「アメリカと中国はもう戦争そのものの状態」

であることが強く実感できます。

特に、中国からアメリカへのサイバー攻撃の数は普通ではないです。

時には、下みたいな「大攻撃」も見られます。

cyber-us-china.gif
・NORSE


この「アメリカ中国サイバー戦争」が、今後さらに激烈になっていくことも最近の流れから予想できるところでもあります。

アメリカ政府は、先日、史上最大規模のハッカー被害に遭っていますが、それに対しての報復を最近決めたようなんですね。


米政府職員の情報流出、新たに2150万人 史上最大規模
日本経済新聞 2015.07.10

中国系ハッカーの犯行か

米人事管理局は9日、サイバー攻撃で新たに2150万人の政府機関職員や契約業者らの経歴情報が盗まれたと発表した。6月に発覚した連邦政府職員(最大420万人)の個人情報盗難事件とは別だが、同じく中国系ハッカーの犯行とみられる。

史上最大の政府職員の情報流出とみて、人事管理局と連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省は捜査を進める。

流出したのは、現在や過去に政府の職員か契約業者だった1970万人と、180万人の配偶者・同居者らの情報。主に2000年以降の登録申請者が対象とみられる。



これに対して、アメリカ政府は下のようなことを決めたのだそう。


中国によるハッキングにアメリカが報復を決意、サイバー抑止力による「第2の冷戦」到来か
GIGAZINE 2015.08.03

アメリカ政府関係者400万人の個人情報が大量に流出したことを受けて、「アメリカ政府はついに、攻撃元の中国への報復を決意した」とニューヨークタイムズが報じています。これまで攻撃を受け続けてきたアメリカが自ら攻撃力を示すことにより、冷戦期に核抑止力が働いていたのと同じように、サイバー抑止力が働く「第2の冷戦」時代が来るのかもしれません。


これらは、個人情報を盗むとか、そちら方面のハッキングですが、現実的には、現在の「何でもコンピュータ管理されている世界」では、どんなことでもできるということも原則的には事実です。

上に「冷戦」という文字がありますが、昔の冷戦とは違って、「今は、サイバー攻撃でどんなことでも起こせる」という時代になってきている雰囲気も強いです。

たとえば、以前、「スタクスネット」というコンピュータウイルス(ワーム)について何度か記したことがあります。

コンピュータウイルスというよりは、「インフラ破壊ウイルス」といったほうがいいかもしれません。

このスタクスネットは、もちろんサイバー攻撃に適用することができるものですが、どういうことができるかというと、2010年10月01日の AFP の記事の内容を記しておきますと、


Stuxnet 'cyber superweapon' moves to China

AFP の「”スーパーサイバー兵器” スタクスネットの照準が中国に向けられる」より

スタクスネットは工業の中心に位置するような機械を制御するコンピュータに侵入することができるという点で世界中の専門家が恐れている。

攻撃者はポンプやモーターや警報などの重要なシステムの制御を乗っ取ることができるのだ。

技術的には、工場のボイラーを爆発させたり、ガスのパイプラインを破壊したり、あるいは、原子力設備を故障させる原因を発生させることができる。

このウイルスは、給水、石油採掘装置、発電所などで使用されているドイツのメジャー多国籍企業シーメンス社の特定のシステムを標的にする。



そして、さらに高度な能力を持つ「フレーム」というウイルスについても、

地球文明を破壊する威力を持つウイルス「フレーム」が歩き始めた
 2012年06月10日

という記事で、2012年6月7日のロシアの声の報道をご紹介しています。


ロシアの声「カスペルスキー氏:サイバー感染の拡大が世界を脅かしている」より

カスペルスキー氏は、多くの国が、さらに危険な作用を持つフレームと同様のウイルスを作成できる状態にあると述べ、ウイルスの作成費は1億ドルと試算した。そして、サイバー兵器の感染が拡大し、世界中のコンピュータに入り込む恐れがあると述べた。

カスペルスキー氏は、可能性のあるサイバー感染の影響として、全面的なインターネットのブラックアウト(インターネットの停止)と重要なインフラ施設への攻撃の2つのシナリオを描いた。

カスペルスキー氏は、「残念ながら世界にはまだこのような攻撃から完全に身を守る手段がない」と述べ、サイバー脅威に対して防御するには、 Windows や Linux などの有名な OS の使用を止めることだと語った。



こういうことが報道されていたのが3〜5年前ですが、こういう悪意のあるプログラムを実際に「使用」するには、何をおいても「まず、相手のコンピュータやシステムの内部に送り込まなくてはならない」わけで、その準備ができてしまえば、あとは「わりと何でもできる」のではないかと思います。

ウイルスを送り込むことについては、相手がどれだけセキュリティの高そうな機関であっても、「それらを管轄しているのは基本的に、すべて人間である」というところから、時間はかかるかもしれないけれども、プログラムを侵入させることは、それほど難しいことではないということは、今年初めまでに、

銀行から 1200億円にのぼる現金の盗難事件

を引き起こした「カルバナク」( Carbanak )と呼ばれる集団と、その犯行の手口を、

カルバナクの衝撃 : サイバー攻撃での世界の金融システム崩壊が早いか、それともNHKが特集した「預金封鎖」がそれより早いのか
 2015年02月19日

という記事に書いたことがあります。

数カ国の人種から構成される彼らの手口は下のようなものです。


カルバナクの攻撃方法

・ターゲットの銀行の銀行員に、同僚からのメッセージを偽ったメールを送信する。
   ↓
・その銀行員がメール読もうと開いた場合、悪質なプログラムが、銀行員のパソコンにダウンロードされる。
   ↓
・これを起点として、ハッカー集団は銀行のネットワーク内に侵入。
   ↓
・銀行員のパソコンから、送金システムや ATM 処理を行う担当者を探しだす。
   ↓
・ATM の処理担当者が判明した後、ハッカーはその担当者のパソコンに侵入し、遠隔操作できるソフトを不正にインストール。
   ↓
・ATM 担当者がパソコンでどのような操作をしたか、あるいは、どんな文字列を打ち込んだかが、すべてハッカー集団に筒抜け状態に。
   ↓
・送金の手順をハッカー集団が把握。
   ↓
・アメリカや中国の銀行に偽の口座を用意し、その口座へターゲットの銀行から送金。
   ↓
・待機していた人物が、ATM からお金を下ろす。



というもので、かかる時間はともかく、

「こんなに簡単に銀行のシステムに侵入できて、コンピュータを乗っ取り、あらゆる情報を入手できてしまうという現実」

に衝撃を受けたのです。

これは「銀行だから」ということで衝撃を受けたのではないです。
「銀行も突破できるのなら、どんな機関へでも送り込むことができる」ということに気づいた衝撃でした。

つまりは、この事件は、同じ手順で、

どんな設備のコンピュータにも悪質なプログラムを送り込むことが可能

だということを示してしまっているわけで、電力会社でも通信会社でも軍事基地でも、あるいは、今の時代は飛行機から遊園地から何から何までがコンピュータ制御であるわけですが、それらを乗っ取ることも難しくはないということです。

もちろん、原発でも、証券取引所でも、考え得るどんな場所にでも、悪質なプログラムを送り込むことが可能だということです。


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極限までコンピュータ化が進んだ文明は崩壊も一瞬

そして、もしかすると、そういうプログラムがすでに送り込まれていて「スタンバイ状態」になっているところもあるかもしれない・・・というより、かなりの数のそういうものがすでに潜んでいるような気はします。

世界中でたびたび起きる、システム障害や、大規模停電なども、「もしかすると」そういうことも関係していないとも言えないのかもしれない。

2015年7月8日 ニューヨーク証券取引所でシステム障害
ny-stop.jpg
THP


2015年7月8日 ユナイテッド航空でシステム障害

ユナイテッド航空、システム障害で一時運航停止
AFP 2015.07.09

米ユナイテッド航空がコンピューターの故障により一時運航停止となり、朝のラッシュ時の空港は数千人の旅客で混雑した。ユナイテッド航空でこうしたトラブルが起きるのはこの6週間で2度目。



2015年4月1日 トルコ全土で大規模停電
turkey-bo2.jpg
CNN


それに、何というのか、この2年ほどは、飛行機にしても大型船などにしても、こう「変な事故」みたいなものも多いような気もしないでもないです。

あと、最近は「車がハッキングされて、外から運転をコントロールされる」というようなことが簡単になされてしまうことも露呈しています。

つまり、自分で運転しているのに、第三者がその車を暴走させられたりできるということなのです。


ハッカーは遠隔操作で車を暴走させられる
ニューズウィーク 2015.07.23

乗っ取り可能なことが明らかになって、自動車会社も対策に乗り出した

car-hack.jpg

運転中に突然ラジオががなり、ワイパーが暴れてエアコンから冷風が吹き出し、ついにはエンスト......。

ハッカーの手にかかれば、離れたところを走行中の自動車も簡単に乗っ取れることが実証実験で確認された。時速70マイル(時速約112キロ)で高速走行中のジープ・チェロキーを止めることもできたのだ。(略)

英シンクタンク・王立国際問題研究所のサイバーセキュリティの専門家、キャロライン・バイロンによると、車のハッキングはさまざまな犯罪に利用される可能性がある。「事故を起こして、ドライバーを殺害することも可能だ。データを盗むこともできる。車の電子機器に記録されたデータには重要な個人情報が含まれるため、被害も深刻になりかねない」



これは、コンピュータによって電子制御されている乗り物「すべて」に同じような脆弱性がある可能性が存在しているということも示します。

世の中の多くのものがコンピュータ制御になればなるほど、実はこういう危うさが常につきまとうわけで、先ほども書きましたけれど、インフラから通信から乗り物から、何から何までコンピュータ制御されている時代の中で、先ほどの NORSE が示しているように、世界では、サイバー攻撃が「絶え間なく」行われ続けている。

もし仮に何らかの「暴走」や「間違い」が起きた時には、実際の戦争など比較にならないほど、強大な破壊をもたらすはずです。

この点から見ると、私たちの今の社会は、

社会システムの完全崩壊に向かうためにコンピュータ化されていった

という意味では、コンピュータ化もまた「新しい世界」の創造のための破壊の役割を持って、この世に生まれた自然良能なのかもしれません。

ちなみに、日本に対してのサイバー攻撃がどれくらい起きているかというと、2014年 1年間で「 256 億件」です。


2014年の日本へのサイバー攻撃関連通信は前年比倍増
IT pro 2015.02.18

情報通信研究機構(NICT)は2015年2月17日、日本の官公庁・企業に対するサイバー攻撃観測・分析のために運用しているシステム「ニクター」の2014年の集計結果を公表した。サイバー攻撃関連通信は2014年に約256億6000万件で、2013年の約128億8000万件からほぼ倍増した。


単純に計算して、

「日本は、毎日 7000万件以上のサイバー攻撃を受けている」

ということになります。

なんかもうすごい時代ですよね。
むしろワクワクしてきます。

では、冒頭のエポック・タイムズの記事をご紹介します。

中国政府が「アメリカ人のデータベース」を作っている中で、ハッカーたちを支援している可能性などについて書かれています。




Recent Cyberattacks Only the Beginning, as State Hackers Target Data on Americans
Epoch Times 2015.08.03


国家ハッカーたちがアメリカ人のデータを狙う中、最近のサイバー攻撃は単に始まりにすぎない


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▲ 2015年7月8日にシステム障害を起こしたユナイテッド航空。


サイバー攻撃の様相に変化の傾向が現れてきている。最近、数千万人単位のアメリカ人の個人情報がハッキングされたが、これは単なる始まりに過ぎないだろう。国家所属のハッカーたちはそのターゲットを変え始めたのだ。

ごく最近になり、ハッカーたちの行動が、中国軍が知的財産や金銭的な利益のためなどに使用することができるアメリカ人の個人データをターゲットにしていることと関係してきていることがわかった。

セキュリティ・サービスをおこなう「トゥルシールド・セキュリティ社」の代表のエリック・ダヴァンスキー氏は、「私たちは、彼らハッカーのターゲットがパラダイム・シフト(劇的な変化)を起こしていることを見ているのです」と述べる。

最近のハッキング被害の中で目立ったものとしては、 2150万人の米国連邦政府職員従業員の人事管理事務所への攻撃がある。ハッカーたちは、その前に、ヘルスケア企業アンセム社から「 8000万人」のアメリカ人の個人情報を盗んだ。

ダヴァンスキー氏は、「ハッカーたちは、サイバー攻撃の傾向を変えたのです。そして、この攻撃が止まるようには思えません」と語る。

メインターゲットは、連邦政府職員の個人情報で、これが頻繁に使用される可能性が高いと氏は言う。

おそらく、中国政府は、ハッカーたちが、スパイ活動の標的とすることができる人たちの個人情報の、より完全なプロファイルを得るための支援をしている。

以前、情報筋が私たちに、中国共産党は、アメリカ人のデータベースを作っている件について話したことがある。

情報源によれば、中国共産党は中国国内のスパイプログラムと同じソフトウェアを使用しており、ほぼすべての中国の商業サービスと警察や諜報機関からアメリカ人に関しての社会信用システムの情報を収集している。



出現パターン

この中国ハッカーグループの最新の目標は、ユナイテッド航空のサイバー攻撃である可能性が出ている。ブルームバーグは、ハッカーたちが乗客のフライトレコードが含まれている飛行データをハッキングしたことを 7月29日に報じた。

ユナイテッド航空は明らかに攻撃を否定し、「憶測に基づいたものであり、私たちは、皆様の個人情報が安全であることをお客様に保証することができます」と声明を出したが、デヴァンスキー氏は、これらの最近の攻撃のいくつかが中国からおこなわれているという非常に強い可能性を指摘する。

デヴァンスキー氏の会社のシステムは、攻撃が中国からやって来たものだという強力な証拠を持つという。

氏は、最近の攻撃は「同じ方向からやって来ており、同じトロイの木馬(悪質なプログラム)が使われている」と言う。その証拠のいくつかは、氏が指摘し、他のセキュリティ研究者によって発見された。

サイバー攻撃は、「サクラ( Sakula )」として知られる既知の特定の遠隔操作されたトロイの木馬が用いられていた。ハッカーたちは、サクラを用いて、感染したコンピュータのコントロール権を奪取することができるのだ。

トロイの木馬「サクラ」は、ディープ・パンダ( Deep Panda )、公理( Axiom )、およびグループ72( Group 72 )を含む中国のいくつかのハッカーたちのグループによって使用されている。

ハッカーグループ「ディープ・パンダ」は、セキュリティ会社クラウド・ストライクス社によって 2014年11月に確認された。このとき、開示されていないアメリカの防衛請負業者、ヘルスケア企業、政府機関、およびテクノロジー企業のリストが被害に遭ったとストライクス社は報告している。

現在、ターゲットになるデータのタイプについて、新たな懸念が浮上している。

それは、政府職員などだけではなく、コンピュータの前にいる一般のすべてのアメリカ人のデータが狙われている可能性があるのだ。

デヴァンスキー氏は、すでに多くのウェブサイトやインターネット・サービス上で、人々は多くの機密データを保持していることを指摘する。

「私たちは、今、私たちが直面している問題への準備がまったくできていないのです」

そして、

「人々に関する個人情報データを持っているあらゆる組織は、今すぐ、ハッキングから防御でき、反応できる能力をつけなければなりません。今すぐにです」

と述べた。



  

2015年04月09日



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▲ 2015年3月31日のシドニー・モーニング・ヘラルドより。



何となく奇妙な事件が続く中

4月7日に、アメリカの首都ワシントン D.C. で大停電が発生するという出来事がありました。

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▲ 2015年04月08日の FNN「米・ワシントンで大規模停電 国務省定例会見も真っ暗に」より。

停電は、ワシントン近郊、メリーランド州の発電所での不具合が原因で、国土安全保障省は「テロとの関連はない」としている。

ということで、テロではないということですが、翌日、今度は、フランスのTV5モンドという国際テレビ局が、テレビ放送、ウェブサイトなどほとんどのメディアをハッキングされるという出来事が起きました。

ハッキングされたTV5モンドのウェブサイト
je-su-isis.gif

▲ 2015年4月9日のフランス 20minutes より。


下は CNN の記事です。


仏テレビ局、サイバー攻撃で放送不能に ISIS関与か
CNN 2015.04.09

フランスのテレビ放送網TV5モンドは8日夜、大規模なサイバー攻撃を受け、系列の11局で放送ができなくなったと明らかにした。

同局のフェイスブックに掲載されたディレクターのビデオメッセージよれば、系列の11局に加えてTV5モンドのソーシャルメディアとウェブサイトも一時的に制御できなくなった。

被害を免れたモバイル版のサイトで同局は、「イスラム系組織にハッキングされた」と説明している。TV5モンドの一部ソーシャルメディアページには、イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」のロゴが掲載された。



これを本当に ISIS がおこなったかどうかはわからないですが、それより思ったのは、

「テレビ局ってのはそんなに簡単に乗っ取れるものなのか」

ということでした。

また、昨日は、イギリスで「史上最大の被害額」となる可能性のある強盗事件が起きています。

英国で最悪規模の盗難、360億円被害か 宝飾店街の貸金庫
日本経済新聞 2015.04.09

ロンドンの宝飾店街にある貸金庫で、約70の金庫が荒らされ、現金や宝石が大量に盗まれたことが発覚した。警察は被害額を発表していないが、英大衆紙サンは推定2億ポンド(約360億円)との関係者の情報を伝え、英国で最悪規模の盗難事件だと報じた。

この規模の犯罪となると、個人での犯罪というわけではないでしょうが、しかしまあ、360億円という金額は確かに大きいですが、過去に、

カルバナクの衝撃 : サイバー攻撃での世界の金融システム崩壊が早いか、それとも「預金封鎖」がそれより早いのか
 2015年02月19日

という記事でご紹介しました、数カ国のメンバーから構成される「カルバナク」( Carbanak )と呼ばれる集団によるサイバー銀行強盗の被害額は、判明しているものだけで 1200億円です(そして多分、今現在も、国や地域を広げて被害は拡大している気がします)。

Carbanak-02.gif
IB Times


なんだかこう、今回のフランスのテレビ局のハッキングにしても、カルバナクの犯罪にしても、

サイバー犯罪で実行可能な事の数が広がっている気がする。

という気がします。

アメリカの大停電は「攻撃ではない」ということですが、少し前には、

テトラッドの3回目の皆既月食がやってくる中で何だかいろいろとおかしい : トルコとオランダの大停電…
 2015年04月01日

で取り上げましたように、トルコ全土で停電とか、オランダでも大停電が発生していたり、あまり停電とは縁のなさそうな場所で次々と大規模な停電が続いているというのは、「偶然」ということではあっても、考えるところはあります。

そういう中で、ロシアの地政学の専門家が、「アメリカのイエローストーンとサンアンドレアス断層に核爆弾を打ち込む」ことについて言及したというニュースを知りました。

イエローストーンの噴火と、サンアンドレアス断層での地震の「トリガー」として核兵器を使用する概念について述べたという、なかなか激しい内容です。

掲載されたのは、ロシアの VPK ニュースですが、それを冒頭のシドニー・モーニング・ヘラルドが取り上げたのでした。

bricks-survive.gif
ロシア VPK ニュース

今回はシドニー・モーニング・ヘラルドの記事をご紹介します。

ところで、今回の、

・イエローストーン
・サンアンドレアス断層


は、共に In Deep の記事に何度も出てくるものでもあります。
少し振り返ってみたいと思います。




米国二大脅威のイエローストーンとサンアンドレアス断層

昨年 2014年は、イエローストーンに関する「うわさ」が何度も出た年でした。私もその度に記事にしていたような気がしますので、昨年はイエローストーンに関しての記事は多かったと思います。

アメリカを駆け巡るイエローストーンの噴火に関するウワサを当局自らが打ち消した日に思う「世界中が重複災害の星の下にある」事実
 2014年02月07日

イエローストーン国立公園から動物たちが逃げ出している
 2014年04月02日

yellowstone-2014a.gif
Epoch Times

上の記事は、アメリカのエポック・タイムズというメディアの 昨年3月31日の記事ですが、現在はこの記事は存在しません。

エポック・タイムズは、基本的には記事はかなりの長期間掲載され続けるメディアで、1年ほどで記事が消えるということは通常はありませんので、何らかの事情で削除したようです。

まあ、結果的には 2014年はイエローストーンは噴火しませんでしたが(そりゃそうだ)、ただ、アメリカ政府は「イエローストーンの近い噴火をまったく想定していないわけでもない」ということは言えそうで、それは、昨年の記事、

アメリカ政府はイエローストーンが噴火した場合のために、南アフリカ、ブラジル、オーストラリアなどへの「米国人の数百万人規模の大量移住」を要請していた
 2014年05月09日

という記事で、アメリカ政府は、

緊急時の「国外への国民大量移住計画」を策定していた

ことがわかったという記事をご紹介しました。

epoch-2014b.gif
Epoch Times

上の記事もエポック・タイムズのものですが、こちらは今も記事が残っています。

この記事の最初は、

超巨大火山イエローストーンが噴火した場合、アメリカ合衆国の市民数百万人は、ブラジル、オーストラリア、あるいはアルゼンチンでその人生を終えることになる可能性がある。

南アフリカのニューサイト Praag は、イエローストーン噴火の際に、南アフリカに米国人のための仮説住宅を建築するために、南アのアフリカ民族会議は、米国政府から10億ドル(約 1000億円)の資金提供を受けたと報じている。

というもので、仮に、イエローストーンが噴火した時には、被害を受けた地域の米国市民たちが、南アフリカに移住するということをアメリカ政府が政策としておこなっていることを報じたものでした。

イエローストーンは、「もし、噴火すればアメリカの3分の2の地域は人が住めなくなる」という推測もあり、移住計画にも整合性がなくはないです。



サンアンドレアス断層

いっぽうの、サンアンドレアス断層というのは、アメリカの下の部分を走る巨大な断層です。

san-andreas-2015.gif


この場所は、西暦 1700年に、アメリカ大陸の過去数百年の中で最大だと思われるマグニチュード 8.7から 9.2と推定される地震を起こしたと考えられています。

今後、もしこの断層で同じような地震が発生した場合、過去記事、

想定よりはるかに巨大だったことがわかったイエローストーン。そして、サンアンドレアス断層での壊滅的な大地震の警告報道が相次ぐアメリカの未来
 2013年12月13日

に、下のように記したことがあります。


「もし」ですが、仮に現在、また、 1700年と同じようなサンアンドレアス断層の地震が起きた場合、それはもう CBS の報道にあるように「アメリカ西海岸の文明自体が消えてしまう」 というようなことになる可能性はあるようです。

建物が崩壊したり、津波での人的被害はもちろんなのですが、アメリカでは多くの主要なインフラが地下にあり、たとえば、 CBS の記事には、

世界とアメリカの通信をつなぐ光ファイバーの3分の2はサンアンドレアス断層を横断している

アメリカの天然ガスのパイプラインはサンアンドレアス断層を横断している

とあり、このようなことだけでも、「文明が消滅する」というような意味合いは少しわかるような気がします。



今読みますと、やや大げさな書き方かもしれないですが、光ファイバーや天然ガスのパイプラインのことなどを考えますと、ひどく大げさというほどではないかもしれません。

そして、今回の記事に出て来るロシアの地政学の分析官は、

「そこを狙いなさい」

と発言しているのでした。

いろいろな意味で「世も末」ということなのでしょうか。

しかし、私個人は、上のほうに少し出てきました、「サイバー攻撃の対象の可能性が拡大している」ということにも脅威を感じます。

全世界で一斉に停電

だとか、

世界の銀行が一斉シャットダウン

だとか、そういうシステム的なアルマゲドンも「意志」があれば可能な時代になってきているのだなあと感じます。

では、ここから、シドニー・モーニング・ヘラルドの記事をご紹介します。



Russian analyst urges nuclear attack on Yellowstone National Park and San Andreas fault line
Sydney Morning Herald 2015.03.31


ロシアのアナリストは、イエローストーン国立公園とサンアンドレアス断層線上に核攻撃することを促している


ロシアの地政学的アナリストは、米国を攻撃するための最良の方法は、イエローストーンを噴火させる、あるいは、カリフォルニアの海岸線にあるサンアンドレアス断層線での地震を誘発させるために、それらの場所で核兵器を爆発させることだと述べている。

モスクワに拠点を置く「地政学問題アカデミー( Academy of Geopolitical Problems )」の代表のコンスタンチン・シヴコフ( Konstantin Sivkov )氏は、ロシアの貿易新聞である VPK ニュースで、ロシアは軍事兵器を増加させる必要があり、また、ロシアの国境に移動している「西」に対して戦略的であるべきだと主張した。

シヴコフ氏は、米国や英国など多数による軍事同盟 NATO は、ロシアに対しての力を増強しており、その理由は唯一、ロシアと戦うことにあるという陰謀論を持っている。

その問題のために「敵の完全な破壊」を目指すべく、アメリカの脆弱な部分を攻撃することを言う。

「地質学者たちは、スーパーボルケーノであるイエローストーンはいつ噴火を起こしてもおかしくないと考えています。火山活動が増加している兆しがあるのです」

「したがって、イエローストーンの噴火を促すために、比較的小さな爆弾、それはメガトンクラスで十分でしょうが、それにより噴火を促すことができるはずです。イエローストーンの噴火は、米国を壊滅的に破壊するでしょう。それは米国という国が消滅することと同じようなことかもしれません」


Sivkov.jpg

▲ 地政学問題アカデミー代表のコンスタンチン・シヴコフ氏。


シヴコフ氏は、このように語り、続けて以下のように言う。

「地球物理学的な観点から見た米国のもうひとつの脆弱な地域に”サンアンドレアス断層”があります。これは太平洋と北米プレートの間に 1300キロメートルに渡り延びる断層で、この断層上で核兵器の爆発を起こした場合、海岸沿いに大規模な津波のような致命的事象を引き起こすトリガーとさせることができるのです」

そして、シヴコフ氏は、イエローストーンが噴火したり、巨大津波が発生しても、ロシアは、地理的にその影響はあまり受けないと言う。また、ロシアではシベリアなどの海岸沿いに住む人々もいるが、地質が玄武岩なので、同様の攻撃を受けても耐えられるだろうと述べる。

2013年のモスクワ経済フォーラムにおいて、シヴコフ氏は、2020年から 2025年には、ロシアは攻撃のための「不釣り合いな兵器」を備蓄しているかもしれないと述べている。

「こんにちのロシアの状況は、半世紀前よりも悪くなっています」と、シヴコフ氏は述べる。

「弱体化するロシアの経済的可能性と、共産主義思想の”精神的なコア”の喪失、そして、ワルシャワ条約機構(1955年から 1991年まであったソ連を中心とした軍事同盟)のようなヨーロッパの同盟国との大きな連合の欠如などにより、現在のロシアは NATO に完全に対抗することはできのません」

昨年 12月、ロシアの軍事戦略家は、新聞プラウダに対して「ロシアと西側諸国の間の距離の差は拡大している」として、アメリカの究極的な目標は「ロシアを破壊することだ」と述べている。

また、シヴコフ氏は、イラクで 120万人の死を引き起こすなど、さまざまな犯罪をおかしている米国の政治家とエリートたちを非難した。




  

2015年02月16日



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▲ 2015年2月15日のザ・ガーディアン Spy agencies fund climate research in hunt for weather weapon, scientist fears より。






 


年々荒れてくる自然環境を見ながら

現在の日本は比較的安定した気候の場所もある一方で、日本海側とか北海道の多くの地域などでは猛吹雪で大変なことになっていたりします。こちらについては、報道などでも目にする機会がありますけれど、海外でも、特にアメリカとかヨーロッパあたりでは「雪のカオス」の頂点に至っているような光景の地域も多く見られます。

動物好きな方にはちょっと心苦しいものかもしれないですが、スペインのカスティーリャ・レオン州という州では 70年ぶりの豪雪によって、動物たちが次々と雪に埋もれたり、あるいは凍死により死亡し続けているという事態になっています。

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▲ 2015年2月14日のスペイン MARCA より。


現在、雪の下にどのくらいの動物が倒れているのかわからないそうですが、推定では、ウマやシカなどの大型の動物だけで、数千頭ほどが積もった雪の下で死亡しているのでないかとのことです。

この状況の中でも耐えて生きている動物たちもいるようですが、写真を見てみますと、これ以上はどうにもならない極限の状態のようにも見えます。

ほとんど全身が雪に埋もれそうになりながら移動する馬
horse-spain-01.jpg
MARCA


アメリカも北東部などを中心に激しい雪が降いているようですが、そのレベルも次第に「観測史上最大」に近づいています。

下はボストンの降雪量の記録ですが、今シーズンの降雪量はもう少しで観測史上最大に迫る勢いです。

boston-snow-records.gif
Zero Hedge

観測史上最大の降雪記録まで、あと 40センチほどで、しかも、今後も寒波は続く見込みのようですので、この冬のボストンと、その周辺地域は観測史上最大の降雪記録となる可能性が出ています。


これらのことにふれましたのは、あまりにも当たり前のことで恐縮なのですが、「極端に荒れた天候は人間生活に大きなダメージを与える」ということを前提として書きたかった次第です。

そんな中で、冒頭の「アメリカの諜報機関が気象研究に資金提供をしていることと気象兵器の関係」についての記事を見ましたので、ご紹介しようと思いました。

私個人は、地球の環境を根本的に支配できるのは「地球と宇宙(太陽や宇宙線なども含めて)だけ」と思っている人で、ある程度の気候操作(もともと雨の降りやすいところにもっと雨を降らせるなど)はわりと簡単にできると思いますが、「兵器」レベルとなりますと、どうなんだろうと思う部分はあります。

もちろん、様々な自然災害に対しての「気象(環境)兵器説」は根強いものがあり、それなりの根拠はあるものなのかもしれないですが、HAARP を含めて、私の頭では今まで理解できたものがないだけの話かもしれません。

ちなみに、仮に「気象兵器」や「環境兵器」といったものが使われたとする場合、その特徴は、今回ご紹介するガーディアンの報道の中に出てくる CIA のコンサルタントだと名乗る人物が、

「仮に、我々(アメリカ)が他国の気候をコントロールすることを望んだ場合、他国に気づかれる可能性はあるでしょうか」

と科学者に質問をしていたりしていまして、つまり、通常の兵器と比べて、「誰がおこなったかが非常にわかりにくい側面がある」のが気象兵器の特徴かもしれません。そういう意味では、サイバー戦などとも似て、「開発できるものなら開発したい」と考えることは理解できます。




1978年に国際条約で禁止

気象や環境を武器に用いた話としましては、昨年の記事、

1975年のジュネーブ軍縮会議で米ソが発表した「人工洪水攻撃、人工地震攻撃、極地の氷の融解攻撃、オゾン層破壊攻撃の禁止」の新聞記事を見て…
 2014年02月19日

の中で、1975年8月23日のジュネーブ軍縮会議の内容を報道したオーストラリアの新聞をご紹介したことがあります。

1975年8月23日のキャンベラ・タイムズ紙より
weather-weapon-1975.gif
The Canberra Times Saturday 23 August 1975

このオーストラリアの新聞の記事は大まかには下のようなものでした。


米国とソ連 気象戦争を禁止する計画

アメリカ合衆国とソビエト連邦は、8月23日の 30カ国によるジュネーブ軍縮会議において、戦争の武器としての人工津波や人工地震などのような違法な手段による脅威に関しての条約案を発表した。

今回の条約で禁止される人工津波や地震以外の技術としては、氷冠を融解させることや川の方向を変えることによって沿岸諸国に洪水を発生させることが含まれる。さらに、意図的に致死量の紫外線を人々に曝露させるために上層大気中のオゾン層を破壊する技術が含まれている。



というものでしたが、このジュネーブ会議では、そのような技術を 1975年当時に米ソ共に持っていたのかどうかはともかくとして、研究開発を含めて、

・人工津波と人工地震
・氷冠を融解させて沿岸諸国を水没させる
・上層大気中のオゾン層を破壊して、人々に致死量の紫外線を曝露


などが禁止されたということになっています。

今回調べて知ったのですが、この 1975年の時点では、環境を用いる兵器全部が禁止されたわけではなく、そのような兵器が全面的に禁止となるのは、1978年に発効した国際条約によってだったようです。

その条約は、日本語にすると、ものすごい長い条約名ですが、「環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約」で、下のようなものです。


環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約 - Wikipedia

1976年12月10日、第31会期国際連合総会決議31/72号で採択され、1978年10月5日に発効した環境保全と軍縮に関する条約。通称、「環境改変兵器禁止条約」ともいう。

「現在あるいは将来開発される技術により自然界の諸現象を故意に変更し(例えば地震や津波を人工的に起したり台風やハリケーンの方向を変える)、これを軍事的敵対的に利用すること」の禁止を目的とする環境保全と軍縮に関する条約。

具体的には「津波、地震、台風の進路変更等を人工的に引き起こして軍事的に利用すること」を禁止する内容となっており、条約を遵守する締約国のとるべき措置や、違反の際の苦情申し立ての手続きを規定する。

ただし、罰則規定はない。また、有効期間は無期限と規定されている。



ということで、この 1978年以来、国際条約の上では、環境を用いた兵器は禁止され、また、その期限は「無期限」となっています。ただし、「罰則はない条約」でもあります。

この条約にあるような、

> 地震や津波を人工的に起したり台風やハリケーンの方向を変える

ということについて、たとえば今回の記事のあるように、仮に現在のアメリカのいくつかの諜報機関と政府機関(記事では、CIA に加えて、 NASA 、 NOAA など)が、気象のコントロールを研究しているのだとすれば、その歴史は数十年に及ぶわけで、そして「研究は今なお途上」ということも言えそうで、1960年代からアメリカが続けている気象コントロール・プロジェクトも、それほど大きく進展はしていない可能性もありそうです。

そもそも、気候や気象に関しては、(少なくとも公表されている科学の世界では)たとえば、雲はどうして作られるのかといった根本的なことについてもまだあまりわかっていない部分が多いです。

(参考記事:銀河からの宇宙線が直接地球の天候を変化させている : デンマーク工科大学での実験で確定しつつある宇宙線と雲の関係


そういう中で、根本原理がわからないまま、気象を操作するといっても、表面的なもの以上に進むのは難しいような気はします。とはいっても、簡単な気象操作なら過去のアメリカでも成功していた気象コントロール・プロジェクトはあります。




ポパイ作戦とストームフューリー計画

アメリカの過去の気象コントロール・プロジェクトで有名なものは、ベトナム戦争で敵軍の土地に雨を降らせ続ける(敵陣地の雨期を長引かせる)ための「ポパイ作戦」と、1960年代初頭からハリケーンの威力を弱めることを目的としておこなわれた「ストームフューリー計画」があります。

ストームフューリー計画はアメリカ合衆国政府の公式のプロジェクトで、ポパイ作戦は米軍の極秘行動でした。


それぞれ、記載されているページから抜粋しておきます。


ポパイ作戦 - Wikipedia

ポパイ作戦(Operation Popeye)は、アメリカ合衆国がベトナム戦争期の1967年5月20日から1972年7月5日にかけて東南アジアで行った、極秘の気象操作計画。

合衆国政府の戦況を有利に進めるため、人工降雨により、ホーチミン・ルート地域のみならず、タイからカンボジア、ラオスの雨季を長引かせるものであった。ヨウ化銀とヨウ化鉛とで雲を発生させ、対象地域において平均30日間から45日間雨季を長引かせた。



ポパイ作戦を実施中の米軍(正確な場所日時は不明)
operation-popeye.jpg
▲ 攻撃対象の地域で洪水が発生しているのがわかります。 Dr Prem より。



ストームフューリー・プロジェクト( Project Stormfury - Wikipedia 翻訳)

ストームフューリー・プロジェクトは、ハリケーンを人為的にコントロールしようという実験。ハリケーン上空に向けて航空機を飛ばし、ヨウ化銀を大気中に散布することによって熱帯低気圧を弱体化させようとする試みであった。

ヨウ化銀を種に見立てて散布することから「種まき」とも呼ばれ、1962年から1983年までアメリカ合衆国政府の公式プロジェクトとして行われた。

後にこの「種まき」が無駄であることが判明し、1971年に最後のハリケーン操作が行われた後は実験は行われず、1983年にプロジェクトは公式に終了した。



ベトナム戦争でのポパイ作戦のほうは、ある程度の成功を収めたようですが、この「極秘作戦」のポパイ作戦が 1972年7月のニューヨーク・タイムズ紙でスクープされた後、アメリカの議員たちから、気象兵器の禁止が呼びかけられ、1975年の部分的環境兵器の禁止から 1978年の環境兵器の完全禁止という流れとなったようです。

そして、ここから今回の記事です。

アメリカの CIA を含む政府機関が「気象兵器の開発のために」かどうかはわからなくとも、「気象研究に資金を供出している」ということは事実です。しかも、日本円で数千万円などの単位での資金を提供し続けているということは、政府機関の真意はわからなくとも、何らかの手段として、気候を利用したいという意志はあるのだとは思います。

果たして、人間は「地球の気候と環境の支配者」になれるものなのかどうか。




Spy agencies fund climate research in hunt for weather weapon, scientist fears
the guardian 2015.02.15


諜報機関が気象兵器獲得のために気候研究に資金を提供していると懸念する科学者


米国の気象専門家アラン・ロボック( Alan Robock )氏は、気候研究の資金が諜報機関によって供出されている中で、気候の変化を自在にコントロールできる技術を持つ者が出現するかもしれないと懸念を高めている。

今、米国の上級科学者たちは、アメリカの数々の諜報機関が気候研究に対して資金を提供していることについて懸念を表明し始めている。その懸念は、アラン氏と同じ、それらの新しいテクノロジーが、気候兵器として使用される可能性があることについてだ。

米国ラトガーズ大学の気候科学者であるアラン・ロボック氏は、世界の気候を変化させる方法を探るというラジカルな取り組みに対して、秘密主義のアメリカ政府の各機関はその内容についてオープンにすべきだと呼びかけている。

これまで、気候変動に関する政府間パネル( IPCC )の報告書作成に貢献してきたロボック氏は、巨大な火山噴火の中で成層圏のエアロゾルがどのように地球を寒冷化に導くかということをコンピュータ・モデルを用いて研究している。

しかし、彼は、そのように気候を変える技術を支配できるかもしれない者の存在についての懸念を持っていることを米国科学振興協会に語った

先週、全米科学アカデミーは、気候変動への取り組みへの異なるアプローチからの2つの報告書を公表した。ひとつは、大気から二酸化炭素を除去するための手段に焦点を当て、もうひとつは、雲を変化させる方法と、地球表面が今よりもさらに宇宙空間に対して太陽光線を反射させるための方法についてだ。

報告書は、小規模な研究ブロジェクトが必要とされていたこと、そして、非常に激しい気候変動の抑制のために炭素排出量を削減することは有効だが、その技術は準備の段階には程遠いことなどを結論付けている。

この報告書の研究には 60万ドル(約 7,000万円)がかかっているが、その一部の資金は、いくつかのアメリカの諜報機関からのものだった。

しかし、研究に関わったロボック氏によれば、 アメリカ中央情報局( CIA )からも、他の諜報機関からも、気象研究に関心を持つ理由や資金を提出する理由についての明確な説明がないという。

ロボック氏は述べる。

「 CIA はこの全米アカデミーの研究報告に対しての主要な資金提供者でした。それだけに、私は本当に心配なのです。誰かが気候を支配しようと試みている」

CIA 以外の資金提供者には、アメリカ航空宇宙局( NASA )、米国エネルギー省、アメリカ海洋大気庁( NOAA )などが含まれていた。

CIA は、2009年に「気候変動と国家安全保障センター( Center on Climate Change and National Security )」を設立したが、これは差し迫ったテロの懸念への対策の邪魔になるとして、一部の共和党員から激しい糾弾を浴びた。

センターは 2012年に閉鎖された。

しかし、それでも、専用の部署からではなくとも、気候変動がもたらす人道的結果とアメリカ経済への影響への監視を続けるだろうと諜報機関は語っている。

ロボック氏は3年前に、「 CIA のコンサルタント」だという二人の男性から電話を受けた後に、諜報機関の気候変動科学への関与を疑うようになったという。

彼らは以下のようにロボック氏に話してきた。

「我々は CIA で働いています。あなたにお伺いしたいことがあります。仮に、他国が気候をコントロールしていた場合、それを検出することは可能でしょうか。あるいは、仮に、我々(アメリカ)が他国の気候をコントロールすることを望んだ場合、他国に気づかれる可能性があるでしょうか?」

ロボック氏は以下のように答えた。

「もし、成層圏に気候を変化させるのに十分な大きさの雲を作り出すのであれば、それは人工衛星と地上からの計測器で検出可能です」

なお、気象を用いた兵器は、1978年の「環境改変技術敵対的使用禁止条約( ENMOD )」で禁止されている。

この電話について、どのような感じを持ったかロボック氏に聞くと「怖かった」という。

「私は CIA がおこなっていた他の多くのことも知りましたが、それらはルール(条約)に従っていないものでした。私の税金は何というところに使われているのか、と思いましたよ」

当紙はこの件について CIA にもコメントを求めたが、現時点では回答は得られていない。

環境改変技術敵対的使用禁止条約が発効する前、アメリカは気象改変に手を出していた。 1960年代、プロジェクト・ストーム・フューリー( Project Storm Fury )の研究者たちは、雷雨の破壊力を減少させることに期待をかけ、様々な粒子を雷雨にばらまいた。

同様のプロセスは、ベトナム戦争においても採用された。

北ベトナム軍の主要な供給ルートであるホーチミン・ルートの上に雲を作り、雨を降らせ続けることによって、北ベトナム兵士たちの歩く道を泥まみれにし続けた。

ロボック氏は、「気象を変化させる研究は、オープンになされるべきだと思います。国際的にそうであるべきです。そうでなければ、これらの技術が敵対的な目的のために使われることになってしまう」と述べた。




  

2015年01月14日



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タイトルの「第三次世界大戦が侮辱画から始まるとは誰が想像しえたか」というフレーズは、最近、ネット上の掲示板で見かけた日本語の書き込みです。

世界中で似たような想いを持つ人たちは多いらしく、どちらかというと陰謀系の英語サイトでそのような主張のサイトを数多く見かけます。

ww3-top.gif
Story Leak

私は、上の記事を少し読んで、下のような手紙が存在している(と言われている)ことを知りました。内容が私にはなかなか難解でして、正確ではないでしょうが、おおよその内容ということでお読み下されば幸いです。






 





Albert Pike and Three World Wars
Three World Wars ThreeWorldWars

南北戦争時の南部連合将軍アルバート・パイクが 1871年8月15日に書いたとされる手紙の「第三次世界大戦」に関しての記述


Albert-Pike-33.jpg第三次世界大戦は、政治的シオニストとイスラム世界の指導者たちとの間で、「エージェント」と「イルミナティ」によって引き起こされる両者の意見の相違を利用することによって助長されなければならない。

戦争はイスラム(アラビア世界のムスリム)と、政治的シオニズム(イスラエル)が相互に破壊し合うような方法で行われなければならない。

一方、他の国家においては、この問題に関しての分割は、完全に物質的で、道徳的で精神的で、そして経済的な疲弊などを焦点として戦うことに制約される……。私たちは、無神論者と無政府主義者(アナーキスト)たちを解放してやる。

そして、私たちは、無神論が野蛮と最たる流血の混乱の起源であり、明らかに国家に恐ろしい社会的大変動を引き起こすものだと人々を扇動しなければならない。

次に、そこら中にいる市民たちに、世界の少数派の革命家たちから市民各々が自らで守ることを義務づけることによって、市民たちは文明の破壊者たちを駆逐するだろう。

そして、群衆はその時に、何の指示も方向性も示さず、観念的な心配をするだけの理神論のキリスト教に幻滅を感じるだろう。しかし、崇拝を描き出す場所を知らなくとも、教義の普遍的顕現を通じて、ルシファーの真の光を受け取ることが、公共の視点にもたらされるだろう。

この徴候は一般市民たちの反動的な動きの結果として現れる。

そして、キリスト教と無神論の両方を破壊する動きに続くだろう。共に征服され、この世から消滅するのだ。





ここまでです。

上の写真のアルバート・パイクという人は、Wikipedia によりますと、

アルバート・パイク( 1809年 - 1891年)は、南北戦争時の南部連合の将軍。

秘密結社フリーメイソンに所属していたと言われている。「メイソンの黒い教皇」とも呼ばれている。古代や東洋の神秘主義を研究して、構成員を増やした。

また1871年、イタリアのフリーメイソンのジュゼッペ・マッツィーニ(イタリア建国の父)に送った手紙には、第一次世界大戦と第二次世界大戦、更に第三次世界大戦についての計画が記されていたという説が陰謀論者の間で広がっている。

という人だとのこと。

冒頭に記しましたのは、Wikipedia の記述にもあります 1871年に、イタリアの建国の父と呼ばれる人に書いた手紙の内容とされているものの中での「第三次世界大戦」の部分です。

上の Wikipedia に、

> 計画が記されていたという説が陰謀論者の間で広がっている。

とありますように、この手紙の内容が正しいものかどうかは多分誰にもわかりません。というか、手紙の存在自体の真偽がまずわかりません。

ただ、このアルバート・パイクという人が、フリーメーソンであることは、上に載せました写真で、フリーメーソンの正装をしていますので、そうだったのだと思われます。

というか、この人は、「トップか、それに準じた地位の人」だったのでは?

フリーメーソンは 33階級となっていて、そのトップが「最高大総監」という名の役職だったと記憶していますが、写真では、胸に「 33 」の数

そして、フリーメーソン - Wikipedia で、「最終階級の最も偉大な監察官」の装飾品だという、双頭の鷲のシンボルをいくつか付けています。

pike-03.gif

なお、Wikipedia によれば、 33階級(最高大総監)は功労者に与えられる名誉階級だそうですので、トップかどうかはわからなくても、かなりの高位にいたと考えられます。

それにしても、フリーメーソンの教義はよく知らないですけれど、

「無神論者とキリスト教の双方を消滅させる」

というようなことを書いているというのは、残るは「あちら」ですかね。




誰が扇動し、誰が何に向かって扇動されているのか

真偽はわからないながらも、この人が書いたとされるこの手紙の内容には、たとえば、

戦争はイスラムと、政治的シオニズムが相互に破壊し合うような方法で行われなければならない。

とか、

そこら中にいる市民たちに、世界の少数派の革命家たちから市民おのおのが自らで守ることを義務づけることによって、市民たちは、文明の破壊者たちを駆逐するだろう。

というのは、先日のパリの襲撃事件と、それ以降の「数百万人の」フランス国民と世界の動きを思い出させるところです。

もちろん、先日のパリの事件の本当の実行者の背景はわからないままですが、911と同様に、形としては「イスラム 対 西洋社会」というようなことになっているように見えます。

そして、その後がまた……。

銃撃された仏紙、最新号表紙にムハンマド風刺画
AFP 2015.01.13

先週、仏パリにある本社がイスラム過激派の男らに銃撃された仏風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)が、14日に発行予定の銃撃後初となる最新号の表紙で、「すべては許される」とのメッセージの下で「私はシャルリー」と書かれたカードを掲げながら涙を流すイスラム教の預言者ムハンマドを描いた風刺画を掲載することが分かった。

同紙は、発行に先立ち表紙をメディアに公開。

「生存者号」と銘打ったこの特別号の発行部数は300万部で、諸外国から引き合いがあったことから16言語に翻訳され、25か国で発売される予定。


と、またも、ムハンマドの風刺画を載せて発行するようなのです。

それにしても、「発行部数 300万部」に対して、どう言えばいいのか。

たとえば、世界で最も売れている雑誌は、アメリカの英字ビジネス誌フォーチューンですが、これの発行部数が 100万部。

フランス人はデモ行進に 370万人参加していたわけですから、300万部は、さばける部数なのでしょうけれど、通常のシャルリー・エブドの発行数は、 Wikipedia によれば、4万5000部とのこと。

それが今回は 300万部と、数十倍近い増刷となるようです。

しかも、上に「 16言語に翻訳され、25か国で発売される」とありますが、時事通信によりますと、

> アラビア語とトルコ語版も作成すると発表した。

ときたものです。

挑発してどうする・・・。

「追悼」は(彼らにとっては)必要かもしれなくとも、「挑発」が必要とは思えません。
別の形の風刺画で十分に追悼の気持ちは表現できるはず。

パリの襲撃事件のことは、先日の、

満開する軍事カオス:サウジアラビアの大雪報道から辿り着いたタイ軍による「子どもたちへの武器開放日」。そして世界的「扇動」の始まりの予兆
 2015年01月12日

でも少し書きましたけれど、フランス側がさらに強い対応をとると、相手(基本的には相手は不明ですが、一応、「イスラム教のジハード主義関係者」と、バーチャルな仮定をしておきます)もさらに強い対応をとってくることは明らかなはずです。

上の記事に、作家の山本七平さんの 1974年の著作『ある異常体験者の偏見』から、「扇動の方法」について、

原則は非常に簡単で、まず一種の集団ヒステリーを起こさせ、そのヒステリーで人びとを盲目にさせ、同時にそのヒステリーから生ずるエネルギーが、ある対象に向かうように誘導するのである。

という部分を抜粋していますが、今、フランス国民(の一部)や、ある種の人々がこの状態( 911の後のアメリカ国民の一部とある種の人々もそうでした)の中にあることは間違いなく、そこに、フリーメーソン最高位くらいだったアルバート・パイクが書いたとされる、

そして、私たちは、無神論が野蛮と最たる流血の混乱の起源であり、明らかに国家に恐ろしい社会的大変動を引き起こすものだと人々を扇動しなければならない。

の「無神論」を「イスラム教過激派」などに置き換えれば、そういう状態にさえ入りつつあるかのようにも見えます。

そもそも、フランスの首相自身が、国会で下のようなことを述べています。

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▲ 2015年1月14日の毎日新聞 仏首相:「テロとの戦争に入った」…治安強化を表明 より。


今、全世界で起きている「女性や子どもを人間爆弾にしての自爆テロを強要していること」だとか、あるいは、フランスでは、昨年以来、「原子力発電所に『正体不明の無人機』が飛来し続ける」というようなことも起きていて、いろいろと不穏で不安な要素だらけの時に、こういうことを言ったり、風刺画を再度発表したり……。

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▲ 2014年11月10日の記事「フランスの原子力発電所に「正体不明の謎の無人機」が飛来し続ける中、メキシコの原発上空にも謎の無人飛行体が出現」より。


もちろん、今回のような「挑発」とか「扇動」が、そのまま大きな戦争につながるというものではないでしょうけれども、フランス側の挑発的な態度と、そして、「必ず」報復に出るであろう正体のわからない敵との泥沼が、そう簡単に収まるとも思えないのも事実です。

サイバーの世界では「聖戦」が始まってますしね。

フランスでは、数百件のウェブサイトがイスラム主義者を名乗るハッカーたちに乗っ取られ、アメリカ中央軍のツイッターと YouTube のアカウントが「イスラム国」を名乗る組織に乗っ取られたりしています。

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▲ 2015年1月13日の AFP 仏で「サイバー聖戦」相次ぐ、サイト数百件が乗っ取り被害 より。


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▲ 2015年1月13日の NHK 米中央軍に「イスラム国」がハッキング より。


ああ……ダメだ。

この記事を書いていて、さきほどからずっとなんですが、実は今日、「めまい」がひどいのです。




「表現の自由」と「異論を許さない空気」の中で

本当は書きたかったことはもうひとつあって、フランスが口にする「表現の自由」という概念についてなのです。しかし、今はめまいでどうもフラフラでして、書きたいことを全部書くのは無理そうです。

1月13日の THE PAGE の「イスラムを侮蔑する風刺画、どこまで許される?」徳山喜雄という記事の「異論を許さない空気が蔓延」という見出しのセクションに、フランスの歴史人類学者のエマニュエル・トッド氏という方の以下の言葉が載せられています。

「私も言論の自由が民主主義の柱だと考える。だが、ムハンマドやイエスを愚弄し続ける『シャルリー・エブド』のあり方は、不信の時代では、有効ではないと思う。移民の若者がかろうじて手にしたささやかなものに唾を吐きかけるような行為だ。ところがフランスは今、誰もが『私はシャルリーだ』と名乗り、犠牲者たちと共にある」

「私は感情に流されて理性を失いたくない。今、フランスで発言すれば、『テロリストに、くみする』と受けとめられ、袋だたきに遭うだろう。だからフランスでは取材に応じていない。独りぼっちの気分だ」

扇動に巻き込まれない人は、この方のように「独りぽっち」になってしまうわけですが、それでも、これからの時代というか、特に今年と来年は、この方の言う、感情に流されて理性を失いたくない」という考えを保つことは、とても大事なことだと思います


そんなわけで、どうもめまいがひどくて、座って書き続けるのもきつい感じですので、中途半端ですけれど、ここまでとさせていただきます。めまいも数十年の長い付き合いなんですが、時期的に波があるんですよ。

めまいとは関係ないでしょうが、昨日( 1月13日)、Mクラスの太陽フレアが発生して、スペースウェザーの記事によりますと、下の範囲で、ラジオやアマチュア無線の通信が途絶したそうです。

色の付いた部分が影響があった場所で、赤が最も強く影響を受けた地域です。

2015年1月13日の太陽フレアでラジオ電波が途絶えた範囲
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日本もそれなりの影響を受けていたみたいで、もちろん、この太陽フレアとめまいに直接の関係はないでしょうけれど、なにがしかの体調の変化とかは少し関係したかもしれません。

昨日は、うちの奥さまの職場の女性が「今日は、めまいがひどい」と嘆いていたそうですが、そういうような時期なんですかね。

ポールシフトでも起ころうとしているんじゃ(妄想しすぎ)。

皆様も体調のほうお大事にして下さい。
これからの世の中、少しは体力的にも強くないと厳しいかもしれませんですしね。



  

2015年01月12日



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▲ 2015年1月11日のサウジアラビア mz-mz.net より。






 


冒頭の報道は、タイに関するものですが、アラビア語なんですね。

偶然見つけたもので、

「サウジアラビアで大雪が降ったらしい」

という天の声(苦笑)で、ネットでいろいろと検索していましたら、確かに、1月10日頃、サウジアラビアで雪が降っていたのでした。

それも結構な量です。

普通、あまり雪が降らない場所で雪となりますと、子どもたちが大喜びで雪だるまを作ったり雪合戦をするわけですが、サウジアラビアでは主役はオジサンたち……。

サウジの中年紳士が雪と戯れる様子をご覧下さい。

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▲ 2015年1月10日の mz-mz.net より。


上の写真のうち、下の雪だるまなどは、他の地域では、なかなか作られない雪だるまでしょうね。

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論評できないものではありますが、ところで、このサウジアラビアといえば、国王の「ご本名」もなかなかでありまして、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星同様に、多分、日本人でソラで完全に言える人はあまりいないのではないかと思います。

そのご本名。

saudi-oh.jpg
Google

しかし、これでも、まだ略していまして、全名は、アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール・サウード国王となるようです。

外交などで失念した際にはどうするのか? と心配になりますが、アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ - Wikipedia によりますと、

日本では「アブドラ国王」と表記されることが多い。

という姿勢で対処しているようです。

アブドラ国王には5人の奥様がいらっしゃるのですが、第二夫人までのお名前は、それぞれ、ハサ・ビント・アブドゥッラー・ビン・アブドゥッラフマーン・アール・サウードさんと、ハサ・ビント・トラード・アッ=シャアラーンさんという方で、アブドラ国王のお母様は、ファハダ・ビント・アル=アースィー・アッ=シュライムさんという…(もうええわ)。

まあ、このように、国によっては、完全な敬意を表したくとも難しいこともあります。

えーと……話がよくわからなくなっていますが、ああ、そうです、最初はこのアブドラ国王のいらっしゃる「サウジアラビアの雪」の報道を見たことから始まったのでした。

サウジアラビアの雪のニュースを見ていましたら、その横にある「今日のニュース一覧」みたいな欄に、子どもたちが実物らしき武器を構えている写真がありまして、それで、「これは何か」と開いて、訳してみましたら、冒頭の、「タイ軍は子どもたちに武器や軍備装備の使用を許可した」というページに行き着いたわけで、そこには以下のような写真が出ていたのでありました。


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mz-mz.net


他にも、たくさんの写真が掲載されています。

小学生くらいから、下は、どう見ても幼稚園児くらいの男の子や女の子が、実物の対戦車砲や重機関銃とふれている姿は確かにある種の感情を誘います。

「スターシップ・トゥルーパーズの世界かよ」

などとも思いますが、サウジの報道の本文は大体以下のようなものでした。

タイ軍は子どもたちに武器や軍備装備の使用を許可した

これらの画像は一見奇妙で、非倫理的に見えるかもしれないが、現在のタイは、明らかに「何でもあり」の状態になっている。

これらの写真は、タイの「子どもの日」のイベントの写真だ。バンコク南部にあるタイ王国海軍アカデミーで、子どもたち、場合によっては幼稚園児にも機関銃や自動小銃を触れさせ、武器と親しませていると指摘されている。英国デイリーメールが報じた。

タイの子どもの日は毎年恒例の大きなイベントで、議会や軍事機関を含む多くの機関が参加し、国家を維持することの重要性を子どもたちに認識させるイベントとして知られる。

とのことで、どうやらタイの「こどもの日」というのは、愛国主義的な意味合いを持つ祭日のようで、毎年ここまで武器とふれさせているのかどうかはわからないですが、ある程度の恒例行事のようでもあります。

実際、タイでも普通に報道されていました。

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▲ 2015年1月10日のタイ字メディア「タイラット」より。


北朝鮮などでも、小学校や幼稚園の運動会の時などに「軍事要素が折り込まれた競技」がおこなわれることはあるようですが、上のように、どう見ても幼稚園児みたいな子にまで「本物の武器」をさわらせるというのは、アフリカの内戦国などを別にすれば、あまり見たことがない気がします。

北朝鮮の幼稚園の運動会の風景

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Daily Mail

何だかんだ言っても、今のタイは軍事政権であることは事実ですしね。




スターシップ・トゥルーパーズのような世の中へ?

上のほうで「スターシップ・トゥルーパーズかよ」と書きましたが、これは 1959年に書かれた同名小説が、1997年に映画化されもので、私の好きな映画のひとつです(おすすめはしません)。

内容は、スターシップ・トゥルーパーズ - Wikipedia の説明をお借りすれば、

民主主義崩壊後の新政府、地球連邦では軍部を中心とした「ユートピア社会」が築かれていた。社会は清廉で、人種・男女の差別なくまったく平等に活躍しているが、軍歴の有無のみにより峻別され、兵役を経た「市民」は市民権を有し、兵役につかなかった「一般人」にはそれがない。

という社会の中で、別の銀河系の昆虫型宇宙生物の侵略を受け、「虫と人類」との全面戦争が始まるという内容です。

この社会は、軍歴がなければ、どれだけのエリートでも、参政権、出産権などの「市民」としての権利を有さない社会で、そのシステムが地球全体を支配している時代を描いたものでした。

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▲ 映画『スターシップ・トゥルーパーズ』より、地球連邦軍のテレビCMが流れる場面。


映画そのものは「全体主義の賞賛」的な扱いを受け、酷評が多かったのですが、そのような映画にしたことには理由があって、監督のポール・バーホーベンが、幼少時にオランダでナチスの侵略下での生活を経験していて、 Wikipedia によれば、

幼少期を第二次世界大戦下のオランダのハーグで過ごした。その中で、自分達オランダ人の味方であるはずの連合軍がナチスの軍事基地があるハーグを空爆し、死体が道端に転がっているという日常を過ごしている。

ということもあり、全体として「ナチスに対してのパロディ映画」として作られ(具体的には、ナチ党の全国党大会を記録したレニ・リーフェンシュタール監督の 1934年のドキュメンタリー映画「意志の勝利」のパロディ)、そのために、「全体主義の賞賛」的な出来となり、それが批判されたのだとすれば、監督にとっては成功だったのかもしれません。

描写が残酷な映画ですが、それでも、私はこの映画『スターシップ・トゥルーパーズ』は「戦争とそれに関わる社会の本質」を理解するためにはいい映画だと思っています。でも、おすすめはしません。




そして世界はどちらに向かう?

それはともかく、今のご時世・・・。

前回の記事、

シャルリー・エブドは最初の聖戦:1000人の「フランス人イスラム国戦闘員」が過激思想と戦闘スキルを携えて母国に帰還する時
 2015年01月10日

では、アメリカの2人のテロ専門家の言葉を記事にしたニュースをご紹介したのですが、その中に、テロ専門の言葉として、

「テロリズムに対しての国際社会がおこなう独特な行動は、襲われた国だけではなく、民主主義国家が合同して、テロに対して攻勢に出る可能性があることです」

というような部分がありますが、今朝のニュースを見ましたら、まさに「すぐに」その通りの展開となっていることを知ります。

フランス銃撃事件 大規模追悼デモに50カ国首脳が参加へ
FNN 2015.01.11

フランスで起きた新聞社銃撃など、一連の事件。
パリ市内では11日、市民や各国首脳が参加する、大規模な追悼デモ行進が行われる。

日本時間11日夜、大通りをメーンに行進が行われ、17人の犠牲者を追悼し、テロに屈しない姿勢を示す。

50カ国!

そして、テロ専門家は下のような発言もしていました。

「テロリストたちは、フランス政府のイスラム教徒たちへの過剰な反応を望んでいます。フランス国民によるイスラム教徒への排斥運動が起きてほしいとさえ考えています。そうなる方が、フランスのイスラム教徒たちのコミュニティが過激化しやすいからです」

とも述べていました。

そして、昨日のパリは…。

フランス全土で反テロ集会、史上最多の370万人参加
AFP 2015.01.12

フランス各地で11日、テロに反対するデモ行進や集会が行われ、仏国務省によると同国全土で史上最多の370万人が参加した。首都パリ(Paris)では、世界各国の首脳ら数十人が率いるデモ行進などに、約160万人が参加。「自由」や「シャルリー」などと叫びながら街を練り歩いた。

370万人!

これらが過剰な反応なのかどうかということは何も言えないですけれど、記事には、

パリの行進では、フランソワ・オランド仏大統領がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相やパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長を含めた世界の指導者らと腕を組み、歴史的な団結の決意を示した。

とありまして、さながら、スターシップ・トゥルーパーズの「地球連合国家」的なパレードだったのかもしれません。

しかし結局は、これらのことが示すことは、単に、

フランス(あるいはヨーロッパ主要国)で何か起こせば、こんなに全世界で大騒ぎになり、そして、全世界で報道される。

という事実でしかないように思います。


「扇動」・・・という言葉が、ふと頭をよぎります。


ずいぶんと以前ですが、「殺され続ける詩人シナ」という記事の中に、作家の山本七平さんが、自らの太平洋戦争時の軍隊経験などを記した 1974年の著作『ある異常体験者の偏見』から抜粋したことがあります。

そこには、現実の戦争や戦争裁判で繰り広げられた「扇動の方法」が記されています。

その原則について以下のように山本さんは記しています。

原則は非常に簡単で、まず一種の集団ヒステリーを起こさせ、そのヒステリーで人びとを盲目にさせ、同時にそのヒステリーから生ずるエネルギーが、ある対象に向かうように誘導するのである。

これは 9.11 のひとつの例を思い出すだけでもご理解いただけるかと思います。

そして、山本さんは、「 扇動者自身は決して姿を現さない」とした上で、

扇動された者は騒々しいが、扇動の実体とはこれと全く逆で、実に静なる理論なのである。

と記します。

この意味から見れば、パリのデモに参加した 50カ国にも及ぶ各国の首脳たちも、すでに扇動者でも何でもないコマにしか見えないわけですが、上の記事で私は、

確かに扇動された者の騒がしいこと!
扇動する側の見えないこと!

のように書いていまして、今でもそれは思います。

デモにしても、何にしても、その行為そのものはお祭りのように騒がしいですが、その「本当の原因」が何かはまるでわからないし、見えもしない。


何となく「扇動と無縁でいるためには」・・・と考えていまして、ふと、昨日、クレアの、

2015年からの未来を考えるために知っておきたいアメリカ先住民の倫理の智恵
 クレアなひととき 2015年01月11日

に書きました「アメリカ先住民の智恵(資料によっては「アメリカ先住民の倫理規定」)」というものを思い出しました。

作者・時期不明ですが、アメリカでは広く知られているものです。

全部で 20条の「規律」がありまして、すべてに関しては、上のリンクからお読みいただければと思いますが、その中で下のようなものの大切さを思います。




「アメリカ先住民の智恵」より

2. 行き先を見失った人々への寛容さが必要だ。魂を失ってしまった彼らの無知、うぬぼれ、怒り、嫉妬と強欲。あなたは、彼らが道を見いだせるように祈りなさい。

3. 自分自身で自分を探しなさい。他の人々にあなたの行き先を作ることを許してはならない。その道はあなたの道であり、あなたひとりの道だ。他の人々があなたと一緒にその道を歩くことはできても、誰もその道をあなたのために歩くことはできない。

7. 他の人たちの考え、希望、言葉を尊重しなさい。決して、その言葉を遮ったり、笑ったり、無礼な態度で接してはいけない。ひとりひとりのすべての人間が、その人自身の表現を持つ権利がある。

13. 他の人の心を傷つけることを避けなさい。その痛みの毒はあなたにかえってくる。

16. あなたがどのように在るか、あるいはどのように反応するかの意志決定を意識的に行いなさい。あなたの行動のすべてにあなたが責任を持ちなさい。





今は何ひとつ達成されていない・・・未熟というよりは、むしろ「退化した」世の中だと思えて仕方ないですが、ただし、これは、「アメリカ先住民の理想」であり、現在の白人西洋社会には「ずいぶん昔からなかったかもしれない」理想でもあります。

たとえば、シェイクスピアの 1599年の戯曲『ジュリアス・シーザー』には、すでに、「アントニーの詐術」という扇動の方法論が書かれており、西洋社会においては、随分以前から、「行き先を見失った人々への寛容さ」はなかったどころか、「人々に行き先を見失わせる方法論さえ確立していた」ことが漠然とですが、わかります。

それが実践できていたかどうかというのはともかくとして、素晴らしい理念を持っていたアメリカ先住民たちですが、しかし、たとえば、1492年のコロンブスの侵略以降は、急激に彼らも西洋人同様の「争いでの獲得」や「自己主張と自己所有の世界」へと転落していくわけで、現在も世界の多くの国でその価値観の時代が居座っています。

アメリカ先住民の智恵の中に、

ネガティブなエネルギーは、宇宙で増殖して、自分たちにかえってくる

という記述があります。

この数百年間の、あるいは数千年間の「地球社会のネガティブ」が宇宙からかえってくる時には、それはものすごい「巨大な憎悪」としてバックラッシュしてきそうな感じです。

そして、おそらく 2015年から 2016年に、私たちはその「宇宙から返された巨大な憎悪の嵐」の中に立ち尽くさなければならないのかもしれないと覚悟しています。



  

2014年11月25日



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Object-2014E-top.gif
Satflare






 


ロシアの目的不明の衛星「物体 2014-28E 」のその後


少し前の、

2014年の終わりまでに開くはずだったマヤ神官の言う「時間の窓」は開かず、ロシア・ウラルの空では人びとが「天空の門」と呼ぶオレンジの光が炸裂する
 2014年11月19日

という記事の後ろのほうで、ロシアから打ち上げられた「かもしれない」目的不明の衛星「物体 2014-28E (Object 2014-28E)」について少しふれました。

この物体は、最初のうちは下のガーディアンの報道のタイトルのような捉えられ方でした。

28e-guardian.gif
Guradian

すなわち、

・宇宙ゴミなどの破片の可能性
・そもそもロシアのものかどうかわからない


などとなっていて、いろいろと不明だったのですが、その後、ロシアから打ち上げられたこと、それが自ら動力を持つ衛星であることなどが確認され、その軌道も特定されました。

現在では、サテフレア( Satflare )という、人工衛星の軌道を追跡できるサイトでの下のリンクから、この「物体 2014-28E」の軌道を確認できます。

Satflare - COSMOS 2499

冒頭に貼りましたように、北米の西海岸沖の太平洋上空から、ロシア西部などの上空を周回しているようです。

ロシア周辺のほうでの正確な軌道は下のようになります。

object-2.gif


その一方で、中国も昨年7月以来、「目的不明の人口衛星」を次々と宇宙空間に打ち上げています。




昨年から続く中国の「目的不明」の衛星の打ち上げ

つい数日前にも、中国の宇宙開発部署「中国航天科技集団公司」が「快舟二号」という、公称の目的は自然災害観測のための地球観測衛星を打ち上げています。

謎に包まれた中国の快舟ロケット、2号機が打ち上げに成功
Sorae 2014.11.23

kuaizhou-2.jpg中国航天科技集団公司は11月21日、地球観測衛星「快舟二号」を搭載した快舟ロケットの打ち上げに成功した。快舟ロケットは昨年9月25日に初めて打ち上げられ、今回が2機目となるが、その姿や性能は謎に包まれている。

衛星「快舟二号」は、災害観測を目的としているということ以外は、姿かたちや性能などは明らかにされていない。

中国はこの2機だけではなく、昨年の7月にも衛星を打ち上げています。

その頃の米国サイト Space.com は「中国の衛星の謎の行動が専門家たちに抱かせる推測」というタイトルの非常に長い記事をリリースしました。

ch-space.gif

▲ 2013年9月9日の Space.com より。


この記事には、たとえば、下の図のような現在(図は2011年時点)のアメリカと中国の測位観測システム衛星の位置状況についての図が示されています。

us-china-satellite-navigation-1.gif


この図のキャプションには、

中国の新しい衛星攻撃兵器(ASAT)のテストは、地球の中軌道に到達する能力を披露した。一部のアナリストは、これはアメリカの全地球測位システムの航行衛星の配置に対してのリスクを持つと強調するだろう。しかし、中国の測位システムも同じリスクを持つことになる。

と記されています。

このあたりのことについては、衛星攻撃兵器 - Wikipedia に、

2013年現在は、中国としても国際的非難を避けるためにあからさまな衛星攻撃兵器の実験はできず、2010年頃から、弾道弾迎撃ミサイルの実験を行っているが、衛星攻撃兵器の実験も兼ねていると考えられている。

とあり、常に「衛星攻撃」という概念を持ちながら、様々な機器の開発を進めているという面はあるようです。

ちなみに、上の写真の左上にある文字を見ますと、アメリカの方には

US GPS

とあり GPS 衛星だとわかるのですが、中国のほうは

Chinese Beidou

とあります。

「 Beidou ナビゲーション・システムって何だ?」

と思って調べてみますと、Beidou は漢字では「北斗」を意味するようです。それで探してみましたら、北斗 (衛星測位システム) - Wikipedia という項目がありました。

北斗衛星導航系統は中華人民共和国が独自に開発を行なっている衛星測位システムである。2012年12月27日にアジア太平洋地域での運用を開始している。中国はアメリカ合衆国のGPSに依存しない、独自システムの構築にこだわってきた。

第二世代のシステムはコンパスまたは北斗-2として知られ、完成時には35機の衛星で構成される全地球測位システムになる予定。


中国は方位測定システムでも、アメリカから離れた独自のものを構築していることを知りました。

私は衛星測位システムはアメリカの GPS に全世界が頼っているものだと思っていたのですけれど、グローバル・ポジショニング・システム - Wikipedia によりますと、独自の衛星測位システムを開発している国はそれなりにあって、

・ロシア(GLONASS / 2011年から稼働)
・インド(インド地域航法衛星システム/一部稼働)
・日本(準天頂衛星システム / 未完成)


などがその試みをおこなっているようです。

他に欧州連動は「ガリレオ計画」という衛星測位システムを開発しているようですが、予算などで厳しい状態のようです。

確かに、戦争をする場合、今の時代ですと、衛星からの位置の正確な把握は大事でしょうしね。

それが、現時点では、基本的に多くがアメリカの GPS に頼っているわけですから、やはり独自のシステムがほしいという考え方はわかります。

さらに、仮に大国間などの大きな戦争になった場合、

「相手の衛星を破壊する」

ということはかなり重要なミッションにもなってくるのかもしれません。

asat1.jpg
Examiner


そのあたりのことなんかもあって、いろいろと騒がしくなっているのかもしれないですね。

しかし、そういう衛星の破壊とかが宇宙空間で広がりますと、少し前の記事にも載せましたけれど、今でさえ1万2000個もの宇宙ゴミが地球の周りを飛び回っているわけで、これ以上増えると、なんだか良くない感じもしないでもないですが。

Space-debris-Objects-in-o-007.jpg


それはともかくとして、上に書きましたようなことがあるのかどうかはわからないですが、ロシアの謎の物体に関しても、中国の目的不明の衛星にしても、「衛星攻撃兵器」のたぐいなのではないかとする見方が西欧では多く述べられています。

どうにも、私たち一般人にはわからないことがたくさん裏では起きているのかもしれないですけれど、とりあえずは、謎のロシアの物体2014-28Eについてのガーディアンの記事をご紹介します。

記事は比較的軽い感じで書かれていて、兵器の可能性もあるにしても、それほど深刻なものではないのではないだろうかというような推測が書かれています。




What is Object 2014-28E – a Russian military satellite or a piece of unidentified debris?
Guardian 2014.11.18


物体2014-28Eとは何か。それはロシアの軍事衛星? あるいは正体不明の破片?


名称:物体 2014-28E( Object 2014-28E )

年代:不明

外観:不明

目的:不明

申し訳ないが、この「物体 2014-28E」についてはほとんど何もわからないのだ。そして、それを特定することは難しい。

わかっていることといえば、軍事通信衛星を展開する使命の一環として、6ヶ月前にロシアから軌道上に打ち上げられたものだということだ。

最初は破片の一部であると考えられていたが、その後、物体2014-28Eは、軌道を周回しだし、他のロシア宇宙艇を訪問し、そして、ついには先週にはロシアの宇宙艇一機と結合した。

最終的に、この物体はが核戦争への策略の一部になるのだろうか。……いや、実際には今回の出来事に悪人が関わっていると考えることは、誇大妄想である可能性が高い。

しかし、そうでない場合、この物体はたしかに戦争用かもしれないと考えることのできるいくつかの推測がある。

その場合は、これはロシアの対衛星兵器に関するもので、そして、これは今までにないまったく新しい何かなのかもしれない。

まったく新しい何かとは?

たとえば、電気系統をすべて無効にする(映画『007 ゴールデンアイ』に出る)ゴールデンアイ・パルス装置とか? それとも、支配者民族が地球の人口構成の再編を行うための準備として、神経ガスを地球にばらまく装置?

しかし、そのどちらの可能性も低い。

多分、これは兵器のたぐいではなく、宇宙ゴミを収集する目的や、あるいは、衛星の修理や補給の目的などを持っているのではないかと思われる。

しかし、ロシアがこの衛星の打ち上げを公表しなかったことは奇妙には感じる。

アメリカと中国はすでに双方が衛星を攻撃するテクノロジーを持っている。さらに、中国は昨年7月に、やや不審に感じる物体を打ち上げた。

なるほど、そういう部分から見れば、あるいは、これらはすべて、宇宙空間での大規模な戦争への準備としての機器の可能性もあるということだろうか。




  

2014年09月02日



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お釈迦様『大集経』法滅尽品より

buddha-01.jpg

東西南北の国王が互いに戦争をし、侵略を行う。
虚空中に大音声が響き渡り、大地が震える。
悪疾が次から次へと流行する。
太陽と月は光を失い、星の位置が変わる。
白い虹が太陽を貫く凶兆があると、大地は振動し、水は涸れ、不時の暴風が起こる。







 



ロシアに実在する「自動核報復攻撃装置」で思い出すこと

最近、ロシアとウクライナとか、あるいはそれと関係した報道に、やたら「」という言葉が出てくるようになった気がします。

下の記事は 8月 31日の読売新聞の記事の後半部分の抜粋です。


「露は最強の核大国」プーチン氏、若者に語る
読売新聞 2014.08.31

ロシアのプーチン大統領は29日、モスクワ近郊で開いた若者との対話で、ウクライナ政府を支持する欧米諸国に対抗する姿勢を改めて示し、「自国の安全を守るため」として軍事力を強化する方針を強調した。(中略)「ロシアは最強の核大国の一つであり、核の抑止力と戦力を強化する」と述べ、欧米をけん制した。



海外の記事ともなると、下のような直情的な写真を使ったものなども散見します。

putin-threaten-ukraine.gif

▲ 2014年8月31日の Daily Beast より。


最近のこれらのような報道にある、関係者の人々の発言などを見ていて、今年春頃、ロシアの国営テレビのキャスターが自分のニュース番組で、「ロシアは米国を放射能の灰にできる」と述べた、という報道があったことを思い出しました。

ru-tv-3.jpg

▲ 2014年3月17日の AFP 「ロシアは米国を放射能の灰にできる」国営TVキャスターが発言より。


抜粋しますと、下のような記事でした。


国が運営するロシア第1チャンネルのニュースキャスター、ドミトリー・キセリョフ氏は、毎週日曜に放映される自分のニュース番組で、「ロシアは現実的に米国を放射能の灰にする能力を備えた世界でただ1つの国だ」と語った。

キセリョフ氏はまた、「敵の核攻撃を受けた後、われわれの司令部の人員全てとの連絡が途絶えたとしても、システムは自動的に、地下施設や潜水艦からミサイルを正確な方角に発射する」と述べ、ソ連時代に使用されていた自動反撃システムが現在も運用されていることを示唆した。


ということを言っていたそうなのですが、この、

「ソ連時代に使用されていた自動反撃システムが現在も運用されていることを示唆した」

というフレーズを読み返した後、久しぶりに、スタンリー・キューブリック監督の1964年の映画『博士の異常な愛情』の DVD などを深夜見ていました。若い頃からこの映画は数限りないほど見ているのですが、何度見ても新しい面白さを発見します。

ところで、『博士の異常な愛情』と書きましたけれど、実際のタイトルは、 Wikipedia の下にありますように非常に長いタイトルの映画です。

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これは監督が各国版の公開に関して、原題の英語表記の「直訳」以外は認めないところからきたものですが、そのことはともかく、スタンリー・キューブリック監督の作品で、私個人が最も好きな作品でもあります。

そして、この映画は、ただ面白いだけではなく、

相互確証破壊

という概念を軸にして書かれたストーリーを映画化したものなのです。




デッドハンドとドゥームズデイ・デバイス

「相互確証破壊」などというのは、異常に難しい漢字の連なりですが、 Wikipedia の説明では、以下のようになります。


相互確証破壊は、核戦略に関する概念・理論・戦略。

核兵器を保有して対立する2か国のどちらか一方が、相手に対し核兵器を使用した場合、もう一方の国が先制核攻撃を受けても核戦力を生残させ核攻撃による報復を行う。

これにより、一方が核兵器を先制的に使えば、最終的に双方が必ず核兵器により完全に破壊し合うことを互いに確証するものである。



これでも、まだわかりにくいですが、簡単に書きますと、

「やられたら、必ず、やり返す」

という規定がある場合、

「どちらからの先制攻撃であろうと、どちらの国も完全に滅びる


という意味のものです。

上で、ロシアのニュースキャスターが言っていた、

「ソ連時代に使用されていた自動反撃システム」

という概念もこれと関係したものだと思われます。

しかし、これがいわゆる「デッドハンド( Dead Hand / 死者の手)」と呼ばれる、ソ連時代から実在する自動報復システムのことなのかどうかわからないですが、一応、この「デッドハンド」についての説明を抜粋いたしますと、


旧ソビエト連邦およびロシアでは、米国の先制核攻撃により司令部が壊滅した場合に備え、自動的に報復攻撃を行えるよう「Dead Hand(死者の手)」と呼ばれるシステムが稼動している。

これはロシア西部山中の基地に1984年から設置されているもので、ロシアの司令部が壊滅した場合、特殊な通信用ロケットが打ち上げられ、残存している核ミサイルに対し発射信号を送ることで米国に報復するものである。



このデッドハンドは、現在のロシア連邦のひとつ、バシコルトスタン共和国にあるメジゴーリエ市( Mezhgorye )という「閉鎖都市」(外部の者は出入りできない秘密都市)の近郊にあるヤマンタウ山の地中深くに現存するという主張もあります。

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▲ ヤマンタウ山。Secret Bases Russia より。


ロシアの国営テレビのキャスターが言っていたのが、このデッドハンドかどうかわからないと上に書きましたが、その理由は、英語版の Wikipedia によりますと、「現在も稼働しているかどうかは不明」らしいからです。

ただし、2009年の米国ワイアードの「ソビエトの黙示録的な皆殺し装置の内幕」という記事では、その時点で、デッドハンドは存在し、また、自動報復の機能も生きており、さらに「アップグレード」も続けられていると記されていました。

doomsday-machine.gif
・ Wired Inside the Apocalyptic Soviet Doomsday Machine


上のワイアードの記事のタイトルの中に Doomsday Machine とあり、これを私は「皆殺し装置」と書いていますが、この Doomsday という単語の意味は、辞書的には、

最後の審判の日

とか

この世の終わり

を意味する言葉であり、決して「皆殺し」という意味ではないですが、どうしてそうしたのかといいますと、それが、先ほどのスタンリー・キューブリックの『博士の異常な愛情(以下略)』に出てくる、ソ連の自動報復装置である Doomsday Device (ドゥームズデイ・デバイス)の日本語字幕を

「皆殺し装置」

という字幕にした日本語字幕陣のセンスに敬意を表してのものです。

doomsday-device.jpg
・『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』のシーンより。


そして、この『博士の異常な愛情(以下略)』のストーリーは、「相互確証破壊(やられたら相手も滅ぼす自動機能)」が、

機能してしまった

というものなのですね。

相互確証破壊(お互いの国同士)というより「無差別に全世界に死の灰を降らせる装置」が自動で作動してしまうというものでした。

その重いテーマを、キューブリック監督は最上の「喜劇」としての作品に仕上げたのでした(実際に、映画芸術の遺産の保護を目的とする機関「アメリカン・フィルム・インスティチュート」が2000年に選出した「アメリカ喜劇映画ベスト100」において、『博士の異常な愛情』は第3位となっています)。

しかし、このテーマ、映画では喜劇にできても、現実で喜劇にできるかどうかは何とも言えないところです。




「起きなかった」1983年の核戦争の報復攻撃

『博士の異常な愛情(以下略)』に描かれるような相互確証破壊、というか、つまり「偶発的核戦争」に関しては、実は今から 30年ほど前の 1983年に、

起きる寸前までいった

という出来事がありました。

これについては、 スタニスラフ・ペトロフ - Wikipedia に詳しいですので、そちらを読んでいただきたいと思いますが、最初の部分を抜粋いたしますと、


スタニスラフ・ペトロフは、ロシア戦略ロケット軍の元中佐。

1983年9月26日、ソ連軍の標準的な服務規程を逸脱し、監視衛星が発したミサイル攻撃警報を自ら誤警報と断定した。

複数の情報源によると、この決断はアメリカ合衆国に対する偶発的な報復核攻撃を未然に防ぐ上で決定的な役割を果たした。

監視衛星の警報システムに対する調査により、システムは確かに誤動作していたことがその後判明した。以上より彼は核戦争を未然に防ぎ「世界を救った男」と呼ばれることがある。


という出来事でした。

しかし、同じページには、

この事件は冷戦時代に戦略核兵器を扱う軍によって為された幾つかの際どい判断の1つである。

ともあり、その誰かの判断が「少し違っていたら」、自動装置による報復攻撃や、あるいは第三次世界大戦となっていったような「小さな事件」は本当にたくさんあったようです。

ちなみに、「世界を救った男」スタニスラフ・ペトロフがその後、ソ連から受けた仕打ちは、以下のようなものだったようです。


あわや核惨事に至るところをコンピュータシステムの警告を無視して防いだにも関わらず、ペトロフ中佐は彼が核の脅威に対処したやり方を巡って抗命と軍規違反の咎で告発された。

彼は重要度の低い部署に左遷され、やがて早期退役して神経衰弱に陥った。



現在は、日本円で月2万円程度の年金で暮らしているそうです。

もちろん、この話には懐疑論もありますけれど、これが事実か事実ではないかということは別にしても、「起き得る」ことであることもまた明白です。

特に多くの軍事システムがコンピュータ制御により自動化している現在では、(サイバー攻撃や単純なプログラムミスも含めて)以前より危険性は大きくなっているようにも思います。

以前、

アメリカ国防総省の機関がサイバー戦争での自動対応プロジェクト「プランX」構想を発表
 2012年08月23日

という記事で、アメリカで「サイバー戦争の自動報復システム」が着々と構築されているというようなことをご紹介したことがありますけれど、なんとなく、全体的に、このような「自動応答」だとか「自動報復」だとか、そういうようなものは、むしろ増えていっているのかもしれません。

すべてを意図的に進めたいというような陰謀論的な存在があったとしても、その意図を無視するかのように、いつでも確実に存在するのが「ミス」だったり「勘違い」だったりするものでもあります。

今は、いろいろな国がいろいろな緊張を高めたり、非難し合ったり、実際に殺戮がおこなわれていたりしますけれど、それぞれの指導者は「何らかの自信」を持っているかもしれないですが、それが結果として『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』のような「結末」を迎える可能性というのもないではないのだろうなあ、と思います。

今年の秋は何となく戦争や自然災害に対して不安な気分が強いです。


参考までに、映画『博士の異常な愛情(以下略)』で、ソ連大使から「皆殺し装置」の話が出る場面の台詞を記しておきます。場所は、政府と軍部高官が軍事に関しての国家最高機密ランクの会議をするウォールームです。




スタンリー・キューブリック『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964年)より

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ソ連大使  「皆殺し」装置
米国大統領 「皆殺し」装置?
ソ連大使  地球上の生き物を残らず死滅させる兵器です
米国大統領 生き物を残らず?
ソ連大使  それが爆発すると大量の死の灰が生まれ、10ヵ月で地球の表面は月のように死んでしまう
陸軍将軍  そんなバカな事が。どんな死の灰も2週間で安全になる
ソ連大使  コバルト・ソリウムGを知らないな?
陸軍将軍  何だそれは
ソ連大使  その放射能半減期は93年だ。100メガトン級の水爆50個をこれで包めば、その爆発で地球は皆殺しの衣に包まれる。死の雲が地球を取り巻くのだ。放射能が93年も
陸軍将軍  共産国一流のはったりだろうが
米国大統領 どうも分からんね。攻撃されたら爆発させると首相が言ったのか
ソ連大使  違います。正気の人間にはできません。皆殺し装置は自動装置で爆発します
米国大統領 解体すればいい
ソ連大使  それはできません。解体しようとするだけで爆発してしまいます
米国大統領 正気じゃない。なぜそんなものを作ったのだね
ソ連大使  反対もありましたが、結局これが一番経済的だと分かったのです。「皆殺し」計画は軍事費1年分より安上がりなのです。それにアメリカも同じ物を作っているそうではないですか。「皆殺し」格差は困る
米国大統領 そんな計画は承認していない
ソ連大使  ニューヨーク・タイムズで読んだ
米国大統領 ストレンジラブ博士! 本当にそんなものを作っているのか
ラブ博士  大統領。兵器開発局の長官として、私に与えられた権限に基づき、昨年、ブランド社へ同種の兵器研究を依頼しました。その報告による私の結論では、これは戦争抑止に役立ちません。理由は今や皆さんにも明白でしょう。
米国大統領 では、ソ連には実在すると思うかね
ラブ博士  その製作に必要な技術は極めて簡単で、弱小な核保有国にさえ可能です。作ろうという意志さえあれば
米国大統領 しかし、起動が完全自動で、しかも解体不能なんて可能なのかね
ラブ博士  それは可能だし、また絶対に必要な機能です。それがこの装置の第一条件ですから。抑止力とは敵に我々を襲う事を恐れさせる技術です。ですから、その爆発を完全に機械に任せれば、人間的な失敗は排除できる。「皆殺し」装置の恐るべき点は、その簡単さと、完全に非情な正確さにあります
米国大統領 しかし、どのように自動的に爆発させる
ラブ博士  それは驚くほど簡単です。地下に置く限り、どんな大きな爆弾でもできる。それが完成したら、巨大コンピュータ群に接続する。次に爆発させるべき状況を分析し、明確かつ詳細に定義の上で、プログラムに組み、保存させる。・・・しかし、 「皆殺し」装置の威力を発揮させるためには、その存在を公表しなければならない。なぜ黙っていた!
ソ連大使  月曜の党大会で発表の予定だった。首相は人を驚かすのが趣味だ



  

2014年03月01日



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▲ ウクライナの 500フリヴニャ紙幣の裏面。







 


地獄の様相だったウクライナの暴動

最近政権が崩壊するまで続いていたウクライナの暴動は、その政治的な云々や経済的な損失のほうではなく、「見た目」として、ここ数年で最も過激なものでした。

実は1月はわりと毎日のようにウクライナの報道を見ていたのですが、どうして、見た目が過激だったかというと、「」なんですね。

デモ隊は、警察隊や治安部隊に対抗するために、タイヤに次々と火をつけて、その火の中から相手に投石や銃撃などの攻撃を繰り返していて、その光景は文字通りの「地獄」を思わせるものでした。

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▲ 2014年1月25日のニューヨーク・タイムズより。



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▲ 2014年1月24日の Boston.com より。


デモ隊も警官隊も、次々と衣服に火が燃え移り、中には自分に火が燃え移ったことに気づかずに投石を続けている人たちもいました。

燃え尽きた後には下のように廃墟化した街が広がります。

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▲ 2014年1月24日の Boston.com より。


上の写真では、右上にクリスマスツリーが見えます。

その横に倒れているピンク色をした人のような姿をしたものは、ディスプレー用のマネキンですので、ここは元はショッピング街だったのかもしれません。


現在もなお、ウクライナはとても緊迫しているようですが、これらのこととは別に私は過去記事に記した「あること」を思い出しました。ウクライナがこんなことになるとは思っていなかった昨年の12月の下の記事です。

とても驚いた「中国の猫の王様」の事実。そして、そこから見える「私たちの毎日はとても馬鹿にされているのかもしれない」と思わせる今の世界
 2013年12月06日

基本的には、中国の人民元に刻まれている一種ふざけたデザインの話でした。

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▲ 上記の記事より。




紙幣に「ピロビデンスの目」が描かれた国で

その記事で、他の国の紙幣もいくつかご紹介しているのですが、そこで、ウクライナの紙幣もご紹介しています。ウクライナで 2006年まで使われていた 500フリヴニャ紙幣です。

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▲ ウクライナの 500フリヴニャ紙幣。


単に目のデザインがしてあるというだけなんですが、これはドル紙幣などにも見られる「シンボル」として語られることの多い図柄でもあります。

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▲ 米国の1ドル紙幣。


この「目のシンボル」は、直接的には、秘密結社(あるいは友愛結社)のフリーメーソンのシンボルであることが広く知られています。このことについては、 Wikipedia にも、「フリーメイソンリーが用いるシンボルの一つ、プロビデンスの目」として下の図柄が紹介されています。

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また、下は、1796年に描かれた絵で、ボストンのユニオン・ロッジにあるもの。

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Richard Cassaro.com より。

上に目があり、その目の両サイドに「太陽と月」があります。この「太陽と月が同じ立場として並ぶ」という構図は、エメラルド・タブレットなどにも見られる、わりと古代からの普遍的なデザインではあるようです。

エメラルド・タブレット

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▲ 記事「エメラルド・タブレット 完全版(1)」より。



それにしても、「プロビデンスの目」と言われても私は何のことかわかりませんでしたので、こちらも Wikipedia を見てみますと、


プロビデンスの目とは、目を描いた意匠。プロビデンスはキリスト教の摂理という意味で、神の全能の目を意味する。

光背や、三位一体の象徴である三角形としばしば組み合わせて用いられる。




とのこと。

そういうこともあり、この「目のシンボル」自体は、たまにいわれる「悪魔的」なものとは一応違うというような歴史的な背景はありそうで、そのためか、わりと気楽にこのシンボルは使われています。



プロビデンスの目があしらわれたデザイン

ドイツのアーヘン大聖堂(文化遺産)

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アーヘン大聖堂 - Wikipedia より。



ポーランドのザモシチ・カトリック教会

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Satanism in Orthodox Catholicism より。



アメリカ合衆国の国章の裏面

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Great Seal of the United States より。


なお、アメリカは昔から国章にプロビデンスの目を好んで使っていたようで、下のは 1782年にデザインされたものです。

1782年のアメリカ合衆国の国章

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The Ancient Geometric Formula より。



米国ユタ州ソルトレイクシティのモルモン教寺院の入り口

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Secrets In Plain Sight より。


世界中の様々なもののデザインに、この「プロビデンスの目」が、国家、宗教の宗派などと関係なく、幅広く使われています。ですので、まあ、ウクライナの紙幣に描かれていたとしても、それほど奇異なことではないのかもしれませんけれど。


ちなみに、裏側にはプロビデンスの目が描かれているウクライナの 500フリヴニャ紙幣の表はどんなデザインかと申しますと、このようなものです。

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ふと、「ところで、この人物は誰なのだろう」と思いまして、調べてみましたら、この方は、ウクライナが誇る 18世紀の哲学者だそうです。

フルィホーリイ・スコヴォロダgregory-pans.gif )という人で、Wikipedia によりますと、


フルィホーリイ・スコヴォロダ(1722年12月3日 - 1794年11月9日)は、近世ウクライナの哲学者、文人、詩人。「ウクライナのソクラテス」と呼ばれる。ロシア帝国初の哲学者。



という人だそうです。

この人の哲学というのか思想はなかなか興味深いものだったようで、上記の Wikipedia には下のような記述があります。


スコヴォロダによれば、すべてのものは可視天性と不可視天性という2つ天性を有しているという。前者は人の目で見ることができるものの実存であるが、後者は人の目から隠されたものの本質である。

その本質を把握できる人間は、知欲のある者、人情の厚い者、現世と実在にとらわれない者のみである。そのような人間は、ものの本質を把握した上で、初めてものを正確に理解できるという。





また、著作も多数あるのですが、中には、『聖ミカエルと悪魔との論争』(1783年‐1788年)とか、『問答:蛇の大洪水』(1788年‐1791年)というような、ちょっと内容を知りたいようなタイトルの本もありました。


ちなみに、このスコヴォロダという人の墓石には、彼の遺言に従って


「現世が私を捕らえようとしたが、捕らえることはできなかった」


と刻まれているのだそう。

ちょっとカッコイイ台詞なので、私もお墓に入るような際には流用させていただこうかと。まあしかし、実は私は「お墓」という制度自体にもあまり好感は持っていないので、自分自身はそういうところに入りたくないのですけれどもね・・・。





また思い出す『薔薇十字の秘密のシンボル』のこと

ところで、「プロビデンスの目」を見ていて、ふと、「薔薇十字の秘密のシンボル」という書のことを思い出しました。

過去記事の、

エメラルドタブレット(2): 1785年の「薔薇十字の秘密のシンボル」の冒頭に出てくる数字
 2012年03月09日

などでご紹介したことがあります。

この「薔薇十字の秘密のシンボル」は 1785年から 1788年にかけて配布されたもので、後に、神秘思想家のルドルフ・シュタイナーが「この書は、封印されてきた薔薇十字の秘密のシンボルを解き明かすものだ」と語ったと言われています。

そして、この書の中にも「三角の中に目がある」という図柄はいくつか描かれています。

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上のようなイラストも、よく見ると、図の下の方は何だか「目だらけ」となっていたりします。

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また、下のように「三角の中に目が描かれている」というものもあります。

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この『薔薇十字の秘密のシンボル』は、今でもたまに眺めたりしています。

元本はウィスコンシン大学に所蔵されていますが、インターネットですべてのページが公開されていますので、どなたでも、ダウンロードできます。ドイツ語のサイトですが、「Die geheimen Figuren der Rosenkreuzer (薔薇十字の秘密のシンボル)」というページの一番下の Weblinks というところからダウンロードできます。

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全部で 102ページのなかなかの大著ですが、イラストの部分は見ていて飽きないです。

まあ、フリーメーソンにしても、薔薇十字団にしても、私はそれぞれの本質的な性質や存在理由をよく知らないですが、それぞれに、「秘密に伝承されてきている何らかのこと」はたくさんあるのだと思います。

なので、実生活の中で建造物や、あるいは紙幣やコインなどに多用される「プロビデンスの目」にも、それが使われる何らかの意味はあるのでしょうけれど、その意味は何なのでしょうかね。



  

2014年02月19日



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▲ 2014年2月20日の Real Science より。






 


昨日の、

70年前にも騒がれていた「地球温暖化」はその 1940年代にピークを打ち、 米国中央情報局は 1974年に「地球はこれから寒冷化に入る」という分析を報告していた
 2014年02月18日


で、「 1940年代の地球温暖化」や、1974年の CIA の「氷河期の到来の予測」に関しての文書などを、過去の新聞などからご紹介したのですが、過去のニュースはいろいろと面白いです。

トップに貼った科学系ブログ Real Science の記事にオーストラリアの日刊紙キャンベラ・タイムズ( Canberra Times )の 1975年の記事が紹介されていました。

これは、その前日の 1975年 8月 23日のジュネーブ軍縮会議の内容についてのものです。オーストラリアの国立データライブラリーで、過去の新聞などのデータを保管している Trove にあるものです。

1975年8月23日のキャンベラ・タイムズ紙より

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▲ Trove の The Canberra Times Saturday 23 August 1975 より。



この記事の中で、トップに貼りました Real Science の記事で抜粋されていたスクリーンショットの文章の意味は次のようになります。


米国 - ソ連 気象戦争を禁止する計画

アメリカ合衆国とソビエト連邦は、昨日の 30カ国によるジュネーブ軍縮会議において、戦争の武器としての人工津波や人工地震などのような違法な手段による脅威に関しての条約案を発表した。

今回の条約で禁止される人工津波や地震以外の技術としては、氷冠を融解させることや川の方向を変えることによって沿岸諸国に洪水を発生させることが含まれる。さらに、意図的に致死量の紫外線を人々に曝露させるために上層大気中のオゾン層を破壊する技術が含まれている。




というもので、どこまで実現していた武器なのか怪しい感じもしますが、いずれにしても、この時のジュネーブ会議で「これらは禁止された」という記事でした。

上で禁止された「兵器」を並べてみますと、

・人工津波
・人工地震
・極地の氷を溶かして洪水を起こす
・川の流れを変えて洪水を起こす
・オゾン層を破壊して人々に致死量の紫外線を浴びせる


となっています。

ちなみに、 Wikipedia によりますと、ジュネーブ軍縮会議では、過去に、

・部分的核実験禁止条約(1963年)
・核拡散防止条約(1968年)
・海底における核兵器等設置禁止条約(1971年)
・生物兵器禁止条約(1972年)
・環境破壊兵器禁止条約(1977年)
・化学兵器禁止条約(1992年)

などが締結されてきたそうですが、 Wikipedia には 1975年のこの禁止については記されていませんでした。


この中には、どうも冷戦下のハッタリ合戦の気配も感じないではないものもあるのですが、陰謀論などの話での関係としては、文章の最後の「オゾン層を破壊して人々に致死量の紫外線を浴びせる」というものは、高周波活性オーロラ調査プログラム、いわゆる「 HAARP 」というものを思い浮かべる方もあるかもしれません。






高周波活性オーロラ調査プログラムを調べ続けた5年前

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▲ 2007年7月6日の Wired の記事「米国防総省の「謎の新施設」、HAARPが完成」より。


ちょっと話は逸れますが、4年か5年くらい前に、実は執拗に HAARP について調べていたことがあります。ほとんどはその頃の「地球の記録」の記事にありますが、代表的なものとして、

HAARP での地震の原理? - HAARP と VAN法の逆説的相関関係
 2010年04月06日

HAARP の話題 3 (世界全滅装置?)
 2009年09月25日

などがあります。

結論としては、当時よく言われていたような「地震を起こす装置」ということは、原理として考えられないものであるとは確信したのですが、では、「何のために存在するのか」ということはわからないままでした。

HAARP についてメディアで最初に報道されたものとしては、 1994年に米国のアース・アイランド・ジャーナル誌( Earth Island Journal )が、独自で入手したアメリカの空軍と海軍の文書を元に「電離層を変化させる軍事計画」という記事を掲載したことが始まりだとされています。

その文章(英語)は現在、

The High Frequency Active Auroral Research Project (HAARP)

に残されています。

そのアース・アイランド・ジャーナルが入手した 1990年のアメリカ空軍と海軍の文書によると、確かに HAARP は明確に「兵器」としての用途が記されています。

なのでまあ、兵器ではあるようで、また、軍の文書では、


> 計画の最終目的として「1000キロメートル(621マイル)の広範囲にわたって、電離層を大きく変化させることが望ましい」


と書かれてあります。

この「 1000キロメートルの範囲」というのがどのくらいのものかというと、地図でいえば下の範囲です。

haarp-5000-s.jpg

▲ HAARP のあるアラスカを中心にして、濃い赤が半径 1000キロ。薄い範囲は、半径 5000キロです。


しかし、当時、調べているうちに、いろいろとわからなくなってきたのですね。

たとえば、 HAARP は「高周波活性オーロラ調査プログラム」という名称なのに、発信する信号は「超低周波」です。地球の記録のこちらの記事では、


> HAARPのInductionのシグナルを見ると、周波数が非常に低い特徴があることが分かります。僅か 5Hz 程度です。


とあります。

仮に、 HAARP が 1975年のジュネーブ軍縮会議で禁止されたという「高層大気の破壊」などを試みようとしているのなら、そんな周波数のシグナルで高層に何か影響させることができるのだろうかと。

たとえば、高層には「電離層」という層があります。

電離層は、厚さが 500キロメートル以上もある非常に厚い層ですが、超短波なら下のように最上部に位置するF2層という層を突き抜けて、その先に辿り着くことができるようです。しかし、 HAARP のシグナルはこのような超短波ではないようにしか見えなかったのです。

isosphia.jpg


このあたりになると、科学の基本を知らない私あたりにはお手上げで、考えるのをやめてしまいましたが、それから5年。

また、 HAARP のことを思い出すとは思っていせんでした。

ちなみに、上のアース・アイランド・ジャーナルの記事を翻訳したものがこちらなどにあるのですが、大変長いものですので、 HAARP というものの「概要」についてを記事から抜粋したいと思います。




1994年秋プロジェクト:電離層を変化させる軍事計画
筆者/クレア・ジカール( Clare Zickuhr )、ガー・スミス( Gar Smith )


アメリカ国防省は「 HAARP 計画」を極秘理に進めている。この計画はアラスカのアメリカ空軍基地に建設される予定であり、電離層を「暖める」という世界初の試みでもある。

しかし、科学者、環境保護論者、土地の人々は、これに懸念を表明している。なぜならHAARPの電磁波装置は、地球の電離層に1ギガワット(10億ワット)以上の電磁波を放射できるからだ。これにより人々は健康を損ない、野生動物は危険に曝され、環境にも予測できない影響が出る恐れがある。

HAARPは「高周波活性オーロラ研究計画」(HAARP)を略したものだ。これはアメリカ空・海軍が合同で行っている計画で、国防省による「電離層実験」の一環だが、この実験はあまり知られておらず、「EXCEDE」、「RED AIR」、「CHARGE4」というコード名で呼ばれている。

(中略)

米海軍研究局は1993年11月、「 HAARP 覚書」を公に発表した。
それには以下のように書かれている。

「アメリカ国防省は、通信分野での現在の能力を拡大し、また、大きな科学的進歩を遂げるため、 HAARP 計画を実行する」

ちなみに、この機密の HAARP 文書は、米国の「情報自由化法」により明らかになったものだ。

HAARP 計画の目的は、強力な電磁波を放射して電離層を『破壊』し、その後、電離層がダメージにどう反応し、最終的にどう回復するかを研究することにある。

HAARP 覚書では、この計画は「純粋に科学研究を目的としたものであり、敵国に何ら脅威を与えるものでない」と書かれている。

しかし「アース・アイランド・ジャーナル」誌が明らかにしたところでは HAARP 計画を提案したのは国防省・海軍研究局であり、さらに、アメリカ空・海軍が1990年2月に出した文書には HAARP 計画の軍事目的しか述べられていない。

例えば次のようなことが記述されている。


・大気上空に電離層レンズを作り、強力な高周波エネルギー焦点を作ること。

・電離層を変化させる手段を考案すること。

・反射装置を作る目的で、上空90キロメートル以内の電離層に変化を与えること。

・ミラーによって、地平線を超えた、広範囲に亙る監視システムを作ること。

・それによってクルーズ・ミサイル、あるいは他の飛行物体を探知すること。


HAARP 文書では、計画の最終目的として「 1000キロメートル( 621マイル)の広範囲にわたって、電離層を大きく変化させることが望ましい」と書かれている。

ほとんど知られていないが、 HAARP 計画のもう一つの目的は、敵国の通信能力を妨害しながら、アメリカの防衛通信手段は無傷で残しておくことにある。






記事は、その後、環境などへの影響も含めて記されていて、大変長い記事となっていますが、とりあえず、1990年代に軍部から計画が提出された時点では、 HAARP というのは上のようなものだったということです。

しかし、現状のシグナルの特性などから考えて、それが一体、どんな「本質」なのかということは想像することも難しいです。

そして、これは「想像で解決するようなものでもない」ですし、科学的に確実な視野で考えられるような方々がいればなあ、と思います。いずれにしても 40年前のオーストラリアの新聞の小さな記事が、いろいろなことを思い出させてくれました。

思えば、この5年ほどの間にいろいろと知ったような、実は何にも知らないままのような。